空間シェアリングエコノミー~アントレプレナーとしてグローバル展開を志向

2018/08/20 <>

・昨年11月、2017年のEYアントレプレナー・オブ・ザ・イヤーの日本代表にTKP(コード3479)の河野(カワノ)貴(タカ)輝(テル)社長が選ばれた。そして、今年6月にモナコの世界大会に参加した。日本代表では、過去にジェイアイエヌの田中社長(2010年)やホットランドの佐瀬社長(2014年)などが選ばれている。

・河野社長は、モナコの世界大会に参加し、そこでの議論を通して、空間再生のシェアリングビジネスについて、世界で通用する可能性が高いと実感した。

・アントレプレナー(起業家)は常に既存の秩序、仕組みを破壊(ディスラプション)して新しいビジネスを生み出していくが、空間再生は単に壊すのではなく、今ある空間を新しく活用するという再生による価値創造が注目を集めたと強調する。

・河野社長は、ニューヨーク、ロンドン、パリなど海外の空間活用の事例をいろいろ視察している。米国では、ショッピングモールのキーテナントである百貨店の新しいビジネス方式、パリでは駅を再生活用したベンチャー企業育成の施設などさまざまな形がある。

・ステーションFはパリ13区にあった昔の駅を、スタートアップ企業を育てるインキュベーション施設として、昨年7月オープンした。3000社の企業に入ることを目指している。大手企業がスポンサーになって、コワーキングスペースを提供し、起業家をサポートする。

・TKPのビジネスモデルは発展を遂げている。都市の空間利用では、オフィスの貸会議室から始まって、ホテルのバンケット、予備校のスペース、百貨店、専門店など商業施設の活用へと広がっている。

・会議や研修は日帰りのこともあれば、泊まり込みもある。都会であれば、外部の宿泊施設を使えばよいが、懇親会はTKPが提供する施設でできるようにした。ホテルも自社で持った方がよいケースもある。

・郊外や地方の会社が所有する保養所で、利用効率が落ちているところを借りて、宿泊研修施設としてリニューアルし、休日はリゾート用に一般の客も泊まれるようにした。稼働率が上がると、その空間は一気に再生する。

・地方のホテルで、宿泊の稼働率はソコソコでも、宴会場が余って困っているところは多い。ここを借りて、宿泊研修や懇親会場に利用しようという動きも本格化しつつある。

・これまではオフィス、研修が中心であったが、大きなホールであればイベントに使える。また、Eコマースの進展で、従来型の商業施設のスペースが余ってくる。ここの空間再生がこれから本格化する。

・商業ビル一棟を自ら再生するということもありうる。専門小売店、百貨店の余剰スペースを、商業ビジネスのコンテンツも提供しながら空間再生を行い、ひいては事業再生にまでもっていくという、大きな戦略展開を河野社長は描いている。

・これを日本だけでなく、グローバルに展開するための構想を練っている。カギはハイブリッドな新しいビジネス空間の提供、エンターテインメント空間の提供である。

・ネットとリアルの融合、専門店とポップアップストアの融合、研修スペースと商業イベントスペースの融合、小売りとレストランの融合、研究開発拠点とスタートアップ企業の融合、などいかに新しい価値を創り出せるか。

・これをビジネスモデルとして作り上げ、絶えず進化させていこうとしている。空間再生を事業再生にまで結びつけようという戦略は、第3ステージと位置付けられる。

・ウィーワークと何が違うのか。TKPは日本で10万坪のシェアリングスペースを有している。一方、WeWorkは、ニューヨークに本社をおき、9万坪のコワーキングのスペースを提供している。

・WeWorkはオフィスの執務室(デスク)のシェアリングであるが、TKPはオフィスの共有スペースのシェアリングを中心に、100人が使えるような会議室をシェアリングしている。さらに、バンケットや商業イベントのスペースのシェアリングへ、ハイブリッドの活用を展開している。

・スペースユーティリティのカギは、量と価格のバランスを図ることである。ここで、10万坪を11万坪に増やして収入の拡大を図るのか、10万坪の高付加価値化を目指すのかという課題に対しては、両面作戦ながら、基本は高付加価値化を目指す。また、不況局面において定借で借りたものが未稼働にならないように、借りる条件もフレキシブルに対応している。

・米国のウィーワーク(WeWork)は2008年創業で、2017年7月にソフトバンクグループと合弁で、WeWork Japanを設立した。ウィーワークは世界22カ国、66都市にコワーススペースを展開している。シェアドオフィスを提供し、ワーキングスペースを共同で利用する仕組みを提供する。

・TKPは、通常のレンタルオフィスは積極的にやらない方針である。顧客と競合する不動産分野にはもともと参入してきていないので、貸オフィスは事業領域として重視していない。逆にいえば、ウィーワークとは競合せずに、協業することは可能である。

・ポップアップストアの可能性はどうか。ポップアップストアは、現代版催事創作展示即売会のようなものである。匠の世界の珍しいもの、いいものが入れ替わり立ち替わりで店を出してくる。そこでしか買えないものなので集客に結びつき、イベントとして注目される。

・それが全国を回って行く。いくつもの催事、ポップアップコンテンツが用意できれば、それが一定期間ごとにまわっていく。それは全く新しい商業ビジネスになり、その商業空間のシェアリングができることになる。ポップアップビジネスの展開もおもしろい。

・日本の空間シェアリングビジネスが海外で通用するか。河野社長は、今年、海外にかなり時間を使うことになろう。

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