フェローテックホールディングス(6890) 売上利益とも過去最高を更新

2023/07/14
 

賀 賢漢 社長

株式会社フェローテックホールディングス(6890)

 

 

企業情報

市場

東証スタンダード市場

業種

電気機器(製造業)

代表者

賀 賢漢

所在地

東京都中央区日本橋 2-3-4 日本橋プラザビル

決算月

3月

HP

https://www.ferrotec.co.jp/

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

3,535円

47,011,067株

166,184百万円

18.9%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

100.00円

2.8%

382.88円

9.2倍

3,916.07円

0.9倍

*株価は6/26終値。発行済株式数、ROE、DPS、EPS、BPSは2023年3月決算短信より。

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2019年3月(実)

89,478

8,782

8,060

2,845

76.90

24.00

2020年3月(実)

81,613

6,012

4,263

1,784

48.12

24.00

2021年3月(実)

91,312

9,640

8,227

8,280

222.93

30.00

2022年3月(実)

133,821

22,600

25,994

26,659

668.06

50.00

2023年3月(実)

210,810

35,042

42,448

29,702

644.81

105.00

2024年3月(予)

220,000

32,500

30,000

18,000

382.88

100.00

*予想は会社予想。単位:百万円、円。21年3月期の配当には記念配当4.00円/株を含む。22年3月期の配当には特別配当9.00円/株を含む。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下、同様。

 

 

(株)フェローテックホールディングスの2023年3月期決算概要、2024年3月期業績予想などについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2023年3月期決算概要
3.2024年3月期業績予想
4.中期経営計画のアップデート
5.決算説明会質疑応答要旨
6.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

 

今回のポイント

  • 2023年3月期は前期比57.5%増収で、概ね修正会社計画線での着地。エレクトロニクス産業を取り巻く外部環境は好調に推移した一方、半導体製造装置の需要については、年央以降メモリなどの製品を中心に半導体デバイスが在庫調整局面入りしたこともあり、需要の鈍化が見られるようになった。このような環境下においても同社は力強い成長を実現し、売上利益とも過去最高を更新した。 
  • 2024年3月期の売上高は前期比4.4%増の2,200億円を計画。市況悪化によりマテリアル製品等の減収を想定するも、石英坩堝及びパワー半導体基板の伸長で、増収は維持する計画。営業利益は同7.3%減の325億円を見込む。マテリアル製品等の減収インパクト及び減価償却費増加により、前期比マイナス成長は免れないとの考え。経常利益段階では、前期営業外収益に計上した為替差益55億円の剥落により、減益幅は更に大きくなることになろう。今期も積極的な設備投資を継続する計画。投資額は969億円(前期実績626億61百万円)を想定。一株配当は100.00円を予定(上期50.00円、下期50.00円)。 
  • 中期経営計画において成長を徹底的に追求する姿勢に変化はない。26/3期には売上高が3,600億円に到達する計画(23/3期〜26/3期CAGR+19.5%)。セグメント別では、半導体装置関連事業が1,321億94百万円から2,356億円、電子デバイス事業が530億24百万円から933億90百万円、その他事業が255億90百万円から310億10百万円に伸長する計画。同社は、グローバル生産体制の拡充は着実に進展していることから、半導体セクターの需要が回復すれば計画達成は十分に可能と考えている。半導体装置関連事業では、グローバル生産体制の拡充、自動化等を着実に進めていることから、需要回復時に急速な売上拡大も可能と同社は考えている。電子デバイス事業では、パワー半導体基板の四川工場設立による増産体制を着実に進めており、2024年には生産が本格化する見通しである。 
  • 2021年末から半導体市況は悪化傾向にあり、今期も在庫調整が続くものと考えられる。このような環境下においても、グリーンエネルギーへの流れが変わるとは考えにくく、中長期では半導体市況も再度拡大基調に転じることが想定される。同社はその意思を強く持ち、目先に惑わされない積極的な投資姿勢を貫いている。闇雲に投資をするのではなく、投資機会と財務状況の適切なバランスを確保した上で、必要に応じて調達するスタンスを継続した上で、株主還元にも目配せした経営判断にしっかりと着目していくべきだろう。 

1.会社概要

半導体やFPD製造装置等の部品、半導体の生産工程で使われる消耗部材やウエーハ、更には装置の部品洗浄等を手掛ける半導体等装置関連事業と、冷熱素子「サーモモジュール」を核とする電子デバイス事業の二本柱で事業展開しており、傘下に子会社等69社を擁する(連結子会社56社、持分法適用非連結子会社及び関連会社13社)。
1980年、NASAのスペースプログラムから生まれた磁性流体を応用した真空技術製品や冷熱素子として用途が広がっているサーモモジュール等、独自技術を核にした企業として誕生。創業から42年にわたって培われてきた多様な技術は、エレクトロニクス、自動車、次世代エネルギー等、様々な産業分野で応用されている。また、トランスナショナルカンパニーとして、日本、欧米、中国、アジアに展開し、マーケティング、開発、製造、販売、そしてマネジメントと、それぞれの国・地域の強みを活かした経営も同社の特徴。2017年4月、持株会社体制へ移行した。2022年4月、市場再編に伴い、東証スタンダード市場に移行。

 

【組織力強化・持続的発展へ向けた基本的な考えと重点方針】
同社グループは、顧客、株主、従業員、取引先、地域社会などステークホルダーに向け、成長する企業であり続けること、企業活動において、法令遵守、社会秩序、国際ルールなど、社会的良識をもって行動することで、信頼される企業を目指している。

 

企業価値向上のための取り組み 各事業子会社の経営自立化を推進、経営資源の再配分
品質を第一とした意識の徹底 顧客に喜ばれる設計・製品品質の徹底、社内外へのサービス品質の向上
コーポレート・ガバナンスの強化 内部統制・関係会社管理の徹底、リスクマネージメント・コンプライアンス強化

 

【1-1 事業セグメント】

事業は、半導体・FPD・LED等の製造装置に使われる真空シール、石英製品、セラミックス製品等の「半導体等装置関連事業」、サーモモジュールが中心の「電子デバイス事業」、及び報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、シリコン結晶や太陽電池ウエーハ、ソーブレード、工作機械、表面処理、業務用洗濯機等の「その他」に分かれる

