オプロ(228A)クラウドサービスにおける長年の経験やノウハウに特徴がある

2024/08/23

請求書等の帳票に関する業務等をデジタル化するクラウドサービス等を提供
クラウドサービスにおける長年の経験やノウハウに特徴がある

業種:情報・通信業
アナリスト:大間知淳

◆ 帳票に関する業務等をデジタル化するクラウドサービス等を提供
オプロ(以下、同社)は、請求書等の帳票に関する業務や、金融機関の窓口対応業務、行政機関の申請対応業務等をデジタル化するデータオプティマイズソリューションと、サブスクリプション・ビジネスを行う企業のバックオフィス業務等を支援するセールスマネジメントソリューションをクラウドサービス等で提供している。

同社はクラウドサービス事業の単一セグメントであるが、売上高をクラウド売上、製品売上、製品保守売上、その他売上に区分している。データオプティマイズソリューション及びセールスマネジメントソリューションの売上高はクラウド売上に含まれている。製品売上は、クラウドサービスの提供開始以前から販売しているオンプレミス製品の売上高であり、製品保守売上はオンプレミス製品に関わる保守売上である。23/11期における製品・サービス別売上高比率は、クラウド売上94.3%、製品売上0.5%、製品保守売上4.0%、その他売上1.1%であった(図表1)。

23/11期におけるクラウド売上のソリューション別比率は、データオプティマイズソリューション74.7%、セールスマネジメントソリューション25.3%であった。

同社は、様々な他社SaaSと連携したクラウドサービスとして、データオプティマイズソリューション及びセールスマネジメントソリューションを提供している。同社売上高の約9割は、世界で15万社以上の顧客を持つSalesforce, Inc.(以下、Salesforce社)とその日本法人であるセールスフォース・ジャパンが提供するクラウドサービスと連携して提供されている。

Salesforce社の提供するサービスは、顧客情報の管理・共有、営業活動の分析・可視化、営業プロセスの自動化等の機能(SFA注1、CRM注2)を有しているだけでなく、同社のような外部サービスとの連携が可能であり、同社が顧客から選ばれる理由の一つとなっている。同社は、Salesforce社が提供するクラウド型CRMサービスと密に連携したサービスを提供していることを強みとしている。

◆ データオプティマイズソリューション
データオプティマイズソリューションは、企業が持つ取引情報や人事情報等の帳票データや、金融機関、行政機関、組織が持つ様々な情報を処理・整理するサービスを提供している。同社のデータオプティマイズソリューションの活用により、組織内に分散している商談や従業員等に関する情報をデータ層から取り出して、必要な情報を帳票として出力したり、データ比較表等の最適な形式に加工したりすることが可能となっている。

顧客は、同社サービスの利用により、紙を利用することが主体となっていた業務をデジタル化して、データ層への情報集約を効率化することができるため、業務の生産性の向上が期待できる。

データオプティマイズソリューションは、商談や従業員の情報等をデータ層から取り出して、必要な情報を帳票出力や比較表等の最適な形式に加工する「出力(OUTPUT)サービス」と、紙を主体とする業務をデジタル化し、データ層への情報集約を効率化する「入力(INPUT)サービス」に大別される。

<出力(OUTPUT)サービスの主力サービス>
① クラウド帳票DXサービス「帳票DX」
帳票DXは、22年5月に同社が提供を開始した、Salesforceを始めとした様々なシステム・サービスから電子帳票を出力するクラウド型の帳票作成ツールである。帳票作成ツールとは、顧客が自社のニーズに応じて、電子帳票の雛形となる帳票テンプレートを設計した後、データベースから帳票に表示するデータを引用して、業務の要件に合わせた
様々なフォーマット(PDF出力、Excel出力、プリンター印刷、メール送信等)で保存や出力を行うツールである。

帳票DXでは、請求書や契約書等の取引関係書類からダイレクトメールのような大容量サイズのファイルまでに対応した帳票生成エンジンと、AIによる自動認識機能を搭載した帳票デザインツールを顧客に提供している。

帳票DXの特徴としては、電子署名や取引先へのメール配信、ストレージ保管等の帳票作成周辺業務を省力化・自動化する外部サービス連携機能を有していることや、ドローソフト注3の様な操作感で帳票テンプレートを顧客が設計できること、データセンターの多重運用により、安定して利用できるサービスとなっていること等が挙げられる。

