シンデン・ハイテックス株式会社(3131)経営利益増、期末配当上方修正

2021/12/02

 

鈴木 淳 社長

シンデン・ハイテックス株式会社(3131)

 

 

企業情報

市場

JASDAQ

業種

卸売業(商業)

代表者

鈴木 淳

所在地

東京都中央区入船3-7-2 KDX銀座イーストビル

決算月

3月

HP

https://www.shinden.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

2,201円

2,034,400株

4,477百万円

9.0%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

103.00円

4.7%

344.09円

6.4倍

3,006.65円

0.7倍

*株価は11/12終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROEは前期末実績。BPSは直近四半期末実績。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2018年3月(実)

54,406

1,207

874

603

344.08

130.00

2019年3月(実)

46,102

626

299

209

102.09

45.00

2020年3月(実)

44,277

496

291

185

92.88

45.00

2021年3月(実)

49,084

819

702

497

246.18

75.00

2022年3月(予)

42,600

1,250

1,050

700

344.09

103.00

* 予想は会社予想。単位:百万円、円。

 

 

シンデン・ハイテックスの2022年3月期上期決算の概要と2022年3月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2022年3月期上期決算概要
3.2022年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 22/3期上期は前年同期比6.5%の減収、同107.2%の営業増益。半導体製品・システム製品・バッテリ&電力機器の各分野の販売が順調に推移したが、ディスプレイ分野の汎用品のボリュームビジネスが商流変更等の要因で大幅に減少した。利益面では、利益率の高いシステム製品分野が好調であったことなどにより、売上総利益は26.2%増、売上総利益率は前年同期5.8%から7.8%へ大幅な改善。販管費が減少したこともあり、大幅増益となった。前年同期は為替差益だったが今上期は為替差損を計上し、経常利益は前年同期比70.9%増、親会社株主帰属利益は同76.8%増となった。

     

  • 通期予想は13.2%減収、52.5%営業増益を計画する。期初予想を大幅に上方修正した。上期が当初の予想を上回る推移となった。下期は、上期の旺盛な需要に対し市況はやや落ち着くと見て慎重な予想としている。①半導体製品分野は、総じて上期に対しやや落ち着くものと見込んでいる。一定の需要が見通せるビジネスもある一方で、需給ひっ迫による突然の生産調整のリスクのあるビジネスもあり、市況はまだら模様と分析している。また、販売価格については、急激な下落は見込まないが、上期の急激な上昇は沈静化すると見通している。②ディスプレイ分野は、主要取引先の商流変更の移管スケジュール延期を織り込んでいる。③システム製品分野は、半導体を中心とした供給不足の影響による一過性の生産調整等を織込んでいる。④バッテリ&電力機器分野は、開発の中断や延期案件もあるが、家庭用蓄電システムの再開もあり、当初の想定どおりと見通している。配当についても、期初予想80円から103円の期末配当へ上方修正。

     

  • 22/3期は、商流変更やGIGAスクール構想の前倒し需要、有機ELビジネスの特別需要の反動が生じるため当初は2桁減収予想であったが、想定を大きく上回って推移しており大幅な上方修正となった。活況な市況を背景とし、為替効果やメーカー構成の変化による収益率の向上。特にシステム製品の増加が売上総利益率を高めた模様。また、バッテリ&電力機器が大幅増収となっており、世界中で起きている脱炭素のニーズにも応えている。強すぎたともいえた需要増を警戒し、下期はかなり慎重な見通しとなっている。好業績を反映し、株価は前回レポートからかなり見直された。それでもPER、PBRとも極めて低位にある上、配当利回りは高い。加えて、旺盛な半導体需要、DX・GXの進展、自動車の電動化といった世界的な流れは同社ビジネスにとってフォロー。今期予想業績がさらに上乗せされる可能性や、中期的な見通しを考慮すると極めて割安に放置されている印象を持った。

     

1.会社概要

半導体、ディスプレイ、システム製品、バッテリ等の独立系エレクトロニクス商社。主に海外メーカーの製品を仕入れ、国内電子機器メーカーや産業機器メーカーに販売しており、売上の約75%を半導体製品及びディスプレイが占め、システム製品、バッテリ等が約25%。中国(香港)、タイの連結子会社2社とグループを形成し、それぞれの地域に展開する日系企業向けビジネスを手掛けている。海外売上比率が約6%を占める。

