Speee<4499> 産業のデジタルシフトを促進

2020/07/17

データ資産を活用したマーケティング活動支援とIT化の遅れた旧態依然とし
た産業のデジタルシフトを促進

業種: 情報・通信業
アナリスト: 髙木 伸行

◆ データ駆動型の事業開発を続けることで産業領域の変革を目指す
Speee(以下、同社)グループは、同社及び連結子会社であるDatachain、Velocity、ThinQ Healthcare及びインドネシアのPT.SPEEE RECRUITMENT NUSANTARAの5社で構成されている。経験や勘に頼るのではなく、データドリブン注1な事業開発を継続することで様々な産業領域を変革すること(デジタルトランスフォーメーション)を目標に掲げている。

同社グループの事業セグメントは創業からの事業である「MarTech(マーテック)事業」及び「X-Tech(クロステック)事業」、「Data Platform(データプラットフォーム)事業」、「その他」に区分されている(図表1)。

ここ数期間のセグメント別の損益状況を見てみると、売上高の3分の2近くを占めるMarTech事業の利益率は安定的に推移している一方で、売上高の3分の1を占めるX-Tech事業は20/9期に入り急速に採算を改善してきている。Data Platform事業及びその他事業の損益は水面下の状態にある。

◆ MarTech事業
MarTech事業ではコンサルティングとプロダクトという2形態で、自社で蓄積したデータと世の中に無数にあるデータや解析法を収集・整理して活用方法を導き出すことにより顧客企業の成果の最大化に資することを目指している。コンサルティングサービスとしてデータ分析を元にしたマーケティングソリューションサービスを提供する他、プロダクトとしてデータを活用したマーケティング施策のオペレーション代行等を行っている(図表2)。

コンサルティングサービスの主要サービスとしては「Webアナリティクス」、「トレーディングデスク注2」、「PAAM(パーム)」が挙げられる。5月末時点で首都圏を中心に293社の顧客に対してマーケティング支援を行っている。

Webアナリティクスでは、検索エンジンを通じた顧客サイトへの来訪数の増加やコンバージョン率注3を向上させるためにサイトの掲載内容や構造を改良することを目的としたコンサルティングを行い、顧客から毎月一定額の報酬を受け取っている。

トレーディングデスクにおいては、運用型広告を中心とするプロモーション手法を通じて顧客サイトへの集客を行うための課題抽出、戦略立案、広告の運用まで行い、広告の出稿量に比例した報酬を得ている。

PAAMは予測分析マーケティング(Predictive Analytics And Marketing)の略称で、Webアナリティクスの進化版のサービスある。PAAMにおいては散在する顧客の社内外のデータを収集・統合・可視化するとともに、広告の費用対効果の最適化を始めとするマーケティングへの活用方法を提案している。

プロダクトの主要サービスとして、ネイティブアド配信プラットフォームである「UZOU(ウゾウ)」を提供している。UZOUはネイティブ広告注4を扱うアドネットワーク注5で、5月末時点で198社の広告主や642の媒体に利用されている。広告主からは広告出稿量に比例した報酬を得ている。また媒体の特性に合わせた広告審査基準を設定することで媒体のブランド価値を守るよう努めていることや、媒体のイメージを損ねない広告の配信を行っていることから、媒体導入後は90%を超える継続率を維持しており、安定的な広告枠の確保につながっているようである。

UZOUの他には、集客データの分析・マーケティング施策の統合管理を可能にする「Markeship(マーケシップ)」を提供している。

◆ X-Tech事業
IT化の進んでいない古い業態には、消費者と事業者の売買経験が蓄積されておらず、バリューチェーンに非効率性が多数存在している場合が多い。X-Tech事業では非効率の要因や一連の企業活動の中で生産性に影響を及ぼしている課題を特定し、ITを活用してソリューションを提供している。不動産売却のマッチングサービス「イエウール」と外壁リフォームのマッチングサービス「ヌリカエ」がX-Tech事業の主力サービスである(図表3)

イエウールは不動産の売却を検討している個人と最大6社の不動産業者をマッチングする不動産売却一括見積サイトである。不動産売却希望者をサイトに集客し、地域や物件に関する情報を受け取り、条件に合う不動産業者に紹介している。売却希望者は複数の不動産業者の見積価格を比較でき、不動産業者は売却希望者の情報を入手できるというメリットがある。1,600社を超える大手から地元密着型の不動産業者が顧客となり、「売却希望者の紹介」1件ごとに報酬を得ている。

ヌリカエは外壁塗装一括見積サイトで、住宅の外壁塗装工事を検討する個人を複数の外壁塗装業者に紹介するサービスである。外壁や屋根のリフォーム塗装を考えている個人をサイトに集客し、オンラインで物件に関する情報を受け取り、更にオフライン(電話)で同サイトの専門アドバイザーが希望条件等を詳しく聞いた上で、条件に適合する外壁塗装業者を紹介している。加盟業者は700社を超えており、「ユーザーの紹介」及び「紹介したユーザーの成約」毎に報酬を受け取っている。

X-Tech事業としては、イエウール、ヌリカエの他に、18年11月より開始した外壁塗装以外のリフォーム分野でサービス業者を紹介する「ナコウド」等がある。

◆ Data Platform事業
18年3月に設立されたDatachainが同事業を行っている。ブロックチェーン技術によるデータ取引の透明性の向上やNFT(代替不可能なトークン)によって所有権移転の効率化や信頼性の確保といったソリューションを提供している。

◆ その他事業
その他事業としては、PT.SPEEE RECRUITMENT NUSANTARAで求人広告の制作・掲載を行うWebサービスをインドネシアで運営しているのと、ThinQ Healthcareが企業向けに従業員のヘルスケア領域に対してテクノロジーを活用したサービスの運営を行っている。

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