カドス・コーポレーション(211A)店舗の設計・施工を通じて土地の有効活用を支援

2024/07/22

土地オーナーのニーズに応えることを起点としたビジネスモデル
店舗の設計・施工を通じて土地の有効活用を支援

業種:建設業
アナリスト:髙木伸行

◆ 山口県を中心に建設事業と不動産事業を展開
カドス・コーポレーション(以下、同社)は、先ず土地オーナーの要望を把握し、土地オーナーと出店を計画しているドラッグストア、コンビニエンスストア(以下、コンビニ)、家電量販店や飲食店といった流通企業とのマッチングを行うことを起点として、流通店舗の設計・施工を行う「建設事業」と自社建築物件の賃貸を行う「不動産事業」を行っている。23/7期の売上高の8割を建設事業、2割を不動産事業が占めた(図表1)。同社の主な営業エリアは山口県を中心に岡山県から福岡県北部となっている。

◆ 建設事業~逆転の発想の営業手法
同社は建設事業として、山口県、広島県を中心に主に、コンビニ、ドラッグストア、飲食店、家電量販店、ホームセンターなどの流通店舗の設計・施工を行っている。同社独自の事業モデルにより、同社は元請として受注し、施工は協力会社が行っている。

(1)土地オーナーとの関係を重視
同社の事業モデルの特色として土地オーナーに徹底的に寄り添っている点が挙げられる。一般的な流通店舗の建設は流通事業を行う企業(以下、テナント企業)の出店意向に基づき、出店に適した土地を探し、その土地オーナーと交渉し、出店場所を確保した後、店舗の建設に取り掛かるという流れとなる。一方、同社は、土地の有効活用を考えている土地オーナーとの太いパイプをベースに土地オーナーのニーズを踏まえた土地の活用方法を見出し、出店候補地を探索しているテナント企業に対して店舗設計プランをセットにして土地の情報を提供し、両者のマッチングにまでつなげている。

同社が土地オーナーと密接な関係を築き、土地オーナーの意向をくみ取った土地の最適活用プランを考案し、テナント企業に紹介するという、ビジネスモデルを同社は「カドスLANシステム」と呼んでいる。LANは「Land=土地」、「Application=活用」、「Network=情報網」の頭文字を組み合わせた、同社の造語である。

土地オーナーにとっては希望に沿った最適なテナントを見つけることができ、テナント企業にとっては相対的に短い期間での出店が可能となる。21/7期から23/7期におけるマッチングの中間値は約4カ月となっている。また、同社が主体となってマッチングすることから、店舗建設の特命受注につながり、同業他社との入札競争を回避できるというメリットもある。

同社は土地オーナーごとに施工後物件のアフターケア、テナント対応や土地オーナーが保有する他の土地の有効活用に関するアドバイスを行っており、一貫して土地オーナーに寄り添うかたちで事業を行っている。同社が管理している土地オーナーは23/7期末で235人・社に達している。

(2)ナショナルチェーンの流通店舗の建設が中心
23/7期の建設事業の売上高は前期比29.1%増の4,503百万円であったが、同社が主なターゲットしているナショナルチェーン注1の店舗関連で4,051百万円(建設事業の売上高に占める割合は90.0%)、地場企業向けなどナショナルチェーン以外は452百万円(同10.0%)であり、ナショナルチェーン向けの比率が圧倒的に高い。

24/3期の新築工事件数(売上計上分)は34件、新築完工件数(引渡分)は23件であった。新築完工件数23件の内訳はドラッグストア10件(構成比43%)、飲食店8件(同35%)、その他店舗2件(同9%)、事務所2件(同9%)、コンビニ1件(同4%)である。5期前と比較するとドラッグストアの構成比が大きく上昇し、次いで飲食店の上昇幅が大きい。一方、5期前には約半分を占めていたコンビニの構成比は大きく低下している。

売上依存度の高い先としてはドラッグストアチエーンの中でも、コスモス薬品(3349東証プライム)向けの販売額が最も大きく、次いでツルハホールディングス(3391東証プライム)傘下のツルハグループドラッグ&ファーマシー西日本向けの販売が大きい。23/7期の売上高の38.4%がコスモス薬品向け、12.5%がツルハグループドラッグ&ファーマシー西日本向けで大半が建設事業によるものである(図表2)。

◆ 不動産事業~土地オーナーのニーズに徹底して応えるかたちで拡大
不動産事業は建設事業の営業活動の中で土地オーナーとテナント企業のニーズがマッチングしない場合に、同社が両者の間に入り、土地オーナーの意向に沿うかたちで、案件を成立させるための仕組みを考案することから始まっている。同事業も山口県及び広島県を中心に展開されている。

例えば、土地オーナーが土地だけの賃貸を希望しているのに対して、テナント企業は土地オーナーに建物まで建設してもらい、土地と建物の賃借を希望している場合、両者のニーズはマッチしない。このような場合、同社が、土地オーナーから土地を賃借して建物を建設し、土地と建物をテナント企業に賃貸するといったかたちで案件を成立させている。また、土地オーナーがテナント企業と直接賃貸借契約を結ぶことに不安を感じている場合、日頃から接触のある同社が土地オーナーから土地を借り、テナント企業に転貸することも行っている。このような場合、テナント企業から店舗などの施工の受注にもつながることになる。

23/7期の不動産事業の売上高は前期比11.8%増の1,156百万円であった。建物と土地の賃貸収入が主だが、この他、太陽光発電システムによる売電収入や出店予定企業と土地オーナーとの間の不動産売買の仲介からの収入もある(図表3)。

23/7期末の不動産賃貸件数は95件(22/7期末92件)であり、10年前の52件と比べると約83%増加している。また、23/7期末の不動産賃借件数は73件となっている。同社の不動産事業はストック型ビジネスであり、売上高セグメント利益率も高い。物件数は着実に増加しており、賃貸契約期間も20年超という長期のものが多く、安定的な収益が見込める事業となっている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。