トルコの金融政策(11月)~当面のリラ相場展望
- 政策金利は4.75%の大幅利上げで15%となりました。高止まるインフレの抑制に本腰を入れました。
- 外貨繰り、地政学的リスクなど、経済外的環境は厳しく、トルコの信任に足かせになると懸念されます。
- 11月のトルコリラ相場は、ここまで急反発していますが、不安定な状態は変わらないと見られます。
10ヵ月ぶりに政策金利がインフレ率上回る
トルコ中央銀行(以下、中銀)は、19日の金融政策委員会で、政策金利(1週間物レポ金利)を4.75%と大幅に引き上げ、15%としました。インフレ率の高止まりが、景気や通貨にマイナスの影響を与えることを懸念し、インフレ抑制に本腰を入れました。
7日にエルドアン大統領がウイサル前中銀総裁を更迭したことで、金融政策の行方に対する不透明感が高まりましたが、インフレ率を上回る水準まで利上げしたことで、市場には安心感が高まりました。10月のCPIは前年同月比+11.9%で、今回の利上げで政策金利がインフレ率を10ヵ月ぶりに上回りました(3%強)。トルコの景気は、7-9月期に大きくリバウンドしたと見られ、10月も景況感指標が改善しており、回復傾向が続いていると見られます。ただし、トルコでも10月以降新型コロナの感染拡大ペースが上昇し、11月4日に内務省が営業時間を制限するなどの措置を発表しており、景気回復ペースが鈍化するリスクが出てきています。
リラは急騰後も不透明感残る
トルコリラ(以下、リラ)相場は、11月に入って急上昇し、対円では10月末から9%強、円安・リラ高が進行しています。中銀総裁の更迭は、当初はエルドアン大統領の強権が顕在化したとして不安視されたと同時に、新総裁が思い切った金融政策を打ち出す期待も高まっていました。
経済外的な環境は依然厳しい状況です。外貨準備高は11月13日時点で年初来最少(前年末比-48%)となっています。また、東地中海でのガス田開発をめぐるEU(欧州連合)との対立、アゼルバイジャン共和国ナゴルノカラバフ自治州の紛争への介入(現在停戦中)といった地政学的リスクも、一時よりは沈静化したとはいえ、解決には程遠い状態です。これらはトルコの信任の足かせになると懸念されます。金融政策がひとまず「正常化」したことで、リラの下落リスクはひとまず後退したものの、不安定な状態は変わらないと見られます。
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