 

【経営理念 : 「当たり前のことを当たり前にする会社」】

・世界中より時代を先取りできる製品を発掘し、お客様に供給することで「社会の発展に貢献」する
・業界において、ナンバー・ワンを目指す
・トータルソリューションとして、お客様のニーズを的確に捉え、スピーディに対応し、「お客様の満足できる企業」を目指す
・社員が「夢を持って働ける企業」を目指す

 

 

 

【CSR・環境への取り組み】

同社は地球環境に優しい企業活動を経営課題の一つと位置づけており、環境保全と資源保護に配慮した活動による社会貢献と環境汚染の予防を推進している。具体的には、SDGsも念頭に、環境配慮型電池及びその周辺装置(半導体を含む)の拡販、システムでの低消費電力化に向けた高性能半導体の拡販に取り組んでいる。
この他、顧客のグリーン調達基準を遵守するため、化学物質管理システム(CMS)を構築・運用している他、社員が能力を発揮し、仕事と生活の調和を図り、働きやすい雇用環境の整備を行うため、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画を策定し推進している。2003年7月にISO 14001認証を、2004年3月にISO 9001認証を、それぞれ取得している。

 

1-1 取扱商品と仕入先・販売先

ディスプレイは主に韓国や中国のディスプレイメーカーから液晶モジュール等を仕入れ、そして、半導体商品はDRAMやフラッシュ等のメモリ及びメモリモジュールを主に韓国や台湾メーカーから仕入れ、それらの商品を車載用機器、事務用機器、産業用機器等のセットメーカーに販売している。ASSP(特定用途向け汎用IC)やASIC(特定用途向けカスタムIC)については、米国や韓国のメーカーから仕入れており、CPU(中央演算処理装置)やGPU(リアルタイム画像処理に特化した演算装置)については米国メーカーから仕入れた商品をパソコン用途以外の顧客に販売している。この他では、ファウンドリも手掛けている。ファウンドリとは、顧客から半導体の設計データを受け取り、韓国・米国半導体メーカーに製造依頼し、完成品を依頼元に販売するビジネスである。システム製品では、国内・韓国メーカーの検査装置等の電子機器、そして、EMSを取り扱っている。EMSとは、製品の開発・生産を受託するサービスである。バッテリ&電力機器は、主に韓国メーカーからリチウムイオンや鉛バッテリ、電力機器等を仕入れ、民生品メーカーや太陽光発電所向けに販売している。

 

商品分野・製品と位置づけ

分野

製品

位置づけ

半導体製品

メモリ、メモリモジュール、SSD、ASSP、ASIC、GPU・CPU、LED、ファウンドリ

顧客及びメーカーとの間で長年培ってきた信頼関係やノウハウを基に、ディスプレイ分野とともに、引続き中核分野と位置づける。

半導体に加え、メモリモジュール等も含めた半導体製品商材を総合した分野。

ディスプレイ

液晶モジュール、有機EL、タッチパネル、液晶ディスプレイ、LEDディスプレイ

半導体製品分野同様、引続き当社の中核分野と位置づける。

液晶モジュール、タッチパネル、有機ELに加え、液晶及びLED ディスプレイを含む表示系にかかる商材を総合した分野。

システム製品

検査等装置、通信モジュール、Board、EMS、サーバ、その他システム製品

「収益構造改革」の成否を見極めるうえでの重要・注力分野と位置づける。

検査等装置といった装置ビジネスやBoard等に加え、EМS等の商材の組合せやソリューション等、付加価値の高いビジネスを編入し、総合した分野。

バッテリ&

電力機器

電池関連商品、電力機器

今後、市場の成長が期待されるバッテリを基軸商材とし、「収益構造改革」を加速化させるための重要分野と位置づける。

電力エネルギーを切口とし、バッテリセルといったキーパーツから周辺パーツ、発電所用の電力機器を含め脱炭素化社会に向けた商材を総合した分野。

その他

材料、その他

上記に当てはまらない商材及び新たな取組みの商材を総合した分野。

 

