INTLOOP<9556> ストック型、高利益率のビジネスモデルを確立している

2022/07/20

フリーランス人材を活用したコンサルティング・システム開発支援を展開
ストック型、高利益率のビジネスモデルを確立している

業種: サービス業
アナリスト: 髙木伸行

◆ フリーランスを活用してコンサルティングやSI領域で顧客を支援
INTLOOP(以下、同社)は、ニーズに応じて顧客企業をコンサルタントやITエンジニアといったフリーランス人材により支援したり、自社社員とフリーランス人材を組み合わせたチームにより支援している。様々な経営課題に対してコンサルティング領域やSI領域といった幅広いサービスを提供している。

同社が展開するサービスは、プロフェッショナル人材ソリューションサービス、コンサルティングサービス、Webサービスに分類される。売上内訳は開示されていないが、Webサービスやプロフェッショナル人材ソリューションサービスに分類されている転職支援サービスの売上高は非常に小さく、売上高のほぼ全額が転職支援サービスを除くプロフェッショナル人材ソリューションサービスとコンサルティングサービスによるものである。

1)プロフェッショナル人材ソリューションサービス
プロフェッショナル人材ソリューションサービスでは、フリーランスのコンサルタントやITエンジニア向けの案件紹介サイトをスキルや案件種別に4サイトを運営している。また、ブリーランス人材向けの転職支援サービスのサイトは2サイトを運営している。

同社は、案件紹介サイトに登録されたフリーランス人材に対して、顧客企業の各種プロジェクトといった案件を紹介し、フリーランス人材とマッチングし、顧客企業への提案を行っている。顧客企業へのサービス提供はフリーランス人材1 名の場合や複数のフリーランス人材によるもの、あるいは同社社員 とフリーランス人材からなるハイブリッドチームでの役務提供まで様々なチー ム編成で行われている。

顧客企業としては、事業会社に加えて、アクセンチュアの子会社であるavanade といった外資系コンサルティングファームやエヌ・ティティ・データ(9613 東証プライム)、TIS(3626 東証プライム)といったSIer があり、大手企業との取引が多い。

フリーランス人材にとっては、個人では受注できない、あるいは参画することが難しい案件でも同社に登録することで、関与することが可能になる。さらに難易度の高い案件や先端的なプロジェクトといったフリーランス人材にとってスキルの向上につながる案件に参加できることも同社に登録することのメリットとなっている。

処遇面の特徴としては、フリーランス人材への支払いが月末締め翌月15 日支払いとサイトが短いことやフリーランス人材向け福利厚生サービスプログラムを提供している点が挙げられる。

フリーランス人材の案件への参画はフルタイムが基本である。案件の顧客企業からの受注単価ならびに契約期間は、コンサル案件は月額140 万円~300 万円程度で3 カ月~6 カ月、IT エンジニア案件は月額100 万円前後で1 年以上が中心である。

同社のフリーランス人材への案件紹介に関する収益は顧客企業から業務委託を受け、フリーランス人材を割り当てることで受け取る業務委託料である。転職支援サービスでは、転職希望者が就職を決定した際に顧客企業から成功報酬を受け取っている。

2)コンサルティングサービス
同社の社員であるコンサルタントやIT エンジニアが中心となって提供する顧客企業の経営課題の解決などを支援するサービスである。戦略コンサルティング、業務コンサルティング、IT コンサルティングなどを提供している。

顧客は事業会社が中心で、同社社員1 名からの支援やフリーランス人材を含めたチームでコンサルティングサービスを提供している。フリーランス人材を活用することもあり、平均販売単価は月額130 万円程度と比較的安価である。このため、小規模な事業会社でも利用可能である。

3)Web サービス
顧客企業のニーズへの対応や営業先の開拓を目的としたIT 関連の情報サービスを提供している。サービス利用料や広告掲載料が同社の収益となる。

主なサイトは課題解決ポータルサイトQEEEで、1時間から相談できる「スポットコンサル」、最近のITトレンド等のビジネス関連のニュースを提供する「マガジン」、ビジネスの課題解決方法を提供する「お役立ち情報」、BtoBクラウドツールなどの「製品情報」の4つのサービスを提供している。QEEEの他にはオンライン教育サービスやフリーランス向け福利厚生サービスがある。

