メガトレンドを疑い、違いを生み出す経営者とは

2023/04/03

・ウクライナ紛争でエネルギー不足が懸念された。サウジアラムコのアミン・ナセルCEOはどうみていたか。今般のエネルギー不足は、ロシア・ウクライナ問題以前から、課題を内包していた。

・石油、原子力から代替エネルギーに一気にシフトしようとした。十分な移行計画が練られていなかった。代替エネルギーでいけると思ったのが早計であったと指摘する。

・石油依存を減らすという政策が実行されたので、当然石油関連への投資が抑制された。投資不足の中、ウクライナ問題で増産を求められても急には対応できない。上流工程への投資は世界で半減していた。すでに投資は拡大に入っているが、対応には数年を要する。

・これからの投資は、カーボンニュートラルと両立させていく必要がある。ただ、その移行期については、現実的な視野で手を打つ必要がある。

・アラムコでは、原油生産を1200万B/Dから1500万B/Dへ能力アップを図るが、さらに+100万B、ガスの生産も+30%を目指す。CO2の回収、貯蔵にも力を入れる。ブルー水素も引き取りの契約をベースに生産を目指す。

・アンモニアと水素の生産拡大を図る。ブルー水素は250 /Bで長期契約してくれるなら対応するという。グリーン水素は400 /Bレベルが求められる。量産プラントを作るには、15~20年はかかる。

・ケミカルの成長は、あと10年続くとみている。400万B/Dは化学品に転換して付加価値を高める。アラムコの社員の平均年齢は35歳、女性も増えている。世界最大のエネルギー企業として、信頼できる顧客を大事にして、安全な文化を創っていくと語った。

・ブラックストーンのスティーブン・シュワルツマンCEO(会長)は、グローバル化に制約が入り、経済社会のデカップリングが加速するとみている。

・エネルギー危機は、移行計画を十分持たずに、グリーン化を進めた結果、ウクライナ紛争でバランスが一気に崩れた。インフレとの戦いは、過去15年で初めてのことであり、ドラスティックな変化が起きている。一方で、イノベーションも生まれている。

・コロナパンデミックを乗り越えて、これからはもっと経験を積みたい、旅に出たいという人々のニーズが高まってくる。旅行やレジャーが伸びるとみている。

・シュワルツマン氏は、自分のライフストーリーを振り返って、ものごとのパターンをみつけることが得意であると語った。意味のないデータからパターンを見出し、トレンドを見出す。そして早めに乗る。実際、1990年~92年の不動産危機で、初めて不動産投資を本格化させた。今や世界最大の不動産企業になっている。

・毎日悩み、毎日学んでいる。過去に大きな失敗もした。流通センターへの投資で大惨事を招いた。原因は、投資のプロセスが十分でなく、冷静な評価ができなかった。以来、失敗しないと決めた。ブラックストーンという社名は、トゥームストーンの墓石に対して、黒は死を意味するので、その戒めを社名とした。

・日本は興味深いマーケットで、これからも不動産の分野で投資を拡大するという。不動産では、PEを活用したホテル、オフィス、倉庫などへの投資を継続する。個人投資家向けの商品を広げることも実践していく。

・アントレプレナーによるイノベーションは、米国、中国、インドで起きている。スタートアップには経験が必要である、若い人は自信があってもスキルがない。チャンスを見つけても、いきなりプロから投資を受けるなと警鐘を鳴らす。

・まずは、自ら実験してみる。プロダクトが売れるか。投資に乗ってくる人はいるか。そのニーズをしっかり掴むことが重要である。すべてが思い通りにはいかない。失敗すると感情的になって、精神的な落ち着きを失いがちである。しかし、大事なことは、失敗への準備も怠らず、そこから学ぶことである。

・失敗しても、そこから学んで、他人と違うことをやり続けることである。こう語った。とかく地政学的リスクなど大きな変化に直面すると、通説に惑わされがちである。一方で、経営者は絶えずメガトレンドを見据えながら、他者と違った手を打っていく。ここにイノベーションがある。

・こうしたイノベーションの連鎖がサステナビリティをリードする。それを支える仕組みがESGなので、ESGが先にありきではない点にくれぐれも留意したい。

株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所   株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所は「リスクマネジメントのできる投資家と企業家の創発」を目指して活動しています。足で稼いだ情報を一工夫して、皆様にお届けします。
本情報は投資家の参考情報の提供を目的として、株式会社日本ベル投資研究所が独自の視点から書いており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではありません。また、情報の正確性を保証するものでもありません。株式会社日本ベル投資研究所は、利用者が本情報を用いて行う投資判断の一切について責任を負うものではありません。

このページのトップへ