 

仕入先

 

主な仕入先

特徴

半導体製品

SK hynix(韓国)

DRAM・NAND型フラッシュメモリ、メモリモジュール、CIS等の半導体メーカー。

AMD(米国)

PCプロセッサー、組み込み用プロセッサー等の半導体メーカー。

GLOBAL FOUNDRIES(米国)

IBMマイクロエレクトロニクス事業を譲受けた世界トップクラスのファウンドリ。

Telechips(韓国)

車載及びコンシューマ市場向けアプリケーション・プロセッサー(SoC)の設計・開発。

SKYWORKS(米国)

スマートフォン等ワイヤレス通信機能を搭載した製品を幅広くサポートするデバイスを開発する半導体メーカー

Giga Device(中国)

NORフラッシュ製品やNANDフラッシュからMCU製品まで幅広く提供する不揮発性メモリデバイスの大手ファブレスメーカー。

ADATA Technology(台湾)

DRAMモジュール、USBフラッシュドライブ、メモリカード、SSDを含むメモリソシューションを展開。

innodisk(台湾)

産業用・組込み用フラッシュストレージ及びDRAMメモリモジュールメーカー。

ディスプレイ

LG Display(韓国)

世界最大のTFT LCD・有機ELメーカー。

GOWORLD DISPLAY(中国)

各種LCDモジュール・静電タッチパネルメーカー。

O-Nation Corporation(台湾)

顧客の要望に沿ったLCDモジュールを開発・販売するメーカー。

システム製品

Tul Embedded(台湾)

グラフィックスソリューションを世界的に提供するサプライヤー。

ASRock(台湾)

システムインテグレータ及びソフトウエアベンダーと協力し、AIoT製品において高性能で柔軟なトータルソリューションを提供。

Multi-Tech Systems(米国)

産業用IoT機器向けにLoRaやLTEのゲートウエイ、モジュールなどを設計、開発、製造する通信機器メーカー。

Telit Wireless Solutions(イタリア)

M2M製品を専門に取り扱い世界的メーカー。

Quopin(韓国)

超低遅延映像伝送ソリューションを提供。

GIGABYTE TECHNOLOGY(台湾)

ハイパフォーマンスコンピューティングの礎となるべく、末端のエッジから最上層のクラウドに渡るまでの全般に及ぶソリューションを提供。

バッテリ

LG Energy Solution(韓国)

韓国最大の総合化学メーカーLG Chem.より独立。Liバッテリの供給元。

パナソニック(日本)

同社の充電式乾電池を取扱う。

Cyber Power(台湾)

UPSメーカー。

ESUN(台湾)

産業用二次電池(Si-C鉛蓄電池)メーカー。

 

2.2022年3月期上期決算概要

2-1 連結業績

 

21/3期 上期

構成比

22/3期 上期

構成比

前年同期比

売上高

23,767

100.0%

22,232

100.0%

-6.5%

売上総利益

1,370

5.8%

1,729

7.8%

+26.2%

販管費

990

4.2%

942

4.2%

-4.9%

営業利益

379

1.6%

787

3.5%

+107.2%

経常利益

409

1.7%

699

3.1%

+70.9%

親会社株主帰属利益

279

1.2%

494

2.2%

+76.8%

* 単位:百万円

 

