東京ソワール(8040) 中期経営計画スタートに期待

2025/04/09
 

小泉 純一 代表取締役社長

株式会社東京ソワール(8040)

 

 

企業情報

市場

東証スタンダード

業種

繊維製品(製造業)

代表者

小泉 純一

所在地

東京都中央区銀座7-16-12 G-7ビルディング 7階

決算月

12月

HP

http://www.soir.co.jp

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

840円

3,860,000株

3,242百万円

4.9%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

45.0円

5.4%

95.85円

8.8倍

2,952.78円

0.3倍

*株価は3/28終値。24年12月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2021年12月

11,822

-1,185

-911

299

88.56

0.0

2022年12月

14,241

339

449

519

152.58

20.0

2023年12月

15,026

520

617

798

233.35

30.0

2024年12月

15,700

243

347

500

145.40

45.0

2025年12月(予)

16,700

300

400

330

95.85

45.0

*予想は会社予想。単位:百万円、円。2024年12月期から連結決算

 

 

株式会社東京ソワールの2024年12月期決算概要、中期経営計画、小泉社長へのインタビューなどをご紹介致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2024年12月期決算概要
3.2025年12月期業績予想
4. 2025~2027年 中期経営計画
5. 小泉社長に聞く
6.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 婦人フォーマルウェアの製造、販売並びにこれに附随するアクセサリー類の販売を主要な業務とする。製品は縫製加工業者(国内・海外工場)や商社から仕入れ、主に全国の百貨店及び量販店等に卸売販売している。一部はネット販売も含めた直営店舗による直接販売も行う。近年は事業領域の拡大に取り組んでいる。
  • 24/12期の売上高は前期比4.5%増の157億円。24/12期から連結対象となった(株)キャナルジーン(ライフスタイル事業)を除くとほぼ横ばいだった。営業利益は同53.3%減の2億43百万円。販管費は販売促進費等の変動費増加に伴い同6.8%増加した。なお、24/12期は中期経営計画最終年度にあたり、売上高155億円、営業利益2億50百万円を目指していた。売上高は、計画策定時には未確定だった取引条件の変更に伴う一時的な売上減少等があったものの、計画を達成した。営業利益は22/12期に前倒し達成。24/12期については成長に向けた戦略投資を実施する中、コストの維持・抑制の施策を講じたことにより計画並みだった。前期比15.00円/株増配となる45.00円/株の期末配当を実施。配当性向は30.9%。
  • 25/12期は、売上高が前期比6.4%増の167億円、営業利益は同23.4%増の3億円を見込む。利益面では、効率性を重視して営業利益率を前期1.5%から1.8%へ拡大させる考え。配当は前期と同じ45.00円/株の期末配当を実施する予定。予想配当性向は46.9%。
  • 25/12期より27/12期を最終年度とする中期経営計画が始まった。フォーマル事業では、フォーマルライフのリーディングカンパニーを目指すとともに、フォーマルの枠を超えたオリジナルアイテムの拡充も図る。ライフスタイル事業では、顧客接点の拡大、新規顧客の獲得に向けて、新規出店およびサービスの拡充に取り組む。27/12期「売上高180億円、営業利益5億40百万円、営業利益率3.0%」を目標としている。
  • 小泉純一社長に、同社の特長や競争優位性、新たな中期経営計画の概要、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。「不透明な環境下ではありますが、「ブラックフォーマル」のパイオニアとしての優位性を武器に、冠婚葬祭に限らない人生の節目となるライフイベントでの需要を取り込み、売上・利益の着実な拡大を目指してまいります。また、成長性と収益性の追求、IR活動強化による当社の魅力の訴求を通じて資本市場における当社の評価向上にも取り組んでまいりますので、フォーマルライフのリーディングカンパニーとして長期的な成長を目指す当社を、是非中長期の視点で応援していただきたいと思います。」とのことだ。
  • 小泉社長の就任時はコロナ禍真っ只中だった。こうした中で社長就任から1年を経ずして中期経営計画を発表。それでも最終年度である24/12期については目標としていた水準をしっかり達成させた。また、コロナ禍が落ち着いた後24/12期にはキャナルジーンを子会社化し、さらには「kuros’」を新規出店しており、事業領域も拡大させている。しっかりと実績を残した中で25/12期から新たな中期経営計画がスタートした。24/12期に手掛けた事業領域の拡大を今後さらに進めていきたい。中期経営計画を達成すればEPSは100円超が期待できる。極めて低位にとどまるPBRや高い配当利回りだけでなく、利益面からアプローチしても割安感は強い。株価の見直し余地は大きいといえそうだ。 

1.会社概要

婦人フォーマルウェアの製造、販売並びにこれに附随するアクセサリー類の販売を主要な業務とする。
製品は縫製加工業者(国内・海外工場)や商社から仕入れ、主に全国の百貨店及び量販店等に卸売販売している。一部はネット販売も含めた直営店舗による直接販売も行う。近年は事業領域の拡大に取り組んでいる。

 

【1-1 沿革】

児島絹子氏が1954年に「ソワール洋装店」を開業したのが始まり。会社設立は1969年。1971年には「黒のフォーマルウェア」に特化して展開、成長の基礎を築いた。国内外の企業との提携を経て、現在も黒が主軸だが黒以外のフォーマルウェアも手掛けている。また、フォーマルに関するアクセサリーや生活用品、食品等の販売も行っている。1986年に日本証券業協会へ店頭登録。1988年には東証二部に上場。2022年4月、東証の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行した。

 

