リニカル(2183) 増収増益 大規模な受託獲得を目指す

2024/01/18
 

秦野 和浩 社長

株式会社リニカル(2183)

 

 

会社情報

市場

東証スタンダード市場

業種

サービス業

代表取締役社長

秦野 和浩

所在地

大阪市淀川区宮原1-6-1 新大阪ブリックビル

決算月

3月

HP

https://www.linical.com/ja/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

521円

22,586,436株

11,767百万円

14.2%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

15.00円

2.9%

44.63円

11.7倍

353.02円

1.48倍

*株価は12/7終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
*ROEは23/3月期実績。BPSは24/3月期第2四半期実績。EPSとDPSは24/3月期予想。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2020年3月(実)

10,935

1,005

918

482

21.38

14.00

2021年3月(実)

10,279

453

588

539

23.91

14.00

2022年3月(実)

11,555

1,085

1,183

790

35.00

14.00

2023年3月(実)

12,516

1,256

1,283

1,004

44.47

14.00

2024年3月(予)

13,300

1,400

1,400

1,008

44.63

15.00

*単位:百万円、円
*予想は会社予想。

 

リニカルの2024年3月期第2四半期決算概要と2024年3月期業績予想について、ブリッジレポートにてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.経営戦略
3.2024年3月期第2四半期決算
4.2024年3月期業績予想
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 24/3期第2四半期累計は前年同期比2.4%の増収、同12.8%の営業増益。売上面では、欧州等が前年同期比で減少したものの、米国が好調に推移し大幅に増加したことに加え、為替が円安となったことなども寄与した。利益面では、欧州が第1四半期に続き営業赤字となったものの、米国と日本が増加したことが営業利益の増加に寄与した。 
  • 第2四半期が終わり、24/3期の会社計画は、前期比6.3%の増収、同11.4%の営業増益の期初予想から修正なし。ウクライナ問題の影響により東欧を中心に欧州で苦戦しているものの、新薬の開発需要が旺盛な米国の好調によりカバーする見込み。配当も、前期から1株当たり1円増配の1株当たり普通配当15円の予定を据え置き。 
  • 同社ではこれまで以上に世界各地の拠点間の連携を強め同社グループのみでの大規模な国際共同治験の受託獲得を目指している。同社グループのみでの大規模な国際共同治験の受託は、1件当たりの受注単価の大幅な増加を意味し、同社の成長加速の原動力となる可能性が高い。今後の大型の国際共同治験の受注獲得状況に注目したい。 

1.会社概要

同社は、医薬品開発のプロフェッショナルとして、臨床試験の初期段階から製造販売後試験まで一気通貫でサービスを提供する日本発のグローバルCRO(医薬品開発業務受託機関)である。臨床試験(治験)に関わる業務の一部を代行する事で製薬会社の医薬品開発を支援するCRO(Contract Research Organization)事業を中心に、医薬品のマーケティング業務ならびに製造販売後(以下製販後という)臨床研究・調査の受託などを行う育薬事業を手掛ける。
医薬品は発売前に厚生労働省の承認・認可を受けることが義務づけられており、承認前の薬剤(医薬品候補)を患者に投与して効果や安全性を確かめる必要がある。その臨床試験としての治験を支援する事業がCRO(Contract Research Organization)である。また、医薬品は製販後も調査、臨床研究を行う必要があり、その段階を支援する事業が育薬(Contract Medical Affairs)である。
同社は創業以来、がん・中枢神経系(CNS)など、世界中の人々がその撲滅を願い、新薬開発への強いニーズが存在する疾病領域を中心にCRO事業を展開してきた。これらは非常に難易度が高い領域であり、同社の知識・経験豊富なエキスパートが高度な治験を支えている。また、同社は創薬支援・育薬事業にも力を注ぎ、申請業務支援、承認後のマーケティングや臨床研究、製販後調査支援まで、単なるアウトソーシングを越えてお客様の事業を幅広くコンサルティングする「製薬会社の真のClinical Development Partner(医薬品開発パートナー)」を目指している。更に、国際化・大規模化が進む医薬品開発の流れのなかで、グローバルで大規模なプロジェクトにも同社グループのワンストップで十分な対応を行い、製薬会社とともに新しい時代を開拓していく戦略的ビジネスパートナーとして、顧客の市場競争力の拡充をトータルに支援している。
また、同社は、受託特化型の事業形態により、特定領域への特化、特定治験段階への特化(フェーズⅡ、フェーズⅢ)を通じて、高収益体質を構築している。

 

【経営理念】

経営理念は、「医薬品開発のあらゆる場面で常にプロフェッショナルとしての質を提供し、ステークホルダーである製薬会社、医療機関、患者ならびに株主、従業員の幸せを追求する。」である。

青は「差別することなき、誠実さを」
赤は「消えることなき、情熱を」
黄は「飽くことなき、探求心を」
を意味しており、同社のロゴマークには、事業を通して世界中の患者様の幸せを追求していきたいという同社の想いが込められており、「新薬に翼を」という使命を担っている。

 

【沿革】

2005年6月、藤沢薬品工業株式会社(現 アステラス製薬株式会社)で免疫抑制剤等の開発に携わってきたメンバー9名によって設立された。大阪発理想の医薬品開発受託(CRO)事業を目的として、設立当初から、CNS領域やがん領域の育成に取り組み、会社設立後まもなく大塚製薬からCNS領域の案件を受注。その後、人材を補強し事業部として受注活動を強化した。また、がん領域も外資系製薬会社等でがん領域の医薬品開発を手掛けた人材等に恵まれ、足元、受注が拡大している。
SMO(治験施設支援機関)事業進出を念頭に、06年1月に同事業を手掛けるアウローラ(株)を子会社化したが、CRO事業への経営資源集中を図るべく07年5月に全保有株式を売却。08年7月に、国内の製薬会社の米国進出支援を目的に米国カリフォルニア州に全額出資子会社LINICAL USA, INC.を設立。同年10月の東証マザーズ上場を経て、13年3月に東証1部に市場変更となった。13年5月に、台湾と韓国に全額出資子会社LINICAL TAIWAN CO., LTD.とLINICAL KOREA CO., LTD.を設立。14年4月には、LINICAL KOREA CO., LTD.と買収した韓国のCROであるP-pro. Korea Co., Ltd.との統合を完了した。14年10月29日には欧州でCRO事業を展開しているNuvisan CDD Holding GmbHの全株式を取得し子会社化するための株式譲渡契約を、Nuvisan Pharma Holding GmbH との間で締結し、12月1日付けで同社の100%子会社となった。更に、グループとしての一体感の醸成と連携強化を図るため、連結子会社となったNuvisan CDD Germany GmbHの名称をLINICAL Europe GmbHに商号変更した。その他、16年3月にLINICAL U.K. LTD.を、同年10月にLINICAL POLAND Sp.z.o.o.を、17年9月にLINICAL Czech Republic s.r.o.を設立した。また、2018年4月に米国でAccelovance, Inc.を買収し、Linical Accelovance America, Inc.(LAA)に社名変更。その他、19年3月にLinical Hungary Kft.を設立、19年5月にLinical China Co., Ltd.を設立した。更に、2019年12月にLINICAL Europe GmbHへLAA社の欧州子会社を統合し欧州地域の強化を図ったことに加え、20年2月に上海支店を開設し国際共同治験の受託体制が更に強化された。また、20年4月にLinical Benelux B.V. と Linical Accelovance Europe B.V. を合併し、Linical Netherlands B.V.を発足、23年3月末にはLinical China Co., Ltd. とLinical Accelovance China Ltd.の統合を実施した。海外のM&Aにより着実に成長し、22/3期、23/3期は連続して過去最高の売上高を達成した。また、売上高営業利益率は10%を超える水準まで回復した。

