メンタルヘルステクノロジーズ<9218> 21年12月期の黒字化に続き、22年12月期は利益拡大期へ

2022/04/06

企業が実施するメンタルヘルスケアを支援する「産業医クラウド」が主力
21年12月期の黒字化に続き、22年12月期は利益拡大期へ

業種: サービス業
アナリスト: 藤野 敬太

◆ 従業員へのメンタルヘルスケアを行う企業を支援するサービス「産業医クラウド」を提供
メンタルヘルステクノロジーズ(以下、同社)は、企業が従業員等に対して行うメンタルヘルスケアを支援する「産業医クラウド」の提供を主力としている。企業の行うメンタルヘルスケアは、行政による規制強化が先行し、法令を遵守するだけの「形式運用」に終始することが多いとされている。一方、ケアを必要とする従業員は増える傾向にあるため、問題を解決、または未然に防ぐ「課題解決型運用」への需要が大企業を中心に増えてきている。同社の「産業医クラウド」は、「課題解決型運用」を志向する企業を対象に、産業医等が提供する役務と、クラウド化した各種サービスをパッケージ化して提供されるものである。

同社の事業は、メンタルヘルスソリューション事業、メディカルキャリア支援事業、デジタルマーケティング事業の3 つの報告セグメントに分類される(図表1)。「産業医クラウド」を提供するメンタルヘルスソリューション事業が中核事業で、売上高の75~80%を占めている。なお、3 事業とも20/12 期までは損失を計上してきたが、21/12 期にすべて黒字化した。

◆ 「産業医クラウド」
「産業医クラウド」は、産業医や保健師等による役務提供サービスと、労働者の心身の健康管理に関するクラウドサービス「ELPIS(エルピス)」をパッケージ化したサービスである。役務提供サービス及び「ELPIS」の顧客への提供は連結子会社のAvenir(アヴェニール)が担当し、「ELPIS」の開発は同社が行っている。

「産業医クラウド」は、産業医が従来行っていた業務を整理し、産業医しかできない業務と、産業医でなくてもできる業務とに区別した上で、一連の業務を再構築してつくられている。結果、(1)健康管理指導等の産業医でなくては行えない業務は産業医による役務提供、(2)産業医ではなくても行える業務は保健師、看護師、Avenirのスタッフによる役務提供、(3)人による役務以外はクラウドサービスとしての提供となり、それらを組み合わせることで、顧客にとって最適なソリューションを低コストで提供することを可能にした。

通常であれば企業が直接雇用する産業医が提供する役務は、「産業医クラウド」においては、委任によって時間単位で提供される。企業にとっては、産業医への報酬を変動費化することができ、費用負担が軽減される。「産業医クラウド」で役務提供を行う産業医は、同社が活用できる医師データベース5.6万人から同社の独自基準に基づいて選出され、サービスの質が担保されている。21年12月末時点で、産業医として1,549人が登録されているが、そのうち340人が稼働している。

「ELPIS」は、企業が行うメンタルヘルスケアに関する各種サービスを、顧客の必要に応じてクラウドサービスとして提供するものである(図表2)。

◆ 「産業医クラウド」の収益モデル
「産業医クラウド」においては、顧客企業はAvenirと業務委託契約を締結し、Avenirは月額顧問料等を受け取る。そのうち、外部の医師や保健師等が行った役務提供サービスに対して業務委託料が支払われる。「ELPIS」の利用に関しては、顧客の規模(利用数)に応じて月額課金の形で収益を得る。

「産業医クラウド」は、収益の多くを月次で受け取るストックビジネスとしての特徴を持っているため、MRR(Monthly Recurring Revenue :当該期末月の月額料金のみを対象とする月次経常収益)が 「産業医クラウド」のKPIとなる。21/12期になってから、大企業向けのMRRが中小企業向けのMRRを上回るようになってきた(図表3)。

また同社では、従業員1,000人以上かつメンタルヘルスソリューション事業の売上高が月額20万円以上(見込みを含む)の顧客を大企業、メンタルヘルスソリューション事業の売上高が月額20万円未満の顧客を中小企業とし、それぞれの動向を管理している。大企業向けは、契約社数(グループ)と契約単価はともに上昇傾向が続いているが、中小企業向けは、契約社数は増えているものの、契約単価はこの2年ほどは横這いである(図表4、図表5)。

◆ メディカルキャリア支援事業
Avenirが担当する事業で、医師を医療機関に紹介する有料職業紹介サービスである。都市部より人材確保が難しい分、手数料率が高い傾向にある地方医療機関に重点を置いて展開している。常勤医師か非常勤医師かによってタイミングが異なるが、医療機関への入職によって紹介料が得られる。

◆ デジタルマーケティング事業
杏林舎(東京都北区)と提携した医学会専門電子書籍「Kalib」や日本医師会の「日医Lib」のシステム保守運用が中心の医学会向けサービス、一般企業向けにWebサイトの制作受託や保守代行を行うWebマーケティング支援サービスの2つのサービスから構成されている。保守運用が多く、月額利用料が収益源の中心となっているものと考えられる。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
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