年 月

概要

69年 1月

株式会社東京ソワールを資本金200万円で、東京都世田谷区代田2-31-6に設立

71年 4月

製品を「黒のフォーマルウェア」に特化し、その後の成長の基礎を築く

73年 1月

尼崎市に関西出張所を開設

76年 12月

福岡市に九州営業所を開設

77年 11月

名古屋市に中部営業所を開設

78年 1月

株式額面変更のため株式会社東京ソワール(旧商号寿商事株式会社)と合併

7月

札幌市に札幌営業所を開設

12月

本社を東京都港区南青山1-1-1に移転

81年 6月

川崎市に川崎商品センターを開設

82年 12月

関西営業所を、自社ビル新築(大阪市)を機に、支店に昇格

84年 12月

東京都渋谷区に表参道店を開設し、専門店営業・企画部門を集約

86年 8月

社団法人日本証券業協会東京地区協会へ株式を店頭登録

88年 8月

東京証券取引所市場第二部に上場

91年 11月

物流機能拡充のため川崎商品センターを増築

92年 1月

表参道店を新築完成

02年 5月

代表取締役社長が草野絹子氏から盛口誠司氏に交代

06年 5月

(株)ワールドとの提携

12月

海外提携ブランド「ランバン ノワール」を発表

07年 3月

代表取締役社長が盛口誠司氏から萩原富雄氏に交代

5月

東京ソワール公式通販サイト フォーマルメッセージ・ドットコム立ち上げ

8月

自己株式の消却を実施(消却前の発行済株式総数に対する割合10.32%)

10年 8月

フォーマルコンセプトショップ「フォルムフォルマ」出店開始

9月

初のアウトレット業態への常設出店

13年 3月

代表取締役社長が萩原富雄氏から村越眞二氏に交代

8月

(株)ワールドとのライセンス契約ブランド「INDIVI」を発表

15年 11月

札幌営業所(札幌市中央区)を閉鎖

18年 2月

(株)レナウンとのライセンス契約ブランド「アクアスキュータム」を発表

19年 1月

九州営業所(福岡市博多区)を閉鎖

5月

「東京ソワール レンタルドレス表参道店」を新規出店

21年 1月

中部営業所(名古屋市東区)を閉鎖

3月

代表取締役社長が村越眞二氏から小泉純一氏に交代

22年 4月

東京証券取引所の市場区分見直しにより市場第二部からスタンダード市場へ移行

8月

本社を東京都中央区銀座7-16-12(現在地)に移転
24年 株式会社設立55周年を迎え、新たな経営理念の制定を実施
24年12月 (株)キャナルジーンを子会社化

 

【1-2 経営理念】

経営理念(Mission、Vision、Value)は、創立55周年を迎えた2024年に再定義された。
常に変化する環境において、今後も成長し続けるために、これまでの経営理念の根幹となる精神を受け継ぎつつ、当社が経営を通じて果たすべき使命と目指す姿を再定義した。

 

ミッション・ビジョン・バリュー

MISSION:社会的使命 大切な想いの、すぐそばに。

大切な人を想う。東京ソワールは、そんな大切な想いのすぐそばで、本質にこだわった価値を提供し、一人ひとりの想いが調和した社会を実現します。

VISION:目指す姿 人を想う気持ちに寄り添い、“生きる”をもっと、美しく。

人生の節目と日々の暮らしにおける「人を想う気持ち」に寄り添うことで、誰もが周囲との調和を大切にしながら、自分らしく凛と美しく生きられる世の中へ。それが、東京ソワールが考えるウェルビーイングです。

私たちは、これまでもこれからも「人を想う気持ち」を大切にしながら、生活者、従業員、取引先、株主、そして社会や地球環境のウェルビーイングの実現に貢献し続けます。

VALUE:大切にする価値観 本質へのこだわり / 文化を創り上げた誇り / すべてに真摯な姿勢

ともに創るチーム力 / 新しいことへの挑戦

 

原点
創業からの原点として、以下を掲げている。

 

Motto

モットー

「自分の人生に目標を持って、いきいきと仕事をしましょう。」

Founding Spirit

創業精神

「誠実、責任、努力」

Origin

原点

日本女性が過去何百年もかけて作り上げてきた日本の着物の文化と技術とその時代に合った最高のマナーに叶った着こなしを受け継いで現代においても日本女性を一番美しく見せる洋服作り。そしてこれからも一番その時代に合った国際的に一流で通る洋服作りに邁進する。

 

【1-3 セグメント】

祖業であるフォーマルウェアを卸売・小売などで販売するフォーマル事業が主軸。また、2024年に子会社化した(株)キャナルジーンを中心として、店舗やECで販売するライフスタイル事業が24/12期より新たに加わり、現在は2つのセグメントで展開している。

 

 

【1-4 事業展開】

1-4-1 フォーマル事業
店舗
日本全国、全都道府県で百貨店や量販店、ショッピングセンターなどに600店舗超を展開している。

(同社HPより)

 

 

取り扱いカテゴリー
カテゴリーは、葬儀やお別れの会などの悲しみの席や法要に適したブラックフォーマル、結婚式や披露宴などのパーティー卒業式・入学式や七五三などのセレモニーに適したカラーフォーマル、それぞれのウェアをコーディネートするアクセサリーの3つ。
フォーマルのあらゆるニーズに応えるよう、個性豊かなブランドを揃えている。
20超のフォーマルブランドを取り扱い、うちブラックフォーマルのみで10ブランドを超える。
*ブラックフォーマルの一例

 

 

 

 

 

 

ランバンノ ワール

アクアスキュータム

フルール ノワール ソワールペルル

(同社HPより)

 

*カラーフォーマルの一例

 

 

 

 

 

 

ソワール ドルチェ

エモーショナル ドレッシーズ

リファンネ

(同社HPより)

 

*アクセサリーの一例

ラックフォーマル

結婚式・パーティー

セレモニー

(同社HPより)

 

1-4-2 ライフスタイル事業

2024年に子会社化した(株)キャナルジーンはカジュアルウェアから、バッグ、シューズ、アクセサリーまで幅広く販売。

 

グランフロント大阪店 

(同社HPより)

 

2025年3月6日にはルミネエスト新宿店をオープン。
あたり前なカジュアルでは満足できない人の為に提案するセレクトショップ。トレンドを取り入れながら、各国の個性的でワールドワイドなブランド・アイテムを中心に、独自の目線でセレクトしている。
店舗販売に加え、ECでも販売しているが、フォーマル事業と比較してEC販売の比率が高い。

 

公式オンラインショップの一部

(CANAL JEAN(キャナルジーン)公式オンラインショップより)

 

「kuros’」は黒の持つエネルギーとストーリーを届けるライフスタイル提案型ブランド。

(kuros’HPより)

 

