想定通りに「円安是正」はなくなった
僕は、従前から、このタイミングで米国側から円安是正の要求が出されるとは思わないと述べていた。財務相会談が無難に通過となれば、ドルが買い戻されるだろう。したがって円高が悪材料となって株価が下げるなら、そこは買い場であると語っている。すべて想定通りである。
今週月曜日のマンデーナイトライブで僕が語ったことを、このレポートで再録しておこう。

今週月曜日4月21日配信分のオンデマンド動画はマネクリからご覧になれます。
https://media.monex.co.jp/articles/-/26881
MCの佐々木さん:今日は円相場がおよそ7ヶ月ぶりに一時1ドル140円台まで進んだということで、為替の質問がたくさん来ています。今日また一段と円高が進んだ背景についてまずお伺いできますか?
広木:ドル円が140円台に突っ込んだ理由は2つあって、1つは円安の是正を求められるんじゃないかという懸念ですね。24日で調整している日米の財務相会談があります。加藤財務大臣がG20で訪米してるんで、そこでベッセント財務長官と会ってっていう話なんですよね。
前回赤沢さんが行ったときにね、為替の話は出ませんでした、と赤沢さんは言ったんだけども、事情通に言わせると「それはね出ませんでした」って言うより、ちょっとそらしたらしいのね、出さないでくれって言ったらしいんですよね。出さないでくれっていうか、為替マターは財務大臣とやってくれって。だから今度加藤さんが行くので、そこでは為替の話は出るんでしょうね。だけど結論から言っちゃうと僕は円安是正をアメリカが突き付けてくるっていうのは無いと思う。このタイミングで。
なぜかっていうと今日、円高が進んだ2つ目の理由、つまりFRBのパウエル議長の更迭をトランプ政権が画策しているという話。パウエル議長解任となれば金融市場が混乱しドル不信でなおさら売られるという連想からドル安円高に進んだっていうのが2つ目の理由なんですね。トランプが利下げしろ、利下げしろって言ってるのにパウエルが結構頑なにインフレ懸念もあるからみたいなことですごく慎重なスタンスを取っているということに不満をぶつけているわけで、これでもし万が一解任されたとして、次に誰がFRB議長をやろうが当然それは利下げバイアスが強くなる。
こんな状況で、仮にアメリカ政府がドル安誘導ってことになってしまうと、ただでさえFRBへの政府介入で金融市場が混乱してドル不信でドルが売られるみたいな状況下でそういうこと(政府間での為替誘導)やれるのか?いやできないだろうっていうのが、ひとつの理由です。悪いドル安みたいな形になっちゃうじゃないですか。
そもそも皆しょっちゅう為替操作はいかんみたいなことって言うでしょ。マーケット関係者、特に為替の人とか。アメリカの為替報告書っていうのがあるじゃないですか、あれでいつも日本が為替操作国に認定されるか戦々恐々としてるんだけど、そんなこと逆にアメリカが言える立場なのかって。プラサ合意のときから、もう思いっきり政府が加入してコントロールしてきているわけでね、為替操作っていうか、もうむちゃくちゃやってきているのはアメリカ自身じゃないかみたいな話なんだけど、そういうことをここでドル安誘導なんかに持ってったら止まんなくなりますからね。このタイミングでやったら。いわゆる悪いドル安ですから。
ついこの間も、相互関税発動の日ですね、日本時間の4月9日ですけども、そのときにトリプル安になって、で、慌ててまあ、あのときは米国債が売られて金利が急騰したってのはあるわけですが、そこで慌てて90日間の猶予ってのを打ち出したわけですね。米国債売りのドル急落ですから。もうアメリカ全部売り、アメリカ不信=トリプル安にすぐなっちゃう状況下で、これでドル安誘導なんかしたら、もう止まんなくなりますから。
でも、そもそもトランプ政権の政策ってのは経済合理性から矛盾したことばっかりやってんだけど、それはしょうがないと、僕はずっと言ってて。別に経済合理性で動いてないから。政治的な信条とイデオロギーと自分の政権支持者への公約っていう政治マターでやってる政策なんでね、経済合理性無視なんですよ。経済合理性から言ったらこんなところでそのドル安誘導なんかやったら大変なことになるわけですけれども。ただ、いくら経済合理性無視とは言えベッセントがいる以上はね、なんぼなんでも、やっぱりそこはそんな危ないことはやらないと思いますよ。
