ハイブリッドテクノロジーズ<4260> ベトナムで IT オフショア開発を行う

2021/12/30

日本とベトナムの連携体制により顧客企業の DX のためのソフトウェアを開発
ベトナムで IT オフショア開発を行う

業種: 情報・通信業
アナリスト: 髙木 伸行

◆ ベトナムに開発拠点を置くシステム開発会社
ハイブリッドテクノロジーズ(以下、同社)グループは多数のエンジニアを有するベトナム子会社であるHybrid Technologies Vietnam Co., Ltd. とHybrid Techno Camp Co., Ltd.(21年6月末で事業活動を停止し清算中)で構成されている。

日本の同社が中心となりサービス設計、システム設計の上流工程を担い、開発・リリース、アプリケーション保守を担うベトナム子会社のエンジニアと連携することで、上流から下流工程に至る一連のサービスを提供する「ハイブリッド型サービス」で顧客企業のDX化を支援している。

同社グループが提供するソリューションは、エンジニア不足、デジタル技術を活用したビジネスモデルの開発、システムの老朽化、DX推進、業務の効率化、売上拡大、経営やガバナンスの強化といった顧客企業が抱える課題に対応するものである。提供するサービスは、業務改善、営業支援、CRM、開発サービス、クラウドサービス、アプリの開発・保守・運用サービスといったものが挙げられる。

ベトナム出身のチャン バン ミン社長の下、同社グループは日本とベトナムのリソースを融合して、顧客の課題やニーズに合わせて「ストックサービス」と「フローサービス」のラインアップを揃え(図表1)、プロダクト開発を行っている。日本にいる約30人のベトナム人開発チームとベトナムの開発部隊とが連係を取りながら開発を行っている点が、同社の特色となっている。

売上構成比は期によって変動するものの、ストックサービスが20/9期は93.9%、21/9期は88.8%を占めており、売上高の大半がストックサービスによるものである(図表2)。

◆ ストックサービス
ストックサービスはアジャイルスクラム型開発手法注1により市場環境の変化に合わせて、顧客からのシステム要件に柔軟に対応するために準委任契約でサービスを提供している。21/9期の売上高の88.8%を占めているが、売上総利益に占める割合も90%程度とのことである。長期型と短期型に分かれるが、長期型の割合がかなりの部分を占めている。

長期型は、安定的にビジネスやプロダクトを成長させるためのリソースを確保したい、プロダクトの開発や運用保守などのノウハウを継承したいといった顧客ニーズに応える運用形態である。1年契約であるが、機能を更新したり、新たな機能を付加したりすることが必要となるため、自動更新されて長期間継続するものが多い。契約が終了するケースは、サポートしている事業が終了されるとか、ビジネスモデルが陳腐化したという理由による場合が大半とのことである。

短期型は特定の案件でのリソースの確保が必要な顧客や長期型の契約を結びたいのだが、その前に試してみたいという顧客向けのサービス形態である。3カ月程度の期間となるが、その後長期型に移るケースが多いとのことである。

同社はストックサービス件数の拡大とストックサービス単価の向上を重要課題としており、件数と単価をKPI(重要業績評価指標)と位置付けている。ストックサービス件数(月次ストックサービス数の年度平均)は、19/9期31件、20/9期41件、21/9期57件と、ここ数期間は着実に増加している(図表3)。ストックサービス単価(年度のストックサービスの売上高を月次ストックサービスの年度合計で除したもの)は19/9期3,416千円、20/9期3,280千円、21/9期は2,213千円となった。21/9期に入り急落しているが、新型コロナウイルスの影響により、大口顧客向けの減員によるものである(図表3)。

◆ フローサービス
明確なプロジェクト要件のもと、予算と期間を定めて請負契約に基づき受注するものである。設計から実装まで仕様変更の少ないウォーターフォール型開発手法注2を主軸に開発を進めるサービスである。

◆ サービスの販売先
20/9期では上位5社への販売依存度が47.1%と高い水準にある。開示されている先としてはエアトリ(6191東証一部)向けが売上収益の10.7%、エアトリの子会社であるエアトリインターナショナル向けが同20.4%、エアトリグループ全体では同37.4%と高い水準にある(図表4)。ただし、21/9期第3四半期累計期間に入りエアトリグループ全体では同15.0%へと低下している。

また、同社の関係会社にあたるシンガポールの投資会社であるSoltec Investments Pte. Ltd.の子会社(C2C Pte. Ltd.)への販売も20/9期の売上収益の3.9%を占めたが、21/9期第3四半期累計期間の関連当事者取引の開示を見る限り当該取引先への販売はなくなっている。

同社グループの販売経路はWebマーケティング経由でのリード(見込み客)獲得が約4割、紹介によるリード獲得が約4割、営業部門によるリード獲得が約2割というのが大まかな内訳である。

また、同社の顧客の多くが中堅企業である。21年8月末時点で取引のある先の88%が非上場企業である。意識して中堅企業を開拓したというよりは、大手企業との取引を開始するには知名度や信用度が不足していたというのが実情のようである。顧客の業種については特に偏りがないとのことである。

◆ 費用の多くは人件費
同社グループの21/9期の売上原価と販売費及び一般管理費(以下、販管費)の合計の売上収益に占める比率は94.7%であるが、従業員および役員に対する給付費用が売上収益比72.2%となり、人件費が費用の大半を占めている。次に大きいのは減価償却費および償却費で売上収益の7.1%を占めている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。