創業よりこだわり続ける「黒」をキーワードに、「Food&Drink」、「Kitchen&Dining」、「Living」、「Fashion」、「Health&Beauty」の
5つのカテゴリーで展開。
リアル店舗とオンラインストアで販売している。
2024年10月には丸の内の「KITTE」に常設店舗をグランドオープン。

 

 

(同社HPより)

 

【1-5 販売チャネル別売上高】

ロードサイドを含むチェーンストアの構成比が高い。近年は直営店・ECサイトが大きく伸びている。

 

(同社資料より)
*販売チャネル別の売上高は四捨五入で表示しており、合計が決算短信における全社の売上高と一致しない場合がある。
*本データにおける販売チャネルは、事業別のセグメントとは異なる。

【1-6 実店舗数の推移】

効率化を重視することもあり、実店舗数は減少傾向。売上高は増加していることから店舗あたりの売上高は増加し、実際に効率性は高まっている。今後は「東京ソワール」としてのブランド力の向上にも取り組んでいく。

 

※店舗数は各年度の期末時点で店頭展開している売場数を参照している(同一店舗に2か所売場がある場合2店舗と換算)。
※期間限定展開等の催事及びロードサイド、レンタル、kuros’、CANAL JEANは除外している。
※モノポリー店舗とは、同社1社体制の売場を指す。
(同社資料より)

 

【1-7 ROE分析】

20/12期

21/12期

22/12期

23/12期

24/12期

ROE (%)

-22.8

3.9

6.3

8.9

4.9

売上高当期純利益率(%)

-19.375

2.532

3.644

5.314

3.188

総資産回転率(回)

0.640

0.790

1.010

1.044

1.098

レバレッジ(倍)

1.843

1.949

1.723

1.613

1.407

*ROEは、決算短信における自己資本当期純利益率。23/12期までは非連結。24/12期は連結決算開始に伴い、総資産回転率及びレバレッジの計算においては「期首・期末平均」ではなく、期末の数値を使用している。

 

売上高当期純利益率の低下を主因に、24/12期のROEは4.9%と前期から4.0ポイント低下した。一方、総資産回転率は改善が続いている。株主資本コストをコンスタントに上回るROEの実現のためには、収益性の改善とともに、資産効率性の更なる向上が期待される。ROE向上に向けた今後の取組みについては、【4-4 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて】を参照。

 

注: 24年12月期決算短信記載の「自己資本当期純利益率」は4.9%であり、同社資料(2025~2027年度中期経営計画P19) のROE5.3%と異なっている。これは、連結決算を開始したため、同資料ではROE計算に際し、分母に株主資本合計を使用しているため。

2.2024年12月期決算概要

【2-1 連結業績概要】

23/12期

構成比

24/12期

構成比

前期比

会社予想

予想比

売上高

15,026

100.0%

15,700

100.0%

+4.5%

16,000

-1.9%

売上総利益

7,830

52.1%

8,052

51.3%

+2.8%

販管費

7,310

48.6%

7,809

49.7%

+6.8%

営業利益

520

3.5%

243

1.5%

-53.3%

300

-19.0%

経常利益

617

4.1%

347

2.2%

-43.7%

400

-13.1%

当期純利益

798

5.3%

500

3.2%

-37.3%

350

+43.0%

*単位:百万円。前期比は23/12期非連結業績との比較。会社予想は24年8月に開示した予想。

 

増収、営業減益
売上高は前期比4.5%増の157億円。24/12期から連結対象となった(株)キャナルジーン(ライフスタイル事業)を除くとほぼ横ばいだった。営業利益は同53.3%減の2億43百万円。売上総利益率は原価高騰の影響はあったものの、販売価格の見直し等により前期52.1%から51.3%へと小幅の低下に留めた。販管費は販売促進費等の変動費増加により同6.8%増加。営業利益率は前期3.5%から1.5%へ低下した。売上高・営業利益とも24年8月に開示した会社予想を下回った。当期純利益は前期比37.3%減の5億円。
なお、24/12期は中期経営計画最終年度にあたり、売上高155億円、営業利益2億50百万円を目指していた。売上高は、計画策定時には未確定だった取引条件の変更に伴う一時的な売上減少等があったものの、計画を達成した。営業利益は22/12期に前倒し達成。24/12期については成長に向けた戦略投資を実施する中、資源価格や物価の上昇による影響がある中で、コストの維持・抑制の施策を講じたことにより計画並みだった。
前期比15.00円/株増配となる45.00円/株の期末配当を実施。配当性向は30.9%。

 

【2-2 事業部別売上高構成比】

コロナ後のリアル店舗回帰で卸売・SCが堅調に推移するとともに、ECが安定して成長した。卸売事業の売上高構成比は計画を上回った。

(単位:%) 23/12期 中計目標 24/12期

備考

フォーマル

事業

小売事業

SC・EC

15.6

17.6

15.7

SCの売上高は前期比5.3%増、ECは同7.9%増、SCは新規出店に加え、ブライダルニーズが堅調だった。

卸売事業

百貨店・量販店

68.9

64.1

65.9

百貨店は主力大型店舗を含む閉店等の影響で同3.7%減、量販店は同1.1%増だった。

新規事業

レンタル・kuros’

0.8

1.3

0.9

構成比は計画に未達も、レンタル事業で同4.9%増、kuros’事業で同34.1%増と堅調に推移した。

その他

専門店・通販

14.6

17.0

13.1

主力販路の不振で売上高は同5.4%減、構成比は対中計との比較では3.9p減だった。
ライフスタイル事業

CANAL JEAN

4.4

24/12期2Qより、株式会社キャナルジーンを連結の範囲に含めている。

23/12期は単体

 

【2-3 商品別売上高】

アクセサリーは前年を下回ったものの、主力となるブラックフォーマル・カラーフォーマルの販売は堅調に推移した。

(単位:%)

21/12期

22/12期

23/12期

24/12期

フォーマル

事業

ブラックフォーマル

7,895

9,245

9,917

9,923

カラーフォーマル

2,064

2,645

2,617

2,645

アクセサリー

1,862

2,350

2,492

2,437

ライフスタイル事業

694

 

