BuySell Technologies(7685) 売上・営業利益 四半期最高水準で着地

2024/09/26

 

 

岩田 匡平 会長

 

 

徳重 浩介 社長兼CEO

株式会社BuySell Technologies(7685)

 

 

 

企業情報

市場 東証グロース市場
業種 卸売業(商業)
代表取締役会長 岩田 匡平
代表取締役社長兼CEO 徳重 浩介
所在地 東京都新宿区四谷4-28-8 PALTビル
決算月 12月末日
HP https://buysell-technologies.com/

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

5,360円

14,310,691株

76,705百万円

17.5%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

30.00円

0.56%

153.34円

35.0倍

589.51円

9.1倍

*株価は9/13終値。ROE、BPSは2023年12月期決算短信より。その他数値は2024年12月期2Q決算短信より。発行済株式数は自己株式を控除。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2020年12月

14,764

968

922

565

41.12

7.50

2021年12月

24,789

2,315

2,295

1,314

93.26

14.00

2022年12月

33,724

3,694

3,672

2,268

158.28

20.00

2023年12月

42,574

2,796

2,754

1,453

100.11

25.00

2024年12月(予)

61,850

4,680

4,140

2,240

153.34

30.00

*予想は会社側予想。2021年1月1日付で1:2の株式分割を実施。EPS、DPSは遡及して調整。

 

株式会社BuySell Technologiesの2024年12月期2Q累計決算概要などをお伝えします。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2024年12月期2Q累計決算概要
3.2024年12月期業績予想
4.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 24年12月期2Q累計業績は、売上高が前年同期比46.8%増の28,720百万円、営業利益が同84.2%増の2,420百万円となった。新規連結インパクトもあり、2Q(3か月)の売上・営業利益ともに四半期最高水準で着地。5月開示の修正予算(売上高27,263百万円、営業利益1,547百万円)に対してはそれぞれ5.3%、56.4%上回った。来期以降を見据えた地盤固めの期ではあるが、好調さが窺える。
  • 前期は9月まで広域強盗事件や酷暑等の影響を受けて出張訪問買取事業の問い合わせ獲得、訪問数といったKPIが低調に推移したが、足下事業環境は改善傾向にある。季節要因から3Qの出張訪問数が減る傾向にあることへの対応も進めるなど、出張訪問数のボラティリティ低減も進んでいる。
  • 出張訪問買取サービス「買取福ちゃん」を運営する株式会社REGATEや骨董買取事業を運営する株式会社日晃堂などリユース関連企業および機能会社を傘下に持つレクストホールディングス株式会社の完全子会社化を発表(PLの連結開始は25/12期1Qからを予定)。同グループのグループジョインにより、出張訪問買取事業領域において一段とプレゼンスを高めるだけでなく、骨董品領域での事業拡大も見込まれよう。更には様々な領域での効率経営、データドリブン経営による戦略と人材の高度化、といったシナジーも期待される。
  • 足下業績に鑑み、24年12月期会社計画は5月に続き再度引き上げられた。売上高は前期比45.3%増の61,850百万円、営業利益は同67.4%増の4,680百万円、調整後EBITDAは同58.5%増の6,332百万円。1株配当予想は25円から30円に引き上げられた。なお、1人あたり営業利益の向上を戦略目標として25/12期以降高成長フェーズへと導くための助走期として24/12期を捉えるスタンスに変わりはない。25/12期以降を見据えた先行投資も行っていく計画。具体的には、toC販売強化に向けた販売旗艦店の出店、海外販路の拡充、自社EC強化等への投資を予定している。
  • 外部環境は最悪期を脱してきたことが鮮明になっていることもあり、一段と攻めの姿勢を強めている印象。足下業績も好調ではあるが、経営の視線は来期以降に向いており、資本市場も短期業績ではなく、将来の成長可能性に目を向けていきたい。先行投資が見据える先には、買取領域から一歩踏み出そうとしている姿勢が見受けられる。日本国内におけるリユース市場は大きく、同社にとっても周辺事業を含めた潜在市場は大きい。海外に目を向けても、アジアを中心に日本のリユース品に対する評価は高く、これからの先行投資が同社のTAMを一層大きくしていくことに期待したい。

