米国雇用統計(7月)について~当面の市場展望

2020/08/11
  1. 非農業部門雇用者数は前月比+176.3万人、失業率は10.2%と、厳しい環境の中で改善が続きました。
  2. 設備投資関連、企業向けサービス、余暇消費系個人向けサービス、公務員で雇用回復が鈍い状態です。
  3. 雇用環境改善が織り込まれる中、金融相場で株価は底堅く、ドルは余剰感でもみ合いが見込まれます。

業種でバラつきも全般的な底上げ続く

8月7日、米労働省発表の7月雇用統計(速報)では、非農業部門雇用者数(以下、雇用者数)が前月比+176.3万人、失業率は前月比-0.9の10.2%でした。3、4月の雇用者数の減少幅2216.0万人に対し、5~7月の増加幅は927.9万人となり、41.9%戻しました。依然として非常に厳しい雇用環境の中、リバウンドを伴う改善が続いています。

雇用の回復度合いは、引き続き業種で大きな差があります。「コロナ前」とされる2月の水準から雇用が増加している業種は生活必需品の小売(スーパー、ホームセンターなど)で、住宅建築、飲食店など衣食住に根差した業種も、雇用者数の落ち込み分の60~70%程度を戻しています。一方、遅れているのは金属、機械、電子製品といった設備投資関連、企業向けサービス全般、娯楽など余暇消費系の個人サービス、州・地方の公務員で、0~30%程度にとどまっています。

ソーシャル・ディスタンス維持の必要から、活動が制限される業種が残るため、雇用者数が「コロナ前」に戻るには時間を要するものの、今後も全般的な底上げが徐々に進むと見込まれます。

株式、為替共に金融相場の影響根強い

内容が事前の市場予想より良かったものの、リバウンドによる雇用環境改善は織り込まれており、市場の反応は限定的でした。米国株は、強力な金融緩和を背景に金融相場の様相が続き、目先は底堅いと見込まれます。

一方、ドル・円相場は、これまでのドルの大量供給が、リスク環境の改善で余剰感につながっており、雇用環境改善による景気回復期待との兼ね合いからもみ合いが予想されます。

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