【2-4 財政状態と

キャッシュ・フロー】

◎財政状態

23年12月

24年12月

23年12月

24年12月

流動資産

9,673

8,524

流動負債

3,853

2,928

現預金

2,760

1,862

仕入債務

2,639

1,790

売上債権

1,561

1,500

固定負債

1,496

1,209

棚卸資産

5,057

4,888

負債合計

5,350

4,137

固定資産

5,040

5,776

有利子負債

933

791

有形固定資産

2,273

2,388

純資産

9,364

10,163

投資その他の資産

2,460

2,786

利益剰余金合計

1,794

2,180

資産合計

14,714

14,300

負債・純資産合計

14,714

14,300

*単位:百万円。有利子負債は借入金及びリース債務。
*23/12期は非連結、24/12期は連結

 

フォーマル事業は比較的在庫が多いビジネスではあるが、棚卸資産の削減に取り組んでおり、棚卸資産の減少に伴い棚卸資産回転率が前期2.97回転から3.21回転に向上した。
自己資本比率は71.1%、前期末非連結の63.6%から大きく改善した。

 

◎キャッシュ・フロー

23/12期

24/12期

増減

営業CF

-93

-68

+25

投資CF

767

-535

-1,302

フリーCF

673

-603

-1,277

財務CF

-264

-294

-30

現金同等物残高

2,760

1,862

-898

*単位:百万円。23/12期は非連結、24/12期は連結。

 

営業CF、投資CF、財務CFがいずれもマイナスだった。
キャッシュポジションは前期非連結との比較で低下した。

 

【2-5 重点施策の進捗状況】

卸売事業の強化
魅力的な売場作りとサービスの提供により競争力を強化させる考え。

■ tokyo soirショップの事業モデル確立

・百貨店15店舗、量販店16店舗で展開(前期末比7店舗増)

・既存フォーマル売場にはないオリジナルアイテムの開発と展開

・スタッフ研修の強化、SNSでの情報発信拡大

■ 販路・店舗特性に合わせた商品企画・提案の強化

・百貨店を中心とした富裕層向けブラック/カラーフォーマルのラグジュアリー企画の展開(売上高は計画比47.0%増)

・量販店を中心とした大きいサイズに特化したパターンのブラックフォーマル企画の展開(同31.1%増)

 

 

(同社資料より)

 

小売事業の売上拡大(form forma)
”form forma”ブランドの認知度向上を図る。

■ オリジナル商品の拡充

・藤本美貴との共同開発商品の展開

・プラスサイズ(大きいサイズ)モデル事務所GLAPOCHA(グラぽちゃ)との共同開発商品の展開

■ ドミナントを意識した出店継続

・東海エリアへの出店(ユニモール(6月)、モレラ岐阜(10月))

・展開店舗は関東17店舗・東海5店舗・関西7店舗の29店舗(24年12月末現在)

 

 

(同社資料より)

 

小売事業の売上拡大(EC)
集客力を強化させる方針。

■ 公式ECサイトの大型リニューアル

・事業ドメイン拡張を見据えたサイトの構築

・統一されたコーポレートイメージでの顧客へのアプローチ

・「フォーマルメッセージ」から「tokyo soir online store」へ屋号 を変更

■ 新規顧客の創出

・新規ドレスブランド「traumerei」や仕入雑貨(ルームシューズ・インナー等)の拡充による新規プロダクトの展開強化

・好評企画「たためるフォーマル」シリーズ第4弾・第5弾のクラウドファンディングでの展開

 

 

(同社資料より)

 

事業領域の拡大
24/12期から事業領域の拡大に取り組み始めており、今後は集客力の強化を図る。

■ kuros’・・・常設大型店舗の新規出店

・24年10月にはKITTE丸の内へ展開

・アパレル、キッチン・ダイニング、食品、リビング、ヘルス& ビューティー等のアイテムを集積した、黒の世界を表現

■ CANAL JEAN・・・キャナルジーンの子会社化

・レディスファッションを中心にECと実店舗を運営

・自社サイトやファッションモールでの販売に強みを持ち、高いEC化率を実現

 

 

(同社資料より)

 

 

事業領域を拡大させたことも寄与し、24/12期のEC売上高・EC化率は23/12期を大きく上回った。事業領域の拡大は始まったばかりであり、今後もEC売上高・EC化率は伸長していくだろう。

 

EC売上高(百万円)、EC化率の推移

(同社資料より)

 

3.2025年12月期業績予想

【業績予想】

24/12期

構成比

25/12期(予)

構成比

前期比

売上高

15,700

100.0%

16,700

100.0%

+6.4%

営業利益

243

1.5%

300

1.8%

+23.4%

経常利益

347

2.2%

400

2.4%

+15.1%

当期純利益

500

3.2%

330

2.0%

-34.1%

*単位:百万円。

 

25/12期は6.4%増収、23.4%営業増益を予想
25/12期は、売上高が前期比6.4%増の167億円、営業利益は同23.4%増の3億円を見込む。
利益面では、原材料価格の高騰等はあるものの、効率性を重視して営業利益率を前期1.5%から1.8%へ拡大させる考え。前期に繰延税金資産を計上した反動により当期純利益は前期比34.1%減の3億30百万円を計画する。
配当は前期と同じ45.00円/株の期末配当を実施する予定。予想配当性向は46.9%。

 

4.2025~2027年 中期経営計画

2022年~2024年 中期経営計画はコロナ禍からの回復と原材料価格高騰の中で、効率的な財務体質への見直しと新たな事業モデルの構築に重点的に取り組んだ結果、売上高は計画を達成、営業利益は22/12期に2期前倒しで達成し、23/12期は更に大きく上回り、しっかりした実績を残したといえよう。一方で、棚卸資産回転率は計画未達となり、継続的な課題と同社では認識している。
25/12期から新たに「2025年~2027年 中期経営計画」がスタートした。24/12期には成長に向けた戦略投資も行っており、事業領域を拡大させながら2040年の売上高300億円への足固めを行っていく考え。

 

(同社資料より)

 

【4-1 経営環境と課題】

同社では取り巻く経営環境を以下のように踏まえ、「事業領域の拡大」「事業基盤の整備」「効率化の追求」を今後の課題とした。
-経営環境-
・百貨店・量販店といった主要販路において店舗閉鎖や業態再編等により顧客接点が減少している
・価値観の変化やオンラインショップの利便性向上により消費者ニーズや消費行動が多様化している
・企業価値向上に向けて、資本コストや資本効率を意識した経営が求められている
・サステナブルな社会の実現に向けた社会的要請が増加している

