なおも燻るギリシャ懸念

今週の日経平均は一段高でスタートし、足元では節目の18,500円を上抜けてきました。2000年4月以来の高値水準をつけているわけですが、年金や日銀による需給の支えをはじめ、国内企業の業績期待や株主還元策などを背景にした日本株の先高感、また、懸念されていたギリシャへの金融支援がひとまず延長で合意されるなど、海外の不安材料が後退したことも株価を押し上げている印象です。

そのギリシャですが、2009年10月にパパンドレウ政権が誕生した際に、「すみません、ウチの財政赤字の規模は、対GDP比で3.7%ではなく、実際には12.5%でした。」と発表して以来、事ある毎に危機が囁かれ、市場の不安材料になってきました。今回についても、目先の危機は回避されたものの、懸念は依然として燻っていると見る向きが多いですし、そう考えるのが自然と思われます。

今回のドタバタのいきさつですが、ギリシャは「トロイカ(3頭立ての馬車)」と呼ばれる、欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)の3者から金融支援を受ける代わりに、財政再建への取り組みが課されてきました。2012年11月の支援決定の際に設定された目標では、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化を進め、債務残高の対GDP比率を2022年までに現在の175%から110%以下にすることになっています。

目標達成のため、ギリシャは緊縮財政を推し進めてきましたが、これがギリシャ国民にとって大きな負担となる一方、ギリシャ政権やトロイカに対する不満も蓄積されてきました。また、トロイカから支援を受ける期限も2月末に迫っていました。ギリシャはまだまだ支援なしではやっていけない状態ですが、当初、トロイカは「今まで通り、緊縮財政に励んでくれれば、支援は延長するよ」という姿勢でした。

そんな中、「緊縮財政策の撤廃」、「債務の再編」という公約を掲げ、1月末の選挙でSYRIZA(シリザ)という急進左派政党を中心とする政権が誕生しました。そして、新政権は現行の条件による支援の延長を拒否し、新しい支援条件の交渉をトロイカ側に求めてきました。トロイカ側は「現行の条件じゃないと支援しないよ」という姿勢を崩さず、これによって、2月末という期限が迫る中、ギリシャの債務不履行やユーロ離脱のリスクがにわかに高まったわけです。

結局はギリシャ新政権の抵抗もむなしく、トロイカ側の条件をほぼ呑まされる格好で、6月末までの4カ月間、支援の延長が合意されました。ギリシャは財政再建に向けた改革案リストを24日に作成・提出し、これがトロイカ側で承認されれば、ユーロ圏各国議会の可決を経て支援の延長に目処がつきます。

もともと、ギリシャ新政権の主張は「財政緊縮策は撤廃、でもユーロ圏には残るよ」という、ちょっと都合の良いものでしたが、これらを公約に掲げて政権を獲得した以上、今回の合意受け入れは、ギリシャ国民に対して公約を守れなかったことになり、今後の政権運営や財政再建策の実行に支障が出る可能性があります。さらに、今回の支援期限後となる7月以降、70~80億ユーロ規模のギリシャ国債の償還が予定されているため、支援期間の再延長の交渉がはじまることが予想されます。影響の大きさの議論はさておき、何だかんだでギリシャが懸念材料として意識される状況はしばらく続くことになりそうです。

 

 

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