 

半導体等装置関連事業
半導体、FPD、LED、太陽電池等の製造装置部品である真空シール、デバイスの製造工程に使われる消耗品である石英製品、セラミックス製品、CVD-SiC製品、石英坩堝。この他、シリコンウエーハ加工や製造装置洗浄等も手掛け、エンジニアリング・サービスをトータルに提供している。

 

主力製品で世界シェアNo.1の真空シールは、製造装置内部へのガスやチリ等の侵入を防ぎつつ、回転運動を装置内部に伝える機能部品で、上記の製造装置に不可欠。真空シールの内部には創業からのコア技術である磁性流体(磁石に反応する液体)シールが使われている。ただ、いずれの分野も設備投資の波が大きいため、比較的需要が安定した搬送用機器や精密ロボット等、一般産業分野での営業を強化しており、真空シールを組み込んだ真空チャンバーやゲートバルブ等(共に真空関連の装置で使われる)の受託製造にも力を入れている。
一方、石英製品、セラミックス製品、CVD-SiC製品、及び石英坩堝は共に半導体の製造工程に欠かせない消耗品。石英製品は半導体製造の際の高温作業に耐え、半導体を活性ガスとの化学変化から守る高純度のシリカガラス製品。材料や加工技術を核とするセラミックス製品は国内外の半導体製造装置メーカーを主な顧客とし、半導体検査治具用マシナブルセラミックスと半導体製造装置等の部品として使われるファインセラミックスが二本柱。CVD-SiC製品は「CVD法(Chemical Vapor Deposition法:化学気相蒸着法)」(シリコンと炭素を含むガスから作る)で製造されたSiC製品の事。現在、半導体製造装置の構造部品として供給しているが、航空・宇宙(タービン、ミラー)、自動車(パワー半導体)、エネルギー(原子力関連)、IT(半導体製造装置用部品)等への展開に向け研究開発を進めている。
シリコンウエーハ加工では、6インチ(口径)と8インチに加え、21年3月期からは12インチの売上計上が始まった。
製造装置洗浄では中国で過半を超えるトップシェアを有する。

(同社資料より)

 

電子デバイス事業
事業の核となっているのは対象物を瞬時に高い精度で温めたり、冷やしたりできる冷熱素子「サーモモジュール」である。
サーモモジュールは自動車用温調シートを中心に、半導体製造装置でのウエーハ温調、遺伝子検査装置、光通信、家電製品、およびその応用製品のパワー半導体用基板等、利用範囲は広く、世界シェアNo.1。高性能材料を使用した新製品開発や自動化ライン導入によるコスト削減と品質向上により、新規の需要開拓や更なる用途拡大に取り組んでいる。
この他、スマホのリニアバイブレーションモーターや4Kテレビや自動車のスピーカー、高音質ヘッドフォン等で新たな用途開発が進んでいる磁性流体も世界シェアトップである。
更に、2023年3月期第2四半期より連結子会社に加わった(株)大泉製作所の温度センサも同事業に追加された。

 

 

その他

(同社資料より)

 

2.2023年3月期決算概要

【2-1 連結業績】

 

22/3期

構成比

23/3期

構成比

前年同期比

修正計画比

売上高

133,821

100.0%

210,810

100.0%

+57.5%

+5.4%

売上総利益

48,677

36.4%

72,081

34.2%

+48.1%

販管費

26,076

19.5%

37,038

17.6%

+42.0%

営業利益

22,600

16.9%

35,042

16.6%

+55.1%

+3.1%

経常利益

25,994

19.4%

42,448

20.1%

+63.3%

+6.1%

当期純利益

26,659

19.9%

29,702

14.1%

+11.4%

+18.8%

* 単位:百万円。修正計画比は23年2月発表の修正予想に対する比率。

 

売上・営業利益とも過去最高を更新
2023年3月期の売上高は、前期比57.5%増の2,108億10百万円。2023年2月に発表した修正計画を5.4%上回った。リモートワークやウェブ会議の普及を背景にしたデータセンターや通信向けの需要が高水準で推移するなど、エレクトロニクス産業を取り巻く外部環境は好調に推移した。一方、半導体製造装置の需要については、年央以降メモリなどの製品を中心に半導体デバイスが在庫調整局面入りしたこともあり、需要の鈍化が見られるようになった。2022年10月中旬に発表された米国による中国への半導体技術輸出規制の強化策が半導体製造装置の販売にネガティブな影響を与えた。このような環境下においても同社は力強い成長を持続させ、半導体製造装置関連事業、電子デバイス事業ともに大幅な増収を記録し、過去最高を更新した。
営業利益は、前期比55.1%増の350億円42百万円。売上高営業利益率は前期比0.3ポイント低下の16.6%で着地した。増収効果により、営業利益段階でも過去最高を更新。経常利益段階では、為替差益54億95百万円(前期実績25億42百万円)、補助金収入26億26百万円(前期実績12億66百万円)が営業外収益に計上されたことから、売上高経常利益率が前期比0.7ポイント押し上げられた。当期純利益においては、前期に計上された持分変動利益93億27百万円(中国ウエーハ会社の第三者割当増資による)がなくなったほか、非支配株主持分利益の増加も加わったため、増益率が前期比11.4%増に留まった。

 

【2-2 セグメント別動向】

セグメント別売上高・利益

 

22/3期

構成比・利益率

23/3期

構成比・利益率

前期比

半導体等装置関連

90,280

67.3%

132,194

62.7%

+46.4%

電子デバイス

27,023

20.2%

53,024

25.2%

+96.2%

その他

16,517

12.3%

25,590

12.1%

+54.9%

連結売上高

133,821

100.0%

210,810

100.0%

+57.5%

半導体等装置関連

15,804

17.5%

24,090

18.2%

+52.4%

電子デバイス

6,689

24.8%

11,178

21.1%

+67.1%

その他

398

2.4%

597

32.3%

+50.0%

調整額

-291

 

-824

 

連結営業利益

22,600

16.9%

35,042

16.6%

+55.1%

* 単位:百万円。23年3月期第1四半期より、従来「その他」に含めていた米国子会社における受託製造事業及び成膜装置事業は、経営管理区分の見直しにより「半導体等装置関連事業」の区分に含めて記載する方法に変更。22年3月期の数値は変更後の区分。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

