ブラジルの金融政策(7月)~政策スタンスとレアル相場の展望
- 政策金利は6%に引き下げられました。低インフレと構造改革の進展で利下げ条件がそろいました。
- 年内に追加利下げを実施する公算大です。インフレ率は徐々に上昇も、低位を維持すると見込まれます。
- 構造改革の進展は潜在的な成長力を押し上げ、レアルの価値の安定化に寄与すると期待されます。
利下げの条件そろう
ブラジル中央銀行(以下、中銀)は7月30-31日のCopom※で、政策金利のSELIC◇金利を6.5%から6%に引き下げました(全会一致)。2018年3月の利下げ以降、据え置きが続きましたが、低インフレが続いていること、ボルソナロ政権下で構造改革が進展する可能性が高まったことが背景にあります。中銀は年末の政策金利の想定を5.5%としており、追加利下げの公算大です。
6月のCPIは前年同月比+3.37%と、インフレ目標の中心(+4.25%)を大きく割り込みました。トラック業界ストの影響で一時上昇した2018年6月以降の流れが一巡しました。また、コアは同+3.65%と徐々に上昇しているものの、こちらも低位です。一方、中銀が利下げの条件としていた構造改革の進展も前進しています。年金改革法案が下院で1回目の採決を通過し(同法案は憲法改正を伴うため5分の3の賛成票を2回得る必要があります)、8月6日に予定される2回目の採決も通過する可能性が高まっています。構造改革の進展がインフレ体質を改善し、利下げ余地を拡大させるというものでした。
※Copom(Comitê de Política Monetária):金融政策委員会 ◇SELIC(Sistema Especial de Liquidação e Custódia):決済・預託特別システム
低インフレ・安定成長の期待高まる
レアル相場は対ドル、対円共に底堅い展開です。中銀が利下げに踏み切ったことはレアル安要因ですが、それ以上に利下げによる景気刺激効果や、構造改革の進展による経済構造の改善への期待の高まりが好感されていると見られます。
ブラジルの潜在的な成長力は+1.5%程度と低水準にあると見られています。しかし上記のとおり、構造改革が進展すれば、インフレ体質の改善を通じて潜在的な成長力が押し上げられ、利下げの余地や景気刺激効果がその分大きくなることが期待されます。これは、レアル高要因であると同時に、新興国の特徴でもある通貨価値の不安定さを改善することにもつながると考えられます。
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