総力戦に向かう米中対立 ~ベネズェラ、イラン奇襲軍事作戦の背景~
【ストラテジーブレティン(397号)】
ベネズェラへの侵攻とマドゥロ大統領拉致、イラン空爆によるハメネイ師等最高指導者達の殺害、ミサイル集中砲火による制空権の奪取等、まるでアクション映画としか思えない事態が、現実の世界で進行している。宣戦布告なき総攻撃など、国際法も国際機関による統治もあったものではなく、弱肉強食、力による正義が見せつけられている。コメンテイターも各国政府も事の本質と展開を読みあぐねており、対応に苦慮している。
弱肉強食、力による正義が横行する世界
新たにイランの最高指導者に指名されたモジタバ・ハメネイ師はホルムズ海峡の「封鎖を継続する」と表明した。制空権を取られ、対抗能力を失ったイランにとって、世界原油の2割が通過する最大の要衝を封鎖することで、世界経済を人質に取ろうとしているのである。FTは次のように述べている。「ゴールドマン・サックスの調査によると、通常1日あたり2000万バレルの原油が通過するこの水路では、現在約1800万バレルが遮断されている。約300万バレルはパイプラインで迂回可能だが、それでも1500万バレルもの原油が行き場を失っている。これにより生産者は約650万バレルの原油と200万バレルの精製石油製品の生産停止を余儀なくされた。2022年4月のロシアエネルギー危機のピーク時には、ロシアの石油生産は1日当たり100万バレルの打撃を受けた。今回はすでに1日当たり600万バレルの生産打撃を受けている。つまり6倍の規模である。」
またテロリズムの総本山であるイラク神権政治体制を転換させようとすれば、地上軍の投入による長期戦を覚悟せねばならない。大半の中東専門家や軍事専門家が無謀な政策と非難しているのは、イラク、アフガンで経験したように多くの人命が失われ、戦勝は容易ではないと見ているからである。