金融相場から業績相場へのバトンタッチ

2021/10/15

今週の国内株市場ですが、日経平均は戻りの勢いがなかなか出ず、28,000円台の前半で上下する展開が目立っています。

確かに、最近の株式市場は上方向に進みにくい地合いとなっています。リクツの上では、株式の価値をざっくりとした計算式にまとめると、「利益÷(金利-成長率)」で表わされるのですが、この式の構成要素のうち、インフレ警戒に伴って金利が上昇に傾向にあることや、原材料価格や労働賃金の上昇、サプライチェーン(供給網の)混乱などによって、利益や成長率への悪影響が懸念されるなど、式から導き出される株式の価値が低下してしまいかねない状況となっています。

実際に、IMF(国際通貨基金)が今週12日(火)に発表した世界経済見通しでは、新型コロナウイルスの感染再拡大によるサプライチェーンのボトルネックやインフレの長期化による下振れリスクを指摘し、2021年の世界経済の実質成長率の見通しを、前回(7月)の6.0%から5.9%へと引き下げられました。修正幅自体は小さいですが、リスクへの意識を強めている見方が増えてきているのは間違いなさそうです。

原油価格(WTI)も、今週に入って1バレル=80ドルを超える場面もあり、約7年ぶりの高値水準となっていますが、これから冬場を迎えるにあたって、暖房に使うエネルギーの需要増によって価格がさらに上昇してしまうことも考えられ、インフレの長期化懸念が燻っています。

また、中国恒大集団の債務問題についても、金融ショックに発展するかどうかというよりも、一連の対応に伴う中国経済の中長期的な景気悪化傾向の方が金融市場にとっての懸念材料になっています。

さらに、サプライチェーンのボトルネックについても、業績見通しを下方修正する企業が出始めたほか、半導体不足によって米アップルのスマホ(iPhone13)が減産されると報じられたりするなど、企業業績に対して慎重に受け止める動きも見られ始めています。

今週は米国の大手金融機関をはじめ、日本国内でも小売・消費関連企業の決算が予定されていますが、米国のテーパリング(量的緩和縮小)の年内開始が見込まれる中、まもなく日米で決算発表シーズンが本格化するタイミングでもあります。そのため、今後しばらくは、「金融相場から業績相場」へのスムーズなバトンタッチが試される局面にあると言えそうです。

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