アスア(246A)他社と差別化した事業領域において、人手不足を追い風に成長を目指す

2024/10/02

物流業界に特化し、ドライバーの安全運転に資するサービスを提供
他社と差別化した事業領域において、人手不足を追い風に成長を目指す

業種:サービス業
アナリスト:吉林拓馬

◆ 物流企業に対して安全教育のアウトソーシングサービスを提供
アスア(以下、同社)は、物流事業者に特化し、主にトラックドライバーの安全運転に関する教育を代行・支援するサービスを提供している。

同社は、1998年に商用車の燃費改善製品の販売を開始したことを契機として物流業界向け事業に参入した。その後、エコドライブに関する教育の実施有無が燃費改善だけでなく、交通事故の低減にも効果があるという実証研究結果を得られたことから、現在では物流事業者の安全活動(安全運転に資する活動)全般を支援するサービスを展開している。

同社の事業セグメントは、物流事業の安全活動を継続的にサポートする「コンサルティング事業」、メッセージ配信サービスにより安全活動につながるエコドライブを支援する「CRMイノベーション事業」、一般企業のビジネスフォンや通信ネットワーク機器の販売・工事・保守を行う「通信ネットワークソリューション事業」の3つで構成されている。

直近期である24/6期のセグメント別売上高構成比は、主事業であるコンサルティング事業が51.6%と過半を占めており、CRMイノベーション事業は23.3%、通信ネットワークソリューション事業は25.1%であった。

(1)コンサルティング事業
物流業界に特化し、安全活動をサポートするコンサルティングサービス「TRYES(トライエス)プログラム」を展開している。「TRYES」とは同社による造語で、従業員全員が意欲的に「TRY(トライ)」することができる仕組みづくりと「YES(イエス)」と共感できる組織づくりを目的とするという意味である。

物流業界では、働き方改革及び物流関連法の改正に伴い、多重下請け構造、荷待ち、荷役時間、積載効率等の改善や物流のカーボンニュートラルの実現などが求められるようになり、運行管理者の業務が急増している。このため、安全活動まで手が回らないという状況にあるため、安全活動をアウトソースする動きが拡大していると見られる。

TRYESプログラムは、1)TRYESサポート、2)TRYESレポートの2つのサービスで構成されており、両サービス合計の契約社数は、24/6期末で1,286社に達している(図表1)。

各サービスの詳細は以下の通りである。

1)TRYESサポート
TRYES サポートは物流事業者向けの対面型コンサルティングサービスで、同社のコンサルタントを物流事業者の現場に派遣し、これまで蓄積してきた燃費データ及び交通事故データなどを活用しながら、効率的な安全活動支援を提供している。また、ドライバーに対しては1人1人に対してアプローチすることができるように少人数を対象に指導を行っている。

2)TRYESレポート
同サービスは物流事業者の安全活動を支援する定額クラウドサービスであり、同社独自の教育コンテンツを提供する。法令に沿った「法定12項目注1」の教育資料の提供をはじめ、ドライバーが継続して実践することができる教材を提供している。

いずれも月額課金のストック型サービスであり、最初はTRYESレポートを契約してクラウドサービスを導入してもらい、その後より付加価値の高いコンサルティングサービスであるTRYESサポートへアップセルすることにより、1社当たりの販売高の拡大を図るのが同社の戦略である。

(2)CRMイノベーション事業
コンサルティング事業で行っている安全活動のデータベース、及び同社が協業している自動車メーカーの「コネクティッドカー」から得られる走行データ等を活用し、各ドライバーに対して運転後にフィードバックのメッセージを送信するサービスを提供している。

車両の走行データ及び運転行動データを収集・解析し、各ドライバーの行動に即したメッセージを作成する独自システム「ASUA Knowledge Messaging System」により、ドライバーの安全に対して行動変容を促すものである。

(3)通信ネットワークソリューション事業
東海地区の一般企業約3,000社に対し、ビジネスフォン、複合機、サーバー、ネットワーク機器などの企業向け通信・OA機器の販売・工事・保守、及びコスト削減などのコンサルティングを行なっており、創業当初からの事業である。

事務所の拡張、レイアウト変更、移転、出店などのスポット的な対応から総合的な保守サービスまで、最適な通信ネットワーク環境の構築を支援している。販売の90%はリプレースのため、安定的・継続的な事業となっている。

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