1.会社概要

「インターネット」と「リアル」のそれぞれの強みを生かしたリユース事業を展開。
インターネットやマスメディアを駆使したマーケティング戦略により買取希望者を集客するとともに、日本全国を対象に出張訪問買取を行う。多彩な買取/販売チャネルによるシナジーの最大化、シニア層を中心とした強固な顧客基盤、クオリティの高い経営陣などが特長・強み。巨大な潜在リユース市場の開拓と顧客基盤を活かした新規事業の創出により更なる成長を目指している。

 

【1-1 沿革】

大手広告会社でマーケティングを担当していた岩田氏(現 株式会社BuySell Technologies代表取締役会長)は、豊富な広告宣伝費を持つ大企業や有名企業が優遇され、予算も少ない中小企業、ベンチャー企業は十分な対応を受けることができない状況に疑問を抱き、資本力の弱い企業でも真のマーケティングが展開できるよう支援したいとの思いから、大手広告会社を退職しコンサルティング会社を立ち上げた。
多くのベンチャー企業や中小企業を支援する中で出会ったのが、現在の株式会社BuySell Technologies(旧 株式会社エース)であった。
同社は以前から現在の中心事業である「出張訪問買取」を行ってはいたが、2016年5月にコンサルに入った当時はマーケティングといってもチラシをまくくらいで、ホームページも洗練されたものではなく、業績も芳しいものではなかった。
岩田氏の下で本格的な改革に乗り出した同社は、同年8月には過去最高の申込件数を記録、9月にはそれを更新するなど、改革の芽が出始める。
この過程で岩田氏は、「出張訪問買取」サービスは付加価値が高く、必要とする顧客が多数存在する反面、「出張訪問買取」サービスのメリットの伝え方、ブランディング構築方法、マーケティングアクションなどが極めて不十分であると感じ、そこに自分がこれまで培ってきたマーケティングノウハウを注入していけば、もっと魅力的な会社に変革できるはずと確信する。
同年10月に岩田氏が取締役CSMO(Chief Sales & Marketing Officer)に就任。11月には社名を株式会社BuySell Technologiesに変更し、新たなTVCMをオンエアするなどさらに改革のスピードを上げる。
岩田氏が2017年9月に代表取締役社長に就任。クリエイティブのPDCAサイクルを回すと共に、知見を活かしたTVCM枠の購入などが奏功し、業容は順調に拡大。コンプライアンス体制も整備し、2019年12月、東証マザーズに上場。
2022年4月、市場再編に伴い東証グロース市場に移行した。
2024年4月、引き続きグループ事業規模および組織規模の拡大を戦略的に図るため、徳重浩介氏を招聘し代表取締役社長兼 CEOに、岩田氏が代表取締役会長に就任した。

 

【1-2 企業理念・経営理念】

以下のようなミッション、バリューを掲げている。

 

ミッション

:私たちの使命

人を超え、時を超え、たいせつなものをつなぐ架け橋となる。

 

バリュー

:私たちが目指す姿

1.ホスピタリティ

相手の思いに寄り添い、期待以上の喜びと感動を提供します。

2.プロフェッショナル

専門的知識や技術を活かし、最高のパフォーマンスを発揮します。

3.クリエイティブ

既存の思考にとらわれず、自ら課題を見つけて新たな価値を創造します。

 

物には物を超えた価値、バリューがあり、そこを的確につないでいくのが自社の使命、社会的な存在価値と考えている。
加えて、環境課題への対応、全てのステークホルダーとの共創を強く認識しており、「持続可能な社会の実現のために、2次流通マーケットの活性化を通じて循環型社会の形成に貢献」すること、「顧客、株主、従業員、社会等の様々なステークホルダーとの価値を共創する企業として持続的な成長を追求し、企業価値の最大化を実現」することも自社グループのミッションと考えている。
また、バリューは人事評価制度にも反映し、次世代を担う人材の育成につなげていく方針。

【1-3 市場環境】

2022年の顕在リユース市場は約2.9兆円と推計され、2030年には4兆円まで拡大すると見られる。
ただ、これはあくまでも顕在化したリユース市場の数値であり、自宅内の1年以上利用されていない不用品である「かくれ資産」を含めた潜在的なリユース市場規模総額は約66兆円を超えると推計している。
加えて人口減少が続く日本においては、不用品は毎年7.6兆円増加すると推定しており、潜在リユース市場は今後も拡大が続くと見ている。
また、年代別の一人当たりのかくれ保有資産保有額を見ると、50歳代以上のシニア層が多くを占めている。

