メキシコの金融政策(12月)について

2019/12/20
  1. 政策金利は7.25%に引き下げでした。安定した物価環境から、低迷する景気への対応を優先しました。
  2. 中銀は最低賃金の大幅引き上げによるインフレリスクを警戒し、今後様子見する公算が拡大しています。
  3. ペソの金利面の投資妙味は引き続き高いものの、当面はAMLO政権の賃金政策の影響に要注意です。

左派的政策スタンスを警戒

メキシコ銀行(以下、中銀)は12月19日の定例理事会で、政策金利の翌日物金利を7.5%から7.25%に引き下げました。4会合連続の利下げで、累積の利下げ幅は1%となりました。採決では1名が7%への利下げを主張しました。

インフレ率は引き続き安定しています。11月CPIは総合が前年同月比+2.97%と約3年ぶりに+3%を割り込みました。また、これを受け、中銀は低迷する景気(7-9月期実質GDP成長率は前期比横ばい)への対応を優先させた形です。インフレ率と対比した政策金利の水準が高いことは変わらず、メキシコペソ(以下、ペソ)は金利面での投資妙味の高さは変わりません。

しかし、中銀は声明文の中で、AMLO政権が最低賃金の20%引き上げを承認し、インフレ圧力が再燃することを警戒しています。中銀はAMLO政権成立当初から、左派ポピュリズム的な政策を警戒しており、当面はその影響を見極めるために様子見する公算が拡大したと見られます。

※アンドレアス・マヌエル・ロペス・オブラドール(Andrés Manuel López Obrador)の頭文字を取った通称

スタグフレーションリスク

ペソ相場は最近は堅調です。米中通商交渉が進展する期待で、リスク選好の改善が相場を押し上げています。対円では1ペソ5.8円に近づき、約7ヵ月ぶりの高値となっています。

国際的な政治リスクの軽減で、ペソ相場は当面底堅い推移が期待されます。一方、最低賃金大幅増加によるインフレリスクへの警戒と同時に、労働コスト増大で企業が雇用を絞り、結局景気低迷が長引く「スタグフレーション(不況下の物価高)」リスクが懸念されることは、金利面から見たペソの投資妙味をそいでしまう可能性も否定できず、要注意です。

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