 

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

【業務内容】

同社は、日本発のグローバルCRO(医薬品開発業務受託機関)として、日本を中心にアジア、欧州、米国に事業を展開し、創薬段階から臨床開発、製造販売後の育薬まで一気通貫でサービスを提供している。医薬品開発のトレンドである、がん、中枢神経系、免疫領域を中心に豊富な経験と実績を有している。
CROとは、製薬会社等から依頼を受け、医薬品の開発段階で行われる臨床試験(治験)に係る業務を代行、支援する機関。治験に関して高い専門性を持つ、医薬品開発のプロフェッショナルである。治験が法規制や治験実施計画書を遵守して行われているかどうかを監視するモニタリング業務をはじめとして、データマネジメント業務、メディカルライティング業務など、業務内容は多岐に亘る。
同社は、主にCRO事業(臨床開発事業)、製造販売後の臨床試験や臨床研究とマーケティング活動支援を担当する育薬事業、創薬支援事業を展開している。非臨床試験段階から臨床開発、製造販売後の育薬まで一気通貫で対応出来る体制をとることで、効率的な新薬開発による上市までの期間の短縮や製品ライフサイクルの延長を可能とし、製薬会社の真のパートナーとして医薬品の価値最大化に貢献している。更に、同社は、製薬会社のみならずバイオベンチャーに対して、ライセンス等の出口戦略まで多面的に支援している。

 

(同社決算説明会資料より)

 

CRO事業(臨床開発事業)
CRO事業は、製薬会社が行う治験業務の一部を代行する事業で、モニタリング、データマネジメント、メディカルライティング、ファーマコビジランス、統計解析、品質管理などの業務を行っている。同社では、新薬の迅速な市場投入につながる高品質で高効率な治験の支援を目指して、高い技術と豊富な経験をもつスタッフが担当にあたっている。今後も拡大するグローバルスタディに対応していくため、アジア(韓国、台湾、シンガポール、中国など)と欧州、米国に拠点を開設。薬事から企画、実施計画書の作成、モニタリング、データマネージメント、統計解析、ファーマコビジランスまでワンストップで対応。国際共同治験においては、リニカル本社を窓口に位置づけ、各国に医薬品開発事情に精通した人材を配置。日本語ベースで機動的な国際共同治験が可能な開発環境を整えている。10年から20年近くに及ぶ新薬開発プロジェクトの中でも、3年から7年を要するといわれる治験で特に重要とされる患者を対象とする「第Ⅱ相(フェーズⅡ試験)」「第Ⅲ相(フェーズⅢ試験)」のプロセスに特化し、受託特化型の事業形態にて治験の核となる「モニタリング」を「品質管理」「コンサルティング」とともに提供。信頼性の高いデータの収集を行い、迅速、確実な新薬開発の実現を支援している。更に、豊富な医薬品開発情報を有する大手製薬会社に特化すると共に、担当領域も市場からの開発要請の強いがん領域や中枢神経系領域をはじめ難易度の高い領域に特化することで、顧客である製薬会社のニーズに応えている。
また、同社は、スケジュール管理、治験標準業務手順書・GCP遵守、データ・症例報告書の信頼性などの分野におけるサービスクオリティの高さに強みを持っている。

 

*国際共同治験
「国際共同治験」とは、新規の医薬品開発に世界規模で取り組み、早期上市を目指すため、臨床試験を複数の国または地域において同時並行的に行うことをいう。
*GCP(Good Clinical Practice)
「GCP」とは治験を実施する際に守るべきルールで、日本で正しく治験を実施できるように厚生労働省により省令(法律を補う規則)として定められているもの。

 

育薬事業
育薬事業は、企業・医師主導臨床研究の組織体制構築業務、製造販売後の臨床試験・調査の企画業務・モニタリング業務・監査業務をサポートする事業であり、同社は臨床研究のサポートを実施している。臨床研究法が施行され臨床研究を取り巻く環境は大きく変化している中、情報をタイムリーにキャッチアップし、製薬会社のメディカルアフェアーズ部にとって最良のパートナーとなれるよう、臨床研究のモニタリング・研究事務局業務を中心にデータマネジメント・統計解析などを含めたフルサービスの支援を行っている。J-GCPだけでなく、倫理指針、臨床研究法に加えてICH-GCP準拠の臨床試験も対応しており、全てのレギュレーションでのサービスを提供している。また、当初よりPrimary領域、中枢神経領域でのサービスを提供。現在はがん領域を強化し、半数以上のモニターががん領域の経験者となっている。開発で培ったノウハウをベースに、最新のレギュレーションに対応し、難易度の高い領域でエビデンス創造に貢献する方針である。

 

創薬支援事業
既存の臨床開発事業と育薬事業に続く、第3の事業である創薬支援事業 (Innovative Drug Development Business) を展開中。創薬支援事業では、市場分析、薬事対応、開発戦略立案、パートナリング支援などの業務を行っている。国内大手製薬会社でライセンス、事業開発、臨床開発、開発薬事、マーケティングといった業務に携わり、開発品の目利きから、導入・導出交渉、臨床開発などで数々の実績と豊富な経験を有している担当者が中心となり、主に①開発品の市場分析、②薬事相談のサポート、③ライセンスのサポートの3種のコンサルティングサービスを提供している。これらの経験を武器に、現在、国内または国外の製薬会社、バイオテクノロジーカンパニーからの業務を開発早期より支援している。今後、更に同社の国際拠点と連携し、グローバルでトータルにサポートできる体制を進める方針である。

 

