トルコの金融政策(5月)~当面のリラ相場展望

2020/05/25 <>
  1. 政策金利は0.5%引き下げの8.25%でした。コロナ禍による景気後退を受け、6ヵ月連続の利下げです。
  2. 対外収支は悪化しているものの、景気後退によるインフレ鈍化が見込まれ、今後も利下げ含みです。
  3. インフレ率対比で金利水準が低く、外貨繰り不安もあり、リラ相場は依然神経質な展開が見込まれます。

景気対策優先で利下げ

トルコ中央銀行(以下、中銀)は21日、金融政策委員会を開き、政策金利(1週間物レポ金利)を0.5%引き下げ、8.25%としました。昨年12月から6ヵ月連続の利下げです。3月中旬まで景気が回復していましたが、コロナ禍で一転厳しい景気後退に陥り、利下げが続けられました。インフレ圧力が後退したのに加え、経済に影響が大きい輸出産業、観光産業がコロナ禍で甚大な打撃を受け、資金調達コスト引き下げの必要が生じていました。中銀のスタンスは引き続き利下げ含みです。

4月CPIは前年同月比+10.9%と高止まりしているものの、中銀サーベイでは年末は+9.4%と低下が見込まれています。一方、対外収支は悪化しています。経済関係の深い欧州諸国の経済活動が停滞し、3月の輸出が前年同月比-17.8%と大幅に減少したのに加え、旅行収入が同-53.3%と急減したため、経常収支が-49億ドルの赤字に陥りました。対外収支の悪化は、新興国にとっては通貨安要因ですが、今回は企業支援のためにも利下げが選択されました。

依然厳しい投資環境

トルコリラ(以下、リラ)相場は、5月上旬に1ドル7.2リラ、1リラ15円割れまで下落した後やや持ち直し、現在はそれぞれ6.8リラ、16円弱となっています。欧州で経済活動再開が始まったこともあり、市場心理がやや改善しました。

ただし、政策金利は8.25%と高いものの、インフレ率を大きく下回り、金利面の魅力は減退しています。また、対外収支の悪化やこれまでのリラ下落防衛で外貨準備高の減少が著しく、外貨繰り不安が強まっています。利下げは景気対策として必要とはいえ、投資環境は依然厳しく、神経質な展開が続くと見込まれます。

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