AIメカテック<6227> 製造装置の開発・製造・販売・アフターサービスを展開
液晶ディスプレイや半導体パッケージ、次世代ディスプレイメーカー向けの製
造装置の開発・製造・販売・アフターサービスを展開
業種: 機械
アナリスト: 阪東 広太郎
◆ 液晶ディスプレイ向けが売上の約7割を占める製造装置メーカー
AIメカテック(以下、同社)グループは、液晶ディスプレイ(LCD)製造装置等の「LCD事業」、半導体パッケージの実装に用いられるはんだボールマウンタ装置等の「半導体関連事業」、産業用のインクジェット・プリンタ(IJP)製造装置などの「IJPソリューション事業」の3事業において、各種装置の開発・製造・販売及びアフターサービスを行っている。21/6期第3四半期累計期間における売上構成比は、LCD事業68.0%、半導体関連事業14.1%、IJPソリューション事業17.9%である(図表1)。
同社は、90年に茨城県龍ケ崎市において操業を開始した日立テクノエンジニアリングの竜ヶ崎工場を母体としている。日立テクノエンジニアリングは13年に日立製作所(6501東証一部)に吸収合併されたが、日立製作所は、液晶パネル等製造装置の事業をノンコアビジネスと判断し分社化を決定、16 年7 月に新設分割によって同社を設立し、液晶パネル等製造設備事業を 承継させるとともに、同社の株式の大半をポラリス・キャピタル・グループ(東 京都千代田区)が新たに設立した会社に譲渡した。
同社グループは同社と連結子会社である中国の南京新創機電科技有限公司の2 社からなる。
同社の拠点は、茨城県の龍ケ崎市に本社および工場、同じく守谷市にサテライト工場、台湾の台北支店が存在する。工場およびサテライト工場にて、3 事業の製品が製造されている。台北支店は04 年に台湾事務所として設立され、主に、台湾に存在する半導体工場やLCD 工場への営業やアフターサービを担っている。
南京新創機電科技有限公司は、主にLCD 事業において、中国全土の顧客に対して設備の納入・据付・アフターサービス行っている。
◆ LCD 事業
テレビやスマートフォン等のLCD パネル生産工程で使われるシール塗布装置、液晶滴下装置、真空貼合せ装置等の開発・製造・販売及びアフターサービスを行っている。シール塗布装置は、細線塗布技術を応用し、対象となる基板上にシール剤(接着剤)を高速・高精度に塗布する装置である。液晶滴下装置は、微量IJP 塗布技術を応用し、液晶剤をパネルに高精度に塗布する装置である。真空貼合せ装置は、高精度貼合せ技術を応用し、真空中で2 枚のガラス基板の間に液晶を封じ込めるための装置である。
同社グループは、新規設備の開発・販売に加えて、これまで納入してきた設備について、プロセスサポート(既に納入した設備の最適運用サポート、新製品の立上げを目的とした材料選定、プロセスの検証)、リニューアル提案(最新の製品を製造するための改造や生産能力向上を目的とした提案活動) 等のLCS(ライフサイクルサポート)活動を展開している。同社によると、20/6 期における売上高構成は、新規設備が60%、LCS 関連が40%である。過去導入した装置について、高機能・高解像度のパネル需要に対応する改造・リプレイス需要を受けて、LCS 関連の売上構成は18/6 期の17%から上昇傾向にある。
同社グループの主な顧客は、BOE Technology Group やChina Star Optoelectronics Technology いったLCD パネルの大手中国メーカーである。同社の中国子会社や台湾支店、販売代理店が、設備を既に導入している顧客の設備増強やメンテナンスのタイミングを把握している。新規設備については受注から納品までは約5 カ月から8 カ月である。
◆ 半導体関連事業
半導体関連事業では、半導体パッケージの実装に用いられる、はんだボールマウンタ装置の開発・製造・販売及びアフターサービスを行っている。
はんだボールマウンタの利用は00年代から本格化し、半導体の微細化・高集積化が進む中、半導体パッケージの高密度・薄型化に適したはんだボールマウンタの利用が拡大している。同社グループは、ボール搭載技術とリペア技術を応用し、量産設備を提供している。
同社グループの主な顧客は台湾のUnimicronや韓国のSamsung Electro-Mechanicsのような半導体基板メーカー、Intelのような垂直統合型デバイスメーカーである。同社によると、顧客の設計部門ではんだボールマウンタ装置について必要なスペックを決め、その情報に基づき複数の装置メーカーが入札して受注するというのが通常の取引形態とのことである。受注から納品までの期間は約3カ月から6カ月である。
◆ IJPソリューション事業
IJPソリューション事業は、IJP応用分野、フィルム応用分野の研究開発成果を製品に展開し、生産プロセスと設備を提案している。同社グループは、主にIJP応用分野、フィルム応用分野の2分野で事業を展開している。21/6期第3四半期累計期間においては、IJP応用分野がIJPソリューション事業の売上高の大半を占めている。
IJP応用分野では、有機ELパネルを始めとする次世代パネルの量産化に向けたプロセスと設備を提案している。IJP技術は、微小な液滴を対象物にダイレクトに塗布、印刷する技術で、LCDに代わる有機ELディスプレイ(OLED)や量子ドットディスプレイ(QD)など次世代ディスプレイの製造に用いられる。
フィルム応用分野ではフレキシブルデバイス注1やデジタルサイネージ注2に向けたプロセスと設備の提案を行っている。
IJPソリューション事業における、同社グループの主要顧客は、韓国のSamsung Displayや、台湾のAU Optronics、Foxxconなど次世代ディスプレイの大手企業である。次世代ディスプレイは開発・試作段階のものが多く、ディスプレイメーカーは装置メーカーや材料メーカーと共同で開発を行うことが多い。このため顧客企業の設計部門と直接取引することが多い。顧客が複数の装置メーカーに問い合わせをする際に、そのうちの1社として同社グループにも声がかかるようである。問い合わせを受けてから受注までの期間は約1カ月から2カ月であり、受注から納品までの期間は約5カ月から7カ月である。
共同開発においては、装置だけでなくプロセス開発力や試作テスト環境が求められることから、同社グループは、18年7月、プロセス開発センタを本社敷地内に開設した。顧客や大学の研究者、材料メーカーと連携し、IJP塗布技術の新たな用途の拡大、量産化に向けた技術の確立などに取り組んでいる。
◆ 顧客の構成
同社グループの売上高は少数のLCDパネルメーカーに集中する傾向がある(図表2)。21/10期第3四半期累計期間においては、売上高上位4社で62.3%を占めている。顧客の設備投資のタイミングに対応して、売上高上位の企業が変わる傾向にある。