 

(同社資料より)

 

同社ではその強みである出張訪問買取を中心に、自宅に眠る「かくれ資産」となる潜在商材を掘り起こすことで、成長ポテンシャルの大きい潜在的なリユース市場の開拓を進めていく考えである。

 

【1-4 事業内容】

(1)ビジネスモデル
同社及び子会社株式会社タイムレス、株式会社BuySell Link、株式会社フォーナイン、株式会社日創、株式会社むすびの6社により、「インターネット」と「リアル」それぞれの強みを生かしたリユース事業を展開している(株式会社BuySell Linkは障がい者雇用推進を目的とした特例子会社)。

 

主にインターネットやマスメディアを駆使したマーケティング戦略により買取希望者を集客するとともに、日本全国に出張可能な査定員を配置した出張訪問買取を中心に、宅配、店舗による買取を実施している。
買取品は、自社EC「バイセルオンラインおよびバイセルブランシェ」、ヤフオク!などのECモール、ebayなどの越境ECサイトを通じたEC販売や、百貨店での催事販売により一般顧客に販売(toC販売)するほか、子会社タイムレスの「タイムレスオークション」、他社市場を利用した卸販売により外部業者に販売している。

 

(同社資料より)

 

マーケティングによる集客から買取査定、在庫管理、販売までの一連の流れをすべて自社で一貫して管理実行する体制を構築している。
また主力のリユース事業を拡大すると同時に、リユースに隣接する新規事業や顧客データを活用した新規事業の立ち上げ・育成にも注力している。

 

(2)各サービスの概要
同社のリユース事業は「買取希望者の集客」→「買取の実施」→「買取品の販売」というビジネスフローで構成されている。
「集客」、「買取」、「販売」各ステップの概要、特長は以下のとおりである。

(同社資料より)

 

 

①集客:シニア富裕層を対象としたクロスメディアマーケティングを展開
◎マーケティング
顧客からの査定依頼を受注するためのマーケティング活動が事業戦略・遂行の起点であり、集客数の最大化が同社ビジネス成功の第一のカギである。
ここでは、岩田会長、徳重社長を始めとした経営陣が有するマーケティングスキルやノウハウが大きな役割を果たしている。

 

SEO(Search Engine Optimization、検索エンジン最適化)、リスティング広告、SNSなどの「インターネット」と、TVCMや折込、チラシ等を中心とした「マスメディア」を駆使したクロスメディアマーケティングを展開している。
市況や季節性等を踏まえたマクロ視点での広告運用に加え、日々の媒体別、エリア別等に細分化した詳細な分析を行うことによって、効率的なCPA(問い合わせあたり広告宣伝費)を実現し、費用対効果を最大化したマーケティング活動を行っている。
こうした、きめ細かいマーケティング活動により、問い合わせ件数および集客数は年々拡大している。

 

(同社資料より)

 

◎インサイドセールス:顧客ニーズに沿ったサービスの提供と査定員稼働数の最大効率化
マーケティングによって開拓した買取希望者からの入電に対して、約100名のオペレーターが顧客の要望を直接聞き、その要望を査定員と連携することにより、顧客ニーズに沿ったサービスの提供を図っている。

 

2020年7月に受付対応時からの営業組織化を目的として、それまでの従来の「コールセンター事業部」から「インサイドセールス事業部」へ組織変更を行った。
売却希望の商材や訪問日時の調整といった事務的な受付業務のみでなく、顧客がより安心して同社サービスを利用できるよう、事前に顧客に対して、サービスの概要、査定取り扱いが可能な商材の説明、不招請勧誘防止のための案内等を実施しているほか、査定員が訪問査定時に説明する内容を事前に説明している。

 

加えて、「インサイドセールス事業部」ではこうした顧客向けサービスと共に、入電受付時に出張訪問あたりの想定獲得粗利(想定訪問単価)に応じて5つのランクに分類し、収益性の高い効果的なアポイントメントを生成している。
この組織変更により高ランクのアポイントメント率は年を追って着実に上昇し、出張訪問あたり変動利益の向上に寄与している。
同社の場合年間44.9万件(2023年12月期実績)の買取に関する入電があるが、1件残らず電話の内容を録音し、その後のアポイントおよび訪問の成果をトレースしている。これにより高ランクアポイントに繋がった共通事項やエッセンスを抽出し、オペレーターに教育するというサイクルを繰り返し行っており、訪問粗利単価の上昇に繋げている。