【サービス】

医薬品開発戦略

プロトコル作成と

試験デザイン

同社はプロトコル作成と試験デザインにおいてこれまで多くの臨床開発を成功に導いた実績がある。プロジェクトのニーズに合わせた計画を立案し、リスクを軽減しながら高品質で効率的に試験を行うためのロードマップを策定する。
薬事コンサルティング 同社は、グローバルな医薬品開発に精通し、ワールドクラスの薬事コンサルティングサービスを提供している。最適な戦略を提案し、最も費用対効果が高く、最も迅速に薬事プロセスに対応できるよう支援する。
薬事申請 同社の薬事チームは豊富な専門知識と経験を有し、初期から後期フェーズの臨床開発をサポートしている。また、薬事と臨床業務の双方を理解し、薬事申請戦略、規制当局との面談支援、さらに治験開始時のコーディネートなど、包括的に医薬品および医療機器の開発をサポートしている。同社は、米国、ヨーロッパおよびアジアの顧客との豊富な取引実績がある。
品質保証 同社は、品質を最も重視している。SOPの作成からQAコンサルティング、監査まで、世界中でサービスを提供している。
メディカルライティング メディカルライティングは、治験関連文書の作成にあたり、明確なコミュニケーションと一貫性の保持、更には被験者の安全性の確保や規制当局の審査に対応するために必要不可欠である。同社は、高い専門性を活かし、顧客の要求レベルを満たす高品質のメディカルライティングによる、付加価値の提供を目指す。

 

臨床試験

フィジビリティ調査と

試験の立ち上げ

フィジビリティ調査と医療施設の選定を行い、臨床試験をより迅速に立ち上げる。同社は、豊富な現場経験に基づく実践的かつ戦略的アプローチにより、顧客と緊密に連携して目標を理解し、革新的なソリューションを提案し、早期に組み入れが完了するよう臨床試験の立ち上げを行う。
プロジェクトマネジメント 同社の経験豊富なプロジェクトチームは、顧客のパートナーとして、試験が予定通りに予算内で、期待する品質のデータを得るよう完了まで支援する。また、これまでの経験を活かしながら顧客の要望に素早く対応し、ニーズを確実に満たせるよう、プロジェクトに伴走している。
ファーマコビジランス 同社のファーマコビジランスは、専門家からなるグローバルチームである。顧客の安全性情報対応を迅速かつ的確にサポートする。
モニタリング モニタリングは、被験者の人権と安全を保護し、規制遵守、データ品質、および臨床試験結果の完全性を確保するために不可欠である。同社は、創業以来、モニタリングに特に注力し、その品質を顧客に評価されている。
データマネジメント・

統計解析

同社のデータマネジメント・統計解析は、あらゆる段階で、深い考察と効率性の双方の提供を目指している。コンサルティングからフルサービスのデータ管理・統計デザインまで同社のプロフェッショナルが担当する。
被験者募集 臨床試験に適した被験者を見つけることは容易ではなく、症例の組入が臨床試験の成否を分ける最大のポイントであり、試験が大幅に遅れ、大きな損失が生じる可能性にもつながる。臨床試験を成功させるには、被験者募集計画を十分に検討することが不可欠である。
トレーニング 同社のCRAトレーニングは、熟練した専門家や実務に携わっている臨床現場のClinical Trial Manager(CTM)が講義を行うことで、より実践的なトレーニングを提供しており、受講生は優れたモニタリングスキルを持つ優秀な臨床開発モニターになることが可能となる。

 

【グローバル展開】

同社は日本発のグローバルCROとして、日本を中心にアジア、欧州、米国など世界各地に拠点を展開している。同社として約20か国/地域、パートナーを通じてサービスを提供できる国を含めると約30か国/地域において事業を展開している。現地の規制や習慣を熟知した各機能のエキスパートが、グローバルに連携し、一つ一つのプロジェクトに合わせたきめ細かなサービスを提供している。

 

LINICAL Global 拠点 「日本・アジア+米国+欧州」の3極体制

(同社決算説明会資料より)

 

(同社決算説明会資料より)

 

海外売上比率が徐々に増加し、23/3月期実績では58%となった。グローバルCROとして、各地域が連携して国際共同治験を受託している。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

欧米および日本での大型試験の中止などにより、前期末から減少しているものの、日本・アジア+米国+欧州の3極体制整備の成果により、順調に売上高を計上しながらも受注残高は高水準を維持している。

 

2.経営戦略

IQVIA 「The Global Use of Medicines 2022 OUTLOOK TO 2026 」によると、 世界の医薬品市場は2021年の1兆4,230億米ドルから2026年には1兆7,500~1兆7,800億米ドルまで年平均3-6%で成長見込みとなっている。その中で、米国の市場規模が全体の40.2%を占め、欧州(イギリス・ドイツ・フランス・イタリア・スペイン)が15.4%、中国が12.4%、日本が5.2%を占める予想となっている。世界の医薬品市場の拡大とともに、今後CRO市場も拡大が予想される。こうした中、日本は先進国で唯一マイナス成長の予測となっており、世界最大市場である米国を始めグローバルでの事業拡大が必須となっている。

 

【地域別売上高と従業員数】

(2023年3月末)

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

【中長期目標】

①日本500人、アジア400人、欧州400人、米国400人、1500人を超える体制の構築
②各極で成長投資(M&Aを含む)を行いつつ黒字維持、利益率の向上
③世界60ヵ国程度への進出。時差を考慮しつつ、日米欧それぞれの地域でカバーエリアの拡大を検討。南半球に拠点を持つ
ことで、季節性疾患の臨床試験を一年中実施することが可能となる。

(同社決算説明会資料より)

 

【収益力の強化に向けた取り組み】

市場環境や顧客ニーズの変化を踏まえ、顧客、疾患領域、サービスの各面でビジネスモデルを進化させる。

(同社決算説明会資料より)

 

【バイオ医薬品企業への

アプローチと戦略】

新興バイオ医薬品企業による新薬の開発が増加している。2022年の世界の新薬のうち、新興バイオ医薬品企業*により開発された割合が67%を占めた。創薬の主体はバイオ医薬品企業が中心となっている。同社の顧客基盤は、創業当初国内大手製薬会社のみであったが、現在は国内大手製薬会社に加え、海外大手製薬会社や国内外のバイオベンチャーまで拡大している。
米国では、海外CROの買収に伴い、もともとの顧客基盤を引き継ぎ、中にはベンチャーから大きく成長した企業も誕生している。同社では、今後も存在感を増しているバイオ医薬品企業へ積極的にアプローチする予定である。
新興バイオ薬品企業では、CROに対して、豊富な経験やノウハウがあるCROに支援を求めたいが、自分たちの規模やニーズに合わせて柔軟に対応して欲しいとのニーズが高まっている。こうしたニーズに対し、同社では、グローバルワンストップのCROサービスとニーズに合わせたきめ細かいソリューション提案を組み合わせ、大手グローバルCROと差別化を図る。
また、新興バイオ薬品企業は、日本の医薬品市場に参入し、自社製品を流通・販売したいが、日本の市場や薬事の知識が十分でない、十分な開発・販売機能を備えていない、戦略的パートナー/ライセンシーが必要などのニーズも持っている。同社ではこれらニーズに対し、創薬支援事業を入口としたパッケージ展開を実施する方針である。
*年間売上高500百万USD以下、研究開発費200百万USD以下の企業、出所:IQVIA Institute

