カーボンニュートラルに向けて~BHPとアラムコ

2022/03/01 <>

・カーボンニュートラル(CN)に向けて、主要産業はどうするのか。日本におけるCO2の発生は2019年度で10.3億t、そのうち4億tが製造業から排出されており、さらにその7割を鉄鋼と化学が占める。

・製造業のエネルギーは、電力に21%、石炭に28%、ナフサに20%依存する。鉄1tを作るのに、CO2が2t出る。ナフサからプラスチック1tを作るのに、CO2が3t出る。これを削減していく必要がある。

・その原料を提供する資源会社は、どのような対応をとるのか。オーストラリアの資源会社BHPグループのマイク・ヘンリーCEOの話を視聴した。

・BHPは、世界最大の鉱物資源会社である。脱CO2に向けて、3つの方策をとっていく。1つは、鉱山におけるオペレーションにおいて、効率化を図っていく。2つ目は、自社のポートフォリオを高品質の得意分野に集中していく。3つ目は、企業としての信頼が高められるように、社会的価値への貢献を担っていく。

・オペレーションにおいては、作業現場のインクルーシブを図っていく。日本のコマツとも協力して、400tの無人トラックを走らせている。資源の埋蔵量を推定するアナリティックに新しい技術を用いている。今女性が30%を占めるが、2025年までにこれを40%にまで上げて、ジェンダーバランスを向上させる方針である。

・資源では、高質の鉄鉱石や原料炭に集中する。脱CO2のためには、銅、ニッケルへのニーズも高まるので、ここにも力をいれていく。一方で、石油や天然ガスについては縮小して、他社との合弁も図っていく。

・2050年のCNに向けては、再生エネルギーの発電へ、運搬におけるCNにも力を入れていく。製鉄レベルでのCNに向けてはJFEスチールともさらに連携していく。

・コロナ禍からの回復における需給タイト化、CNに向けたエネルギーシフトによる需給変動、再生エネルギーの供給不安定などから、エネルギー価格や資源価格が高騰している。

・これに対して、ヘンリー氏は、1)再生エネルギーはまだ過渡期にあり、バックアップのキャパシティが必要である、2)中国の石炭不足はいずれ正常化するとしても、タイトな状況はしばらく続く、3)資源価格はシクリカルなので、上昇するといずれ下がってくる、4)それでも価格上昇が投資のインセンティブになる、と語った。

・石油化学はどうなるのか。サウジアラムコのアミン・ナセルCEOの話を視聴した。サウジアラビアは、国としてのグリーンイニシアティブでは2060年にCNを目指すが、アラムコは2050年までにスコープ2までのCNを達成するという。

・原油の需要はこれからも増える。能力増強には5~7年を要する。生産量は、現在の能力1200万B/日を、2027年に1300万B/日に持っていく計画である。

・2050年には、世界の人口が途上国を中心に、今より20億人増える。エネルギーとして、オイル・ガスを増やしながら、CO2は削減していく必要がある。

・西欧の先進国ではEVが増えてくる。しかし、そのシフトには時間がかかるので、ガソリン車は高効率なものに改善しながら残ることになるとみている。

・アラムコでは、どのようにCO2を減らしていくのか。1つは、石油・ガスからブルー水素を作っていく。もう1つは、石油を燃やすことに使わない、リキッドケミカル型にシフトしていく。

・石油化学事業にはすでにシフトしているが、これからは水素(H2)に本格展開する方針である。水素とアンモニアで次の事業拡大を図っていく。

・再生エネルギーによるグリーン水素については、コスト次第だが、具体的な成約が結べるのであれば拡大していくという。

・COP26を踏まえて、世界を代表する資源エネルギー企業の動きも注目したい。日本は、資源小国である。しかし、一定の産業基盤を確保しないと、鉄鋼、化学においても、半導体、ITにおいても、競争力を維持できない。

・グローバルなサプライチェーンの中で、どのようなポジションを確立していくのか。ユニークなニッチトップ企業に投資したい。

株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所は「リスクマネジメントのできる投資家と企業家の創発」を目指して活動しています。足で稼いだ情報を一工夫して、皆様にお届けします。
本情報は投資家の参考情報の提供を目的として、株式会社日本ベル投資研究所が独自の視点から書いており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではありません。また、情報の正確性を保証するものでもありません。株式会社日本ベル投資研究所は、利用者が本情報を用いて行う投資判断の一切について責任を負うものではありません。