(1)半導体等装置関連事業
半導体等装置関連事業の売上高は前期比46.4%増の1,321億94百万円、営業利益は同52.4%増の240億90百万円となった。セグメント利益率は同0.7ポイント上昇の18.2%。
各製品分野で堅調に推移。真空シール・金属加工は装置メーカーの金属部品加工需要の取込みが拡大した上、常山工場の稼働が寄与した。半導体製造プロセスに使用される各種マテリアル製品(石英製品・セラミック製品・シリコンパーツ等)は、半導体製造装置に対する強い需要を背景に各製品が堅調に推移した。石英:常山・東台工場の稼働、シリコンパーツ:銀川工場の能力増強、セラミック:杭州工場の能力増強、CVC-SiC:岡山工場の能力増強・増産が貢献するなど、生産能力増強がしっかりと売上増に結びついた影響も大きい。再生ウエーハも銅陵再生ウエーハ工場が徐々に稼働してきたことで売上が伸長してきた。
加えて、半導体ウエーハや太陽電池製造などで使用される石英坩堝や半導体製造装置向け部品洗浄サービスも中国での需要増をしっかりと取り込むことで順調に売上を伸ばした。

 

製品別売上高詳細

 

22/3期

構成比

23/3期

構成比

前期比

真空シール・金属加工

18,858

20.9%

27,976

21.2%

+48.4%

石英製品

21,217

23.5%

28,837

21.8%

+35.9%

シリコンパーツ

8,565

9.5%

17,542

13.3%

+104.8%

セラミックス

18,816

20.8%

27,194

20.6%

+44.5%

CVD-SiC

2,975

3.3%

4,812

3.6%

+61.7%

EBガン・LED蒸着装置

7,921

8.8%

8,036

6.1%

+1.5%

ウエーハ加工

59

0.1%

236

0.2%

+300.0%

再生ウエーハ

98

0.1%

1,501

1.1%

+1431.6%

装置部品洗浄

9,672

10.7%

12,170

9.2%

+25.8%

石英坩堝

2,100

2.3%

3,891

2.9%

+85.3%

半導体等装置関連事業売上高

90,280

100.0%

132,194

100.0%

+46.4%

* 単位:百万円。

 

(2)電子デバイス事業
電子デバイス事業の売上高は前期比96.2%増の530億24百万円、営業利益は同67.1%増の111億78百万円となった。セグメント利益率は同3.7ポイント低下の21.1%。
パワー半導体用基板が成長ドライバーとなった。東台工場を中心とした生産体制が拡充した上、自動車・EV等向けのAMB基板が中国のEV車載向け出荷が軌道に乗ったことが奏功した。なお、第2四半期(7‐9月)より連結化した大泉製作所のセンサの売上、利益が当該セグメントに計上されている。

 

製品別売上高詳細

 

22/3期

構成比

23/3期

構成比

前期比

サーモモジュール

17,635

65.3%

23,266

43.9%

+31.9%

パワー半導体基板

8,473

31.4%

20,011

37.7%

+136.2%

磁性流体・その他

916

3.4%

936

1.8%

+2.2%

センサ(大泉製作所)

8,811

16.6%

電子デバイス事業売上高

27,023

100.0%

53,024

100.0%

+96.2%

* 単位:百万円

 

(3)その他事業
その他事業(ソーブレード、工作機械、太陽電池用シリコン製品等の事業)の売上高は前期比54.9%増の255億90百万円、営業利益は同50.0%増の5億97百万円となった。セグメント利益率は同1.0ポイント上昇の3.4%。なお、第2四半期(7‐9月)より連結化した東洋刃物の売上、利益が当該セグメントに計上されている。

 

 

【2-3 財政状態】

◎財政状態

 

22年3月

23年3月

増減

 

22年3月

23年3月

増減

流動資産

133,414

215,341

+81,927

流動負債

68,800

111,294

+42,494

現預金

52,579

103,115

+50,536

仕入債務

30,140

43,896

+13,126

売上債権

41,797

53,276

+11,479

短期有利子負債

14,825

36,203

+21,378

たな卸資産

28,436

49,177

+20,741

固定負債

35,014

49,697

+14,683

固定資産

131,358

195,306

+63,948

長期有利子負債

22,736

30,515

+7,779

有形固定資産

84,083

139,610

+55,527

負債合計

103,814

160,991

+57,177

無形固定資産

1,996

6,949

+4,953

純資産

160,957

249,656

+88,699

投資その他の資産

45,277

48,745

+3,468

利益剰余金

43,317

69,656

+26,339

資産合計

264,772

410,648

+145,876

負債純資産合計

264,772

410,648

+145,876

*単位:百万円

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

現預金、有形固定資産の増加を主要因に、資産合計は前期末比1,458億76百万円増の4,106億48百万円となった。現預金増加の背景には、第三者割当増資を行った中国子会社の現預金増が挙げられる。各事業において積極的な増産投資等を行ったことが有形固定資産を増加させた(23/3期設備投資額626億61百万円)。無形固定資産の増加は、大泉製作所に対するTOB、東洋刃物子会社化によるのれん増加が理由。
負債合計は同571億77百万円増の1,609億91百万円となった。転換社債型新株予約権付社債が同21億円減少したものの、仕入債務同131億26百万円増、短期借入金同213億78百万円増、長期借入金同77億79百万円増により、全体は大きく増加した。純資産は、利益剰余金同263億39百万円増に加え、中国子会社の第三者割当増資による資本剰余金、非支配株主持分の増加を理由に、前期比886億99百万円増の2,496億56百万円となった。
株主資本比率は前期末比4.8ポイント低下の44.7%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

22/3期

23/3期

増減

営業キャッシュ・フロー

+17,833

+43,024

+25,191

投資キャッシュ・フロー

-29,399

-68,760

-39,361

フリー・キャッシュ・フロー

-11,566

-25,736

-14,170

財務キャッシュ・フロー

+30,601

+68,718

+38,117

現金及び現金同等物期末残高

52,579

95,905

+43,326

* 単位:百万円

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

23/3期も積極的に設備投資を行なったため、フリーキャッシュフローはマイナスとなった。ただし、有利子負債の増加、被支配株主からの払込による収入(FTNC、FLH、FTSVA)もあり、期末残高は前期比433億26百万円の959億5百万円に伸長した。