 

(同社資料より)

 

②買取:幅広い顧客ニーズに対応した「出張訪問買取」を展開
◎出張訪問買取
問い合わせのあった顧客の自宅へ出向き、査定・買取を実施する「出張訪問買取」が買取方法の中心である。
このほか、売却希望商品を同社まで送る「宅配買取」、直接顧客が同社店舗まで商品を持ち込む「店舗買取」も行っている。

 

「出張訪問買取」を担う「フィールドセールス事業本部」においては、2023年末で439名の査定員を有し、関東圏、関西圏、名古屋、福岡などを拠点として全国各地をカバーしている。
査定希望の商品種類が多岐にわたる場合、査定数量が多量となる場合、査定商品の重量があり持ち運びが困難な場合などのほか、遠方に居住の顧客や高齢の顧客からの問い合わせなど、店頭買取や宅配買取の利用が難しい顧客からの買取依頼にも「出張訪問買取」は柔軟に対応することが可能であり、より幅広い顧客ニーズに対応している。
例えば、着物は1着で1kg程度の重量のものもあり、整理したい着物の枚数が多く、持ち運びが困難な場合、同社の査定員が自宅まで訪問して査定買取を実施する「出張訪問買取」は、顧客ニーズに即した親和性の高いサービスである。

 

◎査定員
採用力を強みに事業規模の拡大に応じてフィールドセールス査定員の人員数も堅調に増加している。2017年より新卒採用を強化している。
また、顧客満足度を高めるため、査定員に対する教育を重視している。
教育研修専門部門「セールスイネーブルメント部」では、査定員の体系的教育研修システムを導入しており、センター別・査定員別に同社独自の細分化した社内管理指数によるスコア化により査定員に応じた教育研修プログラムを実施している。
研修期間の短縮を重要なKPIと位置付け、教育プログラムの見直しを常に実施。研修期間は、数年前は約6か月だったものが、現在は5か月程度まで短縮されている。

 

営業研修や現場への同行等のOJTを定期的に実施し、営業姿勢、査定能力、コンプライアンス意識の向上に努めている。
加えて、顧客の自宅に上がるためには顧客に十分な安心・安全を提供する必要があることから、コンプライアンス体制の徹底にも注力している。
査定員のみでは契約を決裁することはできず、契約時にコンプライアンス専門部署が顧客に電話し、売買契約の内容についての確認(商品、金額および金額への納得の有無の確認)を行う決裁コールを行ったうえで最終契約を締結する。

 

また、コンプライアンス専門部署は査定員退出後に再度顧客に電話(フォローコール)するほか、査定員の対応や法令遵守及び顧客の満足度など、出張査定に関する顧客の率直な意見について具体的なヒアリングを行っている。
フォローコールでの結果については、査定員個人別で意見、クレーム、賛辞内容を管理し、更なる品質向上に向けて適宜査定員に周知徹底を図っている。
法令に従ったクーリング・オフ対応の徹底も図っている。

 

◎真贋鑑定・査定
同社の査定体制は、正確な査定、贋物買取防止および査定員不正を防止する観点から、出張訪問する査定員の現場査定に加えて、査定員からモバイル端末を利用して送られて来る画像や動画等の情報をもとに、真贋及び鑑定を専門とする社員により二重で査定内容をチェックしている。
また、査定データやテクノロジーを活用し、機械学習技術などを用いたオペレーションの自動化による査定や価格決定の効率化・生産性向上を進めており、買取量の最大化を目指している。

 

◎取扱商品
着物、切手、古銭、貴金属、ジュエリー、ブランド品、時計、レコード、骨董品、毛皮、酒類等を対象としており、販売時に高単価を確保できるものをメイン商材としている。

 

(同社資料より)

 

◎主要顧客
中心サービスである出張訪問買取との親和性が高いシニア富裕層からの問い合わせが多く、2022年12月期では50代以上の顧客が全顧客の約86%を占めている。
また、シニア層が中心であることから、自宅整理、遺品整理及び生前整理に伴い同社の買取サービスを利用するケースが多く、サービス利用理由の約70%をそれらが占めている。

 

