英国の2019年4-6月期GDPについて

2019/08/15
  1. 実質GDP成長率は前期比年率-0.8%でした。6年半ぶり、欧州債務危機以来のマイナス成長です。
  2. 消費は底堅かったものの、固定資本投資、在庫投資、輸出の減少が全体を足を引っ張りました。
  3. ポンド相場は「合意なきEU離脱」を織り込む水準まで下落し、通貨下落の景気刺激効果が期待されます

企業活動の委縮目立つ

8月9日、ONS(英国家統計局)が発表した2019年4-6月期の実質GDPは前期比年率-0.8%でした。前年同期比は+1.2%でした。1-3月期は景気が持ち直す兆しが見られましたが、6年半ぶり、欧州債務危機で景気が低迷した2012年後半以来のマイナス成長に落ち込みました。

実質GDPの前期比年率-0.8%に対する寄与度は、最終消費が+1.6%と、1-3月期の同+2.1%から低下したものの、底堅く推移しました。一方、固定資本投資が同-0.6%でした。また、在庫投資が同-13.7%、純輸出が同+12.0%(うち、輸出が同-3.5%、輸入が同+15.5%〔プラスは輸入減少〕)でした。 生産や輸入が抑えられ、在庫投資が減少したと見られます。固定資本投資は設備投資と住宅投資に分かれ、双方とも低迷したと見られますが、EU(欧州連合)からの合意なき離脱を警戒し、企業活動が委縮しているようすが見られます。

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ポンド安が進行しても、その後の反発余地も拡大

ポンド相場は、7月下旬以降下落傾向が強まり、2016年6月23日に英国民が国民投票でEU離脱を選択した後の安値水準となっています。次期首相に保守党の新党首となったボリス・ジョンソン氏が就任し、強行的なEU離脱派とされていることから、EUからの合意なき離脱の可能性が高まったとの見方が強まったためです。米中貿易摩擦の再燃で、市場のリスク回避指向が強まり、ポンド安に拍車が掛かった面もあると思われます。

2016年当時は、国民投票後にポンドが安値を付けた(2016年10月、1ポンド1.17ドル、124円)直後から景気が回復に転じ、世界同時的な景気拡大傾向にも乗った底堅い景気状況の下、ポンドは大きく上昇しました。今回は、世界的に景気減速リスクが根強く、ポンド安の景気刺激効果は当時ほどのものは期待しにくいと思われます。それでも、景気を下支えする効果はあると見られ、仮に過度なポンド安局面があったとしても、そこからの反発余地はその分大きくなると考えます。

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