◆フリーランス人材の登録数増加と多様な専門領域
フリーランス人材の登録者数の増加とフリーランス人材の専門領域の広がりが同社の事業モデルを支えている。

フリーランス人材は、大手コンサルティングファームや大手システム会社の出身者で専門性の高い人材が多い。同社に登録しているフリーランス人材は4月末現在でコンサルタントが14,760人(うち月間稼働人数532人)、ITエンジニアは12,059人(うち月間稼働人数438人)である注1。

登録者数は同社自身で行うWebマーケティングを中心とした広告宣伝を戦略的に行っていることから増加傾向にある(図表1)

4月末時点での登録者数の専門領域別のおおよその分布は、図表2に示したとおりである。コンサルタントは、業界平均に比べて業務系の構成比が高く、ITエンジニアについては単価の高いエンタープライズ系の上流工程に強い人材が多いという特徴がある。

◆ 増加するフリーランス人材の稼働人数
売上高を決定する重要な要素のひとつであるフリーランス人材の稼働人数は増加基調にあるとともに、稼働率も上昇傾向にある(図表3)。

19/7期第4四半期末の月間稼働人数はコンサルタントが213人、ITエンジニアが112人であったが、22/7期第3四半期末には各々532人、438人にまで上昇している。稼働率(期末の登録者数に対する稼働人数の比率)はコンサルタント数、ITエンジニアの合計で同期間では2.6%から3.6%まで上昇している。

◆ 社員コンサルタント・ITエンジニア
同社はコンサルティングサービスを提供する際、正社員コンサルタントやエンジニアとフリーランス人材によるチームで当たることが多い。同社の正社員がチームに加わることにより、チームの統率がとりやすくなるとともに、同社の ビジネスパートナーの活用もしやすくなる。このため、業容拡大に向けてはフリーランス人材の登録者数とともに自社のコンサルタントやITエンジニアなどのプロフェッショナル人材の拡充も必須となる。

自社コンサルタント・ITエンジニア数の推移は公表されていないが、21/7期末、及び22年4月末では全社員の5割前後が自社コンサルタント・ITエンジニアと推定される。目論見書に掲載されている17/1期以降、従業員数は着実に増加していることから、自社コンサルタント・ITエンジニアの採用も順調に進んでいるものと推察される(図表4)。

◆ 増加する顧客企業数
顧客企業は順調に拡大している。22/7期第3四半期の月当たりの顧客数は平均約400社であり、20/7期第4四半期の200社をわずかに下回る水準から倍増している。

同社はこれまで1,000社以上との取引があり、約3割がSIer、同じく約3割がコンサルティングファーム、約4割が事業会社であり、いずれも大手企業が主体である。相手先販売実績の開示されている先は21/7期の販売金額が1,090百万円(売上比11.8%)であるエヌ・ティ・ティ・データのみである。

一方、顧客との取引状況については課題も多い。現行の取引社数を除く約600社が休眠状態にあると言えることや、取引がある先についても約9割の年間取引額が50百万円程度かそれ未満となっていることから、アクティブな取引社数及び年間取引金額とも拡大の余地は大きい。このため、同社はインサイドセールスチームを立ち上げ、休眠顧客の掘り起こしと既取引先のアップセルに注力し始めた。

◆ 収益構造
同社の売上高は「稼働人数×単価」で決まるが、質の高いフリーランス人材の確保と顧客企業や案件の獲得といったことが稼働人数や単価の向上につながる。

同社の事業は、フリーランス人材にとっては、単に収入を得るだけではなく、良質な案件を通じたキャリアアップの機会を得ることが可能な点が魅力となっている。また、顧客企業にとっては利用しやすい料金で質の高いサービスを利用でき、課題の解決につなげることが可能になる。ニーズに合わせて様々な規模の案件や幅広い分野のソリューションを提供できる同社への需要は大きい。

売上原価の主要費目は社員コンサルタントやITエンジニアに係る労務費、フリーランス人材やビジネスパートナーへ支払う外注費となる。21/7期の労務費は846百万円であり、売上原価の11.8%(売上比9.1%)、外注費は6,292百万円であり、同じく87.6%(同68.0%)に相当している。

販売費及び一般管理費の主要費目は人件費、採用費、広告宣伝費が挙げられる。同社はこの3つの費目を半年先の売上に結びつく先行投資と位置付けて重視している。21/7期の人件費は678百万円(売上比7.3%)、採用費は113百万円(同1.2%)、広告宣伝費は214百万円(同2.3%)であり、合計1,005百万円(同10.9%)であった。ちなみに同社の広告宣伝は自社のWebサイト主体で行っている。

一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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