NE(441A)機能拡充、顧客獲得投資による新規顧客拡大と顧客単価引き上げで成長目指す

2025/11/07

EC事業者向けに受注管理、在庫管理等を自動化・一元化するサービスを提供
機能拡充、顧客獲得投資による新規顧客拡大と顧客単価引き上げで成長目指す

業種:情報・通信業
アナリスト:鎌田良彦

◆ EC事業者に受注管理、在庫管理等の自動化・一元化サービスを提供
NE(以下、同社)は、インターネット通販を行うEC事業者向けに、受注処理、出荷業務、在庫管理等を自動化し、複数のECモール等へ出店している店舗の受注や在庫等の一元管理を行うクラウドサービス「ネクストエンジン」の提供を主力事業としている。また、地方自治体向のふるさと納税支援サービス、伝統工芸品のEC 販売、EC事業者向けのコンサルティング等を行っている。

同社は、スマートフォンアクセサリーやコスメティクス等を、主にZ世代注1向けにインターネットで販売するHamee(3134東証スタンダード)のプラットフォーム事業を承継することを目的に、Hameeの100%子会社として22年5月に設立された。今回、Hameeが保有する同社の株式をHamee株主に現物配当するスピンオフにより上場した。

スピンオフの背景には、小売事業とシステムの運営事業という異なる事業を同じ企業内で行うよりも、それぞれ別の会社として人材の採用や処遇、投資の意思決定を行う方が、株主価値の向上につながるとの考えがあった。

同社の事業セグメントは、ネクストエンジン事業、ふるさと納税支援サービスと伝統工芸品のEC販売を行うロカルコ事業、コンサルティング事業からなる。25/4期の売上高構成比は、ネクストエンジン事業が75.7%、ロカルコ事業が14.8%、コンサルティング事業が9.5%であった(図表1)。

◆ ネクストエンジン事業
ネクストエンジンは、EC事業者の、注文の受付から、常に最新の在庫数を把握するための在庫連携、出荷業務までの一連の処理を自動化するシステムである。特に自社サイトや、楽天市場、Amazon等のECモールへの出店等、複数の店舗運営を行っているEC事業者に対して、各店舗の注文を一括管理したり、各店舗での在庫を同期させたりする機能があり、複数店舗を持つEC事業者から支持されている。ネクストエンジンは25/4期末で6,570社、53,602店が利用しており、25/4期の利用店舗の取引総額は1兆1,879億円であった。

ネクストエンジンのサービスは、メイン機能(標準機能)とアプリケーション(拡張機能、以下、アプリ)、及びネクストエンジンオーダーメイド(以下、オーダーメイド)から成る。

メイン機能は標準的な機能がワンパッケージで搭載されており、アプリは、POS機能との連携や、売上情報の分析等、企業毎の店舗管理や運営に合わせるためのオプションである。オーダーメイドは顧客の基幹システムとの連携等、顧客毎に受託開発されたアプリである。

アプリには、同社が開発したものと、パートナー企業が開発したものがあり、月額の定額課金が多い。パートナー企業開発のアプリについては、同社は月額課金の一定割合を手数料として得ている。

ネクストエンジンの利用料金は店舗単位ではなくEC事業者単位の課金となっている。メイン機能の料金は、月額基本料金と毎月の処理件数に基づく従量課金の組み合わせとなっている。基本料金は月額3,000円(税抜、以下同様)で月間200件までの処理件数が含まれている。それ以上は月間受注件数に応じた段階制プランとなっている(図表2)。この他、契約2年目以降は、前年の利用に関する年間保守費用15,000円がかかる。

25/4期のネクストエンジンのARPU注2(メイン機能料金、アプリ売上、オーダーメイド売上等のネクストエンジン関連の月次売上高を月末契約社数で除した数値)の年度平均は、38,363円であった。

23年6月に小規模EC事業者の取り込みを目指して、新規顧客の月額基本料金を10,000円から3,000円に引き下げた一方で、従量課金の課金単価を引き上げた。23年11月からは、既存顧客に対しても新料金を適用したため、ネクストエンジンの収益性は向上した。

◆ ロカルコ事業
ロカルコ事業では、地方自治体向けのふるさと納税支援サービスと、伝統工芸品の自社サイトやモール店舗でのEC販売の2つの事業を行っている。

1)ふるさと納税支援サービス
ふるさと納税支援サービスでは、地方自治体からふるさと納税の業務を受託し、地方自治体への寄附金額に連動した収益を得ている。同社はネクストエンジンをカスタマイズし、さとふる等の複数のふるさと納税サイトからの寄附受付から、返礼品の在庫確認出荷指示等の一元管理を行う他、SEO注3対策支援やメールマガジン運用支援等を行っている。返礼品の発送手配やふるさと納税ページの更新、コールセンター業務等は、外部の事業者に委託している。

2)伝統工芸品のEC販売
24年4月にリアルジャパンプロジェクト(東京都渋谷区)から、日本の伝統工芸品の国内EC事業(リテール事業)を譲受したことから開始した業務である。日本全国の伝統工芸品を製作する職人等から商品を仕入れ、自社サイトや楽天市場、Amazon等のECモール店舗での販売を行っている。

コンサルティング事業
コンサルティング事業では、EC事業者の売上高拡大に結びつく業務改善コンサルティングや、ネクストエンジンを使ったEC運営代行サービス、広告運営代行サービス等を提供している。業務改善コンサルティングについては、主に自社のコンサルタントが対応し、EC運営代行サービス等は外部のパートナーに委託している。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。