コパ・コーポレーション<7689> 売士を活かしたマーケティング戦略が特徴

2020/06/29

TV通販、インターネット通販などで生活用品を中心に実演販売を行う実演販
売士を活かしたマーケティング戦略が特徴

業種:卸売業
アナリスト:佐々木 加奈

◆ 実演販売関連事業の単一セグメント
コパ・コーポレーション(以下、同社)は、現社長である吉村泰助氏により1998年10月に設立され、99年11月に生活用品の販売を開始した。吉村氏は、國學院大学在学中に実演販売のアルバイトを経験し、卒業後は車両用の内装材やエチケットブラシなどの製造・販売を行う日本シール(大阪府大阪市)の専属販売士として全国の百貨店で実演販売を行った。実演販売とは、実演販売士が消費者の目の前で実際に商品を使い、使用方法や特徴、効果や利点などを巧みな口上でアピールし、購入を促す販売手法である。

03年5月にインターネット通販を、同年11月にTV通販での実演販売を開始した。10年5月にインターネット通販番組「ワォ!の王様」を開始し、同年12月にユーザーがリアルタイムで参加できる動画配信システム「ワォLive」を開始した(「ワォ!の王様」、「ワォLive」は終了し、現在は運営していない)。18年4月に自社直営店舗「デモカウ」を東京ソラマチに出店し、同年5月に自社ECサイト「デモカウ」の運営を開始した(図表1)。

同社には連結子会社はなく、実演販売関連事業の単一セグメントであるが、売上高は販売チャネルに応じて、TV通販、ベンダー(小売業者)販売、インターネット通販、セールスプロモーション、デモカウ、その他に区分されている(図表2)。売上高の10%を超える販売先は、19/3期がジュピターショップチャンネル13.6%、朝日放送グループホールディングス(9405東証一部)子会社のロッピングライフ12.4%、楽天(4755東証一部)11.1%、アマゾンジャパン10.0%、20/3期は19/3期の大手取引先との取引はあるものの、10%を超えるのはロッピングライフ15.5%のみである。大手取引先はいずれも商品 の卸売先である。

1)TV 通販
同社の実演販売士が出演する地上波テレビの通販番組や、衛星放送の24 時間テレビショッピングチャンネルといったTV 通販専門チャンネルで販売する商品をTV 通販番組運営会社に卸売販売している。TV 通販番組は放送時間が長く、実演販売士による深掘りした商品説明が可能なため、商品の使用価値をアピールしやすく、ベンダー販売やインターネット販売、直営店舗での販売促進につながる広告効果が高い。

2)ベンダー販売
百貨店や量販店の店頭で販売する商品を卸売販売している。店頭での販促活動として、同社の実演販売士が販売を行うことに加え、店頭で視聴するための販促用ビデオ映像(同社の実演販売士が出演)の提供も行っている。

3)インターネット通販
Yahoo!ショッピング、楽天市場、Amazon などの大手EC サイトのショッピングモールで、同社の実演販売士の出演する動画で商品の特徴や使い方を説明して商品を販売している。

4)セールスプロモーション
企業などからの依頼を受け、展示会などのイベントへの実演販売士の派遣や、セミナーなどへの講師の派遣を行っている。これまで依頼を受けた企業は、自動車メーカー、電機メーカー、通信事業者、食品メーカーなど多岐にわたっている。

5)デモカウ
「デモンストレーション×買う」をコンセプトとする直営店舗「デモカウ」、EC サイト「デモカウ」で商品を販売している。直営店舗「デモカウ」は、東京スカイツリータウン内の商業施設、東京ソラマチに出店しており、生活雑貨や日用品、美容商品を中心に、実演販売士が毎日店頭で実演販売を行っている。直営店舗の展開は、多くの消費者に実演販売を体験してもらい、同社の知名度向上につなげる狙いがある。また、新商品のテスト販売を行って有効な販売戦略を策定する、顧客のニーズを汲み上げて商品企画に繋げる、実演販売士の育成の場とする、メディアに取材の場を提供するといった機能も担っている。

◆ 主に生活用品を実演販売士が販売
同社が主に取り扱う商品は生活用品で、代表的な商品が掃除用クロス「パルスイクロス」、コーティングフライパン・包丁など「スーパーストーンバリアシリーズ」、かかと角質削り・爪磨きなど「5 セカンズシャインシリーズ」などである。これらの商品の使用方法や特徴などを、実演販売士が巧みな口上に身振り手振りを交えてアピールして消費者の購買意欲を引き出し、販売につなげている。

同社は、「売の極意塾」という名称の実演販売士育成講座を定期的に開催し、最新の心理学や脳科学に基づく実演ノウハウや、関連する法令知識を身に付けるとともに、顧客のニーズを捉えて商品企画につなげることができる人材を育成することに注力している。「売の極意塾」には、同社の役職員だけではなく、芸人や歌手といった様々な経歴を持つ人物が参加しており、ノウハウを身に付け、実演販売士の認定を受けた人材は、店頭やイベントでの実演販売やセミナーの講師、販促動画への出演などで活躍している。

同社の社員以外が実演販売士を目指す場合、①応募、②簡単なオーディションを兼ねた説明会に参加、③双方の同意のもと同社と業務委託契約を締結、④「売の極意塾」実演販売士育成講座基礎コースを受講、⑤「売の極意塾」実演販売士育成講座マスターコースを受講、⑥販売現場で実技を学ぶという段階を経て実演販売士に認定される。説明会や各講座の受講料は無料である。20年3月末時点で39名の実演販売士がいるが、同社の社員が10名、業務委託契約による者が29名となっている。

また、同社は実演販売の力を最大限に生かすため、「3Dマーケティング販売戦略」という独自の販売戦略を取り入れている。「3Dマーケティング販売戦略」とは、実演販売士がテレビの通販番組で商品の実演販売を行うことやバラエティ番組で商品を紹介することにより需要の活性化を図り、ベンダー販売、インターネット販売など他の販売チャネルでの販売につなげていく手法である(図表3)。商品面では、プライベートブランド(PB)商品や独占販売商品注1を取り扱うことで、商品の値崩れや他社との競合を回避している、

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