日米同盟深化、1ドル120~130円視野に
~地政学が引き起こす円独歩安~

【ストラテジーブレティン(279号)】

  1. 円の独歩安が進行している、日足でみれば年初来円は独歩安である。週足でみれば2016年からの円高トレンドは完全に終焉したようである。月足でみれば、円は2011年の大天井の後2020年に二番天井を付けた形勢が濃厚である。長期円安が始まったかもしれない。
  2. 日米同盟の深化が円安を惹き起こす。円安で日本経済を立て直すことは米国国益にとっても重要と考える。
  3. 円安で日本の景況は様変わりする。製造業競争力は激変する。コロナ後日本への観光客は急増するだろう。企業収益は飛躍し、賃金上昇が始まるだろう。

激流期に入った世界情勢
歴史の流れは緩急自在、何十年も変化を止めている時もあれば、激流のごとく1年で10年20年分の変化を成し遂げることもある。今我々はこの歴史の激流期に差し掛かったのではないか。バイデン政権成立から100日もたたないうちに、米中敵対関係は抜き差しならない事態となり、対立はエスカレートの一途である。バイデン政権の下でも米国は中国を敵対関係にある国と認識し、米日豪印4か国対中連携(クアッド)の構築、英仏艦隊アジア派遣、中国包囲のミサイル網構築、米国軍備の近代化など、軍事的包囲網の準備を進めている。
他方中国はロシアとの外相会談を開催し連携関係を強化、イランとの25年協力協定締結、北朝鮮との通商拡大、トルコとの連携など、潜在的非民主国家群とのネットワーク構築をあからさまに展開している。また全人代常務委員会で香港選挙制度改正案が可決され、香港自治が最終的にはく奪された。

最大のリスクは中国が米国衰退論を確信すること
『米中関係は、爆発しかねない危険をはらんだ地雷原のようだ。中でも最大のリスクは、中国が米国の衰退を過信することだ。自信過剰になった中国の指導部が一線を越えて挑発的になれば、米国は強硬な反撃をせざるを得なくなる。南シナ海、通商、とりわけ香港と台湾などでそのリスクが表面化している。
バイデン米政権が取り始めた対中政策はこのリスクを念頭に置いている。バイデン政権の戦略は、米国の経済・外交・軍事面の底力を明確に示すことで、米国が衰退しつつあるとの中国の主張を打破するものである。そのメッセージは「米国の力を見くびるな」という単純明快なものだ。
それは中国が自国領土と考える台湾において、最も重要なものかもしれない。習近平氏が軍事力を行使してでも台湾統合に進み始める可能性を、米当局は懸念している。香港の民主主義の弾圧は、その予行演習かもしれない。習氏にそれを思いとどませる最良の方法は、米国が依然強力で国際的影響力を保持していることを見せつけ、米国による反撃が強大であることを認識させることかもしれない。』(WSJ3.30.21『Fear of Miscalculation Haunts China Policy バイデン氏の対中政策、中国の過信の打破にある』)

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