米国株に急落リスク─日本株にも押し目買いチャンス到来か

 

高値警戒感が10月に入って急浮上、トランプ減税期待の後退等が急落の引き金になりそうです。

急浮上した高値警戒感

今月(10月)に入って米国株価(NYダウ)に高値警戒感が急浮上しています。とりわけトランプ政権の大幅減税策への期待の再燃が株価上昇ペースを加速させている主因のようです。チャート上は、リーマンショックの底値(2009年)を起点に、右肩上がりの株価上昇トレンドが続いていますが、今月初には上昇トレンドの上値抵抗線を上方に抜けました(図表1参照)。「8年半続いた『巡航速度』を超えるスピード違反」となった形の株価上昇ペースの加速をきっかけに、高値警戒感が急浮上しているのです。

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さらに一昨日(10月18日)は「バイイング・クライマックス(最後に噴き上げるような強い買い相場の終焉直前)」の様相を呈しました。より傾きが急な──すなわち株価上昇ペースが『巡航速度』よりも速い、年初から10ヵ月間続く株価上昇トレンドの上値抵抗線をも上方に抜けたのです(図表2参照)。NYダウは23,000ドルの大台にのせ、過去最高値を更新しました。高値警戒感が一段と強まっており、何かのきっかけがあれば急落する「一触即発の状態」のようです。

もっとも、米国、欧州をはじめ世界的に景気拡大は力強さを増しつつあり、企業の好業績への期待も根強いため、株価急落で高値警戒感が薄まれば、「押し目は買い」相場は続くと考えられます。実際、米国GDP成長率(前期比年率)は4-6月期3.1%、7-9月期2.7%(米アトランタ連銀予測値、10月18日時点)であり、FRBが長期的に持続可能とみる1.8%を上回る、力強い景気拡大です。

急落のきっかけとなり得るイベント

当面は、株価急落のきっかけとなり得る材料が目白押しです。

(1)トランプ減税期待の後退?

昨日(10月19日)は米議会上院で(トランプ税制改革法案の年内成立に道を開く)予算決議案の採決の日です(本稿発刊時点では審議中)。下院はすでに通過しましたが、上院では与党・共和党と野党・民主党の議席数が52対48と拮抗し、予断を許しません。一部では(オバマケア代替法案で反対票を投じた)「マケイン議員の賛成票も見込まれ造反票は限定的」など可決観測もあります。しかし予算決議は税制改革法案への第一歩に過ぎません。「トランプ大統領らが『議会成立は年内』との期待値を引き下げ始めている」(英FT紙、10月18日付)等、来年への持ち越し観測も浮上しています。

(2)FRB議長人事を巡る思惑?

来年2月に任期満了となるイエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長の後任人事の発表が、「11月3日からのトランプ大統領のアジア歴訪の前となる公算」(ロイター、10月17日付)となっています。「トランプ大統領が候補者の一人、スタンフォード大のテイラー教授と面談した」(10月11日)と報じられると、「イエレン議長よりも利上げに積極的」との観測で、株価にマイナス材料視されました。FRB議長人事が株価急落のきっかけになる可能性もありそうです。

(3)ECB緩和縮小を巡る思惑?

ECB(欧州中央銀行)が次回の定例理事会(10月26日)で「資産買入れ策の縮小を決定する」と市場は注目しています。今年6月にドラギ総裁が緩和縮小を示唆した際には、欧州株の急落等につながり米国株の下落要因ともなりました。これまで緩和縮小の必要性を唱え続けてきたショイブレ独財務相も「金融市場が過度に神経質に反応しないよう、非常に慎重に進める必要がある」(9月15日)と注意を呼びかけています。緩和縮小を巡る思惑なども、市場が動揺しやすい材料であり、市場は警戒を強めています。

明治安田アセットマネジメント株式会社
かつて山間部の中学校などに金融教育の補助教材を届けていた頃の現場の先生方の言葉が、コラム執筆の原動力です。「金銭面で生きる力をつける教育は大切だが、私自身、株式など金融は教えられないのですよ」と。
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