 

【2-4 トピックス】

(1)EV市場成長に対応し、車載向け売上高拡大方針
EV等の需要増から、パワー半導体基板、温度センサが伸長。車載向け連結売上高は22/3期48億57百万円から23/3期170億24百万円となった。同社では同売上高を26/3期349億10百万円に到達すると想定している。それに伴い、国内外でグローバルな事業拡大を目指した能力増強投資を今後も積極的に行なっていく考え。

 

(2)事業ポートフォリオの強化:非半導体製造装置分野における事業拡大
電子デバイス事業では、従来から多業界で採用が拡大する温調デバイス「サーモモジュール」に加えて、世界的な省エネ化の潮流に沿い、産業機器・家電分野におけるDCB基板や、EVや鉄道車両向けのAMB基板といった「パワー半導体絶縁基板」が大きな事業の柱に成長してきている。
連結子会社とした大泉製作所、東洋刃物も、中期的に非半導体製造装置分野における事業拡大を目指す考え。

 

3.2024年3月期業績予想

【3-1 連結業績】

 

23/3期

構成比

24/3期(予)

構成比

前期比

売上高

210,810

100.0%

220,000

100.0%

+4.4%

営業利益

35,042

16.6%

32,500

14.8%

-7.3%

経常利益

42,448

20.1%

30,000

13.6%

-29.3%

当期純利益

29,702

14.1%

18,000

8.2%

-39.4%

* 単位:百万円

 

半導体マテリアル製品等の減収を想定
2024年3月期の売上高は前期比4.4%増の2,200億円を計画。市況悪化によりマテリアル製品等の減収を想定するも、石英坩堝及びパワー半導体基板の伸長で、増収は維持する計画。営業利益は同7.3%減の325億円を見込む。マテリアル製品等の減収インパクト及び減価償却費増加により、前期比マイナス成長は免れないとの考え。経常利益段階では、前期営業外収益に計上した為替差益55億円の剥落により、減益幅は更に大きくなることになろう。減価償却費は前期実績126億18百万円から174億円に増加する前提。想定為替レートは、米ドル130円(前期実績132.08円)、中国人民元19.00円(同19.50円)。今期も積極的な設備投資を継続する計画。投資額は969億円(前期実績626億61百万円)を想定。
一株配当は100.00円を予定(上期50.00円、下期50.00円)。

 

【3-2 セグメント別動向】

 

23/3期

構成比

24/3期(予)

構成比

前期比

半導体等装置関連

132,194

62.7%

125,060

56.8%

-5.4%

電子デバイス

53,024

25.2%

70,720

32.1%

+33.4%

その他

25,590

12.1%

24,220

11.0%

-5.4%

連結売上高

210,810

100.0%

220,000

100.0%

+4.4%

* 単位:百万円。

 

(1)半導体等装置関連事業

 

23/3期

構成比

24/3期(予)

構成比

前期比

真空シール・金属加工

27,976

21.2%

22,250

20.2%

-9.7%

石英製品

28,837

21.8%

22,420

17.9%

-22.3%

シリコンパーツ

17,542

13.3%

14,840

11.9%

-15.4%

セラミックス

27,194

20.6%

20,680

16.5%

-24.0%

CVD-SiC

4,812

3.6%

6,450

5.2%

+34.0%

EBガン・LED蒸着装置

8,036

6.1%

6,080

4.9%

-24.3%

ウエーハ加工

236

0.2%

160

0.1%

-32.2%

再生ウエーハ

1,501

1.1%

1,620

1.3%

+7.9%

装置部品洗浄

12,170

9.2%

11,560

9.2%

-5.0%

石英坩堝

3,891

2.9%

16,000

12.8%

+311.2%

半導体等装置関連事業売上高

132,194

100.0%

125,060

100.0%

-5.4%

* 単位:百万円。

 

市況悪化等による顧客の在庫調整等の影響に鑑み、真空シール・金属加工、半導体マテリアルのうち石英製品、シリコンパーツ、セラミックの減収を同社は想定。石英坩堝については大口径坩堝の生産体制が拡充してくることに加え、PV向け需要の拡大が見込まれることから、大幅な増収を期待している。

 

(2)電子デバイス事業

 

23/3期

構成比

24/3期(予)

構成比

前期比

サーモモジュール

23,266

43.9%

21,360

30.2%

-8.2%

パワー半導体基板

20,011

37.7%

36,010

50.9%

+80.0%

磁性流体・その他

936

1.8%

1,030

1.5%

+10.0%

センサ(大泉製作所)

8,811

16.6%

12,320

17.4%

+39.8%

電子デバイス事業売上高

53,024

100.0%

70,720

100.0%

+33.4%

* 単位:百万円

 

パワー半導体基板はDCB基板が堅調に推移するほか、自動車・EV向けAMB基板の成長が持続する一方、サーモモジュールは通信向け、医療向けともに需要が低減する見通し。なお、センサは大泉製作所が通年で寄与してくる。

 

【3-3 半導体市場の認識】

半導体需要は中長期的には好調に推移すると考えられるものの、在庫調整の動きにより2023年(暦年)は調整局面となることを想定。WSTS日本協議会公表データによれば、2023年の世界市場は前年比4.1%減の556.6百万米ドルに逓減すると予想されている。同社は各種データに鑑みWFE(半導体製造装置前工程)市場が2023年をボトムに回復基調に転じる見通しを持っている。

 