 

【創薬支援事業を入口とした戦略】

同社創薬支援事業には、以下の2つの特徴がある。一番目は、顧客の様々なニーズに対応できる①市場分析・調査、②開発・薬事戦略、PMDAコンサルティング、③戦略パートナー/ライセンスからなる3つのサービスを提供できることである。二番目は、経験豊富なプロフェッショナル集団を抱えていることである。同社はこれまで大手製薬会社やアカデミアで、医薬品開発に関わる広範囲な業務を長年経験したプロフェッショナルを採用してきた。更に、事業拡大に伴い2023年度に社内外から人員の拡充も図った。2016年10月に創薬支援事業を開始以降、約44%の顧客が海外企業となっており、幅広い疾患領域、モダリティで着実に実績を拡大中である。同社は今後も、創薬支援事業を入口として、治験業務の受託拡大へつなげる方針である。

(同社決算説明会資料より)

 

【海外顧客の日本市場への

関心の高まりに対応】

アフターコロナとなり、海外企業や国内企業において、日本を含めた国際共同治験のニーズが高まっている。一方で、欧米において直近5年に承認された新有効性成分含有医薬品の約7割が日本で未承認となっている。これは、日本において国際共同治験を実施する際に日本人での第1相追加試験が必要となっていることも影響している。こうした中、2023年9月13日に厚生労働省より、原則として国際共同治験の前に日本人による第1相治験を追加実施する必要はないとの考え方が示された。日本人での第1相追加試験を実施するには、一定の時間と費用を要することから、第3相試験の開発遅延(ドラッグラグ)や日本の開発不参加(ドラッグロス)の恐れがあったものの、日本の国際共同治験への参加のハードルが一つ下がる可能性が高まった。同社は、日本・アジア+米国+欧州」の3極体制を武器に、日本を含めた国際共同治験の受託拡大を目指す。

 

(同社決算説明会資料より)

 

(同社決算説明会資料より)

 

3.2024年3月期第2四半期決算

(1)連結業績

 

23/3期

第2四半期累計

構成比

24/3期

第2四半期累計

構成比

前年同期比

売上高

5,920

100.0%

6,064

100.0%

+2.4%

売上総利益

1,840

31.1%

1,984

32.7%

+7.8%

販管費

1,467

24.8%

1,563

25.8%

+6.6%

営業利益

373

6.3%

421

6.9%

+12.8%

経常利益

614

10.4%

483

8.0%

-21.3%

親会社株主に帰属する四半期純利益

468

7.9%

178

3.0%

-61.8%

*単位:百万円
*数値には(株)インベストメントブリッジが参考値として算出した数値が含まれており、実際の数値と誤差が生じている場合があります。(以下同じ

 

前年同期比2.4%の増収、同12.8%の営業増益
売上高は前年同期比2.4%増60億64百万円、営業利益は同12.8%増の4億21百万円。
売上面では、欧州等が前年同期比で減少したものの、米国が好調に推移し大幅に増加したことに加え、為替が円安となったことなども寄与し前年同期比で増加した。
利益面では、欧州が第1四半期に続き営業赤字となったものの、米国と日本が増加したとから営業利益が前年同期比で増加した。売上総利益率は32.7%と前年同期比1.6ポイント上昇した。旅費交通費、支払手数料、のれん償却額などが増加し、販管費は前年同期比6.6%の増加となった。以上の結果、売上高営業利益率は6.9%と前期比0.6ポイント上昇した。一方、営業外収益で外貨預金等に発生した為替差益が前年同期比で1億96百万円減少したこと等により、経常利益は前年同期比21.3%減の4億83百万円となった。また、前年同期に特別利益で保険受取金を50百万円計上したものの、今期は計上がなかったことや今期に特別損失で欧米子会社の経営管理体制の統合に伴う事業構造改革費用1億47百万円を計上したことなどにより、親会社株主に帰属する四半期純利益は、前年同期比61.8%減の1億78百万円となった。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

セグメント別売上高・利益
CRO事業では、売上高が前年同期比3.9%増の56億82百万円、営業利益が同36.3%増の13億82百万円と増収増益になった。育薬事業では、売上高が前年同期比15.5%減の3億81百万円、営業利益が同33.4%減の1億9百万円と減収減益になった。

 

(2)地域別業績動向

地域別業績動向

 

23/3期 第2四半期累計

24/3期 第2四半期累計

売上高

営業利益

売上高

増減率

営業利益

増減率

日本

2,912

341

2,682

-7.9%

370

+8.6%

米国

1,407

42

1,998

+42.0%

304

+613.2%

欧州

1,862

120

1,578

-15.3%

-118

韓国

408

36

442

+8.3%

14

-60.2%

台湾

63

-15

50

-20.1%

-16

中国

201

21

165

-17.9%

1

-95.3%

連結調整

-933

-172

-853

-134

合計

5,920

373

6,064

+2.4%

421

+12.8%

*単位:百万円
*のれんの償却費用は連結調整に含めている。売上高は内部取引控除前の数値。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

【日本】
日本は、新型コロナウイルス感染症が5類に分類され治験環境が改善し、順調に受注案件を消化して売上高を計上しているものの、第1四半期に既存案件の中止が発生した影響が大きく前年同期比で減収となった。一方、営業利益は、経費の抑制等により前年同期比で増益となった。引き続き、経費削減を継続し、新規案件の獲得に努める。

 

【韓国】
韓国は、既存案件の順調な進捗や複数の新規案件の開始等に加え、円安の影響もあり前年同期比で増収となった。一方、営業利益は、先行的な人材投資により前年同期比で減益となった。

 

【中国】
中国は、既存案件の収束に伴う売上減少等により前年同期比で減収減益となった。

 

【台湾】
台湾は、既存案件で中止が発生したことや、新規案件の開始延期などにより、前年同期比で減収、営業赤字となった。

 

なお、アジアは、日本、米国と営業面での連携を強化して現地製薬会社からの受注の掘り起こしに注力しており、複数の新規顧客から案件の打診を受けている。

 

【米国】
米国は、前年同期に米欧地域で大型国際共同治験の開始遅延があった一方で、今期は既存案件の進捗が想定を上回って推移したことに加え、為替が円安に推移したこと等により前年同期比で大幅に増収増益となった。なお、現在米国のバイオテック企業の引き合いは旺盛であり、引き続き米国CRO市場の深耕に注力し、持続的な成長を図る。

