守谷輸送機工業<6226> 新工場の建設による国内需要の取り込みで成長を目指す

2022/03/22

国内における大型荷物用エレベーターの製造・販売・据付・保守・修理事業を展開
新工場の建設による国内需要の取り込みで成長を目指す

業種: 機械
アナリスト: 阪東 広太郎

◆ 荷物用エレベーターの製造・販売・据付・保守・修理事業を展開
守谷輸送機工業(以下、同社)グループは、同社と非連結子会社1社(上海守谷電梯有限公司)の2社で構成されており、国内及び海外でエレベーター等の製造・販売・据付及び保守・修理事業を行っている。同社は「エレベーター事業」の単一セグメントであるが、売上高は「エレベーター(船舶用除く)」、「船舶用エレベーター」及び「保守・修理」に区分される。22/3期第3四半期累計期間における売上構成比は、エレベーター(船舶用除く)が51.1%、船舶用エレベーターが3.5%、保守・修理が45.4%である(図表1)。

同社は、1950年3月に設立され、専業メーカーとしてエレベーター等の設計・製造から据付、保守・修理まで一気通貫で事業を展開している。同社は主に荷物用及び船舶用エレベーターに係る事業を展開している。上海守谷電梯有限公司は中国における資材調達窓口として購買代理業務及び、中国における船舶用エレベーターの据付・保守業務を展開している。

◆ 主な製品・サービス
(1)荷物用エレベーター
エレベーターは、人や荷物を載せて垂直又は斜めに移動させる昇降装置であり、かご注1 の水平投影面積注2 が1m2 超、又は天井の高さが1.2m 超の大きさのものと定義される。エレベーターは用途に応じて乗用、寝台用、荷物用、自動車用等に分類される。

同社は主に荷物用エレベーターを取り扱っているが、荷物用エレベーターは、かご床がフォークリフト等で長期間使用しても剥がれ・たわみが少ない等の堅牢性、冷凍・冷蔵向けでの結露対策といった使用環境に応じた性能・機能の確保、誰でも安全で使いやすい操作性等が求められる。

同社では、積載荷重注3 が2t 以上の中大型エレベーターや荷物を連続して搬送できる垂直自動搬送機「マックリフター」、冷凍・冷蔵倉庫向けエレベーター、自動車用エレベーターなど、顧客のニーズに応じてカスタマイズした製品を展開している。

21/3 期における同社のエレベーター設置台数は、432 台であり、そのうち新規設置台数が411 台、入替台数注4 が21 台と、新規設置が中心である。機種別の構成は、荷物用が384 台、人荷共用その他30 台、マックリフター18 台である。荷物用のうち342 台が大型(積載荷重3t 以上)、42 台が中小型(積載荷重3t 未満)と、大型の荷物用エレベーターを主に展開している。

21/3 期における新規設置の建物用途別の内訳は、工場・倉庫が99.5%を占める。工場・倉庫のうち、E コマース向け物流施設が約5 割を占める。E コマース市場規模の拡大に伴い、E コマース向け物流施設の割合は上昇傾向にある。E コマース向け物流施設以外では、運送倉庫、製造業の割合が高い。製造業の内訳としては、食品・飲料、化粧品、印刷など多岐にわたる。

同社の受注先は、工場・倉庫を設計・建設するゼネコンが多い。建物に関する情報を入手してから受注までの期間は、案件によって異なるが3 年程度の事が多い。受注から引渡までの期間は1 年から2 年程度である。

荷物用エレベーターの販売価格は、カスタマイズを伴うため案件毎に異なるが、過去数年間は、平均1,500 万円/1 台程度で推移している。

(2)船舶用エレベーター
同社は、造船各社を受注先として、大型の外航船注5 やフェリーなどに設置される乗用エレベーターを提供している。船舶用エレベーターは建設用と異なり、船の振動(揺れ)や衝撃にも耐えうる構造や防錆・防沫性能注6 が求められる。