② クラウド帳票サービス「oproarts(オプロアーツ)」
oproartsは帳票DXの前世代クラウドサービスである。元々、帳票作成ツールはオンプレミスの自社運用が主流であったが、同社は、クラウドサービスの普及を見据えて、07年10月にoproartの提供を開始した。

oproartsは、顧客が帳票テンプレートを自由に設計できることや、電子契約、インターネットFax等の外部サービスとの連携が可能であること等が顧客に評価され、採用実績は1,000社以上に達している。現時点では、同社は新規顧客には原則として帳票DXを販売しているが、既存客向けにサービス提供を継続している。

<入力(INPUT)サービスの主力サービス>
③ 金融/行政機関向け電子申請サービス「カミレス」
カミレスは、金融機関や行政機関における顧客・利用者からの申請や窓口対応業務、金融機関や行政機関の職員が行う紙主体の業務台帳業務を迅速にデジタル化するクラウドサービスである。各種サービスの利用者の「申請」から、各機関内部における「承認」「共有」等の内部手続き等の業務ワークフローをスムーズに電子化することで、窓口業務の大幅な削減が可能となっている。

直感的で操作しやすいUI注4を提供しているため、各種サービス利用者は、画面上書類を見ながら、紙に記入するように項目に入力していくだけでデータ登録することができ、紙に記入するイメージそのままにオンライン申請することが可能となっている。また、帳票DXと併用することで、書面の交付業務等の効率化も期待でき、労働時間の削減やリモートワークの実施等、働き方改革に貢献するサービスとなっている。

④ 現場帳票DXサービス「帳票DXモバイルエントリー」
帳票DXモバイルエントリーは、専用モバイルアプリからSalesforce等のシステムに、インターネット接続がないオフライン環境下でもデータ入力ができるツールである(端末に一時的に保存されたデータは、インターネットに接続後、Salesforce環境へアップロードされる)。これまでは紙の帳票で行われていた店舗等での契約・申込み業務や、工場や個人宅等の設備の点検・報告等をサービス利用者はモバイルアプリ上で行うことができる。

タブレットやスマートフォン、PCによる通常のキー入力に加え、手書きや音声による入力にも対応しているほか、作業現場を写真撮影して報告することや、顧客サインを残すことも可能となっている。従来、現場作業後にオフィスに戻って行っていたデータ転記や報告書作成等のアナログ作業や重複していた事務作業を削減できるため、帳票DXモバイルエントリーもサービス利用者の働き方を改革するツールとなっている。

データオプティマイズソリューションのサービス別売上高は、大きい順にoproarts、カミレス、帳票DX、帳票DXモバイルエントリーとなっている模様である。中でも、07年に提供を開始したoproartsの売上高が同ソリューション売上高の過半を占める主力サービスとなっている。

データオプティマイズソリューションは、契約月額利用料等を受領するストック型のビジネスモデルとなっている。収益は、月額固定料金である「ランニング利用料」、サービス導入時に発生する作業の対価である「初期費用」、顧客ニーズに応じた特別なサポート対応等の対価である「プロフェショナルサービス」、「その他」に分類される。

データオプティマイズソリューションのKPIであるユーザー(契約数)及び契約ARR注5の推移は以下の通りである。

◆ セールスマネジメントソリューション
セールスマネジメントソリューションは、経営や事業の目標を達成するために必要な営業・販売に関する様々な情報を一元管理し、業務プロセスを支援するサービスである。同社は黎明期であった07年からサブスクリプション・ビジネス(以下、サブスクビジネス)に参入しており、そのノウハウをサービスの機能として実現し、B2Bサブスクビジネスの管理に強みを持つ販売管理サービスを16年から提供している。サービスに搭載している機能としては、売上按分化、アップセル・クロスセルの契約管理、サブスクビジネス特有のKPI管理・分析等が挙げられる。

セールスマネジメントソリューションでは主に以下のサービスを提供している。

① サブスクリプション管理サービス「ソアスク」
ソアスクは、LTV注6の最大化が鍵となるサブスクビジネスの管理に強みを持つ販売管理サービスである。見積作成、契約管理、売上管理、請求等のバックオフィス業務をサポートする機能を中心に、案件の活動管理や契約・売上状況の可視化等のサブスク管理に必要な要素を統合したサービスを提供している。

ソアスクは、Salesforceのプラットフォーム上に同社が独自開発したアプリケーションをセットして提供されているため、顧客がSales Cloud注7を利用している場合は、取引先や商談の情報連携が可能となっている。

