フーディソン(7114) 先行投資期が過ぎ23年3月期は黒字浮上見込み

2022/12/22

国水産物を中心とした生鮮流通プラットフォームを運営
先行投資期が過ぎ23年3月期は黒字浮上見込み

業種: 卸売業
アナリスト: 藤野 敬太

◆ 水産物を中心とした生鮮流通プラットフォームを運営
フーディソン(以下、同社)は、テクノロジーを活用した、水産物を中心とした生鮮流通プラットフォームを運営している。水産物流通においては、農産物流通以上に情報投資が進まなかったために、(1)情報管理が属人的なものに留まりトレーサビリティが利きづらい、(2)労働集約的なオペレーションが非生産的かつ非効率的であり、労働力不足が慢性化しているといった点を、同社は業界の課題として認識している。こうした課題を解消すべく、同社は、関係する事業者情報をデータベース化して活用することで、生鮮流通のDX化を実現しようとしている。

同社の事業は生鮮流通プラットフォーム事業の単一セグメントだが、売上高は、主に飲食店向けのBtoBコマースサービス、一般生活者向けのBtoCコマースサービス、食品事業者向けのHRサービスの3サービスに区分されている。BtoBコマースサービスが事業の中心で、全売上高の約7割を占めている。

◆ BtoBコマースサービス
自社ウェブサイト「魚ポチ(うおポチ)」を通じて、生産者、卸業者、メーカー等から仕入れた生鮮食品を、主に飲食店ユーザーに直接販売するサービスである。買い手であるユーザーが、「魚ポチ」のウェブカタログに掲載されている約3,000種類の商品の中から必要な分量を注文すると、翌日から3日後までに店頭に配送される。取扱商品別売上高では、水産品がBtoBコマースサービスの95.7%を占めている。

「魚ポチ」を利用することで、飲食店ユーザーは以下のメリットを得ることができる。

(1) アナログな発注作業や市場へ出かける手間を省くことができる
(2) 仕入ができる品種が増えることで、料理のメニューに独自性を持たせることができ、他の飲食店に対する差別化を図ることができる
(3) ユーザーの購買データから自動でレコメンデーションを行う機能があるため、多品種であっても商品選別の時間を短縮することができる
(4) 既存の流通で取り扱われる商品と比べて低価格である

一方、生産者は、以下のメリットを得ることができる。

(1) 販売チャネルの多様化を図ることができ、適正価格での販売が可能になる
(2) 従来の流通では取り扱うことができなかった希少商品であっても取引ができるようになる
(3) 安定的に購入してくれるユーザーを見つけることができる
(4) 出荷した商品の販売状況の把握ができるため、何がどのくらいの価格で販売可能なのかの情報を得ることができる

「魚ポチ」での流通を支えるのは、自社独自開発の生鮮特化型ソフトウェアと、卸売市場参入の許認可である。

水産品は、生鮮品の中でも消費期限が短く、個体差が大きく、流通過程で冷蔵や冷凍の保管を必要とし、価格設定が量り売りを前提としていることから、ECで取り扱うには難易度が高い商品である。その流通を支えるシステムを独自開発しており、他社に真似されにくいものとなっている。

また、飲食店を買い手としているため、安定的に供給する必要がある商品も存在する。そうした商品については、東京都中央卸売市場である豊洲市場と大田市場から仕入れる必要がある。同社は、両市場の仲卸営業許可と買参権(競りに参加する権利)を取得しており、市場からの仕入れを可能としている。この結果、飲食店は「魚ポチ」を通じて、安定供給を必要とする商品と、希少種等の多様性のある商品の両方を仕入れることができる。

また、大田市場内には、子会社のフーディソン大田のフルフィルメントセンターがあり、流通の重要拠点として機能している。

BtoBコマースサービスの収益は、アクティブユーザー数とARPUで決まる。四半期別にみると、季節要因による変動や、新型コロナウイルス禍による影響を受ける時期はあったものの、アクティブユーザー数は増加傾向にあり、ARPUは70,000円台~90,000円台のレンジで推移している(図表2、図表3)。

◆ BtoCコマースサービス
BtoBコマースサービス向けの調達・流通機能を共有する形で、一般消費者に対して鮮魚を販売するのが、BtoCコマースサービスである。販売は、鮮魚セレクトショップ「sakana bacca(サカナバッカ)」で行われる。

「sakana bacca」は交通の便の良い立地に出店しており、22年9月末時点で東京都内に8店舗ある。なお、19年3月に東日本旅客鉄道(9020東証プライム、JR東日本)の関係会社から出資を受けている関係で、8店舗のうち4店舗が、JR東日本の駅中テナントへの出店である。

◆ HRサービス
「フード人材バンク」を通じて、飲食店やスーパーマーケット、食品工場といった食品事業者向けに、人材を紹介するサービスである。BtoBコマースサービスにおける流通過程や、BtoCコマースサービスの店頭などにおいて、食品を取り扱う人材の採用のために行っていた機能を、他の食品事業者向けにも提供する形で展開している。

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