アバント(3836)顧客資産の活用
日本国内の大手上場企業を主要な顧客とした連結経営及び連結会計パッケージソフト(DivaSystem)の開発・販売及び関連サービスの提供を中核業務とするアバントの業績が好調に推移している。直近の業績動向においては、DivaSystemのライセンス販売が上向いていることに加えて、連結決算業務や連結納税業務などを請け負うアウトソーシング・サービスの提供に対する需要が強含んでいる。現状に至る経緯において、同社のDivaSystemは、非上場企業を含めて総計900社近くにおいて採用されてきたのだが、採用の当初においてパッケージソフトのライセンス販売及びコンサルティングなどに起因するフロー収益が発生することに加えて、保守・メンテナンス及びバージョンアップなどに起因するストック収益が持続的に発生する。これに鑑みれば、同社は、安定的に収益を発生する顧客資産を有していると考えられよう。また、この顧客資産をより効率的に活用することを可能とならしめているのが、上述の連結決算業務や連結納税業務などを請け負うアウトソーシング・サービスの提供への関与である。同社のDivaSystemを採用した顧客数を母数とした場合、現状、このアウトソーシング・サービスの提供を採用した顧客数は限定的に留まっている。ただし、中長期的にも採用顧客数が持続的に増加していく一方、請け負う業務の範囲が拡大していく方向性にあるとのことである。これも一つの成長ドライバーとして織り込まれている同社の中期経営計画においては、2016年6月期から2018年6月期に向けて、年間平均成長率(CAGR)で、9.6%増収、19.1%増益が見込まれている。
2016年6月期第2四半期累計期間は、売上高4,564百万円(前年同期比8.8%増)、営業利益422百万円(5.4%増)、営業利益率9.3%(0.3%ポイント低下)での着地となった。IFRS(国際財務報告基準)やグループガバナンスの高度化に関連する顧客からの需要の高まりを受けて、DivaSystemのライセンス販売及び関連サービスの売上高が前年同期に対して増加した。更には、売上高の規模は小さいものの、連結決算業務や連結納税業務などを請け負うアウトソーシング・サービスの提供に起因する売上高が大幅に増加した。即ち、DivaSystemに関連して、顧客の新規開拓及び顧客資産の活用が順調に進捗したと考えられる。一方、DivaSystemに関連しない分野においては、過去のSIサービスにおける不採算案件に係る追加的な費用が発生し、これが受注損失引当金(原価の一部)として計上された。ただし、その影響は限定的に留まった。同社としては、売上総利益1,989百万円(10.2%増)、売上総利益率43.6%(0.5%ポイント上昇)である。また、販売管理費1,567百万円(11.5%増)、販管費売上高比率34.3%(0.8%ポイント上昇)での着地となったため、営業利益率が前年同期に対して漸減した。ここでは、DivaSystemのライセンス販売及び関連サービスを担う中核事業会社(100%子会社)である株式会社ディーバの利益が上振れたことから、業績連動部分がある賞与に関して、引当金が一部前倒しで計上されたことが大きな影響を及ぼした。ただし、あくまでも前倒しされた側面が大きく、下半期に向けてはこれが一巡する。
2016年6月期に対する当初の会社予想は据え置かれている。売上高9,600百万円(前年比7.5%増)、営業利益935百万円(16.1%増)、営業利益率9.7%(0.7%ポイント上昇)の見通しである。一方、年間配当金予定22.0円(配当性向18.1%)も据え置かれている。進捗率に単純に鑑みた場合、第2四半期累計期間の業績動向は、通期の会社予想の前提に対してやや下振れた推移であったと考えられる。一つには、上述の通りの費用の前倒し計上によるところがある一方、受注損失引当金の計上は、会社予想に全く織り込まれていなかったものである。更には、これを発生させたSIサービスの分野を担う事業会社(100%子会社)においては、この問題を完全に解決するためにすべてのリソースが集中されており、新規受注が滞っている。この結果、ここでの売上高が当初の想定に対して下振れることが不可避とのことである。営業利益段階では、DivaSystemのライセンス販売及び関連サービスの上振れが、これを補う方向性が示唆されているものの、当該事業会社で想定外に発生する損失によって、連結納税制度を導入していない同社においては、実効税率が当初の想定以上に高くなり純利益が下振れる可能性がある。