南アフリカの金融政策(7月)~ランド相場の展望

2020/07/27 <>
  1. 政策金利は0.25%引き下げの3.5%でした。緊急事態宣言延長で景気見通しが下方修正されました。
  2. 景気回復が遅れる懸念から、財政の悪化が懸念されながらも、財政支出拡大が避けられない情勢です。
  3. 景気や地政学的リスクが懸念される一方、金などの貴金属相場の堅調さがランドに追い風となりそうです。

感染拡大加速で厳しい経済、財政運営

南アフリカ(南ア)準備銀行(以下、中銀)は、7月21-23日の金融政策委員会(MPC)で政策金利のレポ金利を0.25%引き下げ、3.5%としました。4月15日の緊急利下げを含め5会合連続の利下げです。年内は0.25%の追加利下げが想定されています。

政府は5月以降、緊急事態宣言に基づく行動規制の緩和を進めていました。ところが、6月以降、新型コロナウイルスの感染拡大が加速し、このところ、連日1万件を超す感染が新たに確認されている状況です。こうした事態を受け、7月12日には再び行動規制が強化され、緊急事態宣言も8月15日まで延長されました。中銀は、景気回復が遅れるとの見方から、今回の会合で発表した経済見通しで、2020-22年の実質GDP成長率を下方修正しました。

政府は5000億ランド(約3兆円、名目GDP比10%程度)の景気対策に続き、6月24日に補正予算案を発表しました。新型コロナウイルス関連の医療支出として215億ランド(約1300億円)を予定しています。財政の悪化が懸念されますが、景気、感染症対応として支出拡大が避けられない情勢です。

波乱含みも底堅い展開か

南アランド(以下、ランド)相場は、4月下旬の対ドルで19ランド、対円で5.6円を底に反発局面となっており、足元はそれぞれ16.6ランド、6.3円となっています。6月11日に世界的に株価が急落し、ランドも大幅に下落しましたが、その後は底堅い展開となっています。

背景として、世界的に経済活動再開が広がったことによる、市場のリスク選好が高まりもありますが、金価格上昇の影響も無視できません。6月上旬以降、金相場は堅調に推移し、本日、史上最高値を更新しました(1トロイオンス1930ドル台、これまでは2011年9月の1921ドル)。南アの2019年の金産出量は90トン、世界全体(3300トン)に対するシェアは2.7%(12位)ですが、主力のプラチナの価格上昇もあいまって、ランドには追い風です。景気先行き不透明感や、このところの米中対立の激化など地政学的リスクの拡大もあり、波乱含みではあるものの、底堅い展開が期待されます。ただし、最近は円高・ドル安傾向ということもあり、対円はその分頭を抑えられそうです。

※トロイオンス:貴金属や宝石の原石の軽量に用いられる単位、約31.1g

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