ベストワンドットコム<6577> クルーズ市場の裾野の拡大の恩恵を享受する局面を迎えつつある

2018/05/07

個人のクルーズ旅行に特化したオンライン旅行会社
クルーズ市場の裾野の拡大の恩恵を享受する局面を迎えつつある

業種: サービス業
アナリスト: 藤野 敬太

◆ 個人顧客対象のクルーズ旅行に特化したオンライン旅行会社
ベストワンドットコム(以下、同社)は、主に個人顧客を対象としたクルーズ旅 行に特化したオンライン旅行会社である。

現在、同社が運営するウェブサイトは、主力の「ベストワンクルーズ」のほか、 ハネムーンを検討しているカップル向けの「フネムーン」、高級船専門で子 会社が運営する「ファイブスタークルーズ」の 3 サイトである。

◆ カジュアルなクルーズ商品に強み
クルーズ旅行に参加しようとすると、他の旅行会社では、パッケージツアー (募集型企画旅行)が主体となる。パッケージツアーは既製品のようなもので あり、個人の嗜好に対応したカスタマイズが難しく、また、添乗員同行等が 含まれることが多く、高額になりやすい。

一方、同社の場合、パッケージツアーの取り扱いもあるが、中心となるのはク ルーズ・チケットの販売(手配旅行)である。そのため、低価格のものから高 価格のものまで、また、短期間のものから長期間のものまで、多様なニーズ への対応が可能となっている。結果として、クルーズ旅行の機会を比較的安 価な価格帯でカジュアルに提供することが可能になっており、クルーズ旅行 人口の裾野の拡大に寄与している。

裾野拡大に寄与していることは、顧客の年齢分布にも表れている。クルーズ 旅行は時間とお金に余裕がないとできないというイメージが強いが、実際に 日本のクルーズ旅行者全体では、60 歳以上の参加者は 56.5%を占めてい る。一方、同社の顧客のうち、60 歳以上の参加者は 36.5%に留まっており、 全体と比べて顧客層が若い。

カジュアルなクルーズ旅行が多いということは、顧客にとっての選択肢が多 いことを意味しており、その分、商品数も豊富となる。18年2月末時点で、同 社は国内外の船会社 61 社と契約し、17,101 コースが同社のウェブサイトに 掲載されている。他社は多いところでも同社の 1/5 程度の掲載数であると推 察されることから、商品数の多さは圧倒的だと考えられる。

同社の事業は、旅行業の単一セグメントで、サービス区分等の分類の開示 はない。同社の場合、取扱高が売上高として計上され、仕入高は原価に計 上される。基本的には、取扱量の増加が成長の原動力となろう。

◆ インターネット販売に特化
販売チャネルはインターネット販売に特化している。このことで以下のメリット を享受している。

(1) 実店舗を構えないことによる固定費の抑制
(2) 24 時間対応のオンライン予約による顧客需要への対応

同社では、ウェブサイトの構築やウェブマーケティングを内製化しており、集 客や顧客のリピーター化のノウハウや知見を社内に蓄積している。同時に、 24 時間対応の専門オペレーターを常時設置することで、接客力を上げ、成 約率の向上につなげている。すなわち、ネットとリアルの両面で顧客満足度 を上げる体制になっている。

◆ 船会社との関係
24 時間対応のオンライン予約を可能としているのと同じくらい特徴的なのは、 船会社とのAPI連携注である。18年2月末時点で同社のウェブサイトに掲載 されている17,101コースのうち、API連携によって提供されているコースは9 社 3,709 コースとなっている。

また、カジュアルなクルーズ旅行が多いことは、同社と船会社との力関係に も影響している。一般的に、ラグジュアリーに分類される船でのクルーズ旅 行は人気が高く、すぐに売り切れる。そのため、船会社からすると、旅行会 社に販売してもらうインセンティブは低く、その分、旅行会社に払われる手 数料率は低い。一方、ラグジュアリーに分類されない船でのクルーズ旅行は 旅行会社に販売してほしいと考えることが多く、その分、手数料率は高い。 従って、カジュアルなクルーズ旅行の取り扱いが多いほど、旅行会社にとっ て利益率が高くなる傾向にある。同社の場合、販売量が増えるほど仕入時 の価格交渉力が強まる構図になるため、増収が利益率改善につながりやす い傾向にあると言えよう。
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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。