 

-課題-

消費者ニーズ・消費行動の変化への対応 事業領域の拡大

(長期ビジョンへの挑戦)

経営計画達成に必要な事業基盤の再点検 事業基盤の整備

(環境変化への対応)

資本効率を意識した経営の実践 効率化の追求

(稼ぐ力の強化)

 

【4-2 長期ビジョン】

『一人ひとりの想いが調和した社会を実現するウェルビーイング企業』
同社が掲げるウェルビーイングとは、周囲との調和を大切にしながら、自分らしく凛と美しく生きられる世の中を目指す事。顧客が人生の節目や日々の暮らしの中で「大切な人を想う気持ち」に寄り添い、今まで以上に多くのシーンで幅広い顧客に信頼される企業を目指す。

 

【4-3 中期経営計画で目指す姿】

中期経営計画期間中には長期ビジョンの実現を見据えて、「ウェルビーイングな商品・購入体験の拡充」を目指し、挑戦と変革に取り組む。
顧客の人生の節目やライフイベントに寄り添い、婦人フォーマルを超えた新たな価値を提供していく考え。女性に限らない顧客をターゲットにして商品や体験購入を拡充させる。また、ライフイベント商品を拡充させていく。

 

【4-4 定量目標】

27/12期「売上高180億円、営業利益5億40百万円、営業利益率3.0%」が目標。利益率の向上に伴い、営業利益は24/12期との比較で122.2%増を目指す。

 

24/12期 

構成比

27/12期計画

構成比

増減率

CAGR

売上高

15,700

100.0%

18,000

100.0%

+14.6%

+4.7%

営業利益

243

1.5%

540

3.0%

+122.2%

+30.5%

*CAGR(年平均成長率)はインベストメントブリッジが試算

 

【4-5 定性目標】

フォーマル、ライフスタイルの両事業を通じて、2030年の目指す姿である「ウェルビーイングな商品・購入体験の拡充」を実現させていく。本質にこだわり、環境に配慮し、お客様が凛として美しく生きられる商品を、快適で満足感のある購入体験を大切に提供するグループでありたいと考えている。

 

フォーマル事業においては、生活者のライフイベントに寄り添い、ものだけではない価値を提供する、『フォーマルライフのリーディングカンパニー』を目指す。同社が掲げるフォーマルライフとは、冠婚葬祭に限らない、人生の節目となる全てのライフイベント、リーディングカンパニーとは、ものだけでなく、「情報」「新しいこと」を含めた価値が提供できる存在。

 

ライフスタイル事業においては、セレクトショップCANAL JEANでは、あたり前なカジュアルでは満足できない人の為に提案していく。カジュアルなライフスタイルの人々に、トレンドを取り入れながらヘルシーでナチュラルな世界観を提案し、“笑顔でやさしく心豊かに”暮らせる未来をともに創る企業を目指す。
kuros’では、黒の持つ無限の可能性とエネルギーを、世界に発信する。心と体が喜ぶもの、愛着を持って使い続けられるもの、作り手の情熱から生まれたもの、凛として美しく本当に良いもの、そして黒の魅力と力を秘めたものを、提案し続ける。

 

東京ソワールが目指す姿・世界観を表現したブランドムービー

ブランドムービー Brand Movie 1:45

 

東京ソワールが目指す姿・世界観を表現したビジュアルイメージ

 

(同社資料より)

 

 

【4-6 事業戦略・機能別戦略】

(1)フォーマル事業
基盤が整備され安定している同事業では、経営課題として掲げた「事業領域の拡大」を図る。顧客体験価値の向上を重視、狙うべきマーケットの拡張も図っていく。

 

狙うべきマーケットの拡張(フォーマルライフマーケットでの価値提案)
フォーマルの枠を超えたオリジナルアイテムを展開拡充させる。また、リトルオケージョン(ちょっとしたハレの日)の訴求による新たなニーズを掘り起こしていく。ライフイベントに関しては情報発信し、サービスの開発も行う。

 

顧客体験価値の向上
直営店の出店による顧客接点を拡大させていく考え。オフィシャルECサイトのサービス拡充により、直営店と連携しシームレスな購入体験やサービスを実現させていく。また、レンタルサービスやリペアサービス等の販売以外のサービスを提供することが可能な環境作りも行っていく。

 

(2)ライフスタイル事業
24/12期から新たに加わった同事業では、「CANAL JEAN」及び「kuros’」を展開している。今後の事業領域の拡大における鍵を握っているともいえよう。顧客接点の拡大・新規顧客の獲得に向けて、新規出店およびサービスの拡充に取り組む。

 

顧客接点の強化
厳選した地域への出店により顧客接点を拡大させていく。また、オフィシャルECサイトのリニューアル、UI・UX(サイトの見た目と操作性)改善をさせて顧客満足度の向上を図る。リアル店舗とオフィシャルECサイトを統合させることにより、シームレスな購入体験を実現させていく考え。

 

ブランド認知度の向上
ブランドアイデンティティを発信していく。デジタルマーケティングやイベントも活用する。

 

M&A、業務提携の推進
24/12期にはキャナルジーンをM&A。業務提携を含めて今後も積極的に推進していく。

 

(3)事業基盤の見直し・強化、効率化の追求
事業基盤の整備においては、コーポレートブランドの浸透(アウターブランディング)を図る。PR を強化し企業価値を向上させるほか、マーケティング戦略を推進し認知を拡大させ、新たな顧客基盤を構築する。組織再編と人材戦略を推進し、事業戦略の達成に向けた機能別組織を組成する。また専門的スキルを持つ人材の育成と採用、社員のリスキリングも進める。サステナブル経営も実践していく(【4-5 サステナブル経営】参照)。持続可能な社会の発展に貢献する取り組みを推進する。レンタル事業も拡大させる考え。

 

効率化の追求においては、資本効率の改善を進め、資本コストや株価を意識した経営を実践していく(【4-4 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて】参照)。業務運営の効率化も図る。基幹システムを見直し、データ分析を再構築する。また、店舗運営のデジタル化も推進する。

 

