キャスター(9331)費用先行で赤字が続いてきたが、需要拡大を背景に損益分岐点水準に到達
人的リソース不足の中小企業とリモートワーカーを繋ぐWaaS事業を運営
費用先行で赤字が続いてきたが、需要拡大を背景に損益分岐点水準に到達
業種:サービス
アナリスト:藤野敬太
◆ リモートワークの特徴を活かしたWaaS事業を運営
キャスター(以下、同社)は、リモートワークの特徴を最大限に活かしたWaaS(Workforce as a Service)のサービスを提供している。WaaSはオフィスワークを行う人的リソース(workforce)を、顧客企業が必要とする時間だけ提供するサービスである。同社自身がフルリモートワークによる組織運営を実現していることが特徴で、同社のサービスは、全国のリモートワーカーと慢性的な人的リソース不足に直面するスタートアップ企業や中小企業とを繋ぐプラットフォームとして機能している。
同社の事業はWaaS事業とその他事業の2つのセグメントで構成されており、WaaS事業が全売上高の約8割を占めている。
◆ WaaS事業(1):「CASTER BIZ」シリーズ
WaaS事業は、「CASTER BIZ」シリーズと、その簡略版である「My Assistant」の2つのサービスで構成されている。
「CASTER BIZ」シリーズは、バックオフィス業務代行を中心としたサービスである。顧客企業から受注した仕事を全国に所在するリモートアシスタントが代行する。
同社では、成果物の質と納期を担保するために、いくつかの特徴的な仕組みを整えている。そのひとつは、リモートアシスタントをフロント(ディレクター)とキャスト(作業者)に完全に分けていることである。
顧客企業と接点を持つフロント(ディレクター)は、リモートワークで働く同社の正社員で構成され、サービス時間内は常駐している。顧客企業から依頼される業務の工程を整理した上でタスクとして細分化し、キャスト(作業者)に一斉に振り分ける。キャストは業務委託先として、振り分けられたタスクを遂行する。キャストによって完了された各タスクはフロントが一式としてまとめて検品し、顧客企業に成果物として納品する。このようにフロントとキャストを完全に分離することで、対応できる作業の量を増やすとともに、サービスの品質を維持、向上することができる。
フロントがキャストをアサインする際に活用している独自開発のシステムもまた、特徴的な仕組みのひとつである。同社は、キャストのスキルや過去のタスク遂行状況等をデータとして蓄積し続けており、これらのデータをもとに、タスクに適したキャストを自動的に検出できるようにしている。このシステムは、アサイン業務の効率化だけでなく、タスクとキャストのマッチング精度の向上にも資するものとなっている。
「CASTER BIZ」シリーズのサービスは、従来から存在するBPO(Business Process Outsourcing)のサービスと比較されることがある。業務をアウトソーシングするという点では両者は同じである。しかし、従来のBPOでは、「この人をこの期間おさえる」といった人数単位でのサービス提供となるため、どうしても大がかりな案件となってしまう。一方、「CASTER BIZ」シリーズでは、フロントとキャストを分離することで、時間単位でのサービス提供を可能としている。また、実際に作業を行うキャストへの指示や品質管理等はフロントが行うため、顧客企業は、フロントに対して仕事の依頼をするだけでよい。中小企業でも活用できる、比較的安価で、小回りがきく使い勝手のよいサービスとして仕上がっている。
「CASTER BIZ」シリーズは時間単位でのサービス提供が特徴でなるが、ある程度まとまった量での契約となる。「CASTER BIZ アシスタント」の場合、月30時間の利用が可能な6カ月契約と12カ月契約の2種類が用意されている。
創業時からのサービスである、主に秘書業務の代行である「CASTER BIZアシスタント」に加えて、経理や人事、採用、カスタマーサポート、マーケティング等の機能別に、サービスメニューを増やしてきた(図表2)。専門性の高いサービスが加わることで、契約単価の上昇につながっている。
◆ WaaS事業(2):「My Assistant」
「My Assistant」は、「CASTER BIZ」シリーズの最低契約時間の月当たり30時間を月当たり20時間まで短くした小ロットサービスである。「CASTER BIZ」シリーズとは異なり、フロントが介在せず、顧客企業がキャストに指示する方式となる。その分提供価格は月額4万円に抑えられており、個人でも契約しやすいサービスとなっている。
◆ WaaS事業の収益モデルとKPI
WaaS事業は継続的に提供されるサービスであり、収益モデルはサブスクリプション型の性格が強い。収益に直接影響する稼働社数とARPUはいずれも拡大しており、収益増に貢献している。また、解約率も4%を切っており、その結果、MRRが拡大している(図表3)。
◆ その他事業
その他事業は、「在宅派遣」、「Reworker」といったサービスを展開している。「在宅派遣」は、在宅勤務の働き方を選好する実務経験豊富なスタッフと企業とをマッチングする派遣サービスである。
「Reworker」は、在宅ワークや時短労働、副業や複業等のリモートワークを前提とした多様な働き方が可能な求人に特化した求人サイトである。
これらのサービスのほか、事業開発によって得られる収益もその他事業に含まれる。