窮地か?ドイツ企業の対中戦略検討と EU
~三菱自工中国撤退 vs 対中投資 double down のドイツ企業~
【ストラテジーブレティン(341号)】
ロシアによるウクライナ侵略、米中対立と台湾進攻の可能性、中国での不動産バブル崩壊、欧米先進国における分断と右派ポピュリズムの台頭、ゼロカーボン政策の見直しと環境理想主義の挫折、等世界経済に困難が山積している。いずれも深刻な問題だが、その殆ど全てが日本株式の相対的優位を浮かび上がらせるものである。前回は中国バブルの崩壊と来るべき中国経済衰弱を分析したが、今回は欧州経済を覆う戦略混迷と経済停滞について対中戦略を概観することで、探ってみる。
(1) 欧州の対中貿易赤字急拡大、高まる政治主導の対中防御
これまでユーロ圏は対中ビジネスにおいて、米国、日本、韓国等他国に比べて大きな恩恵を受けてきた。図表 1 は中国の国別輸入額推移であるが、過去 10 年ほどの間、対日本、対韓国、対米国がほとんど成長しない中で、対ユーロ圏輸入だけが 6~7 割増とシェアを高めてきた。しかし中国企業は着実に技術キャッチアップを進め競争力を強化し、欧州企業の地盤を切り崩してきた。中国の対欧州輸出は欧州からの輸入以上のスピードで拡大し、EU の対中貿易赤字は 2022 年 396 億ユーロとコロナパンデミック前の 2019年比倍増となった(図表 3)。
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