【3-4 投資方針】

グローバル生産体制の強化等に向け、投資金額を当初計画(1,800億円:22/3期〜24/3期)から1,950億円に増額。これまでの投資額は、22/3期354億円、23/3期627億円、計981億円。24/3期は819億円の投資を予定していることになる。これまでの具体的な投資は、半導体マテリアル製品やパワー半導体基板の需要増に対応した増産投資、マレーシア工場および石川新工場の設立、熊本工場の設立着手、東洋刃物の100%子会社化、大泉製作所の連結化(出資比率51%)、など。
今後もグローバル生産体制の強化を加速させるほか、パワー半導体等自動車セグメントにおける積極投資の継続、事業関連性や潜在的成長力等に照らしたM&Aの検討継続、などが成長投資の中心となっていくようである。投資に見合った資本調達については、引き続き投資機会と財務状況の適切なバランスを確保した上で、必要に応じて調達するスタンス。21年3月の増資で193億円、中国子会社での増資で695億円、計888億円を調達したことに加え、3カ年の営業キャッシュフロー合計として990億円を見込んでいる。
本決算開示後の6月7日、2028年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債250億円の発行が決議された。これにより、中期計画期間中に必要となる資金には目処が立ったことになる。調達資金の使途は、(1)マレーシア子会社の工場建設資金及びロボット組立、石英製品加工、セラミックス加工、金属加工等のための設備投資資金として2024年3月までに約151億円を充当、(2)フェローテックマテリアルテクノロジーズの関西工場の移転拡張に伴う石川第三工場の建設資金及びセラミックス製品に係る設備投資資金として2025年3月までに約40億円を充当、(3)半導体マテリアル製品の製造、サービス機能を担う熊本新工場の建設資金として2024年3月までに約20億円を充当、(4)東洋刃物の情報産業用刃物専用工場の建設資金及び設備投資資金として2024年3月までに約8.5億円を充当、(5)(1)〜(4)の合計額を差し引いた残額は2024年3月までに社債及び長期借入金の返済資金に充当する予定とのこと。

 

4.中期経営計画のアップデート

【4-1 中期経営計画の基本方針】

成長を徹底的に追求する基本方針は不変。

事業成長

  • 成長の徹底追及、積極投資を継続
  • 既存事業の競争力強化・シェアアップに加え、非半導体事業の強化を推進
  • 「車載センサー」を新設・戦略的に強化
  • 製品開発やM&A等により、事業・製品の多様化を加速¥

グローバル生産体制の強化

  • マレーシア拠点の早期稼働
  • 石川工場、熊本工場の立ち上げ、「日本回帰」を推進

経営基盤の強化

  • 品質管理の強化を継続
  • デジタル化・自動化・AI化・見える化を継続推進
  • 人材強化の継続

財務・株主還元

  • 投資機会と財務の適切なバランス確保、当期利益重視・ROIC管理強化を継続
  • 収益増強により株主還元を増加させていく基本方針、配当性向20%を意識

(同社資料より、インベストメントブリッジ作成)

 

【4-2 アップデート後の中期経営計画KPI】

(同社資料より、インベストメントブリッジ作成)

 

26/3期には売上高が3,600億円に到達する計画(23/3期〜26/3期CAGR+19.5%)だが、その内訳は、半導体装置関連事業が1,321億94百万円から2,356億円、電子デバイス事業が530億24百万円から933億90百万円、その他事業が255億90百万円から310億10百万円に伸長する計画。
同社は、グローバル生産体制の拡充は着実に進展していることから、半導体セクターの需要が回復すれば計画達成は十分に可能と考えている。半導体装置関連事業では、グローバル生産体制の拡充、自動化等を着実に進めていることから、需要回復時に急速な売上拡大も可能と同社は考えている。電子デバイス事業では、パワー半導体基板の四川工場設立による増産体制を着実に進めており、2024年には生産が本格化する見通しである。

 

【4-3 カテゴリー別目標売上高】

(同社資料より、インベストメントブリッジ作成)

 

<半導体マテリアル>
23/3期は前期比52.0%増収、24/3期見通しは同14.0%減収。
半導体市場は、デジタル投資、EV需要拡大等を背景に、23/3期は堅調に推移した。しかし、WFE(Wafer Fab Equipment)半導体前工程製造装置市場は24/3期において調整局面となる見方が大勢を占めていることもあり、短期的には弱含む前提。中長期では市場の成長が続くとの見通しは不変であることから、同社は26/3期以降の市況拡大を見越し、各製品の生産能力拡大を継続する計画。具体的には、石英:マレーシア及び熊本に新工場建設、セラミックス:マレーシア及び石川に新工場建設、CVD-SiC:岡山及び常山で設備増強、シリコンは常山で設備増強、を予定。

 

(同社資料より、インベストメントブリッジ作成)

 

<石英坩堝>
23/3期は前期比85.3%増収、24/3期も同4.1倍と大幅増収見通し。
太陽電池市場の導入量拡大に加え、ウエーハサイズの大口径化に対応した石英坩堝の大口径化のトレンドが顕著になっていることから、銀川工場での生産能力増強投資に取り組んでいる。

 

(同社資料より、インベストメントブリッジ作成)

 

<サーモモジュール>
23/3期は前期比31.9%増収、24/3期は同8.2%減収を想定。
5G通信機器用途、PCRなどバイオ装置用途、半導体分野において、24/3期はピークアウトが顕在化することを前提にしている。ただし、25/3期からは再び増収に転じるとの見通し。
新製品の冷却チラーは、サーモモジュール(ペルチェ)方式、コンプレッサー方式を複数モデルラインアップし、半導体分野、工作機械、医療装置分野での拡販に取り組む計画。

 

(同社資料より、インベストメントブリッジ作成)

 

<パワー半導体絶縁基板>
23/3期は前期比2.4倍の増収、24/3期は同80.0%増収を計画。
23年6月に中国四川省内江に新工場が竣工するほか、東台工場の生産能力拡大によって、増収が継続する見通し。上海東台工場の月産能力は、DCB基板:110万枚から160万枚、AMB基板:20万枚から45万枚へと拡大する計画。世界的な消費電力抑制気運から、DCB基板への需要はさらに拡大していくものと同社は考えている。

 

(同社資料より、インベストメントブリッジ作成)

 

【4-4 主な工場新設・生産能力増強の状況】

(同社資料より、インベストメントブリッジ作成)

 

◎株主還元
『持続的な収益増強により株主還元を増加させていく基本方針は不変だが、配当の決定に際して、「配当性向20%」を意識して、財務・投資機会等とのバランスを考慮して判断する』との配当政策を掲げている。その考えに則り、23/3期の一株配当は105円(配当性向16.3%)とした。24/3期は100円(配当性向26.1%)を計画している。中期定期には配当性向を30%まで引き上げていきたいとの考えも示している。

 

◎長期業績目標
長期ビジョンとして掲げている31/3期売上高5,000億円、当期純利益500億円という数値目標に変更はない。

 