今回の関税政策の一応理論的な支柱とされてるのは3月に大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長に就任したスティーブン・ミランってのがいるんですが、一体どこの何者かも全く分かんないポッと出のやつなんだけど、そいつが関税の、まあ、一応理論とか筋書きとかやってトランプの経済ブレインとされてるんですけど、いや、全くもう真っ当な経済学者じゃないですからね。誰それみたいな人ですから、全く傍流な人で、言ってること、もう無茶苦茶ですから。トランプ政権ってのは経済理論にのっとってないで、それはしょうがいないで置いておくとして、でも無茶苦茶なこと言ってるわけですよ、それで関税かけてドル安誘導っていうことをそのスティーブン・ミラーは言ってんだけど、それはもう成り立たないですからね、どう考えても。
このMonday Night Liveでも何回も言ってると思いますけど、シンプルな話困るのはアメリカの国民ですから。関税かけるってことはそのかかった関税は全部アメリカ政府に入るわけで、国民は逆にその関税に上乗せされて高いものを買わされるわけですよ。高いもの買わされて通貨のドルがさらに安くなったらより高く買わされちゃう。こんなひどい話は無いので、そこでもうドルが急落して止まらなくなったらそれはもう話になんないですよね。
日本のことを見てくださいって言ってるんです。日本は全部エネルギーにしろ食料にしろ海外の依存度が高いので、海外のインフレが日本に波及して日本もようやくインフレになってきたっちゅう話なんだけど、そこで為替が円安になったらやっぱりそのダブルの効果でね、輸入物価が高くなる。同じことですけど、購買力が落ちてるとそれで国民の不安がパーンと出て日銀何とかしろって話になってるわけじゃないですか。それと同じことがアメリカでも起きるわけですよね。ここから。関税でインフレって、ま、関税で自動的にオートマティカリーに物価が高くなるわけで、それで諸々の要因でさらにインフレがもう1回加速していってそれで通貨安までになったら国民の不満がものすごい爆発しますし、国民の不満が爆発するどころの騒ぎじゃなくてアメリカの経済がガタガタになると思うんですよ。ドルの信認が落ちるということ。
だから昔ルービンが言った強いドルはアメリカの国益にかなうと多分ベッセントも言いたいんだけれども気兼ねがあって言えないでしょうけれど、だからまあ、こういった段階でドル安誘導なんて無いと思います。ベッセント・加藤会談ではね。
だから今の円高で日本株が売られる局面は短期的な買い場だと思うんですよ。財務省会談でその話が出ませんでした、みたいなことになると、戻す可能性があるので、すごい短期目線でいけば円高で突っ込んだところは買いと思います。
(以上4月21日付Monday Night Liveより抜粋)
結果から言えば、押し目はなかったので買えなかっただろう。日経平均は3万5000円台を回復した。トランプ政策の矛盾が早くも軌道修正を迫られていることが背景だ。それを促しているのは市場の力である。ここまでの流れを見る限り、米国債売りにつながるドル安政策というのはないと考えていいだろう。マールアラーゴ合意などという「トンデモ」話に振り回されないことが賢明である。
今回の結論は『広木隆のMonday Night Live』は必見であるということだ。

また保証するものではございません。
・記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、
勧誘するものではございません。
・過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
・提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されることがございます。
・当社は本レポートの内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。
・投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。
・本レポートの内容に関する一切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに
転用・複製・配布することはできません。
・内容に関するご質問・ご照会等にはお応え致しかねますので、あらかじめご容赦ください。
マネックス証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第165号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 日本暗号資産等取引業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会