同社は、02 年7 月にシンドラーエレベータから船舶用エレベーターの技術等を譲り受けて、03 年8 月に販売を開始し、現在では国内及び中国、韓国で事業を展開している。同社の顧客は中国及び韓国の大手造船企業が大半を占めている。

(3)保守・修理
同社は、主に同社が納入したエレベーター(船舶用除く)について、顧客と保守契約・修理契約を締結し、建築基準法や労働安全衛生法で義務付けられた定期検査・定期点検及び、修理サービス等を提供している。定期点検は月1 回、定期検査は年に1 回実施されている。定期点検で見つかった不具合等は修理し、摩耗した部品等を交換している。故障に伴う修理の頻度は各エレベーターについて数年に1 回程度である。

エレベーターに故障・異常が発生した際、顧客は24 時間365 日対応の同社本社にある守谷サービス情報センターに連絡を入れる。守谷サービス情報センターが故障状況を把握した上で、サービス担当者を現地に派遣している。同社の保守・修理拠点は、同社4 拠点、委託先48 拠点の合計52 拠点であり、各都道府県に1 つ以上の拠点が存在している。保守・修理サービス担当者は同社及び委託先合わせて約500 名である。

契約形態としては、フルメンテナンス契約(保守契約)とPOG 契約(点検契約)の2 種類がある。フルメンテナンス契約の内容は、エレベーターの運転機能を常に安全・良好に維持するよう点検・調整などを行い、故障が起きても人為的・外的要因等による場合を除き、部品交換・修理費用が定額の契約料金の中から賄われる。POG契約は、「P:パーツ」、「O:オイル」、「G:グリス」の頭文字を取ったもので、顧客は基本的な点検だけを委託し、修理等が必要となった場合は、別途費用が必要となる。契約期間は顧客ごとに異なるが、1 年間で自動更新条項が付くケースが多い。

同社が保有する保守契約・点検契約は、同社が納入したエレベーター台数の増加に伴って増加傾向にあり、21 年末時点での契約対象台数は6,351 台である。同社が設計・製造・据付を行ったエレベーターは顧客毎の仕様も多い事から、保守契約・点検契約も継続的に受注する場合が多いようである。20/3 期及び21/3 期に同社が設置した新設エレベーターに関する、同社の保守契約・点検契約の受注率は97.2%である。同社の保守契約・点検契約の年間解約率注7 は1.5%~2.0%程度で推移している。

エレベーター業界では、エレベーター販売時の利幅を薄くする一方で、その後の定期的な保守点検作業を受注して長期的に利益を確保する企業が多く、同社も同様の収益モデルを取っている。

◆ バリューチェーン・人員体制
同社は、荷物用エレベーターに関して、営業・設計・調達・製造の殆どを自社で手掛け、製造の一部(作図・板金・製缶)及び、据付・保守・修理の大部分は協力会社に委託している。同社の販売するエレベーターのユーザーは3月決算の企業が多く、エレベーターの製造・据付が第4四半期に集中する傾向にある。同社は固定費抑制の観点から、修理・保守に関しては、ユーザーの密度が高い地域は同社が手掛け、ユーザーの密度が低い地域は外部に委託している。

22年1月末時点における同社の従業員の配置は、営業60人、設計・開発60人、調達・製造・据付105人、保守・修理55人、管理部門15人である。

国内において、同社は2つの工場とテクニカルセンター、8つの支店・事務所を持つ。本社工場及び宇都宮工場では主に荷物用エレベーターを製造している。テクニカルセンターは主に設計を担っている。東京、大阪、名古屋、福岡の4支店の主な役割は営業である。埼玉、京葉、厚木、群馬埼北の4事務所は主に保守・修理を担っている。海外では、上海守谷電梯有限公司が中国における資材調達窓口として同社の購買業務及び、中国における船舶用エレベーターの据付、保守業務を展開している。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
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