(同社資料より)

 

③販売:
◎在庫管理
買取商品はクーリング・オフの期間を経た後、千葉県船橋の自社倉庫においてアルバイトを含む300名を超えるスタッフにより検品から出品までを一元管理している。
在庫は、自社開発のITシステム「AXIS」によって管理されており、クーリング・オフへの対応を含めて商品一点ごとの在庫管理を行っている。
商品の特徴・状態・市場環境など様々な面を考慮した上で、最適な販売ルートに送品している。

 

◎販売方法
在庫状況を踏まえて販売戦略を企画立案の上、古物市場や業者向けオークションでの販売、EC販売、催事販売等のチャネルにより買取商品の販売を行っている。

 

(同社資料より)

 

古物市場やオークション販売等のtoB販売(法人向け販売)では、商材ごとに対面形式・対面オークション形式を使い分け、取引先との交渉を繰り返し、より高い利益率を出せる販売先を選定している。23年12月期で売上の約74%がtoB販売である。
また、子会社化した株式会社タイムレスの「タイムレスオークション」により品質毎の適正な販売、流通量の拡大に繋げている。

 

一方、エンドユーザーである一般消費者向けのtoC販売おいては、良質の商品を提供すべく、EC販売(楽天市場、ヤフオク!等)や百貨店催事による販売を行うとともに、2018年7月よりリユース着物の販売を中心とした「バイセルオンライン」、2020年2月よりブランド品、時計、ジュエリーや酒類などのラグジュアリーリユース商品の販売を中心とした「BUYSELL brandchée(バイセル ブランシェ)」と、2つの自社ECサイトを展開している。また、中国向けライブコマース事業を展開している。

 

toB販売により在庫回転期間を短縮(在庫リスクの低減)しながら、toC販売の拡大により収益の最大化を図っている。2018年から開始したtoC販売が占める比率(単体)は当初9%程度であったが、23年12月期は25.5%まで伸長し、利益成長を牽引している。

 

商材の需要動向等に応じた商品1点ごとの最適な販売戦略の立案と多様な販売チャネルの構築により、リユースビジネス成功の第三のカギとなる「販売」においても着実に実績を積み上げている。

 

【1-5 強み・特長】

①多彩な買取/販売チャネルによるシナジーの最大化
同社及び子会社タイムレスの多彩な買取チャネルと販売チャネルにより、両社の強みを活かしたシナジーの最大化を図っている。リユース市場における多くのプレーヤーの中で、他社にはないビジネスモデルで独自のポジションを築いており、明確な差別化となっている。

 

②シニア層を中心とした強固な顧客基盤
前述の通り50代以上の顧客が全顧客の約86%を占めている。同社のヒアリングによれば8割の顧客が同社サービスの対応に満足しており、シニア富裕層からの信頼は厚い。
この強固な顧客基盤は、今後の事業展開において大きなアドバンテージとなろう。

 

③クオリティの高い経営陣
同社の成長を支えている要因の一つが優れたマーケティング戦略である。岩田社長によれば、ベンチャー企業で同社ほど良好なコストパフォーマンスでTVCMを打てている企業は他にはないという。
上手にTVCMを打つには、どういうプレーヤーがいるのか、どういった段取りが必要なのかなど、その構造を熟知していることが必要だが、同社は大手広告会社出身で知見・経験・ノウハウが極めて豊富な岩田会長クロスマーケティング戦略を強力に推進している。
また、顧客からの信頼を得て持続的な成長を追求するにはコンプライアンス体制の完備が不可欠で、買取プロセスにおける現金の管理なども重要なポイントであるため、取締役CFO小野 晃嗣氏の指揮の下、経理面からのオペレーション整備を進めてきた。
取締役CTO今村雅幸氏は、著名企業を含め数社で幅広くDXを推進した実績を持ち、データドリブン経営のためのテクノロジー組織の拡大と成長をリード。「エンジニア組織の生産性指標が高い企業 」として「Findy Team+ Award 」を2022年、2023年連続受賞した。

 

攻守にわたるクオリティの高い経営陣により事業を推進している。

 

④主要KPI:「出張訪問数」×「出張訪問あたり変動利益」
同社ではリユース事業の主要KPIとして 「出張訪問数」×「出張訪問あたり変動利益」を設定している。
「出張訪問数」拡大のためには認知度向上による問い合わせ件数の増大を、「出張訪問あたり変動利益の最大化」のためには高額商品買取増と広告宣伝費の効率化をそれぞれ追求している。