 

【欧州】
欧州は、既存試験の中止や新規案件の開始延期、既存試験の進捗が想定を下回ったことに加え、バイオベンチャーの資金調達が難しい環境で新規案件の受注獲得が想定を下回り前年同期比で減収、営業赤字となった。欧州経済はロシア・ウクライナ紛争など地政学リスクの高まりからエネルギー価格の高騰や高インフレが継続し、これに対処する高金利政策が、ドイツをはじめとした欧州の経済情勢にマイナスの影響を与えている。このような欧州の景況感の悪化に対応するため、米国事業との連携をより一層推し進め、営業面でグローバル・シナジーをさらに強化することで、米国企業からの欧州を含む新規案件の受注獲得を図る。

 

【のれんの残高と残存償却期間(2023/3期末)

 

のれん

のれん以外の関連する無形固定資産※2

期末残高

残存償却期間

年間償却額※3

期末残高

残存償却期間

年間償却額※3

韓国

19/3期で償却終了

19/3期で償却終了

欧州※1

1,326

10-11年

129

10.8

68.7

4年

7.75年

2.7

8.9

米国※1

2,058

11年

187

40

4年

10

合計

3,384

316

119.5

21.6

*単位:百万円
※1 Linical Accelovance America, Inc.買収により発生したのれんについて、その欧州子会社分を欧州に按分
※2 のれん以外にPurchase Price Allocationにより認識された無形固定資産
※3 2023年3月期末の為替レートで換算

 

(3)受注残高の推移

 

23/3期 期末

(A)

24/3期

第2四半期末

23年11月14日時点

(B)

前期末比

(B-A)/A

日本

8,195

6,809

6,030

-26.4%

米国

5,798

5,266

5,425

-6.4%

欧州

5,252

5,137

5,209

-0.8%

アジア

1,686

1,592

1,533

-9.1%

受注残高合計

20,933

18,805

18,199

-13.1%

*単位:百万円

 

同社のCRO事業において受託する治験業務では、1年から3年程度の治験実施期間において、症例数や対象疾患に起因する治験の難易度などにより受託総額が決定する。この実施期間についてクライアントと委受託契約を締結し、契約に従い売上が発生する。育薬事業においても、同程度の期間についてクライアントと委受託契約を締結し、契約に従い売上が発生する。
受注残高は、既に契約を締結済みの受託業務の受注金額の残高である。これは、今後1年から5年程度の期間で発生する売上高を示しており、同社グループの今後の業績予想の根拠となる指標である。

 

2023年11月14日時点の受注残高は、2023年3月期末と比較して13.1%減の181億99百万円となった。
日本・アジア地域は、新規の受注の獲得や工数を増加する契約変更等があったものの、新型コロナウイルス感染症が5類に分類され日本の治験環境が改善して順調に受注案件を消化し売上高を計上したことに加え、試験の早期終了による契約変更が発生した結果、2023年3月期末から受注残高が減少した。一方、受注残高には含まれていないものの、受注内諾を受け契約締結作業中の複数の新規案件がある他、複数の新規案件の打診を受けており、受注残高の積み上げに向け、営業活動を継続している。
米国は、複数の新規案件の契約締結や工数を増加する契約変更がなされたものの、契約業務の高い進捗により順調に受注残高を消化し売上高を計上した結果、2023年3月期末から受注残高が減少した。一方、受注内諾を受け、契約締結作業中であり受注残高には含まれない新規案件がある。引き続きバイオテックの開発意欲は旺盛で引き合いも多く、グローバル案件等の複数案件の打診を受けており、受注残高を積み上げるべく、営業活動を継続している。
欧州地域は、新規案件の受注獲得や工数を増加する契約変更等もあったものの、既存の受注案件を消化し売上高を計上した結果、2023年3月期末から受注残高が減少した。一方、上記の受注残高には含まれていないものの、受注内諾を受け契約締結作業中の新規案件がある。欧州経済においては減速感がみられ、今後の受注環境に先行き不透明感はあるものの、受注の積み上げに向けた営業活動を継続している。また、米国事業との連携をより一層推し進め、営業面でグローバル・シナジーをさらに強化することで、米国企業からの欧州を含む新規案件の受注拡大を目指す。

 

(4)第2四半期(7-9月)の

業績推移

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

24/3期第2四半期(7-9月)は、前年同期比で減収減益となった。一方、前四半期(4-6月)との比較では若干の減収ながら大幅な増益となった。過去の第2四半期(7-9月)と比べ、売上高は高水準となっている。

 

(5)財政状態及び

キャッシュ・フロー(CF)

財政状態

 

23年3月

23年9月

 

23年3月

23年9月

現預金

7,042

7,316

短期有利子負債

1,139

1,139

売上債権・契約資産

3,427

3,395

未払金・未払費用

955

917

立替金

1,037

1,080

前受金

2,207

2,447

流動資産

12,008

12,517

長期有利子負債

2,402

2,069

有形固定資産

625

545

負債

9,883

10,238

無形固定資産

3,511

3,793

純資産

7,581

7,973

投資その他

1,319

1,354

負債・純資産合計

17,464

18,211

固定資産

5,455

5,694

有利子負債合計

3,542

3,209

*単位:百万円
*有利子負債=借入金+リース債務

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

2023年9月末の総資産は前期末比7億47百万円増の182億11百万円。資産サイドは主に現預金、のれん、繰延税金資産などが増加要因となり、有形固定資産、投資有価証券などが減少要因となった。負債純資産サイドは、主に前受金、預り金、為替換算調整勘定などが増加要因となり、未払費用、長期借入金などが減少要因となった。また、2023年9月末の自己資本比率は43.8%と前期末比で0.4ポイント上昇した。

 

キャッシュ・フロー      

23/3期

第2四半期累計

24/3期

第2四半期累計

前年同期比

営業キャッシュ・フロー(A)

659

631

-27

-4.2%

投資キャッシュ・フロー(B)

-27

18

+45

フリー・キャッシュ・フロー(A+B)

631

649

+17

+2.8%

財務キャッシュ・フロー

-636

-705

-68

現金及び現金同等物四半期末残高

6,303

7,316

+1,013

+16.1%

*単位:百万円

 

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

CF面では、税金等調整前四半期純利益の減少や法人税等の支払額の増加などにより、営業CFのプラス幅が縮小した。一方、投資事業組合からの分配による収入の増加などにより投資CFがプラスへ転じ、フリーCFのプラス幅が拡大した。その他、財務CFはリース債務の返済による支出が増加しマイナス幅が拡大した。

 

