世界最長記録となった豪州の景気拡大─26年間、景気後退なし

 

移民が支える住宅投資や個人消費、サービス産業シェア拡大に伴う雇用増などが強みのようです。

世界最長となった豪州の景気拡大

オーストラリア(以下、豪州)は今月発表された2017年4-6月期実質GDP(国内総生産)のプラス成長を受け、これまでのオランダの記録(103四半期)を抜き、104四半期──すなわち26年間「景気後退局面を経験しない」という世界最長記録を塗り替えました。

2四半期連続でマイナス成長に陥ると「景気後退」と判断されますが、「豪州はリーマンショックによる景気後退も回避できた数少ない国の一つ」(モリソン財務相)です。リーマンショックで2008年から2009年にかけ大幅なマイナス成長に陥った日本や米国など他の国々とは好対照です。この間、中国向け鉄鉱石・石炭輸出の急増がもたらした『鉱山ブーム』が崩壊した2014年前後でも、景気後退は回避されました。

長期にわたる豪州景気拡大の背景

1991年から現在まで続く豪州の景気拡大には、まず(1)「1980-90年代の構造改革が奏功した」(英エコノミスト誌、9月6日付)と言われます。関税障壁の撤廃や変動相場制への移行により、例えば「中国の資源需要の落ち込み」という外的なショックによって『鉱山ブーム』が終焉した際にも、「豪ドル安になる」という為替レートの調整機能を通じ、過度な輸出額の落ち込みが軽減されました。さらに「豪ドル安」は、豪州産農産物の輸出を促進するとともに、外国人観光客や留学生を増やして観光業セクター等を下支えし、外的ショックを和らげました。

これら構造改革をベースにした、(2)「過去20数年間の豪州景気拡大の原動力」(豪州ABC放送、6月7日付)は、(i)中国の旺盛な資源需要による鉱山セクターでの輸出増(及びそれに伴う所得環境改善を通じた個人消費の拡大)や、(ii)移民流入に伴う旺盛な住宅投資等、と言われます。最近では「道路、鉄道、病院建設など旺盛な公共投資──すなわち『インフラ投資ブーム』が豪州景気を下支え」(米CNBC放送、9月6日付)し始めている面もあるようです。

『鉱山ブーム』終焉を補ったサービス産業拡大

過去約40年間の豪州の失業率を振り返りますと、2000年代に入ってから直近まで、概ね4~6%の狭い範囲内で安定的に推移しています(図表参照)。この10数年の間には、『鉱山ブーム』とその終焉がありましたが、失業率の上昇は限定的であったことがグラフから読み取れます。豪州準備銀行RBA(中央銀行)のロウ総裁は(外的ショックに対する)「豪州経済の適応力を示す一つの証拠である」と述べています(7月26日の講演)。

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ロウ総裁は、「労働市場におけるサービス産業のシェア拡大」という経済構造の変化に言及しました。そして「豪州経済に打撃となった『鉱山ブーム』崩壊を、サービス産業の拡大が和らげた」と示唆したのです。「かつては鉱工業セクターでの従事者が主流であった」「全産業に占めるサービス産業での従事者の比率は1950年代の約50%から最近では80%近くまで達している」(ロウ総裁)とのことです。

豪州経済の“双発エンジン”を支える移民流入

これまでの「中国向け資源輸出」と新たな「サービス産業シェア拡大」という豪州経済の“双発エンジン”稼働を可能にしてきたのが、移民流入による「OECD(経済協力開発機構)諸国平均の2倍以上の人口増加ペース」(前掲英エコノミスト誌)です。労働力供給だけでなく住宅投資、個人消費をも下支えしているのです。

長期にわたり景気拡大を続ける豪州経済の高い成長力と(外的ショックに耐える)適応力は、長期投資の対象先としての豪州市場の魅力を高めている要因と考えられます。

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かつて山間部の中学校などに金融教育の補助教材を届けていた頃の現場の先生方の言葉が、コラム執筆の原動力です。「金銭面で生きる力をつける教育は大切だが、私自身、株式など金融は教えられないのですよ」と。
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