アフリカを身近に~やはり遠いか
・まだアフリカには行ったことがない。かつてパリに駐在していた頃、フランスの同僚は夏休みにアフリカを旅行していた。とても広大な大陸であるから気候も多様で、軽井沢のような避暑地も多い。
・8月に日本が主催するTICAD 8(ティカッド:アフリカ開発会議)がチュニジアで催された。3年に1回、アフリカと日本で交互に開かれる。今回は8回目であった。
・世界の人口増はこれからアフリカにシフトする。国連によると、2022年の世界人口80億人のうち、東アジア・東南アジアが23億人、中央アジア・南アジアが21億人と、双方で全体の55%を占める。このうち最も人口の多い中国、インド(各々14億人)とも、いずれピークアウトしてくる。
・一方、サハラ以南のアフリカは2050年までに、現状から倍増して20億人を超えてくる。2050年までのアフリカの人口増加では、ナイジェリア、コンゴ、エチオピア、タンザニア、エジプトなどが多い。
・ナイジェリアの人口は、現在(2022年推計)の2.1億人に対して、2050年には3.7億人へ増加する見通しである。コンゴも0.97億人が2.1億人に増加、エチオピアは1.2億人が2.1億人へ、タンザニアは0.6億人が1.2億人へ拡大する。エジプトは1.1億人が1.6億人に増加するが、南アは6000万人が7300万人とさほどでもない。
・出生率が高いからといって、経済が発展するわけではない。生活が成り立てば、高い出生率で人口は急増する。一方で、政治が安定せず、社会に一定の秩序がなければ、貧困と格差はどうしようもない。ナイジェリアやコンゴをみても、民度(「腐敗認識指数」は最下位クラスにある。
・雇用機会をいかに生み出すか。社会インフラを作っていけるか。TICADはアフリカの発展に向けて、ポジティブな活動を支援している。アフリカの人口14億人が2050年には25億人へ増加し、世界の4分の1を占めるようになる。その中で、デジタル革命とグリーン成長は確実に進む。通信、電力ビジネスは発展しよう。再生エネルギーも広がり、資源開発のポテンシャルもさらに高まってくる。
・アフリカへの進出企業は、中国(2500社)が最も多く、米国(2000社)、フランス(1000社強)、英国(1000社弱)と続く。日本企業は500社前後とまだ少ない。2020年のアフリカへの直接投資は、JETRO(ジェトロ)によると、英国650億ドル、米国480億ドル、中国430億ドルに対して、日本は48億ドルであった。
・アフリカ大陸は欧州が長らく支配した歴史を有するが、近年は中国が戦略的に進出を図ってきた。中国は進出国への支援を行う反面、債務の罠にはまるとインフラ施設を実質的にコントロールするような手法も使う。これは当事国にとって危うい。
・日本企業のアフリカ進出は遅れている。遠い、分からない、小さいというのが理由のようだ。この10年で日本企業のアフリカ拠点は2倍の900に増加したが、まだまだである。総合商社や自動車、機械関連メーカーが進出しているが、ビジネスとしてのウエイトはまだ極めて低い。ジェトロは、アフリカビジネスデスクを設け、アフリカビジネス協議会を作ってサポートしている。
・TICADのテーマは4つで、1)アフリカ企業との協業による社会課題解決へのイノベーション、2)アフリカの若者の人材高度化の支援、3)再生エネルギー、レアメタルなどのグリーン成長の実現、4)民間投資へのファイナンス支援である。
・平均年齢も若く、現在の20歳が2050年でも25歳である。まさに人口ボーナスが期待できる。アジアとアフリカをインド太平洋で繋ぐこともできる。アフリカは、太陽光、風力、地熱といった再生エネルギーの宝庫でもある。グリーン水素のポテンシャルもある。
・しかし、コロナ禍とウクライナ紛争の余波で、経済は悪化、財政難、投資資金不足にあえいでいる。食料不足も深刻になりつつある。1500万人が極貧状態に追い込まれている。
・アフリカの従来のイメージは資源国である。ダイヤモンドでは、ボツワナ、コンゴ、南ア、アンゴラ、ナミビア、ガーナが有力で、世界の半分を産出する。プラチナは、南アが世界の4分の3を産出する。コバルトは、コンゴ、サンビアで世界の半分以上を産出する。
・株式市場の規模でみると、南アが圧倒的に大きく、エジプト、モロッコ、ナイジェリア、ケニアなどが続く。よって、投資信託のアフリカファンドといっても、大半を南ア株が占める。これではおもしろくないように思えるが、その他の国ではまだ株式市場が育つほど経済発展が十分でない。
・今からの30年をどうみていくか。悲観的かつ慎重にみるだけでは、遠い、分からない、小さい、という認識のままである。人口ボーナスはどの国にもチャンスをもたらす。その中から企業家も育ってくる。政府間の支援だけでなく、民間企業のパートナーから、現地の企業も育ってこよう。
・社会インフラ事業では、太陽光、風力、地熱といった再生エネルギー、水道や灌漑といって公共事業、現地に根差した農産加工品などが有望である。通信インフラの整備につれ、ネットビジネスも人口増を反映してさらに急拡大が見込めよう。
・日本企業では、豊田通商をフォローしたい。アフリカ54カ国のすべてにネットワークを有し、卸売りから現地での製造にシフトしている。トヨタの英国系販売店の買収からスタートし、フランス系のアフリカ専門商社も買収した。その後もM&Aを活かしながら事業領域を広げている。
・今後とも日本企業のアフリカ開発、欧州企業のアフリカビジネス、南ア企業のサハラ以南への展開に注目したい。いずれアフリカ旅行にも出かけたいと思う。