(6)プライム市場の上場維持基準

への適合状況(変更)と

スタンダード市場への選択申請

◎プライム市場の上場維持基準の適合に向けた取り組みの実施状況と評価
同社は、2021年12月27日に公表した計画書において、プライム市場の上場維持基準(流通株式時価総額基準)の適合に向けた基本方針、課題及び取り組みを定め、流通株式時価総額の増加を目指し、基本方針として、(ⅰ)株価の向上、(ⅱ)流通株式数の増加、を掲げている。その中心となる(ⅰ)株価の向上において、①収益力の強化を進めるとともに、②コーポレート・ガバナンスの強化、企業としての③アカウンタビリティの強化に取組むことで、企業価値の向上を通じた流通株式時価総額の増加を目指してきた。具体的には、現在の取締役(監査等委員である取締役及び社外取締役を除く)の一部を、取締役を兼任しない執行役員とすることにより、取締役会を、①過半数を社外取締役、②女性取締役比率を30%以上、で構成することを決定した。なお、加えて、執行役員については、責任範囲・権限をより明確にしたうえで、人事・報酬については指名委員会及び報酬委員会の諮問対象とすることにより、取締役と同様に、人事・報酬に関する客観性、透明性及び公正性を確保する。これらの改定により、①取締役会の過半数が社外取締役となることによる取締役会のガバナンス・監督機能の一層の強化、②執行役員制度拡充による業務執行の迅速性・実効性の向上、③取締役会の規模の適正化・多様性の確保の点で、コーポレート・ガバナンスの一層の強化を見込んでいる。

 

◎スタンダード市場の選択
同社は、プライム市場の上場維持基準への適合を目指す一方で、2023年4月1日施行の東証の規則改正に伴い、スタンダード市場への再選択の機会が得られたことから、スタンダード市場の選択も並行して検討を進めてきた。プライム市場の上場維持基準を充たしていない流通株式時価総額は、同社の取組みだけでは実現できない要素も多く含まれており、また、仮に経過措置期間中にプライム市場の上場維持基準を充足したとしても、安定的・継続的に当該基準を充足する状態を維持可能な会社規模に成長するまでの間、常に上場維持基準を達成できないリスクが存在することとなる。こうした状況を踏まえ、取締役会で慎重に協議を重ねた結果、株主が継続して同社株式を保有・売買できる環境を確保することが最重要であるという結論に至りった。また、プライム市場の上場維持基準の充足のための短期的な視点の経営に陥ることなく、限られた経営資源を中長期的な収益力の向上と持続的な成長に集中的に振り向けることが、同社の企業価値の向上に資すると判断し、「スタンダード市場」の選択申請を行うこととした。

 

◎スタンダード市場の上場維持基準への適合状況
なお、同社は2023年3月31日時点におけるスタンダード市場の全ての上場維持基準に適合している。

 

株主数

 

流通株式数

 

単位

流通株式

時価総額

億円

浮動株比率

 

月平均

売買高

単位

同社の適合状況

2023年3月31日現在

3,767

99,553

69.5

40.2

5,939

スタンダード市場の上場維持基準

400

2,000

10

25

10

適合状況

適合

適合

適合

適合

適合

(同社IRニュースより)

 

4.2024年3月期業績予想

(1)連結業績

 

23/3期 実績

構成比

24/3期 予想

構成比

前期比

売上高

12,516

100.0%

13,300

100.0%

+6.3%

営業利益

1,256

10.0%

1,400

10.5%

+11.4%

経常利益

1,283

10.3%

1,400

10.5%

+9.1%

親会社に帰属する

当期純利益

1,004

8.0%

1,008

7.6%

+0.4%

*単位:百万円

 

前期比6.3%の増収、同11.4%の営業増益
第2四半期が終了し、24/3期の会社計画は、売上高が前期比6.3%増の133億円、営業利益が同11.4%増の14億円の予想から修正はなし。
ウクライナ問題の影響により東欧を中心に欧州で苦戦しているものの、新薬の開発需要が旺盛な日本・アジア、米国の好調によりカバーする見込みである。日本は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ変更となり治験環境の正常化が期待される。米国は新薬開発が旺盛で、大型案件を含む新規案件の引き合いが増加している。ウクライナ問題の影響により東欧を中心に前半は欧州で苦戦したものの、新薬の開発需要が旺盛な日本・アジア、米国の伸長により巻き返しを図る。売上高営業利益率は、前期比0.5ポイント上昇の10.5%の見込み。当期純利益は、受取保険金や法人税等調整額が減少し、前期並みの予想。
配当は、前期から1株当たり1円増配の1株当たり普通配当15円を予定。配当性向は33.6%となる。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

(2)地域別の見通しと戦略

日本 ◆新型コロナウイルスが感染症 5類感染症となり、 治験環境が正常化した。

◆進捗は順調であり、受注残高を着実に消化し、売上高が順調に増加するものの、年間では影響が残る

見込みである。

◆コロナ関連以外の新薬開発は横ばいであるものの、異業種参入などが増えており新規開拓を進める。

米国 ◆米国市場の新薬開発は旺盛で、大型案件を含む新規案件の引き合いが多い。

◆景況感の不透明感から米国バイオテック企業の資金繰りに影響が出つつある。

◆米国全土を対象とした大規模試験をカバーできる体制の早期確立を目指す。

欧州 ◆欧州の景況感の悪化からバイオベンチャーの資金調達が難しい状況にある。

◆米国事業との連携をより一層進め、営業面でのシナジー発揮により欧州試験獲得を目指す。

アジア ◆受注残高の積み上げに向け、営業活動を継続する。

 

【欧米のマネジメント体制変更】
同社は、欧米の子会社をそのまま存続しつつも欧米のマネジメント体制の変更を行った。①欧米の指揮命令系統を一人のCEOのもとに一本化し、意思決定を迅速化する、②両グループで重複しているシステムや業務手順を一本化し、組織を最適化する、③欧米グループ一体となり営業体制を強化し、両極間で統一したサービスを提供するのがその狙いである。

 

(3)通期業績予想に対する進捗率と下期の業績推移

 

24/3期

上期会社実績

24/3期

会社計画

進捗率

売上高

6,064

13,300

45.6%

営業利益

421

1,400

30.1%

経常利益

483

1,400

34.6%

親会社株主に帰属

する当期純利益

178

1,008

17.7%

*単位:百万円

 

ウクライナ問題の影響により前半は欧州で苦戦したものの、新薬の開発需要が旺盛な日本・アジア、米国の伸長により巻き返しを図る。また、欧州では、米国事業との連携をより一層推し進め、営業面でグローバル・シナジーをさらに強化することで、米国企業からの欧州を含む新規案件の受注獲得を拡大する。

 

