サーキュレーション<7379> 稼働プロジェクトの増加と費用抑制で21年7月期は黒字回復の見込み

2021/08/16

企業の経営課題解決を支援するプロ人材のシェアリングサービスを提供
稼働プロジェクトの増加と費用抑制で21年7月期は黒字回復の見込み

業種: サービス業
アナリスト: 藤野 敬太

◆ プロ人材を活用して企業の経営課題を解決するシェアリング サービスを提供
サーキュレーション(以下、同社)は、専門性が高いプロ人材の経験や知見を活用して企業の経営課題の解決を支援するサービスを提供している。顧客企業が組成したプロジェクトにプロ人材をアサインすることで、顧客企業の経営課題を解決していくという手法が基本形である。顧客企業の経営課題と、それを解決するプロ人材をマッチングするサービスとも言え、プロ人材を必要な期間のみ活用できるという顧客企業にとってのメリットと、雇用以外での働き方という選択肢が得られるというプロ人材にとってのメリットを実現している。

同社はプロシェアリング事業の単一セグメントだが、サービスごとに売上高を分類している(図表1)。直近では、ビジネス領域全般の経営課題を対象とした「プロシェアリングコンサルティング」サービスが約6割、CTO(最高技術責任者)等のITエンジニア分野のプロ人材を対象とした「FLEXY(フレキシー)」サービスが3割強を占めている。

◆ 提供するサービス
同社の顧客は経営課題を抱える企業であり、企業の経営課題の領域に応じて、4つのサービスラインを用意している(図表2)。

細かい部分での違いはあるが、4つのサービスのうち、「Open Idea」サービス以外の基本的なサービスの流れは以下の通りである。

(1) 同社のコンサルタントが企業経営者との面談を通じて経営課題を抽出する
(2) 経営課題を解決するためのプロジェクトの要件定義を行う
(3) 顧客企業がプロジェクトを組成する
(4) 同社に登録している中から適任なプロ人材を参画させる

「Open Idea」サービスは新規事業開発を支援するもので、上の(1)~(3)の流れはほぼ同じだが、顧客企業の名前を伏せた状態で、新規事業の事業アイデアを登録しているプロ人材から募る形で進められる。

◆ 顧客企業の観点
同社のサービスを利用する顧客企業のメリットとしては、以下の点が挙げられる。

(1) 準委任契約注で月額制のため、人材紹介等で必要な「年収の〇%」というような初期費用がかからない
(2) 契約期間が1年より短いことが多いため、経営課題の変化やプロジェクトの進行に合わせてプロ人材を入れ替えることが可能である
(3) プロジェクトメンバーの主体が顧客企業の人材であるため、ノウハウが顧客企業の社内に蓄積される
(4) 働き方が多様なためになかなか転職市場に出てこないプロ人材の活用が可能となる

こうした独特な仕組みが受け、取引社数及びプロジェクト数を順調に伸ばしてきた(図表3)。

新規案件の獲得について、特に新型コロナウイルス感染症が問題となった後は、ウェビナーを核とするマーケティングにシフトしている。また、最近は、顧客の紹介を受けることを目的としたアライアンスに注力している。21年4月末時点で全国の半数弱となる45行の地方銀行とアライアンス契約を締結しており、地方の案件の開拓が進められている。

◆ プロ人材の観点
同社では、プロ人材を「高い専門性を持ち、高度な経営課題を解決できる人材」と定義している。同社のサービスは、雇用以外の働き方を志向するプロ人材に就業機会を提供するサービスとも言える。同社は、こうしたプロ人材に同社のサービスに登録してもらうことにより、顧客企業の経営課題を解決する人的リソースとしている。なお、登録時には面談を行っており、経歴や保有資格だけでは測れない強みを見極めている。

登録プロ人材は順調に増加し、21/7期第3四半期末時点での登録プロ人材は17,116人にのぼる(図表4)。

◆ 最大の競争力の源泉は自社データベース
同社のサービスを、就業機会を得たいプロ人材と、プロ人材を活用したい企業とをマッチングするサービスと捉えると、そのマッチングの仕組みの土台となっているのが、独自に構築したデータベースである。このデータベースには、プロ人材の能力と企業の経営課題及び過去のプロジェクトに関する情報が蓄積され、この情報を活用することで、今後のマッチングの精度向上と、顧客企業及びプロ人材の満足度向上につなげている。

◆ 収益構造
同社は顧客企業より月額での報酬を受け取る。そのため、同社の売上高は、「プロ人材の月額単価×稼働月数×稼働するプロ人材の人数」で算出される。プロ人材の月額単価は、能力やスキルのほか、稼働頻度によっても変わり、例えば隔週1日で12カ月稼働の場合は月額30~50万円、週1日で18カ月稼働の場合は月額50~60万円、週複数日で6カ月稼働の場合は月額60~80万円というのがひとつの目安となっている。

この売上高に対し、同社からプロ人材に支払われる報酬が業務委託費として原価に計上される。

>>続きはこちら(1.14 MB)

一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。