 

(同社資料より)

 

 

 

2.2024年12月期2Q累計決算概要

(1)業績概要

23/12期2Q(累計)

構成比

24/12期2Q(累計)

構成比

前年同期比

会社計画

計画比

売上高

19,561

100.0%

28,720

100.0%

+46.8%

27,263

+5.3%

売上総利益

11,449

58.5%

15,329

53.4%

+33.9%

販管費

10,136

51.8%

12,909

45.0%

+27.4%

営業利益

1,313

6.7%

2,420

8.4%

+84.2%

1,547

+56.4%

調整後EBITDA

1,887

9.7%

3,173

11.1%

+68.1%

2,291

+38.5%

経常利益

1,291

6.6%

2,307

8.0%

+78.6%

中間純利益

635

3.3%

1,210

4.2%

+90.4%

767

+57.7%

*単位:百万円
株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

24年12月期2Q累計業績は、売上高が前年同期比46.8%増の28,720百万円、営業利益が同84.2%増の2,420百万円となった。5月開示の修正予算(売上高27,263百万円、営業利益1,547百万円)をそれぞれ5.3%、56.4%上回っての着地。同社は2Q実績に鑑み、5月に続き通期会社計画を増額修正した(売上高:59,070百万円→61,850百万円、営業利益:3,800百万円→4,680百万円)。なお、1Qから日創社、2Qからむすび社が新規連結化している。2Q累計での新規連結インパクトは、売上高約    32.5億円、営業利益(のれん控除前)約4.2億円となっている。連結効果もあり、売上・営業利益とも2Q(3か月)は過去最高となった。
出張訪問買取事業、グループ店舗買取事業ともに買取・販売が好調に推移した。市場環境に鑑み在庫もしっかりと積み増したことで売上・売上総利益が伸長した格好である。
コスト面では、新規連結影響および貴金属買取伸長によるミックス変化で売上総利益率は低下したものの、増収効果による人件費率・広告宣伝費率等の低下により売上高販管費率が低下、売上高営業利益率は前年同期比1.7ポイント上昇の8.4%となった。なお、バイセル単体の売上総利益率は64.8%と高水準を維持している。

 

 

2Q(3か月)の売上高は前年同期比58.0%増の16,598百万円となった。会社別では、バイセル単体が同31.9%増と牽引役となったほか、タイムレス同26.2%増、フォーナイン同38.2%増とそれぞれ伸長。加えて日創とむすびの新規連結が寄与した格好(新規連結効果を除いた実質増収率は同30.7%増)。

 

(同社資料より)

 

主軸のバイセル単体で広域強盗事件や酷暑の影響を強く受けていた出張訪問買取事業が通常化してきたことに加え、店舗買取事業も順調に拡大し、収益性が向上。タイムレスは営業減益となっているが、人材投資を強化しつつ一部在庫販売を3Qに繰り延べたことが理由であり、計画通りの進捗とのこと。新規連結インパクトのみならず、グループ参画後のシナジーも発現しているとのこと。今後、PMIも進むことで一層の収益性向上が期待されよう。

 

(同社資料より)

 

同社は1Q開示段階で1Qの実績およびむすび社の新規連結影響を織り込む形で2Q累計会社計画を増額修正していたが、今回はそれをも過達した格好である。具体的には、出張訪問買取事業において1Qに買い取った在庫の販売が好調に推移したこと、むすび社が一部一過性要素もあり想定を上回って推移したことが全体業績を引き上げた。

 

営業利益増減益分析(会社計画比)

(同社資料より)

 

(2)出張訪問買取事業主要KPIの

動向

 

株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

期初から閑散期となる夏季に向け次月以降の訪問予約積み上げに取り組んだことや再訪(リピート)獲得が好調に推移したことに加え、当期は広域強盗事件の影響は無いことから、2Q累計の出張訪問件数は前年同期比16.8%増となった。2Qの買取・販売が好調だったこともあり、出張訪問あたり売上総利益も通期会社計画65,600円を上回ってきた。
出張訪問あたり広告宣伝費は引き続き通期計画18,400円を上回った状態。競争環境が引き続き厳しいことから致し方ないが、一定の効率化は具現化していることから、出張訪問あたり変動利益は伸長した。