(4)収益力の強化に向けた

取り組み

海外事業の

更なる成長

◆最重要市場 米国で成長を実現するため、早期にM&Aを実行

◆米国を中心とした欧米マネジメント、営業力の強化

◆南半球への進出

顧客層の

拡大

◆日系大手製薬会社からリピート受注を獲得、欧米の製薬企業からの受託

◆有望な開発パイプラインを持つ、欧米のバイオスタートアップ企業にフォーカス

ニーズにマッチしたきめ細かい提案を行うことで、大手グローバルCROとの差別化を図り、顧客基盤の拡大を進める。

疾患領域の

拡大

◆がん・中枢神経・自己免疫疾患領域に加え、新創薬モダリティでニーズが拡大する領域(希少疾患、

眼科、皮膚科等)でも、医療機関・外部専門家・提携先との連携を強化し、短期間で高品質な臨床試験

を遂行

サービス領域の拡充

◆大手製薬会社に比しグローバル開発の経験・リソースが限られるバイオテックに対し、自社専門人材

の育成強化、協業による外部リソースの活用強化により、顧客ニーズにマッチした高品質な提案型

サービスをグローバルワンストップで迅速・柔軟に提供

 

5.今後の注目点

欧州では、第1四半期に続き第2四半期も営業赤字となり苦戦が続いている。欧州経済はロシア・ウクライナ紛争など地政学リスクの高まりからエネルギー価格の高騰や高インフレが継続し、これに対処する高金利政策が、ドイツをはじめとした欧州の経済情勢にマイナスの影響を与えている。こうした厳しい環境下、既存試験の中止や新規案件の開始延期、既存試験の進捗が想定を下回ったことに加え、バイオベンチャーの資金調達が難しい環境で新規案件の受注獲得が想定を下回ったものである。これに対応し、同社では、米国事業との連携をより一層推し進め、営業面でグローバル・シナジーをさらに強化することにより、米国企業からの欧州を含む新規案件の受注獲得を図ることを通じて欧州事業の立て直しを目指している。これら取り組みの成果により欧州における業績が早期に回復傾向となるのか注目される。
また、2023年11月14日時点の受注残高は、2023年3月期末と比較して13.1%減の181億99百万円となった。欧米および日本での大型試験の中止などが影響したものである。一方で、日本・アジア地域は、受注残高には含まれていないものの、受注内諾を受け契約締結作業中の複数の新規案件がある他、複数の新規案件の打診を受けている。加えて、米国でも受注内諾を受け、契約締結作業中であり受注残高には含まれない新規案件がある。引き続きバイオテックの開発意欲は旺盛で引き合いも多く、グローバル案件等の複数案件の打診も受けている。同社ではこれまで以上に世界各地の拠点間の連携を強め同社グループのみでの大規模な国際共同治験の受託の獲得を目指している。同社グループのみでの大規模な国際共同治験の受託は、1件当たりの受注単価の大幅な増加を意味し、同社の成長加速の原動力となる可能性が高い。今後の大型の国際共同治験の受注獲得状況が注目される。
更に、米国では業績が順調に拡大している。24/3期上期決算において、米国事業は日本事業の規模に迫るまで売上高と営業利益が拡大した。世界最大の市場の成長ポテンシャルは大きい。米国子会社の業績が好調に推移し、現預金が積み上がり有利子負債も減少している。最重要市場である米国における成長加速のため、次なるM&Aが早期に実行される可能性が高まっている。今後の米国事業における成長戦略にも期待を込めて注目していきたい。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態および取締役・監査役の構成

組織形態 監査等委員設置会社
監査等委員でない取締役 9名、うち社外2名
監査等委員である取締役 3名、全員社外取締役

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2023年7月3日
<基本的な考え方>
(1)経営理念
当社は、「医薬品開発のあらゆる場面で常にプロフェッショナルとしての質を提供し、ステークホルダーである製薬会社、医療機関、患者ならびに株主、従業員の幸せを追求する。」を経営理念として掲げています。役員・従業員の有する知識・経験、
組織としてのノウハウ・システムを持続的に発展・維持し、製薬会社など世界中のヘルスケアカンパニーに提供することで、
新薬を含む新しい治療技術の開発やその発展・浸透、ひいては人類の健康的な生活に貢献することを目指しています。
(2)コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方
上記経営理念に基づき、当社は、医薬品開発のノウハウ・技術をもって新薬を含む新しい疾患予防・治療技術の誕生・成長に貢献し、国内外のバイオベンチャー、製薬企業、医療機器メーカーなどのヘルスケアカンパニー、医療機関のパートナーとして医療の発展に貢献し、患者様ならびに社会全体の期待に応えてまいります。
当社は、人命に関わる事業活動を行うため、当社の役員ならびに従業員には専門性のみならず高い倫理観が求められることから、コンプライアンスの徹底をはじめとした企業行動規範の遵守を徹底しております。また、内部統制の充実を図り、経営の健全性・透明性を確保することで、事業の発展とあわせて企業価値の向上に努めております。

 

<コーポレート・ガバナンス・コード各原則の実施について>
実施をしないコードのおもな原則と理由

原則

実施しない理由

【補充原則1-2② 中期経営計画 当社では、経営会議において中期計画を検討し、各会議において進捗状況の確認・分析を行い、必要に応じて適宜、中期目標や方針の見直しを行うこととしています。取締役会は、経営会議が策定した中期計画を決議するとともに、進捗状況や分析結果について報告を受け、監視・監督することとしています。

当社では現在、プライム市場の選択に伴い、「上場維持基準の適合に向けた計画書」を開示しており、この計画書において、2025年3月期を最終年度とする3か年の中期経営計画を公表しています。今後、進捗状況より必要に応じ目標・方針等の見直しを検討し、ビジョン、経営戦略とともに開示・説明し、株主・投資家との共有認識を醸成できるよう努めます。

【補充原則4-2① 報酬制度】 当社は、当社の業務執行を担う取締役に対して、固定報酬に加え、単年度の業績に連動する金銭報酬である業績連動報酬制度を導入しております。

一方、業務執行を担う取締役は当社の創業メンバーであり、既に一定数の当社株式を保有しています。そのため、中長期の業績を反映した株主価値の増減が保有株式の価値の増減と連動しており、実質的に中長期の業績連動報酬と同様のインセンティブを内包し、株主の皆さまとの利害価値共有は実現できているものと考えます。このような観点から、現在は中長期の業績に連動する株式報酬等の非金銭報酬を設定していません。なお、今後創業メンバー以外の業務執行を担う取締役の就任など取締役構成の変化に応じて、中長期の業績連動報酬を含む役員報酬制度について必要な変更を検討してまいります。

【原則4-9 独立社外取締役の独立性

判断基準及び資質】

会社法の要件に加え、東京証券取引所の独立役員の独立性に関する判断基準を実質的にも満たすことを確認した上で、その知識・経験をベースに一般株主と同じ客観的な視点から当社の経営等に対し適切な意見を積極的に述べていただけると考えた候補者を取締役会にて選任しています。

 