前年同期比6.5%の減収、同107.2%の営業増益
売上高は前年同期比6.5%減の222.3億円。半導体製品・システム製品・バッテリ&電力機器の各分野の販売が順調に推移したが、ディスプレイ分野の汎用品のボリュームビジネスが商流変更等の要因で大幅に減少したため、売上高は減少した。上期いっぱい継続していた緊急事態宣言の影響により、新規開拓の遅れと半導体不足による生産調整等の懸念事項がある中で、前期の急激な円高の推移に対して、今期の緩やかな円安基調による為替効果、半導体をはじめとする電子部品やデバイスの需要増や価格上昇等の販売面での追い風があった。しかし、①一部顧客のディスプレイビジネスの商流移管、②前年度のスマホ向け有機ELの特別需要の反動減、③GIGAスクール構想前倒し需要の反動減が主な減収要因となった。
営業利益は前年同期比107.2%増の7.8億円。売上総利益は前年同期比26.2%増の17.2億円、売上総利益率は前年同期5.8%から7.8%へ大幅な改善。①利益率の高いシステム製品分野が好調であったこと、②半導体製品分野・バッテリ&電力機器分野の増収効果、③ディスプレイ分野におけるメーカー構成の変化によるもの。従来の大型案件に依存せず、「収益構造改革」として従前より取組んでいるビジネスの積み重ね(特にシステム製品分野の好調な販売が利益面で牽引)、並びに為替効果や価格上昇による増収効果によって利益を構築した。販管費は、緊急事態宣言の発出を受けた行動制限継続の影響により、営業活動にかかる費用が圧縮されて減少、販管費率は前年同期並み4.2%に抑制されたため、営業利益が大幅な増益となったため、今上期は為替差損を計上(前年同期は為替差益)したものの、経常利益は前年同期比70.9%増の6.9億円、親会社株主帰属利益は同76.8%増の4.9億円となった。

 

2-2 分野別動向

 

21/3期 上期

構成比

22/3期 上期

構成比

前年同期比

半導体

8,295

34.9%

9,997

45.0%

+20.5%

ディスプレイ

11,452

48.2%

6,833

30.7%

-40.3%

システム製品

2,698

11.4%

3,413

15.4%

+26.5%

バッテリ&電子機器

1,195

5.0%

1,779

8.0%

+48.9%

その他

125

0.5%

208

0.9%

+66.4%

連結売上高

23,767

100.0%

22,232

100.0%

-6.5%

* 単位:百万円

 

半導体製品の売上は前年同期比20.5%増の99.9億円。世界的な半導体不足の足かせがあるなかでの前倒し需要を含む旺盛な需要への対応や、ASIC等の高付加価値商品の販売に注力、円安効果もあり大幅増収となった。半導体供給難のため、受注対応に苦慮している状況は継続している。販売単価については、需給動向の変動の激しいメモリを中心に高騰した。
ディスプレイ製品の売上は同40.3%減の68.3億円。高利益商材の販売に注力したが、有機ELビジネスの特別需要の反動減、GIGAスクール構想の前倒し需要の一巡、移管予定としていた液晶モジュールビジネスの一部移管実施等、汎用品のボリュ ームビジネスが大幅に減少した。尚、メーカー構成の変化によって、売上高は減少するも利益率は向上している模様。
システム製品の売上は同26.5%増の34.1億円。一部に部品の供給不足による生産遅延の懸念が見られるものの、異物検出装置が堅調に推移、EMS、サーバ機器、Boardの需要が増加した。異物検出装置やEMSは利益面でも大きく寄与した。
バッテリ&電子機器製品の売上は前年同期比48.9% 増の17.7億円。太陽光発電所用機器の案件獲得及び家庭用の電力貯蔵システム向けバッテリビジネスが当初の想定より前倒し気味に再開したこともあり、大幅増収となった。

 

2-3 財政状態

財政状態

 

21年3月

21年9月

 

21年3月

21年9月

現預金

6,240

6,223

仕入債務

2,691

3,119

売上債権

9,091

8,019

短期有利子負債

9,517

9,281

たな卸資産

4,260

5,728

未払法人税等

221

226

流動資産

19,973

20,207

流動負債

13,042

13,420

有形固定資産

12

14

長期有利子負債

1,584

1,058

無形固定資産

14

6

固定負債

1,586

1,061

投資その他

402

378

純資産

5,773

6,125

固定資産

429

399

負債・純資産合計

20,402

20,607

* 単位:百万円

 

総資産は206.0億円となり、前期末との比較(以下同)で2.0億円増加した。売上債権が減少したが、たな卸資産が増加した。負債は144.8億円となり、1.4億円減少した。買掛金やその他流動負債が増加したが、有利子負債が減少した。純資産は61.2億となり、3.5億円増加した。主な要因は、利益剰余金の増加によるもの。
流動比率は、買掛金の増加等により2.5ポイント減少し150.6%となった。自己資本比率は、有利子負債の減少等により、1.4ポイント増加し29.7%となった。有利子負債対純資産比率は1.7倍となり、0.2ポイント減少した。

