日本インシュレーション<5368> 国内の安定的事業基盤の維持と中長期的な東南アジアへの進出本格化が焦点

2020/04/07

熱に強い特性を持つゾノトライト系けい酸カルシウムで高シェアのメーカー
国内の安定的事業基盤の維持と中長期的な東南アジアへの進出本格化が焦点

業種:ガラス・土石製品
アナリスト: 藤野 敬太

 

 ◆ ゾノトライト系けい酸カルシウムの有力メーカー
日本インシュレーション(以下、同社)は、ゾノトライト系けい酸カルシウムを 基材とした建材・資材の販売と、関連する工事を行っている。けい酸カルシ ウムは熱に強いことが特徴だが、ゾノトライト系けい酸カルシウムは、その中 でも特に熱に強い素材とされる。ゾノトライト系けい酸カルシウムの人造合成 技術は同社が 1966 年に世界に先駆けて発明したもので、欧米の建材メー カーに技術供与をした実績も有している。

熱に強いという素材の特性から、同社の製品は、火災時の耐火を目的とし た建築物の素材として、また、熱を逃がさない保温の目的でプラント機器の 素材として用いられる。なお、同社は、単に製品を販売するだけでなく、製 品を用いた施工も行っている。

同社の事業は、建築関連、プラント関連の 2 つの報告セグメントに分類され る(図表 1)。売上高ではプラント関連が 6 割弱を占めるが、建築関連のセグ メント利益率の方が高いため、営業利益に対する貢献はプラント関連がや や高い程度になっている。

◆ けい酸カルシウムについて
けい酸カルシウムには、従来からの製法であるトバモライト系と、同社が発明 したゾノトライト系が存在する。両者は、結晶生成過程が大きく異なる。具体 的には、(1)ゾノトライト系の方が製造期間が短い、(2)トバモライト系の製造 過程で従来使用していたアスベスト注 1 をゾノトライト系では使わなくて良い、 (3)耐熱温度の上限はトバモライト系が約 600℃であるのに対し、ゾノトライト 系は約 1,000℃であり、ゾノトライト系の方が耐熱性が高いという点が挙げら れる。

同社は、以前はトバモライト系の製品も製造していたが、ゾノトライト系を発 明したため、現在はトバモライト系の製品は製造していない。

◆ 建築関連
建築関連では、耐火精度が高い「タイカライト」を中心に、耐火被覆材や内 装仕上材といった建材を取り扱っている。耐火被覆材は、熱に弱い鉄骨の 梁、柱、免震装置といった建物の内部の構造部材を覆い、火災時に構造部 材を火炎や熱から守るために用いられている。

建築基準法に基づく耐火構造認定を取得した製品群であり、建築基準法 に基づく防火・耐火処置を必要とするオフィスビル、商業施設、物流施設、 工場、交通施設等の非住居の建築物に用いられる。

◆ プラント関連
化学プラントや発電所には、数百度の気体や液体が通過するボイラーや反 応器といった熱設備機器や高圧蒸気用の温熱配管等が多数存在する。こう した機器には、内部の熱を逃がさないための保温材が必要となる。同社は、 熱遮断性が高い「ダイパライト」を中心とした保温材を提供している。

また、高い耐熱性が求められる工業炉の断熱材や、蓄熱暖房機、スチーム オーブンレンジ等向けの断熱材も提供している。

◆ 製品製造から施工までの自社一貫管理
建築関連、プラント関連とも、同社は単に製品を販売するだけでなく、製品 を用いた施工も自社で行っている。そのため、建築関連、プラント関連とも、 売上高は販売売上と工事売上で構成される。

施工を自社で行うことにより、顧客が抱える案件に対して設計プロセスから 関与することが可能となり、顧客との関係性の強化に貢献している。同時に、 製品製造と施工が連携することにより、製品の製造段階で施工現場での作 業生産性を上げる工夫が可能となったり、納期調整がしやすくなったりなど、 収益性と品質管理の精度の向上を図ることができる体制が構築できている。

◆ 製品の生産
製品の生産は、国内では岐阜県瑞穂市の岐阜工場と、三重県いなべ市の 北勢工場の 2 カ所で行っている。

また、海外は、連結子会社のジェイ アイ シー ベトナム有限会社が運営す る、ベトナムアンザン省の工場が生産拠点となっている。ベトナムへは、中国 メーカーが供給する低価格のトバモライト系けい酸カルシウムの製品に対応 するために 14 年 9 月に進出したが、もみ殻をバイオマス注 2 として活用する 環境配慮型製品として供給している。現在は、プラント関連の保温材の生産 を行っており、日本に輸出している。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
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