【4-7 資本コストや株価を意識した

経営の実現に向けて】

東証が要請する「資本コストや株価を意識した経営の実現」についての現状分析及び今後の取組みは以下の通り。

 

~現状分析~
同社が試算するCAPMによる株主資本コストは5.0~6.0%。ROEはこれをコンスタントに上回る状況にはない。また、PERは業界水準(同社推計14.0倍程度)を下回り、PBRは低水準で推移している。

 

(同社資料「2025~2027年度中期経営計画」より)

 

注: 24年12月期決算短信記載の「自己資本当期純利益率」は4.9%であり、同社資料(2025~2027年度中期経営計画P19) のROE5.3%とは異なる。これは、連結決算を開始したため、同資料ではROE計算に際し、分母に株主資本合計を使用しているため。

 

 

~基本方針~
PBR(=ROE×PER)の向上に向けて、ROEとPERの改善に取り組む
① ROE ⇒ 成長性と収益性の両立
② PER ⇒ IR活動の強化による成長戦略の発信

 

同社では資本コストや株価を意識した経営の実現(PBRの向上)には、ROEおよびPERの改善が必須と認識。PBR向上に向けてROEとPERの改善に取り組む。
24/12期は資本コストを上回る資本収益性は達成できず、市場の評価も充分には得られていない。ROEは、コロナ禍からの業績回復に伴い同社が推定する株主資本コストを上回って推移したが、24/12期は営業利益率の低下等が要因で5.3%と前期比で3.6p低下した。株主資本コストをコンスタントに上回る水準へのROEの改善は必須というのが同社の考え。PERが業界水準を下回って推移している要因は、成長性・取組が株主に充分に伝えられていないと認識。

 

~戦略と施策~
成長戦略の遂行による事業成長・企業価値向上に加えて、ステークホルダーとの関係性強化によって、PBRの向上を目指す。

主な戦略・政策項目

具体的施策・数値目標

P

B

R

R

O

E

成長性と収益性の両立 成長戦略の遂行 本中期経営計画の達成

ROE目標7.0%以上

総資産回転率の向上 需要変動に対応した生産コントロールの徹底

非事業資産の圧縮

収益性の向上 原価率の維持

経費コントロールの徹底

P

E

R

IR活動の強化による成長戦略の発信 ステークホルダーとの関係強化 コーポレートサイト等への情報開示の強化

投資家(株主)とのIR面談の回数増

PR強化による企業イメージ・企業価値の向上

サステナブル経営の推進

株主還元方針の明確化 配当性向 40%以上

株主優待の拡充

 

【4-8 サステナブル経営】

~基本方針とマテリアリティ~
環境負荷の低減、ガバナンス体制の強化、人権尊重と多様性の認知、公正・公平な事業活動等を通じて持続可能な社会構築に取り組んでいる。

基本方針 「人を想う気持ちに寄り添い、“生きる”をもっと、美しく。」

というビジョンから、人を想う気持ちを大切にしながら企業価値の向上を追求し、

生活者、従業員、取引先、株主の信頼に応え、そして持続可能な社会の発展に貢献する

マテリアリティ (同社資料より)

 

社長を委員長とする「サステナブル経営推進委員会」を設置した。マテリアリティに基づく小委員会で具体的なアクションを推進する体制を構築している。以下、ESGにおける主な取り組み。

 

マテリアリティ

主な取り組み

Environment

(環境)

環境 ・環境配慮型商品の開発

・製造工程における有害化学物質の不使用の徹底

・廃棄商品削減の取り組み

Social

(社会)

消費者課題

人権

コミュニティ

労働慣行

・長期に着用できる安心・安全なものづくり

・不当な差別の排除等の徹底

・社会貢献活動の推進やフォーマル文化の啓蒙、服育活動

・ダイバーシティ&インクルージョン、女性活躍推進

Governance

(ガバナンス)

公正な事業慣行

組織統治

・事業における社会的責任の推進

・実効性のあるコーポレートガバナンス体制の構築

 

 

~取り組み事例~
24/12期までの主な具体的な取り組み実績は、以下の通り。今後も持続可能な社会の発展に向けて、取り組みを強化していく考え。

 

フォーマルウェアの「リサイクル キャンペーン」の実施

 

着用されなくなったフォーマルウェアを回収し、新しい衣類の原料や自動車内装材に再資源化され、地球の資源へ循環される。

 

服育プログラム「僕の私のフォーマルウェア」の実施

(メセナ活動認定制度 This is MECENAT2024認定)

 

子ども世代にファッションの楽しさを伝えるため、デザイナー体験のプログラムを出前授業と職業体験を通じて提供し、キャリア教育の一端を担っている。

 

 

ワークライフバランスへの取り組み

 

仕事と子育ての両立支援に積極的に取り組んでおり、厚生労働大臣が「子育てサポート企業」として認定する「くるみんマーク」の認定を受けている。

 

(同社資料より)

 

5.小泉社長に聞く

小泉純一社長に、同社の特長や競争優位性、新たな中期経営計画の概要、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。

 

小泉社長は1964年1月2日生まれの61歳。1987年4月に大学新卒で同社入社。営業、商品企画などを経験した後、2020年1月より取締役常務執行役員として経営戦略も担当するなど幅広いフィールドで実績を重ね、2021年3月、代表取締役社長に就任した。

 

まず初めに、御社の特長や競争優位性及びその源泉についてお聞かせいただけますか。
1969年に創業した当社は、日本で初めてブラックフォーマルを開発し、レディースフォーマルの文化を創り上げてきました。
そのベースとなっている価値観は、時代とともに変わりつつも普遍的な美しさがあり、着心地が良く、価格と価値のバランスが適正で、愛着を持って長く着ていたいと思える、商品づくりにおけるそうした「本質へのこだわり」です。この価値観こそが当社を当社たらしめている大きな特長であり、同業他社に対する競争優位性であると考えています。

 

