長期的に注意したい「中国リスク」

2021/07/09

今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ、冴えない展開が目立っています。7月相場に入ってからも、最高値圏で推移する米国株市場の流れについて行けない状況が続いている格好です。

新型コロナウイルスの国内新規感染者数が増加傾向であることや、期待のワクチンも、接種進展のスピードに乗り切れない状況となっていること、そして、週末に株価指数連動型ETFの決算が集中していることによる、分配金の資金確保のための換金売りへの懸念などが日本株の足を引っ張っていると思われます。その一方で、半導体などのハイテク株銘柄や企業業績を材料とする銘柄には買い入っており、「冴えない相場地合いの中で買えるものを買う」という動きも見られます。 

また、中国政府によるIT関連企業への締め付けや、中国企業の海外上場規制を強化する動きも気掛かりとなっています。現時点ではまだ大きな売り材料にはなっていませんが、7日(水)の取引では、中国企業に多く出資しているソフトバンクグループが年初来安値を更新するなど、一部で影響が出ています。

こうした中国当局の動きは、なかなか緊張が解けない米中関係の政治的な思惑もありそうですが、技術強国を目指す国家戦略を確実にするために、企業へのコントロールを強化することや、IPOを米国ではなく中国国内市場へ誘導するといったねらいがあると思われます。すでに中国当局は資源・エネルギー関連や運輸、金融、工業といった分野については、強力な支配力を有していますが、その支配力をIT・ハイテクの分野へ広げつつあるように見えます。

ただ、IT・ハイテク分野は民間企業が多く、当局の支配も比較的緩い自由な環境だからこそ、米国にも引けを取らないようなビジネスモデルが生み出されたり、急成長を遂げきたという一面があります。つまり、当局の管理が今後強まっていくと、企業活動の自由度が奪われ、肝心のイノベーションを生み出す力が弱まってしまうことも考えられます。

そのため、中長期的な中国の競争力・成長力を削いでしまわないように、「どう上手くコントロールできるか?」の匙加減が注目されることになります。

かつては、「政冷経熱」(政治関係は冷えているが、経済関係は活発)という言葉のように、中国との関係は、政治と経済を切り離すという見方もありましたが、現在は米中対立にも見られるように、政治と経済との結びつきが強くなっています。今回の中国当局の動きは、中国企業の活動の背後に当局の意図を感じさせる状況が続くことで、さらなる各国の警戒感を招き、海外進出や国際ビジネスが阻害されてしまうことも考えらえます。

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