② 「モノ」のサブスクリプション管理サービス「モノスク」
モノスクは、有形商材を扱うサブスクビジネスに対応したサブスク管理サービスであり、Salesforceのプラットフォーム上で稼働している。ソアスクで提供している販売業務を管理する基本機能に加え、仕入、在庫管理等の「モノ」のサブスクビジネス特有の商品に関する物品管理機能、設置場所情報の管理機能、サポート・保守情報等の作業管理機能等を備え、情報を一元管理することが可能となっている。

セールスマネジメントソリューションのサービス別売上高では、19年6月に提供を開始したソアスクが大部分を占めている。23年4月に提供を開始したモノスクの売上高はまだ少ない模様である。

セールスマネジメントソリューションも、契約月額利用料等を受領するストック型のビジネスモデルとなっている。収益は、ID課金による月額固定料金である「ランニング利用料」、サービス導入時に発生する作業の対価である「初期費用」、顧客ニーズに応じた特別なサポート対応等の対価である「プロフェショナルサービス」に分類される。

セールスマネジメントソリューションのKPIであるユーザー(契約数)及び契約ARRの推移は以下の通りである。

◆ 高い限界利益率や健全な財務体質に特徴がある
同社の売上原価は、開発部門の労務費、経費(地代家賃、ソフトウエアの減価償却費等)、外注費(データセンター利用料、Salesforceプラットフォーム使用料)を合計した当期総製造費用から他勘定振替高(ソフトウエア仮勘定として資産計上)を控除して算出される。23/11期において、各項目の売上高に対する比率は、労務費20.9%、経費5.1%、外注費27.7%、他勘定振替高3.2%であった。結果、売上総利益率は49.5%であった。

一方、23/11期の販売費及び一般管理費(以下、販管費)は689百万円、販管費率は42.6%であった。内訳としては、給与手当が214百万円(売上比13.3%)、役員報酬が89百万円(同5.5%)、賞与引当金繰入額が20百万円(同1.3%)、減価償却費が9百万円(同0.6%)であり、固定費が中心と推測される。

22/11期の営業利益率は、10.3%と良好な水準であった。23/11期は、本社移転に伴う地代家賃の増加や、人員増に伴う人件費の増加等により、6.9%に低下したが、24/11期第2四半期累計期間(以下、上期)においては、好調な売上高を背景に固定費負担が軽減したため、営業利益率は15.6%へと急上昇している。同社の費用のうち、変動費に該当するものは外注費程度しか見当たらず、限界利益率は7割程度と推測される。

23/11期末の自己資本比率は14.3%にとどまるが、有利子負債はなく、財務体質は健全である。負債の中心は、負債純資産合計の59.9%を占める契約負債(656百万円)である。契約負債の多くは、原則として1年契約であるクラウドサービスのランニング利用料を1年分前払いで受け取ったものである。

資産サイドを見ると、23/11期末において、現金及び預金が626百万円と、総資産の57.1%を占めている。その他の資産の中では、前払費用(135百万円、セールスフォース・ジャパン向け外注費等)や、敷金及び保証金(95百万円)、無形固定資産(67百万円、ソフトウエア等)の金額が比較的大きいが、有形固定資産等の設備投資の負担は重くない。

◆ ARR、ARR成長率、解約率、ストック売上等を重視している
同社は、KPIとして、期末ARR、ARR成長率、解約率(前月末ARRにおける当月の解約ARRの比率を過去12カ月で平均した値)、ストック売上、ストック売上比率を挙げている。KPIの推移は図表4の通りである。

ストック売上は、総売上のうち、クラウド売上のランニング利用料や製品保守売上等、将来的に継続する可能性が高い売上高で構成されている。ARR成長率が23/11期から高まっているのは、契約数の増加に加え、大型案件の契約が寄与したためである。

◆ 特定の顧客には依存していない
同社は、直販に加え、販売代理店や導入パートナーを通じてもエンドユーザーにサービスを提供しているが、クラウドサービスの特性上、継続的に売上高の10%以上を占めるような主要顧客は見当たらない。主要な販売代理店や導入パートナーとしては、みずほフィナンシャルグループ(8411東証プライム)傘下のみずほリサーチ&テクノロジーズや、シャノン(3976東証グロース)、ユニファイド・サービス(東京都港区)、ウフル(東京都港区)等が挙げられる。

主要なエンドユーザーとしては、データオプティマイズソリューションでは、プロトコーポレーション(4298東証プライム)や、JTB(東京都品川区)、SBIリーシングサービス(5834東証グロース)、セールスマネジメントソリューションでは、ティーケーピー(3479東証グロース)やMTG(7806東証グロース)等が挙げられる。

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