たとえば、当社の商品企画担当者の「ブラックフォーマル」に対するこだわりは類を見ないものだと思います。
ブラックフォーマルは、主にご葬儀で故人を偲びご遺族を想って装うものですから礼服としてきちんと着こなすことができるものでなければいけない、加えて女性の場合は着用されたご本人の美しさも表現したい、という担当者の思いは大変強いものがあります。
そこで当社では、「ブラック」を深堀りするため、素材選び、染色方法、縫製方法などを徹底的に追求し、着心地がよく、美しい「ブラックフォーマル」を創り上げています。
創業以来の価値観に基づいた「モノづくり」への姿勢は企業のDNAとして脈々と受け継がれており、これが競争優位性の源泉となっています。
「バリュー行動の促進」「適所適材・役割の明確化」「成長支援」を目標とした透明性・納得性の高い人事制度を導入し、従業員のエンゲージメントをさらに向上させるほか、働きやすい環境整備に努めて、人的資本の強化を進め、競争優位性の源泉をさらに磨き上げていこうと考えています。

 

 

続いて、中期的な成長戦略について伺います。まず、2024年12月期で終わった前中期経営計画のレビューをお願いいたします。
2022年1月に始まった前中期経営計画は、コロナ禍の影響を大きく受け、加えて得意先の店舗数減少、消費者の購買行動の変化など、厳しい環境下でのスタートでしたが、ブラックフォーマルのパイオニアとして業界を牽引していくという役割を強く認識し、「収益構造の見直し」「基礎収益力の回復」「地球環境・社会課題への対応」といった課題に取り組みました。
2023年に入りコロナ禍の影響も薄れたことから、自粛生活の反動としていわゆるリベンジ消費もあり、主力の卸売およびショッピングセンターやECでの販売が堅調に推移したことなどから、最終の2024年12月期の売上高は計画を上回りました。
営業利益に関しては、経費コントロールの徹底により2年前倒しで2022年12月期に計画を達成することができました。
コロナ禍からの回復過程における政策的な在庫の積み増しや原価高騰等の影響で、棚卸資産回転率は計画未達となり継続的な課題と認識していますが、厳しい環境ながらも概ね計画通りに着地することができたと考えています。

 

では今期から始まった新しい中期経営計画におけるポイントをお聞かせください。
消費者ニーズ・消費行動の多様化への対応として「事業領域の拡大」、経営計画達成に必要な事業基盤の再点検として「事業基盤の整備」、資本効率を意識した経営の実践として「効率化の追求」の3つを取り組むべき課題として掲げました。

 

なかでも最も注力すべき課題は、「事業領域の拡大」です。
フォーマル事業においては、「冠婚葬祭に限らない、人生の節目となる全てのライフイベント」と当社で定義したフォーマルライフのリーディングカンパニーを目指していきます。
そのためには、フォーマルの枠を超えたオリジナルアイテムの展開を拡充したり、七五三や記念日といった、ちょっとしたハレの日を訴求することで新たなニーズを掘り起こしたりして、フォーマルライフマーケットでの価値提案を推進します。
また、直営店の出店による顧客接点の拡大や、直営店とECの連携、レンタルサービスやリペアサービス等の販売以外のサービス提供が可能な環境作りなどによって、顧客体験価値の向上を図ります。

 

2024年12月期に立ち上げたライフスタイル事業においては、顧客接点の拡大・新規顧客の獲得に向けて、新規出店およびサービスの拡充に取り組んでまいります。
具体的には、厳選した地域への出店による顧客接点の拡大・強化や、積極的な情報発信による「CANAL JEAN」「kuros’」といったブランド価値向上に取り組みます。事業拡大のスピードアップを図るためにはM&Aやアライアンスも重要な施策です。当社がこれまで手掛けてこなかった新たな領域を視野に入れて検討していきたいと考えています。

 

最終2027年12月期「売上高180億円、営業利益5.4億円、営業利益率3.0%」を目標としています。具体的な目標を明示してはいませんが、先程申し上げたように、棚卸資産回転率の改善も重要な課題と認識しています。

 

今回初めて「資本コストや株価を意識した経営の実現」に向けた考え、取り組みを開示されました。こちらもポイントをお話しください。
PBRが1倍割れの水準で推移している点は、株主の皆様に対して大変申し訳なく、可能な限り早期の解決を目指します。
当社では株主資本コストを5~6%と推定しています。ROEはこれを上回る7%以上の実現が必要ですので、中期経営計画の達成、棚卸資産の適切なコントロール、原価率の維持などに取り組みます。
また業界水準を下回るPERの向上に向けては、IR活動の強化によるステークホルダーとの関係強化や株主還元方針の明確化を図ります。配当性向については40%以上を目標としており、25年12月期の予想配当性向は46.9%となっています。

 

ありがとうございました。では最後に株主・投資家へのメッセージをお願いします。
コロナ禍に続き原材料高騰という厳しい環境下ではありましたが、前中期経営計画は売上・利益ともおおむね計画通りに着地することができました。
今期から始まった新中期経営計画期間においても、主要販路である百貨店や量販店の店舗閉鎖や業態再編等による顧客接点の減少、消費者ニーズや消費行動の多様化など、当社を取り巻く事業環境は引き続き不透明であると予想しています。
そうした環境下ではありますが、「ブラックフォーマル」のパイオニアとしての優位性を武器に、冠婚葬祭に限らない人生の節目となる全てのライフイベントでの需要を取り込み、売上・利益の着実な拡大を目指してまいります。
また、成長性と収益性の追求、IR活動強化による当社の魅力の訴求を通じて資本市場における当社の評価向上にも取り組んでまいりますので、フォーマルライフのリーディングカンパニーとして長期的な成長を目指す当社を、是非中長期の視点で応援していただきたいと思います。

6.今後の注目点

小泉社長の就任時はコロナ禍真っ只中だった。こうした中で社長就任から1年を経ずして中期経営計画を発表。それでも最終年度である24/12期については目標としていた水準をしっかり達成させた。また、コロナ禍が落ち着いた後24/12期にはキャナルジーンを子会社化し、さらには「kuros’」を新規出店しており、事業領域も拡大させている。
しっかりと実績を残した中で25/12期から新たな中期経営計画がスタートした。今回は落ち着いたスタートになるだろう。24/12期に手掛けた事業領域の拡大を今後さらに進めていきたい。また、ブランディングの強化も強く打ち出しておりフォーマルライフのリーディングカンパニーとしての取り組みにも注目していきたい。25/12期は23.4%営業増益予想、中期計画を達成すればEPSは100円超が期待できる。株価は、極めて低位にとどまるPBRや高い配当利回りだけでなく、利益面からアプローチしても割安感は強い。今後の見直し余地は大きいといえそうだ。中期経営計画の達成が見えてくれば株価の位置は大きく変わることも期待できるだろう。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