 

5.決算説明会質疑応答要旨

2023年6月1日16時より開催されたアナリスト・機関投資家向け決算説明会(ウエブ開催)での質疑応答の要旨(同社IR室IR・広報部にてまとめ)を以下に掲載いたします。

 

(Q1)意欲的な中期経営計画の中で、貴社にとってこれから伸びていく分野で、特に収益性の面で利益を 牽引する事業分野はどこか?パワー半導体も極めて好調、石英坩堝(るつぼ)の売上も驚くようなスピードで売上が伸びる計画だが、そのほか御社への利益貢献の高い、株主還元にも貢献するような事業を 挙げてほしい。
(A1)今後事業的に伸びそうなのは、金属加工・組立の分野。ユニットを造って装置メーカーに納める 事業で、従来杭州でやっていた金属加工を常山やマレーシアで展開する。この分野はかなり成長が期待 できると思う。 もう一つは CVD-SiC で、いろいろな用途が出てきている。今、岡山工場は造れば売れるという状況 であり、今期売上は60億円から70億円ぐらいになるかと思う。これを来期は100億円ぐらい目指した い。また、今年中に中国国内にもCVD-SiC工場を立ち上げる予定。中国でもかなりCVD-SiCの用途は増えてきた。多結晶と材料を造るところや、(引上装置の)ホットゾーンなどもCVD-SiCの需要がある。中国の装置メーカーのほとんど当社顧客なので、かなり成長が期待できる。当社はいろんな分野をやってきたが、ようやく花開く状態になってきたと思う。

 

(Q2)パワー半導体の需要の状況について、中国の需要が高まっているように思うが、実際御社にどのくらいの要望が来ているのか?中国の自動車生産は約3,000万台/年あるなか、EV(電気自動車)は中国メーカーの欧州企業や日本企業からの調達が加速度的に上がっていると思うが、どの程度の需要が数年後期待できるのか、5年スパンぐらいの視点でその概略を教えてほしい。
(A2)パワー半導体の基板の一番大きな市場は欧州で、パワー半導体を手掛ける欧州企業がどんどん成長してきているが、中国市場も今年はEVの販売が900万台くらい、自動車の3台に1台はEVになり、それらはパワーズ IGBT を使うようになる。EV 以外も新幹線、航空関係、医療機器関係でもたくさん使うようになってきている。説明会資料上の目標は2026年3月期で350億円と書いてあるが、これは保守的。また、今後は基板(原料)から造る能力も持てるようにしていくし、独自の研究所も持っている。今の見立てではパワー半導体基板の事業は2030年で1,000億円ぐらいの規模になると考えている。

 

(Q2-2)パワー半導体基板の事業は1000億円の時にはどのくらいの営業利益となっているのか?
(A2-2:)現状利益率はだいたい15%ぐらいだが、20%ぐらいには持っていきたいと思う。

 

(Q3)設備投資資金について、資料で資金調達実績の説明があり3年の営業キャッシュフロー合計と調達済資金で投資金額のほとんどを賄い、差異は小さいが、来期も600億円規模の投資をするとの想定であるため、資金調達の考え方について教えてほしい。2年前も公募増資で株価下落が起きたこともあり 確認したい。
(A3)資金調達の考え方は、従来から投資機会と財務状況の適切なバランスを確保するということで、 考え方に変わりはない。過去には有利子負債への依存度が高かった時期があったが、現在はバランスを 取った運営となっている。現行中期経営計画で1,950億円投資予定する等の積極的な投資を行っている。 子会社の増資で比較的バリュエーション良い資本調達をできたからであるが、このようにバランスを取りながら調達を行っていく考えである。

 

(Q3-2)ホールディングス株主から見た場合には、これまでも希薄化があったが、今後はホールディングスの株主が希薄化の影響を被ってしまわないような考え方か?何が言いたいかというと、2021 年暮れの 公募増資のような希薄化がまたあるのではないかという警戒感ある。ものすごい成長シナリオが示されていて、パワー半導体基板や半導体材料の生産能力拡大とか事業化への大きさを考えても、会社自体は売上高、利益と大きく伸びていきそうだという一方、会社業績は安心なのだが、株主から見たら不安が大きくて、増資による希薄化で1カ月▲20%も株価が下がると運用担当者は首が飛びかねないため、長期投資の投資家は御社への投資がしにくくなるのではないか、ということで考えを確認したい。
(A3-2)将来について言及は避けるが、現在、積極的な投資を行いながら、財務状況を維持し、様々な バランスを取り運営を行っている。今後も、適切なバランスをとることに留意し、財務運営をしたいと考えている。

 

(Q4)配当性向についての考え方を今一度整理して教えてほしい。
(A4)当社は積極的に投資をし、持続的に収益を増強していく意志を強く持っており、それに伴って株主還元も強化していくということが基本方針であり、加えて配当性向も 20%を意識して判断するという内容を決算説明資料に表現している。よって2023 年3月期及び2024年3月期の配当についても、 機械的に当期純利益の20%と算定しておらず、配当性向 20%の水準を意識し、総合的に判断した、ということである。2024年3月期は配当性向26%となるが、次の2025年3月期には大きく成長をする見 通しであること等を考慮して、総合的に判断した次第である。

 