 

3.2022年3月期業績予想

3-1 通期連結業績

 

21/3期 実績

構成比

22/3期 予想

構成比

前期比

期初予想

売上高

49,084

100.0%

42,600

100.0%

-13.2%

36,400

営業利益

819

1.7%

1,250

2.9%

+52.5%

870

経常利益

702

1.4%

1,050

2.5%

+49.4%

780

親会社株主帰属利益

497

1.0%

700

1.6%

+40.7%

540

* 単位:百万円

 

大幅上方修正、22/3期は13.2%減収、営業利益は52.5%増を見込む
22/3期通期予想は売上高が前年同期比13.2%減の426億円、営業利益は同52.5%増の12.5億円を計画する。期初予想売上高364億円、営業利益8.7億円から大幅な上方修正を行った。
上期は半導体をはじめとする各種商材の供給不足の中、前倒し需要を含む旺盛な需要と価格の上昇、比較的利益率の高いシステム製品分野の販売が順調であったこと、そして遅延していた家庭用蓄電システム向けバッテリビジネスが再開したことで当初の予想を上回る推移となった。
下期は、上期の旺盛な需要に対し市況はやや落ち着くと見て慎重な予想としている。分野別の見通しは、以下のとおりとなっている。
①半導体製品分野は、総じて上期に対しやや落ち着くものと見込んでいる。一定の需要が見通せるビジネスもある一方で、需給ひっ迫による突然の生産調整のリスクのあるビジネスもあり、市況はまだら模様と分析している。また、販売価格については、急激な下落は見込まないが、上期の急激な上昇は沈静化すると見通している。
②ディスプレイ分野は、主要取引先の商流変更の移管スケジュール延期を織り込んでいる。
③システム製品分野は、半導体を中心とした供給不足の影響による一過性の生産調整等を織込んでいる。
④バッテリ&電力機器分野は、開発の中断や延期案件もあるが、家庭用蓄電システムの再開もあり、当初の想定どおりと見通している。
配当についても、配当性向30%の基本方針に基づき、期初予想80円から103円の期末配当へ上方修正した。

 

3-2 対処すべき課題と収益構造改革

対処すべき課題と対処方針

対処すべき課題の現状認識として外部要因と内部要因を同社では挙げている。外部要因としては、(ⅰ)景気の変動、(ⅱ)需給動向の変動、(ⅲ)為替や金利の変動、(ⅳ)地政学的リスク、(ⅴ)技術革新による陳腐化、(ⅰ)~(ⅲ)については新型コロナウイルスに関するリスクでもある。内部要因としては、汎用品ビジネスの販売構成が高い(大量生産型志向)ことにより、仕入先構成が東アジアに偏重傾向にあるとしている。
これらへの対処方針として、既存仕入先の汎用品ビジネスを維持・拡大させるとともに、「収益構造改革」(詳細は後述)を通じて最大価値を創出し、安定的かつ持続的な成長を目指す。

2021年以降、日本を動かす2つの「X」

日本で遅れていたデジタル化、脱炭素化が急進展しようとしている。

(同社資料より)
DX、GXという2つの「X」は同社の収益構造改革との親和性は高く、ビジネスチャンスの拡大を図る。

 

