日本ナレッジ(5252) ソフトウエアテストの自動化を目指す

2023/03/28

ソフトウエアの検証やシステム受託開発、パッケージソフトの開発・販売を行う
ソフトウエアテストの自動化を目指す

業種: 情報・通信業
アナリスト:髙木伸行

◆ ソフトウエアの検証事業と開発事業を展開
日本ナレッジ(以下、同社)は、ソフトウエアシステムの検証サービスを提供する「検証事業」とシステム受託開発、業務系パッケージソフトウエアの開発・販売を行う「開発事業」を行っている。22/3期の売上高の61.1%を検証事業が、38.9%を開発事業が占めた(図表1)。

同社は、設立当初は業務系パッケージソフトウエア開発を主業務としていたが、01年7月に検証事業を開始し、「ソフトウエアテストを自動化させるテストオートメーションカンパニーを目指す!」をビジョンに掲げている。

◆ 検証事業
検証事業では、ソフトウエアの不具合によるリスクを回避するため、ソフトウエアの開発工程(要件定義・設計・開発・テスト)の中のテスト工程において、品質計画の立案、テストの分析設計、テストの実行といった一連のプロセスやコンサルティングを提供している。

同事業で対象とするソフトウエアはスマートフォンやカーナビゲーションに組み込まれて動作する組込みソフトウエア、法人向けの販売管理や会計などの業務系システムやパッケージソフトウエア製品などのエンタープライズ系ソフトウエア、WEBシステムなどである。エンタープライズ系ソフトウエアについては開発事業で培ったノウハウが活かされる領域であり、開発技術を基にテスト実施の自動化技術による検査効率の良さや品質の担保といった同社の強みにつながっている。

当事業の主たる顧客は主に大手SIer系の情報システム部門やパッケージソフトウエアベンダーなどの事業会社系である。

19/3期頃より、手動型テスト中心のソフトウエア品質テストからテスト自動化サービスへの移行を進めており、ソフトウエア品質テストの売上高が減少し、テスト自動化サービスの売上高が増加傾向にある。19/3期と22/3期では検証事業全体の売上高はさほど差はないが、テスト自動化サービスが検証事業の売上高に占める割合は19/3期の約40%から22/3期には約80%にまで上昇している。

◆ 開発事業
開発事業では、1)ERPパッケージソフトウエア導入に伴うカスタマイズの受託開発、2)業種テンプレートの開発・販売・保守、3)セキュリティ製品の開発・販売・保守を中心に行っている。22/3期の売上構成比はカスタマイズの受託開発が約80%、業種テンプレートが約5%、セキュリティ製品が約15%である。

1)パッケージソフトウエア導入に伴うカスタマイズの受託開発
ERPパッケージソフトウエアを導入した顧客企業から個別にカスタマイズを受託している。取り扱うERPパッケージソフトウエアは、大塚商会(4768東証プライム)のSMILEが圧倒的に多く、その他はインフォコム(4348東証プライム)の連結子会社であるGRANDITのGRANDIT®、日本電気(6701東証プライム)のEXPLANNER、アミック(浜松市中区)のSTRAMMIC®などがある。

大規模なカスタマイズの場合にはその後の問い合わせやバージョンアップ対応が必要となるため、同社が直接、保守サービスの提供も行っている。

2)業種テンプレートの開発・販売・保守
SMILEをベースとして鋼材業界の商習慣や業界特性に対応した鋼材卸・加工業向け販売管理システムであるPowerSteel、及び建材・木材管理で必要な独特の管理項目に対応した建材・木材卸業向けのPowerCubicを開発販売している。

パッケージソフトウエアをベースとした同社の業種テンプレートを導入することにより、新規に開発を行うのに比べて費用を大幅に抑えることが出来るというメリットがある。PowerSteelとPowerCubicの合計で、22年末時点では695社に導入されている。

3)セキュリティ製品の開発・販売・保守
同社は独自でセキュリティ製品を開発し、ライセンス利用型で販売している。また、保守サービスも提供している。主力製品としてはWindowsOS上での操作・履歴ログを生成・取得するDEFESA、既存のPCを活用することでより手軽に低価格なシンクライアント環境を実現するmonoPackが挙げられる。

◆ 収益・費用構造
検証事業の収益構造は、スポット型の性格があるものの、WebシステムやERPパッケージソフトウエアは、既に稼働しているシステムの機能追加や変更といった派生開発が主なテスト対象となることから、事業やサービスが続くことによりプロジェクトが長期化するとともに、追加された機能だけではなく、既存機能もテスト対象となるため、テスト対象領域や規模が拡大してゆくことが普通である。このため、継続的な収益を得ることが可能となっている。

開発事業の収益構造も、受託開発や業種テンプレート及びセキュリティ製品の販売などはスポット型であるが、保守契約を締結することから、ストック型収益の部分も併せ持っている。

主だった費用としては、検証事業に関しては技術者の人件費、外注費、サーバー、PCといった通信環境に関連する費用が挙げられる。開発事業の受託開発については人件費のウエイトが高く、外注費や開発に必要な通信環境関連費用、業種テンプレートやセキュリティ製品に関しては人件費、ライセンス費用、販売費が主な費用となる。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。