<開示している主な原則>

原則

開示内容

【補充原則2-4① 中核人材の登用等における多様性の確保】

【補充原則3-1③ サステナビリティについての取組み等】

当社グループは、経営理念のもと「サステナビリティ方針」を策定し、この方針に沿ってサステナビリティ経営を推進しています。サステナビリティに関する取組および人材の多様性の確保を含む人材育成の方針・社内環境整備の方針等については有価証券報告書「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に開示しております。

なお、中核人材の多様性推進に関する状況については以下の通りです。

(1) 女性

各期末時点の女性比率は下記の通り。日本本社およびグループ全体で女性管理職の登用は進んでおり、今後、経営の中核を担う執行役員以上の女性リーダー育成に向け、さらなる環境の整備やキャリア形成支援を行ってまいります。

【本社(日本)】                  

女性社員/全社員(%) 

2023年 62.9%、2022年 61.6%、2021年 44.4%

女性管理職/(執行役員除く)全管理職(%)

2023年 44.2%、2022年 42.6%、2021年 19.4%

女性執行役員/全執行役員(%)

2023年 16.7%、2022年 16.7%、2021年 16.7%

【グループ】

女性社員/全社員(%) 

2023年 68.5%、2022年 67.5%、2021年 58.6%

女性管理職/(執行役員除く)全管理職(%)

2023年 59.7%、2022年 56.9%、2021年 36.5%

女性執行役員/全執行役員(%)

2023年 31.8%、2022年 28.6%、2021年 25.0%

(2)外国人

当社グループ従業員759名(2023年3月末時点)の約50%が海外に居住する現地採用の社員であり、海外グループ会社においてはCEOをはじめとした主要なポジションのほとんどを現地の優秀な人材が担っています。また、日本本社においても国籍を問わない人材採用を進めています。 2023年3月末時点の日本本社の全社員に占める外国籍社員比率は3.6%、管理職の外国籍社員比率は1.1%です。

【原則3-1 情報開示の充実】 (i)会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画当社は、「医薬品開発のあらゆる場面で常にプロフェッショナルとしての質を提供し、ステークホルダーである製薬会社、医療機関、患者ならびに株主、従業員の幸せを追求する。」を経営理念として掲げ、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指しています。

この実現に向け、2025年3月期を最終年度とする3か年の中期経営計画を策定しており、プライム市場上場維持基準の適合に向けた計画書において公表しています。経営戦略、経営計画の詳細につきましては、有価証券報告書などの資料にて開示しています。

(ii)本コードのそれぞれの原則を踏まえた、コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針

コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方については、本報告書の「Ⅰ.基本的な考え方」に記載しています。またこれを含めた当社コーポレート・ガバナンスの概要については当社WEBサイトにて開示しています。

(iii)取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続 

当社の取締役の報酬は、株主総会で決議された報酬総額の範囲内で支給いたします。また、取締役及び執行役員等の個人別の報酬の決定方針等は取締役会で決議いたします。当該方針の決定・手続きに関し、取締役会からの諮問を受け、社外取締役が過半数を占める3名以上の委員で構成される報酬委員会にて協議・答申を行うことで、客観性、透明性、公正性を確保します。

内容の詳細につきましては、有価証券報告書「4.コーポレート・ガバナンスの状況等(4)役員の報酬等」にて開示しております。

(iv)取締役会が経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続

当社では、業務執行の取締役及び執行役員候補の選任・指名については、法令及び企業倫理の遵守に関して経営幹部にふさわしい見識や高潔な人格を有すること、的確かつ迅速な意思決定が行えること、そのほか個人の知識・経験・能力等に基づき、社外取締役を含めた取締役会、経営陣全体のバランスを総合的に考慮した上で、取締役会決議にて選任・指名することとしています。また、再任については期待される業績・成果を恒常的に上げているかどうかを判断し、取締役会決議にて再任(非再任)することとしております。

監査等委員でない社外取締役候補については、原則4-9に示した基準及び資質に基づき、取締役会決議にて選任・再任することとしておりま

す。

監査等委員である社外取締役候補については、原則4-9に示した基準及び資質に加えて、最低1名は財務・会計に関する十分な知見を有した

者とし、監査等委員会の同意を得た上で、取締役会決議にて選任・再任することとしております。

また、取締役会は、CEOの選解任について、最も重要な意思決定の一つであることを前提に、経営環境全般の変化への対応、積極的な経営戦略の立案・推進や、継続的な業績の向上ができているか等を総合的に勘案し、実施いたします。なお、CEOの後継候補者育成についても、知識教育や計画的なローテーションなどを通じて、実施しております。

当該方針の決定・手続きに関し、取締役会からの諮問を受け、社外取締役が過半数を占める3名以上の委員で構成される指名委員会にて協議・

答申を行うことで、客観性、透明性、公正性を確保します。

(v)取締役会が上記(iv)を踏まえて経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指名を行う際の、個々の選解任・指名についての説明

監査等委員でない取締役候補、監査等委員である取締役候補の選任につきましては、株主総会招集通知に個人別の経歴、候補者とした理由を

記載しております。

【原則5−1 株主との建設的な対話に関する方針】 当社は、株主(潜在株主としての機関投資家や個人投資家を含む)との建設的な対話を通じて、企業と株主との共通目的である企業価値の持続的成長を目指しています。プライム市場の選択に伴い開示している「上場維持基準の適合に向けた計画書」において、アカウンタビリティの強化を掲げており、情報開示の充実を継続的に推進し、国内外の投資家との対話の促進に取り組んでいます。具体的には、業績、経営戦略、資本政策、リスク、コーポレート・ガバナンス体制などについて以下の方法により継続的・建設的で透明・公正な対話を実施しています。

・株主との対話は専務取締役CFOが統括を行い、面談の目的と効果、株主属性を勘案し、代表取締役社長、専務取締役CFOを中心とした経営幹部により対話者と対話方法を検討のうえ実施しています。

・IRは財務部ならびに広報室が中心となり社内関連部署から必要情報を収集し、分かり易い資料作成や説明により株主との対話を充実させてい

ます。

・定時株主総会、決算説明会、個人投資家向け説明会に加え、国内外機関投資家との個別ミーティング、英文を含めたWebサイトでのIR情報開

示、個人投資家様からの電話・メール等による個別対応などを通じて対話の機会を持ち、質問や要望、説明会での参加者情報やアンケート結果などをIR活動へ反映しています。

・株主との対話を通じて把握した株主の関心や懸念は専務取締役CFOに集約し、経営分析や情報開示の在り方などの検討に活かしています。

・IR活動や株主との対話においては、社内規程の定めるところに従い、適切にインサイダー情報を管理しております。なお、当社では決算情報に関する対話を控える沈黙期間を四半期決算期日の翌日から決算短信発表日までを沈黙期間としております。

 

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