収益構造改革とは

同社グループは、汎用品のボリュームビジネスが主力であるため、それらの仕入先が東アジアに偏重傾向となっており、地政学的リスクを有しているとの現状認識を持っている。さらに厳しい外部環境の中で、安定的かつ持続的成長のために、主力の汎用品ビジネス及び既存メーカーの維持拡大のみならず、世界的視点で欧米や国内の既存メーカーの深掘と新規メーカーの発掘を加速化し、システムソリューションとして顧客に提供するため、2021年度より商品を軸とした横断的組織である「プロダクト・マーケティング本部」を設立し、運用を開始した。「収益構造改革」にかかる以下の戦略と新たな組織を有機的に運用することで、最大価値の創出を図る。
① 基本戦略
a. 中核分野(半導体製品、ディスプレイ)の高利益化
b. 収益のもう一つの柱(システム製品、バッテリ&電力機器)となるビジネスモデルの確立
c. 資金効率の向上と財務体質の強化
② 市場・顧客戦略
a. 5G・IoT及びEV(Electric Vehicle)市場 :
基地局等の社会インフラ、FA(Factory Automation)向け応用製品への拡販
b. 新規市場及び優良顧客の開拓 :
農機具・輸送機器・建設機器・データセンタ・医療機器等の市場(顧客)を開拓
③ 製品戦略
a. 国内・台湾・欧米の既存メーカーの深掘及び新規開拓
b. 半導体製品 :
ASIC(Application Specific Integrated Circuit)・CPU(Central Processing Unit)等の高付加価値商品の拡販
c. ディスプレイ : 有機ELの新規仕入先の発掘及び拡販、サイネージビジネスの事業化
d. バッテリ : ESS向けの拡販
e. 駆動系商品 : バッテリ及びモータの拡販
f. EMSの強化
④ 資金効率の向上と財務体質の強化
a. 現在の良好な取引金融機関との関係を維持し、業容拡大に対応できる安定的な資金調達手段を確保
b. 高利益化による資金効率の向上をもって自己資本を充実させ、財務体質を強化

 

経営目標・株主還元

「収益構造改革」を推進し高利益化を図るとともに、資産の効率化、財務レバレッジの向上を追求、ROE10%を目標とする。
また、株主に対する利益還元を重要な経営政策の一つと位置づけ、財政状態や経営環境等を総合的に勘案し、必要な内部留保を確保しつつ、配当を実施する方針。年1回期末配当として、株主総会の決議により配当を実施することが基本方針。配当性向30%を公約。

 

4.今後の注目点

同社のビジネスを考えるうえでのポイントは、表面的な売上・利益よりも、先を見越して進めている水面下でのパイプラインの整備である。売上・利益は結果であり、その時々の為替やデバイスの市況にも左右されてしまうが、パイプラインが整備されていれば、目先の業績が振れても、中長期の成長に不安はない。21/3期にはその成果も現れ、今も数年先を見据えた営業努力が続いている。
22/3期については、商流変更やGIGAスクール構想の前倒し需要、有機ELビジネスの特別需要の反動が生じるため、当初は2桁の減収予想であったが、会社の想定を大きく上回って推移しており大幅な上方修正となった。活況な市況を背景とし、為替効果やメーカー構成の変化による収益率の向上。特にシステム製品の増加が売上総利益率を高めた模様。また、バッテリ&電力機器が大幅増収となっており、世界中で起きている脱炭素のニーズにも応えている。強すぎたともいえた上期の需要増を警戒し、下期はかなり慎重な見通しとなっている。
好業績を反映し、株価は前回レポートからかなり見直された。それでもPER、PBRとも極めて低位にある上、配当利回りは高い。加えて、旺盛な半導体需要、DX・GXの進展、自動車の電動化といった世界的な流れは同社ビジネスにとってフォロー。今期予想業績がさらに上乗せされる可能性や、中期的な見通しを考慮すると極めて割安に放置されている印象を持った。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

12名、うち社外3名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2021年6月25日)
基本的な考え方
当社は、コーポレート・ガバナンスの強化・充実を経営上の重要な課題の一つとして位置付けております。
経営環境の変化に柔軟かつ迅速に対応し、グループ全体の持続的な企業価値の向上を図るとともに、企業理念を具現化し発展していくために、意思決定の迅速化及び責任の明確化、並びに内部統制システムの整備等により、経営体制を充実させ、経営の透明性向上とコンプライアンス遵守の徹底を図っていくことを当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方としております。さらに、株主をはじめとするステークホルダーに対する、企業としての社会的責任を果たすことを、経営の重要な責務として認識し、グループ内における監督機能、業務執行機能及び監査機能を明確化することにより、経営目標の達成に向けた経営監視機能の強化に努めております。

 

 

<実施しない原則とその理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を全て実施しておりますので、本欄に記載すべき事項はありません。

 

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