新型肺炎ウイルスで揺れる株式市場は買い場となるか否か?
今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ中国発の新型肺炎ウイルスへの不安を反映する格好で株価水準を一段切り下げる展開となっています。とはいえ、日足チャートを眺めてみると、75日移動平均線を挟んだもみ合いとなっており、まだ相場が崩れている印象はありません。
実際に、今回の株安を好機と捉える動きもあるようです。「今は買い」という強気派の根拠となっているのが、2002年から2003年の8カ月のあいだに猛威を振るったSARS(重症急性呼吸器症候群)の経験です。この期間の日経平均は早い段階で1割ほどの下落にとどまり、上昇傾向に転じました。今回の新型肺炎ウイルスについては、まだ感染が拡大中のため、調整局面がまだしばらく続きそうですが、いずれ収まるのであれば、業績の回復がきちんと見込める銘柄を中心に買いを入れるチャンスとなるわけです。
とはいえ、2002年~2003年当時と現在とでは、中国の世界経済に与える存在感と影響度は格段に大きくなっていることには留意しておく必要があります。新型肺炎ウイルスの感染拡大がなかなか収束できないと、インバウンド関連やサプライチェーンに中国を組み入れている企業の業績への回復がそれだけ遅れることになります。すでに中国国内でのウイルス感染者数がSARS感染者数を上回っているなど、かなりのハイペースで増加しているため、終わりがまだ見えていません。
また、事態の長期化は3月の中国全人代(全国人民代表大会)や習近平主席の訪日、東京オリンピックなどにも影響を及ぼす可能性があるほか、日本国内の感染者増加の状況によっては政権与党への批判を高めてしまいかねません。
さらに、株価水準の違いもあります。SARS流行時の米景気は、2000年4月からの「ITバブル」の下落基調が底打ち反転しつつある状況だったため、株価の下落も比較的限定的にとどまりましたが、足元の米景気は10年以上続く拡大局面の終盤であることや、株価も米国で史上最高値圏、日本でもバブル後高値をうかがうところに位置しています。
そのため、新型肺炎ウイルスによる株価下落は中長期的に見て「買い場」になりそうですが、株価の調整が思ったよりも深くなる懸念があり、現時点で積極的に買いを出動させるよりも、状況を注視しながら臨むのが良いのかもしれません。
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