 

(3)店舗事業主要KPIの動向

株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

グループ内での相互送客やマーケティング、採用・人材戦略、各種データ統合によるグループシナジーを有効活用することにより、グループ店舗展開を推進し、出張訪問買取と差別化した買取チャネル強化に努めている。24年6月末のグループ店舗数は356店舗。

 

(4)財政状態

◎主要BS(連結)

23/12末

24/6末

増減

23/12末

24/6末

増減

流動資産

13,416

19,050

+5,634

流動負債

7,160

10,965

+3,805

現預金

7,756

11,003

+3,247

短期有利子負債

2,909

5,909

+3,000

商品

4,543

6,651

+2,108

固定負債

5,550

10,944

+5,394

固定資産

7,904

12,448

+4,544

長期有利子負債

5,159

10,591

+5,432

有形固定資産

1,148

1,493

+345

負債

12,710

21,909

+9,199

無形固定資産

5,695

9,609

+3,914

純資産

8,610

9,589

+979

投資その他の資産

1,059

1,346

+287

利益剰余金

6,038

6,891

+853

資産合計

21,320

31,499

+10,179

負債・純資産合計

21,320

31,499

+10,179

*単位:百万円
株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

商品在庫は前期末比2,108百万円増の6,651百万円に増加。バイセル、タイムレスとも買取が好調に推移したことで在庫を積み上げ、両社で前期末比14億円増となったことに加え、新規連結効果によって大きく増加した。ただし、販売も好調であることから、在庫回転期間は前期末と同水準。
固定資産増加の主要因はむすびののれん計上(41億円、17年償却)。むすびのM&A資金を借入で充当したことに加え、運転資金も借り入れたことから有利子負債が増加、自己資本比率は前期末39.5%から29.6%に低下した。

 

◎キャッシュ・フロー(連結)

23/12期2Q

24/12期2Q

増減

営業CF

917

812

-105

投資CF

-707

-5,290

-4,583

フリーCF

209

-4,478

-4,688

財務CF

1,029

7,730

+6,701

現金同等物残高

8,244

10,934

+2,690

*単位:百万円
株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

税金等調整前中間純利益2,307百万円のほか、減価償却・のれん償却及び顧客関連資産償却645百万円増となったものの、売上債権増271百万円、棚卸資産増1,563百万円、法人税等の支払639百万円の計上によって、営業キャッシュ・フローは812百万円となった。
投資キャッシュ・フローは5,290百万円の支出となった。連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出4,669百万円に加え、新店舗開設等に伴う有形固定資産の取得による支出193百万円、自社システムの開発に伴う無形固定資産の取得による支出374百万円が計上された。
財務キャッシュ・フローは、短期借入れによる収入1,500百万円、長期借入れによる収入8,300百万円などがあったことから、7,730百万円の収入となった。以上の結果、中間連結会計期間末の現金同等物残高は10,934百万円となった。

 

(5)トピックス

レクストホールディングス株式会社の子会社化
現金対価取得と株式交換の2段階取得でレクストホールディングス株式会社の株式を100%取得する予定。具体的には、88.5%分を現金82億円で取得(株式取得完了日24年10月1日)し、次に残りの11.5%を株式交換の形で取得(取得価格10.7億円、株式交換完了日24年10月8日)する予定。株式交換で割り当てる株式数は297千株(交換比率1:297)で、全株自己株式によって割り当てる計画。現金取得に関しては借入での調達を予定している。BSは24/12期4Q末から、PLは25/12期1Qから連結化となる予定。現段階でのれん金額およびのれん償却年数は未確定。
レクストホールディングス株式会社は、出張訪問買取サービス「買取福ちゃん」を運営する株式会社REGATEや骨董買取事業を運営する株式会社日晃堂などリユース関連企業および機能会社を傘下に持っている。23/12期の連結業績(LTM試算)は、売上高13,770百万円、EBITDA1,155百万円、営業利益971百万円と相応の規模を有する。中核の株式会社REGATEの出張訪問件数は9.3万件(23/12期)と、バイセル単体の1/3強の規模を有する。店舗数は18店舗(24年6月末)。今後、出張訪問買取事業を手掛ける同社グループとレクストホールディングスグループが同一グループとなることで、広告宣伝費の効率化、物流網・ロジの相互連携による効率化向上、販路最適化による収益性向上、骨董品の取り扱い強化、データドリブン経営による戦略と人材の高度化、DX推進による効率的なオペレーションや収益向上の実現、といったシナジーを発揮できると同社は考えている。