(Q5)太陽電池向け石英坩堝については、積極的に投資をしており600億円の事業規模になるという話だが、その規模になったとき利益水準はどのくらいか? 太陽電池については過去、最終的には悪い 結果もあったため、本事業への考え方を説明してほしい。
(A5)太陽電池については言及の通り、2011年の時は太陽電池のバブルははじけて、我々はかなりやられた、ということも頭に入っているが、2011年当時と現在は全く異なる状況と理解している。CO2フリーを目指す場合、太陽光、水力、風力などのグリーンエナジーをどんどん造らないと、2050年までにそれらを実現できない。一般に中国の企業はやりすぎる面があるが、今回当社は太陽光パネルの事業への考え方は少し慎重である。まず、石英坩堝の投資は売上に比して投資額は少ない。理由は、技術の壁が大きいからである。良質な石英坩堝について説明すると、一つ目は、1回の使用可能時間が長いということで、従来は200時間、現在は300時間ぐらいが標準だが、当社は最大500時間使可能な石英坩堝を造ることができる。2つ目は長時間使用してもインゴット品質に関わる気泡が発生しないこと、三つ目はインゴット引上げ時に、順調に単結晶化できること、である。その他、酸素濃度とか抵抗値とか 様々な技術要素があるが、その点も当社は非常に品質が高い。今回600億円の売上が可能というのは、 価格が現状通りではなく少しずつ価格下落があるとしても実現可能と考えている。 PVウエーハの事業はn型のみのOEMだけしかやらない。当社が自分で造って積極的に市場に入っていくということではない。あくまで取引相手は世界的な大手2社に絞ってやっていく。時々中国の会社が我々に問合せが来て、n型ウエーハが欲しいという。ウエーハの最初は160mm、今は180mmのサイズだったが、当社が造るのは210mmで、これから230mm、260mmと大口径化する。当社としてはOEM先と密接に連携し、OEM先でちゃんと売上につながるようにしてもらう。だから、PVウエーハについては積極的な市場参入は考えていない。今は(過去)全然規模が違う。当社が事業手掛けていたころは1GWでも容量が大きい方だったが、今は20GWが普通、サイズは大きいものは50GWとなっており、とても太刀打ちできない。

 

(Q6)半導体等装置関連セグメントで、来年以降収益が伸びるのは、市場の回復もあるが、生産拠点の充実もあり、顧客内シェアをより高められるという想定と認識しているが、これは先ほど金属加工のことも触れていたように、納入1単位当たりの金額が増えるという理解の仕方でよいか?あと中国ローカ ルの装置メーカー向けの仕事の状況も教えてほしい。
(A6)半導体等措置関連は今期が一番苦しく、何とか今年を乗り越えられるように努めている。来期の上半期の市場がどうなっているのか?については様々な見方があるが、これについては米国の政策、戦略の動向による。世界半導体市場は大きく伸びるという想定があるが、中国半導体を世界市場から除外したと仮定したらその大きな伸びは実現しにくいと思われる。その意味で中国の半導体市場がどうなるかが、当社半導体事業を左右すると考えている。先ほど触れた金属加工・組立は装置メーカーに納めるのだが、米国の大手2社、日本の3社に対してはマレーシアで事業を始めれば輸出もしやすく、関税等も安い。 中国ローカルの装置メーカーについては、今は各社急いで開発に取り組んでおり、かなり事業も伸びており 3~5 年後は現在の影響を乗り越えられると考えている。ただ、中国は資源が足りない面があり、 その点は解決に少し時間がかかると見ている。中国ローカルの装置メーカーが成長すれば、当社事業も拡大する。中国ローカル向けの売上はセグメントの3~4割ぐらいになるのではないかと考えている。

 

(Q6-2)中国ローカルのデバイスメーカーはどんな状況か?
(A6-2)デバイスメーカーについては、米国は14nm以下のものを造っている会社は全て制裁すると言っている。苦しい会社もあるが、制裁が緩和した会社もあるし、制裁対象となっていない会社もある。 (今米国制裁対象となっている)14nm以下のものを造らなくても14nm超の線幅の製品で市場の8割 を占めており、このくらいの市場規模があったらいいのではないかという、少し楽観的な話し方をするようになってきている。

 

(Q6-3)では、14nm超のほうが商売的にも大きくなるのとの見方か?
(A6-3)そう見ている。

 

(Q7)石英坩堝について、最近中国の大手太陽光パネルメーカーが▲30%ぐらいの値下げをしているというイメージがあるが、それらは御社の業績にどう影響するか?
(A7)石英坩堝を造れる企業は存在するが、2つの壁があり、一つは技術の壁で、良質な石英坩堝を作ろうとすると技術的に簡単ではない。もう一つの壁はパウダーの調達であり、すぐに入手できないので、 一般企業には参入障壁となる。値段については現状維持を想定はしていない。多少値が下がっても、当社は永らく石英坩堝の事業をやってきて、自動化、見える化、効率化など工夫を重ねて続けてきており、 対応できるという自信がある。

 

(Q8)償却と補助金の会計処理について確認したい。前回説明会で中国の補助金は20%ぐらいで、現金給付があるとのことだったが、会計処理とキャッシュフロー上の見方を教えてほしい。また、御社の償却費は(投資に比して)額が小さく見えるが、例えば補助金処理で資産額と相殺するような処理の場合もあるのか?
(A8)補助金は、営業外収入計上の会計処理も、設備の圧縮記帳(資産額との相殺)の会計処理もある。 (補足:会計処理として圧縮記帳も採用し得ますが、2023年3月期においては「営業外収益に一括計上」もしくは「固定負債に計上」を主としています。) 減価償却については、足元で積極投資をしているため増加傾向であり、2022年3月期実績の80億円 から 2024年3月期見込みで 174億円、2025年3月期は300億円を超える減価償却を想定している。

 

6.今後の注目点

2021年末から半導体市況は悪化傾向にあり、今期も在庫調整が続くものと考えられる。このような環境下においても、グリーンエネルギーの流れが変わることは考えにくく、中長期では半導体市況も再度拡大基調に転じることが想定される。同社はその意思を強く持ち、目先に惑わされない積極的な投資姿勢を貫いている。闇雲に投資をするのではなく、投資機会と財務状況の適切なバランスを確保した上で、必要に応じて調達するスタンスを継続するだけでなく、株主還元にも目配せした経営判断にしっかりと着目していくべきだろう。

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

9名、うち社外3名

監査役

4名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2022年7月20日)
<基本的な考え方>
当社グループは、「顧客に満足を」、「地球にやさしさを」、「社会に夢と活力を」を企業理念とし、行動規範として、「グローバルな視点のもと、常に国際社会と調和を図り、地域社会その他私たちに関係する世界の人々の生活に貢献できる製品とサービスを提供する企業として、各国の法令を遵守することはもちろん、確固とした企業倫理と社会的良識を持って、誠実に行動すること。」、「新エネルギー産業およびエレクトロニクス産業を中心に高品質な製品やサービスを提案し、コスト競争力のある製品やサービスを提供することにより、お客様から信頼されて、満足を頂くこと。」、「地球環境に配慮した活動を積極的に推進することを経営上の重要課題の一つとして、最新の環境規制要求への適応を順次進め、新エネルギー産業で活用できる素材・製品などを開発し、地球環境問題の解決に貢献すること。」、「コア技術を活用したものづくりを通して社会に貢献し、顧客、株主、社員、取引先、地域社会などステークホルダーの方々が成長する楽しみを持てる企業であり続け、企業活動にあたり法令遵守、社会秩序、国際ルールなど社会的良識をもって行動すること。」を掲げています。