◎組織形態及び取締役の構成

組織形態 監査等委員会設置会社
取締役 9名、うち社外4名
うち監査等委員 4名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2025年3月28日)

 

<基本的な考え方>
当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及び資本構成その他の基本情報は次のとおりです。
1.当社は、法令及び社会的規範の遵守を基本とし、公正な企業活動を行うことにより経営の透明性を高め、効率化、迅速化の向上に努めております。
2.コーポレート・ガバナンスにつきましては、健全な企業経営を行っていく上での重要な事項と考え、迅速で正確な経営情報をもとに、経営を取り巻く諸問題に対し的確な意思決定と業務執行が行えるように運営してまいりたいと考えております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
【原則1-2.株主総会における権利行使】
補充原則1-2-4 2021年7月開催の臨時株主総会より、インターネットによる議決権行使を開始いたしました。
また、招集通知の英訳については、海外の株主・機関投資家の比率を注視し、必要に応じて検討を行います。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示>
【原則1-4 政策保有株式】
当社は、原材料の安定的な調達並びに中長期的な営業取引上の必要性など、取引先との良好な関係を推進するために、必要と判断される企業の株式を保有しております。
政策投資目的で保有する株式については、毎年取締役会において、個別銘柄毎に中長期的な関係維持など保有することの妥当性や経済合理性 を総合的に検証し、継続して保有する必要がないと判断した株式の売却を進めるなど、政策保有株式を縮小していくことを基本方針としております。経済合理性の検証に当たっては、個別銘柄ごとに保有目的の定性面に加えて、取引先からの受注実績や保有に伴う便益及び受取配当金などのリターンが、リスクや資本コストに見合っているか等を取締役会等で検証しております。
この結果、2020年度には全ての取引先持株会からの脱退を完了しており、2023年度には1銘柄6億51百万円、2024年度には4銘柄1億72百万円の売却を行い、引き続き政策保有株式の縮小に努めております。
また、政策保有株式の議決権の行使に当たっては、当該取引先等の経営方針を十分尊重した上で、株主価値・企業価値を毀損するような議案でないかなど、一般株主と同様な観点から議決権を行使することを基本としております。

【原則3-1 情報開示の充実】
適時・適切な情報の開示を行うことが、株主をはじめとするステークホルダーとの信頼関係の基盤となることを認識しております。その認識を実践する為に、法令に基づく開示以外にも、株主を始めとするステークホルダーにとって重要と判断される情報について、当社ホームページ等により開示を行っております。
(1)経営理念及び理念体系を当社ホームページで、経営戦略を株主総会招集通知、有価証券報告書等で開示しております。
(2)コーポレートガバナンスの基本的な考え方・基本方針は、コーポレートガバナンスに関する報告書、有価証券報告書で開示しております。
(3)当社は、株主総会決議に基づく取締役の報酬(監査等委員である取締役を除く)について、「取締役報酬に係る決定方針」を取締役会において決議しております。
経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっては、役員報酬規程(内規)に基づいて検討を行い、取締役(社外取締役及び監査等委員である取締役を除く)の報酬は、基本報酬、業績連動報酬(全社業績連動報酬及び調整給)並びに株式報酬により構成し、社外取締役及び監査等委員である取締役については、その職務に鑑み基本報酬のみとしております。
基本報酬は、月例の固定報酬とし、世間水準、会社の業績、従業員給与の水準などを考慮しながら、役位に応じて総合的に勘案した上で、設定しております。
全社業績連動報酬は、営業利益を指標とし、その他の業績状況等を考慮して算出しており、調整給は、個々の取締役の業務執行状況などを参考に、いずれも指名・報酬委員会からの答申を受け、取締役会において決定することとしております。
(4)株式に関する報酬として、株価変動のメリットとリスクを株主と共有し、株価上昇及び企業価値向上への貢献意欲を高めることを目的に、社外取締役及び監査等委員である取締役を除く取締役に対し、役位別に定めた株式数に基づき毎年一定時期に支給することとしております。
(5)取締役の選任は役員規程(内規)において方針と手続きを定めております。経営陣幹部、取締役候補については、業務経歴等を踏まえ、指名・報酬委員会からの答申を受け、最適な人物を指名しております。社外取締役については、幅広い知識や実務経験を有しており、その豊富な経験や識見を活かし、当社経営に的確な助言を頂ける人物を指名しております。
(6)招集通知及びTDnet、当社ホームページで個々の選解任・指名についての説明を開示しております。取締役候補者(監査等委員である取締役を除く)の選任手続きについては、取締役会に先立ち、指名・報酬委員会において業務経歴などを踏まえて審議をした上で、取締役会で決議を行い、株主総会に付議することとしております。監査等委員である取締役の選任手続きについては、監査等委員会の同意を得た上で、取締役会で決議を行い、株主総会に付議しております。経営陣幹部の解任の方針と手続きについては、経営陣幹部がその機能を十分に果たしていないと認められる場合、取締役会に先立ち、指名・報酬委員会において審議を行った上で、指名・報酬委員会の答申を踏まえて取締役会にて決議し、株主総会に付議することとしております。

 

補充原則3-1-3 環境・社会問題への取り組みは、重要な経営課題と認識しており、この課題に対し「サステナブル経営推進委員会」を中心に、外部団体等とも連携して取り組んでおります。活動内容については、当社ホームページやビジネスレポート等で開示をしております。
人的資本への投資については、人材育成方針並びに社内環境整備方針に基づき、さまざまな取り組みを行っており、当社ホームページや有価証券報告書等で開示をしております。
知的財産への投資では、当社の保有するブランド名を、日本及び中国・ベトナム等の生産国にて商標登録を行っております。

株式会社インベストメントブリッジ
個人投資家に注目企業の事業内容、ビジネスモデル、特徴や強み、今後の成長戦略、足元の業績動向などをわかりやすくお伝えするレポートです。
Copyright(C) 2011 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved.
本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。 また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。 当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。 本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。 投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。