 

3.2024年12月期業績予想

(1)業績概要

◎連結決算業績予想

23/12期

構成比

24/12期

(従来計画)

構成比

24/12期

(修正計画)

構成比

前期比

売上高

42,574

100.0%

52,480

100.0%

61,850

100.0%

+45.3%

売上総利益

24,493

57.5%

29,125

55.5%

32,651

52.8%

+33.3%

販管費

21,696

51.0%

25,725

49.0%

27,971

45.2%

+28.9%

営業利益

2,796

6.6%

3,400

6.5%

4,680

7.6%

+67.4%

調整後EBITDA

3,994

9.4%

4,910

9.4%

6,332

10.2%

+58.5%

経常利益

2,754

6.5%

3,310

6.3%

4,140

6.7%

+50.3%

当期純利益

1,453

3.4%

1,890

3.6%

2,240

3.6%

+54.1%

*単位:百万円

 

次期中期経営計画を見据えた土台作りの期としての位置づけは変わらず
期初段階では、前期実績および事業環境の見通しを踏まえ、現実的な水準で予算を策定していた。しかし、実際には出張訪問買取事業に対するネガティブ要素が薄れてきたこともあり、事業環境は改善傾向にある。その結果、5月に続き8月も足下業績に鑑み通期会社計画は増額修正された。具体的には、売上高は前期比45.3%増の61,850百万円、営業利益は同67.4%増の4,680百万円、調整後EBITDAは同58.5%増の6,332百万円に引き上げられた。1株配当予想は25円から30円に引き上げられた。なお、1人あたり営業利益の向上を戦略目標として25/12期以降高成長フェーズへと導くための助走期として24/12期を捉えるスタンスに変わりはない。
出張訪問買取事業においては、前期費用対効果が悪化したマーケティング投資の効率化を重視。売上高広告宣伝費率は前期15.3%から12.7%に下げつつも、出張訪問数を前期比9%増の284,800件とする計画。
店舗買取事業については、M&A戦略も含め積極的に事業を拡大していく計画。M&Aによる店舗数拡大に留まらず、グループ店舗間での連携を強化することで、出店効率化や販路強化にも取り組んでいく計画になっている。
25/12期以降を見据えた先行投資も行っていく計画。具体的には、toC販売強化に向けた販売旗艦店の出店、海外販路の拡充、自社EC強化等への投資を予定している。
現中期経営計画については、24/12期計画を今回発表の会社計画に置き換え、定性的な面での変更は加えていない。引き続き既発表の中期経営計画をベースに最終年度に取り組み、25年2月の24/12期通期決算発表タイミングで新たな中期経営計画を公表する予定。

 

4.今後の注目点

外部環境の最悪期は脱してきたことが鮮明になったこともあり、一段と攻めの姿勢を強めている印象。足下業績も好調ではあるが、経営の視線は来期以降に向いており、資本市場も短期業績ではなく、将来の成長可能性に目を向けていきたい。先行投資の先からは、買取領域から一歩踏み出そうとしている姿勢が見受けられる。日本国内における二次流通市場は大きい。加えて、アジアを中心に日本の二次流通品に対する評価も高いことを考えると、これからの先行投資が同社のTAMを一層大きくしていくことに期待したい。

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成>

組織形態 監査等委員会設置会社
取締役 12名、うち社外6名
監査等委員 3名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
更新日:2024年4月1日

 

<基本的な考え方>
当社は企業価値を向上させ、株主利益を最大化するとともに、お客様、取引先、従業員、地域社会、行政機関等のステークホルダーと良好な関係を築いていくために、コーポレート・ガバナンスの確立が不可欠なものと認識しております。
そのため、当社は経営環境の変化に迅速かつ公正に対応する意思決定機関を構築し、当社の営む事業を通じて利益を追求すること、財務の健全性を確保してその信頼性を向上させること、説明責任を果たすべく積極的に情報開示を行うこと、実効性ある内部統制システムを構築すること、並びに監査等委員会が独立性を保ち十分な監査機能を発揮すること等が重要であると考えております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
「当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。」と記載している。

 

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