過去10年のパフォーマンス 高配当戦略のシャープレシオが最も高い
2026年から新たな投資戦略のポートフォリオを開示していくことにする。その名も「高配当株ストラテジー」だ。文字通り、高配当株に投資するものである。理由はシンプルで、高配当株投資のパフォーマンスが非常に良好だからである。
下記の図表は代表的なスマートベータの過去10年のパフォーマンスを見たものだが、高配当(High Dividend)戦略のシャープレシオが最も高い。
この結果は肌感覚でも非常にしっくりくる。僕の仲間のファンドマネージャーやストラテジスト、アナリストたちと話しても、「結局高配当だよね」ということになる。しかし、この話には「なぜだかわからないけど」という台詞が必ずあとに続くのだ。
読者の中には、僕らのような「プロ」が、高配当株投資が良いリターンを生む理由がわからない、などと言っていることに疑問を持たれるひともいるだろう。
「そんなの、多くの配当金がもらえるのが魅力だから、リターンが高いに決まってるじゃないか!」と思われるだろうか。
確かに、たくさん配当をもらえると得した気持ちになる。しかし、企業にとって「配当を払い出す」という行為は、資産として保有している現金を払い出すということだから、その分だけ資産価値が減少する。1株当たり1000円の企業価値(=株価)の企業が、保有している現金100円を配当として払い出すとすれば、企業価値(=株価)は900円になる。これが配当落ちである。株主は100円の配当を手にするが、同時に保有している企業の価値(=株価)が900円に値下がりすれば、100円(配当)+900円(株価)で、もとの1000円の株主価値と変化はない。
ここから容易にわかることは、配当が10円であっても200円であっても、あるいは配当を払い出すことなくそのまま現金を内部留保したままであっても、株主にとっての価値は変わらないということだ。
書店に行けば高配当株投資を勧める本がたくさん並んでいて、その多くが「年間○○万円自動的に入ってくる高配当株投資」とか「月に○万円入ってくる高配当株投資」など配当金の「収入」面にばかり目を向けるものが目立つが、この配当落ちに触れているか疑問である。
配当政策によって企業価値は変わらない
配当政策によって企業価値は変わらないというのがファイナンスの理論だが、現実のマーケットでは増配や自社株買いのニュースで株価が急騰することがよくある。この理論と現実のマーケットの振る舞いの矛盾はファイナンスの主要な研究対象のひとつになっており、アカデミックな世界ではこの問題に対する「答」としていくつかの仮説が構築されている。学術的な研究は学者に任せて、僕らは学者ではないので、実際的な高配当投資のリターンを享受すればよい。
高配当の裏にあるキャッシュフローの安定性は要確認
とはいえ、ここで見た通り、単純に配当利回りの高い銘柄を買うだけではよいパフォーマンスは望めない。高配当の裏にあるキャッシュフローの安定性などに目を向けることが肝要である。
以下に、僕がピックアップした高配当株ポートフォリオを示す。この銘柄群は単に配当利回りだけでなく、業績(ROEやキャッシュフロー成長率)に加えて、吉野さんが紹介していたDOE、キャッシュフロー利回り、配当性向、など複数の観点から選択したものだ。大型・中型・小型のバランスも考慮している。この銘柄を明日30日の引け値で組み入れる想定として26年のパフォーマンスを戦略ポートフォリオ同様、月次で検証していくことにしたい。