高市政権の課題と2026年の株価見通し ~焦眉の減税による消費水準の引き上げ~
【ストラテジーブレティン(393号)】
激変する世界の中で最も大きく変わろうとしているのが日本である。史上初の女性首相高市政権の誕生だけではない。新政権は保守革命を遂行しようとしている。これまでの自公連立はリベラル中道連合 (憲法改正やスパイ防止法、防衛力増強などを後回しにしてLGBT法や選択的夫婦別姓などリベラル政策と財政健全化路線を推進)と言えるものであった。それに対して自民維新の新連合は保守連合(改憲、自主防衛、積極財政)と言え、これは保守革命ともいえる基軸の大旋回である。中国の異常とも見える対日威圧も、日本の保守革命に端を発している。
この大変化は、日本株式にとってプラスであると考えられる。目先は高市政策の本領が未だ見えてこないこと、中国の異常な対日批判などにより踊り場が続くが、国内経済の浮揚感と高市政権の長期政権化が見えてくれば騰勢を再開する可能性が高い。
第二次安倍政権の発足以降の長期上昇トレンド、年率10~13%成長趨勢が続くと考えれば、10万円には2031年か遅くとも2033年に到達、2035年には12万から16万円に達すると計算される。もともと日本株は1)超割安(株式益回り5.6%、配当利回り2.4%、国債利回り1.9%、預金金利0.2~0.5%と株のリターンが圧倒的に高い)、2)超好需給(個人、外国人、年金、企業の潜在的株式需要甚大)、に加えて株高に必須の、3)株高ストーリーが、高市保守革命で整う。国内・海外全投資家層はFOMO(日本株を持たざるリスク)を痛切に感ずることになるだろう。
解散総選挙で高市政権は政治資本(Political Capital)の引き上げを狙う
2026年のヤマは解散総選挙であろう。高市首相の支持率は空前、特に若年層の支持率は8割と圧倒的であるが、少数与党で政権運営は不安定である。また、今回の政変劇は、選挙の洗礼を経ておらず国民の信任を得ているとは言えない。これほどの路線転換が成された以上、国民の審判を受けるのは当然である。加えて国家安全保障問題が最大関心事として浮上した。中国は11月7日の高市首相の国会答弁を、日本が台湾有事に介入する姿勢を見せたと難をつけて、強烈な対日嫌がらせと答弁撤回(=台湾有事不介入の約束)を求めている。日本は対中宥和を継続するべきか、現実主義にシフトするべきかの選択を迫られている。それは戦後の「戦力放棄を伴う絶対平和主義」の幻想からの目覚めの過程でもある。
高市首相は積極財政とともに、国家安全保障戦略を争点に押し立てて、解散総選挙に打って出ざるを得なくなる。選挙では対中宥和を唱えるリベラル勢力が敗れ、日本の政策軸が保守・ナショナリズムと積極財政に傾く可能性が強い。
焦眉の課題、個人消費の引き上げによる潜在成長率回復
2026年の高市政権の課題は国民生活の向上、消費の回復により日本の潜在成長率を押し上げることである。アベノミクスは最も困難な企業の稼ぐ力を取り戻し、外国人投資家から非難されていた企業統治・コーポレートガバナンス改革を成し遂げた。企業利益2.5倍、株価4倍という一番難しいことを達成したのに、肝心の国民生活は全く改善していない。実質家計消費は2014年1Q(消費税増税直前)以降10年以上にわたってマイナス状態が続き、直近でもピーク時比-4%である。2012年に成立した「社会保障と税の一体改革」による、社会保険料引き上げと2度の消費税増税で打撃を受けたためである。