 

当社はこれらの企業理念と行動規範に従い、環境保全活動とグループガバナンスを積極的に推進するとともに、ステークホルダーの皆様にとって「成長する楽しみが持てる企業」であり続けることに努めております。また、半導体用マテリアル製品をはじめとする新素材及び生産技術の開発に注力し、品質を第一に考えて顧客満足の向上を追求する旨の「品質理念」を掲げ、生産の自動化、デジタル化、標準化を進めております。世界での市場シェアを高め、安定的な収益体質の企業集団を形成することを経営の基本方針としております。

 

以上の企業理念、行動規範、経営の基本方針を踏まえて、企業価値を高め、株主、顧客、取引先、従業員、地域社会などステークホルダーに信頼され支持される企業となるべく、経営の健全性を重視し、併せて、経営環境の急激な変化にも迅速かつ的確に対応できる経営体制を確立することが重要であると考えております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない主な理由>

 

 <補充原則2-4①: 中核人材の登用等における多様性の確保>
当社グループは、グローバルに企業規模が拡大する中、人材と組織の抜本的な強化を図り、中長期的な企業価値の向上に向け、幅広いスキルと経験を持つ女性・外国人・中途採用者を積極的に採用しております。また、女性・外国人・中途採用者の高いスキル、当社グループ以外で培われた貴重な経験等を総合的に勘案・評価し、管理職への登用も積極的に行っております。しかしながら、中長期的視点に立った女性・外国人・中途採用者の管理職への登用や多様性の確保の方針、人材育成方針及び社内環境整備方針、並びにそれらの進捗や達成状況について、併せて開示できるまでに至っておりません。今後、グローバルな企業規模の拡大に応じた中長期的な企業価値の向上に資するべく、これらの方針を設定し実施状況を開示できるよう鋭意検討を進めてまいります。

 

<補充原則3-1③: サステナビリティについての取組み、人的資本や知的財産への投資等経営戦略の開示>当社では、「顧客に満足を、地球にやさしさを、社会に夢と活力を」の企業理念の下、中長期的な企業価値向上に向け、ESG(Environment/環境、Social/社会、Governance/企業統治)が非常に重要であるとの認識から、2021年にマテリアリティ及びサステナビリティ基本方針を策定しました。今後は、ESGを推進するための組織体制の整備、社内啓蒙、定量目標の設定を進めてまいります。また、人的資本や知的財産への投資等については、日本の子会社では若手の幹部への積極登用や組織のフラット化を推進しております。また、中国の子会社では半導体関係の研究院の設置や博士クラス人材の採用強化、優秀な特許出願者があった場合には、表彰や報奨金の付与等を適宜実施するなどにより知的財産への投資に積極的に取り組んでおります。今後は、設定した定量目標のモニタリングを行い、取組み状況をホームページやIR資料等で公開してまいります。

 

<補充原則4-2①: 客観性・透明性のある経営陣の報酬の報酬制度>当社は、取締役は企業活動を通じて企業価値を継続的に向上させることがその使命であることに鑑み、取締役の報酬について、短期及び中長期的な業績向上に対するインセンティブを高めることができる報酬体系とする基本方針を2021年3月22日開催の取締役会において決議いたしました。具体的には、固定報酬、連結当期純利益(指標)に連動した業績連動報酬及び中長期インセンティブとしての譲渡制限付株式報酬の3種類で構成するものであり、社外取締役は固定報酬のみとするものです。また公正性・透明性を確保するため、社外役員が委員の過半数となる報酬委員会を設置することにより、持続的な成長に向け、譲渡制限付株式報酬の導入など中長期的な報酬割合の設定や、固定報酬と変動報酬の目標割合を設定しております。取締役会から取締役の個人別の報酬等の額の決定を一任された代表取締役社長は、報酬委員会を招集の上、諮問し、当該答申内容を尊重して決定することとしております。しかしながら、連結報酬における現金報酬と自社株報酬との割合の適切な設定までには至っておらず、社外取締役が過半数を占める報酬委員会を中心として、適宜外部報酬コンサルタントの意見を参考にしながら、鋭意検討してまいります。

 

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく主な開示>

 

<原則2-3:社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題>半導体の製造プロセスは環境負荷が大きく、これを解決することが業界全体の課題となっております。当社では、ノン・フロンの温調デバイスであるサーモモジュールや消費電力削減に有効な「パワー半導体基板」、「磁性流体」等の製品販売並びに日本及び中国の工場における太陽光パネルを用いたクリーンエネルギーでの発電等、事業を通じて環境汚染に配慮した温室効果ガス低減に貢献しております。 また、コロナ禍の中で経済的に困窮する大学生が増加している中、当社は将来社会に貢献し得る有為な人材の育成に寄与すべく工学系の学生に奨学金を給付している公益財団法人山村章奨学財団を支援しております。
<原則2-4:女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保>社内に異なる経験や価値観が存在することは、特に当社のようなグローバルに展開している経営環境下においては、会社の持続的な成長を確保する強みであると考え、現地子会社のマネジメントは現地に任せる方針の下、女性を含めた多様性の確保に努めております。

 

 

<補充原則4-11①:取締役会全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方>当社の取締役会は、業務執行の監督と重要な意思決定には、多様な視点と経験、及び多様で高度なスキルを持った取締役の構成が必要であると考えております。また監査役についても、取締役会に出席し、必要に応じて意見を述べる義務があり、取締役と同様に多様性と高いスキルが必要であると考えております。社外役員については、取締役会による監督と監査役による監査という二重のチェック機能を果たすため、法定の社外監査役に加え、取締役会での議決権を持つ社外取締役が必要であり、ともに高い独立性を有することが重要であると考えております。各取締役・監査役の知識・経験・能力等を一覧化したスキル・マトリックスは、当社ホームページhttps://www.ferrotec.co.jp/esg/sdgs.phpに掲載しております。

 

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