BuySell Technologies<7685> ブランド認知の向上と査定員の採用強化等により継続的な利益成長を目指す

2019/12/30

着物・切手・貴金属・ブランド品等の中古品の出張買取サービス「バイセル」を展開
ブランド認知の向上と査定員の採用強化等により継続的な利益成長を目指す

業種: 卸売業
アナリスト: 大間知 淳

◆ 中古品の出張買取サービス「バイセル」を展開
BuySell Technologies(以下、同社)は、着物、切手、古銭、貴金属、ジュエリー、バッグ・時計等のブランド品、骨董品、毛皮、お酒等の販売時に高単価が見込めるものを対象として、主に一般消費者の自宅に訪問して買取るサービスである「バイセル」を展開している。買取った商品は、大部分が国内において、外部業者や消費者に販売されている。

買取形態としては、出張訪問、宅配、持込の3種類があるが、出張訪問が中心である。出張訪問買取と親和性が高いシニア富裕層からの査定依頼が多く、50代以上の顧客からの仕入比率(18/12期)は75%となっている。査定依頼の理由については、遺品整理、生前整理、自宅整理での利用が63%を占めている(図表1)。

シニア富裕層を中心とした顧客との接点を増やすため、インターネットとテレビCM等のマスメディアを駆使したクロスメディアマーケティングに積極的に取り組んでいる。結果、査定依頼件数は16/12期の169千件から18/12期には247千件に拡大している。

同社は、自社でコールセンターを運営している。約100名のスタッフが売却希望商材の確認や訪問日時の調整に留まらず、同社サービスの概要や、査定取扱が可能な商材の説明を行うことで、顧客の安心感を高めている。

出張訪問買取では、関東、中部、近畿、中国、九州に位置する10センターに約250名の査定員を配置しており、全国各地を訪問する体制を構築している。都心立地が多い買取店舗を利用しにくい地方の顧客や、大量の着物等、持ち運びの面で店頭買取や宅配買取では扱いにくい商材の買取を希望する顧客からの依頼にも柔軟に対応できる点が出張訪問買取の強みとなっている。

同社は、コンプライアンス重視の観点から査定員のみでは契約を決済出来ないようにしている。査定員は、顧客の自宅で査定を行ない、売買契約書を作成した後、自社のコンプライアンス専門部署に電話をかけ、顧客と契約決済権限を持つ同部署の担当者が電話で契約内容の確認等を実施した上で、売買契約を締結する業務フローを構築している。

なお、同社では、出張訪問する査定員の現場査定に加え、当該査定員からモバイル端末を利用して送られる画像や動画等の情報を基に、真贋及び鑑定を専門とする社員がチェックする査定体制を構築している。

買取商品は、千葉県に所有する約4,000平方メートルの倉庫に配送され、100名を超える社員・アルバイトスタッフにより検品から出荷まで商材毎に管理されている。

販売では多岐にわたる販路を使い分けている。業者への販売(以下、toB販売)の販路としては、着物を対象とした業者向け自社オークション「バイセルオークション」のほか、貴金属、ジュエリー、切手等を対象とした古物市場や他社オークションがある。一般消費者への販売(以下、toC販売)の販路としては、着物を対象とした自社ECサイト「バイセルオンライン」、着物、ブランド品等を対象としたECモールへの「バイセルオンライン」等の出店(ヤフー!ショッピング、楽天市場)、着物を対象とした百貨店での催事等がある。現状ではtoB販売の売上高比率が約9割を占めている。

18年7月に開始したバイセルオンラインは、着物20,000点以上、ブランド品2,000点以上を常時出品している。

また、18年11月に新規事業として、利用者が所有する車の資産価値の維持、向上を目的とする車査定・買取アプリ事業「CAPPY(キャッピー)」を開始した。

同社は、着物、切手、古銭、貴金属、ジュエリー、バッグ・時計等のブランド品、骨董品、毛皮、お酒等、販売時に高単価を確保できるものを買取対象にしているが、同社ではこれらをラグジュアリー商材と呼んでいる。同社サイトによれば、18/12期における同社の査定依頼商材ランキングは、1位着物55%、2位切手12%、3位古銭10%となっており、着物の年間買取枚数は約100万枚に達している。

◆ 出張訪問件数と「出張訪問当たり変動利益」の増加を目指している
同社の売上総利益率は、18/12期が62.9%、19/12期が63.8%と、卸売業との比較はもとより、ブランド品リユースを展開する上場企業と比べても非常に高い。これは、販売費及び一般管理費(以下、販管費)に計上されている人件費、広告宣伝費、旅費交通費等の出張買取サービスを展開する上でのコスト負担をカバーするためであるが、高い売上総利益率を確保出来ていることは同社のビジネスの特性を良く表している。

同社は、経営指標として、出張訪問件数と「出張訪問当たり変動利益」を重視しており、その増加を目指している。同社は、売上総利益から広告宣伝費を控除したものを変動利益と定義しているが、これは売上高から変動費(売上高に連動する費用)を控除して算出される限界利益に近い概念である。出張訪問件数の拡大により買取契約数を増やす一方、訪問1回当たりで計算した売上総利益の拡大と広告宣伝費の抑制によって、利益率の上昇を追求する戦略と言えよう。

実際、18/12期において、出張訪問件数は158,197件(前期比14.0%増)、出張訪問当たり変動利益は28,615円(同7.1%増)と、両方の数値を伸ばすことで、変動利益は4,526百万円(同22.1%増)と大幅に増加した。変動利益の伸びは、総費用から売上原価と広告宣伝費を控除したものである固定費の伸びを上回ったため、営業利益率は前期の3.8%から4.9%に上昇した(図表2)。

なお、固定費の中心は従業員の人件費であるが、18/12期の給与及び手当は1,745百万円(前期比21.6%増)であった。従業員数は、16/12期末341名、17/12期末356名、18/12期末473名と増加基調で推移している。

同社は店舗を保有していないため、18/12期末の有形固定資産は181百万円(総資産の5.8%)、敷金差入保証金は119百万円(同3.8%)にとどまっている。棚卸資産の残高も494百万円(同15.7%)に過ぎず、18/12期の棚卸資産回転率(売上原価÷期中平均棚卸資産)は8.5 回、総資産回転率(売上高÷期中平均総資産)は3.7 回と高い。これらの数値は、同社と同様に業者への卸販売を主体とし、ブランド品リユース会社の中でも高い資産効率を誇るSOU(9270 東証マザーズ)の数値を上回っており、同社の特色の一つと言える。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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