(6090)ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ メタボロミクス事業の堅調な伸長に期待
橋爪 克仁 社長 |
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社(6090) |
|
企業情報
市場 |
東証マザーズ |
業種 |
サービス業 |
代表取締役社長 |
橋爪 克仁 |
所在地 |
山形県鶴岡市覚岸寺字水上246-2 |
決算月 |
6月末日 |
HP |
株式情報
株価 |
発行済株式数 |
時価総額 |
ROE(実) |
売買単位 |
|
475円 |
5,861,300株 |
2,784百万円 |
-41.9% |
100株 |
|
DPS(予) |
配当利回り(予) |
EPS(予) |
PER(予) |
BPS(実) |
PBR(倍) |
0.00円 |
– |
-51.59円 |
– |
193.11円 |
2.5倍 |
*株価は3/16終値。発行済株式数、DPS、EPSは2020年6月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは2019年6月期決算短信より。
業績推移
決算期 |
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
当期利益 |
EPS |
DPS |
2016年3月(実) |
780 |
-70 |
-71 |
-71 |
-13.41 |
0.00 |
2017年3月(実) |
914 |
-43 |
-40 |
-61 |
-10.86 |
0.00 |
2018年3月(実) |
938 |
-140 |
-149 |
-156 |
-26.92 |
0.00 |
2019年6月(実) |
989 |
-526 |
-515 |
-596 |
-101.92 |
0.00 |
2020年6月(予) |
920 |
-300 |
-299 |
-302 |
-51.59 |
0.00 |
*単位:百万円、円。予想は会社側予想。決算期変更により2019年6月期は15カ月決算。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
以下同様。
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社の2020年6月期第2四半期決算概要等をご紹介致します。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.2020年6月期第2四半期決算概要
3.2020年6月期業績予想
4.両事業の進捗・取り組み
5.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>
今回のポイント
- 2020年6月期第2四半期はメタボロミクス事業が好調で増収。損失は縮小。売上高は4億54百万円。メタボロミクス事業において国内・海外ともに営業体制の強化に取り組んだ。全ての業種において、増収となった。営業損失は1億23百万円。メタボロミクス事業は増収および生産性改善等により増益。バイオマーカー事業は、うつ病バイオマーカー等の事業化に向け、測定メソッドの開発、臨床性能評価を継続実施し前年同期並みの損失。
- 2020年6月期の売上高は9.2億円、営業損失は3億円の予想。売上高は12カ月決算であった18年3月期水準(9.4億円)を目指す。新解析プランの通期での業績貢献とメタボロミクスの新規市場開拓を目指すほか、うつ病バイオマーカーやメンタルヘルス分野に加え、新規参入のExosome関連事業など新たなポートフォリオの構築を目指す。
- 前期低調な決算となったメタボロミクス事業だが、メタボローム解析市場における同社の優位性に変化はない中、営業体制を強化したことで全顧客業種および国内外で増収となった。新規市場・新規顧客開拓の余地は大きく、今後も堅調な伸長が期待できるだろう。
- 一方収益化が遅れているバイオマーカー事業だが、課題が明確となった中、新たな切り口での事業展開に着手している。収益化には時間がかかるかもしれないが、こちらも引き続き四半期ごとの動向、進捗に注目していきたい。
1.会社概要
研究機関や製薬企業等のメタボローム解析試験受託及びバイオマーカー開発を中心事業として展開する慶應義塾大学発のベンチャー企業。基盤技術であるメタボローム解析技術で世界的に高い評価を受けている。メタボロミクス事業により着実に利益を生み出すと同時に、将来性豊かなバイオマーカー事業への投資および研究開発を進めるというビジネスモデルにより、安定した収益基盤の下で成長を目指している。
【1-1 沿革】
2001年慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授は、CE-MS法と呼ばれる生体内の低分子代謝物質(メタボローム)の測定方法を開発した。このメタボローム測定法は、それ以前の測定方法が多くの測定条件を用いるため、代謝物質全体を網羅的かつ効率的に測定することが困難だったのに対し、一斉に、かつ、網羅的に測定できる点で画期的な技術であった。
以前よりメタボローム解析技術は、生物学基礎研究から医薬品開発、疾病バイオマーカー開発等に用いられており、その社会的ニーズの拡大が見込まれていたため、このCE-MS法確立を契機に、事業化を目指して、曽我教授や同大学の冨田勝教授、慶應義塾大学等が中心となり、2003年7月に同社を設立。慶應義塾大学のアントレプレナー支援資金制度により出資
を受けた慶應義塾大学発ベンチャー企業の第1号となった。
コア技術に関する研究開発を進めつつ、より具体的な事業化の道やビジネスモデルの整備・構築に着手すると同時に、認知度向上と研究開発資金の調達による成長スピードの加速を目指して2013年12月、創立10年目に東証マザーズに上場した。
【1-2 企業理念】
同社は自社の存在意義を以下の様に定めている。
「未来の子供たちのために、最先端のメタボローム解析技術をコアとした研究開発により、人々の健康で豊かな暮らしに貢献する」
また、以下の5つの「共有の価値観」を掲げている。
1.お客様と共に歩みます。 私たちはお客様の現在と将来のニーズに応えるべく、お客様の研究開発や仕事のワークフローをよく理解し、ご満足いただけるソリューションを提供していきます。お客様とは情熱を持って接し、誠心誠意尽くします。 |
2.最先端技術開発と高品質にこだわります。 私たちは、変わらぬベンチャー精神で、常に世界トップの解析・診断技術を開発するために、弛まぬ努力と投資を実施していきます。 |
3.チームワークを大切にします。 私たちはチームワークの力を最大に発揮できるように、オープンなコミュニケーションを図り、仲間を信頼し、多様な意見を尊重します。また、チームの実力を高めるため、自己啓発に努め、個人のレベルアップを図ります。 |
4.誠実、公正をモットーとして、行動します。 私たちは良き市民として、顧客、株主、地域社会および家族の信頼に応えられるように、法令を順守し、誠実で倫理的な責任ある行動をとり続けます。 |
5.子供たちの未来のために貢献します。 私たちは子供たちの未来のために、適切なライフワークバランスを実現します。 |
【1-3 同社を見るポイント】
同社の事業内容は、重要なキーワードである「メタボローム解析」と「バイオマーカー」の説明と共に、以下に記しているが、多数の専門的な用語も出てくるため、そこから読み始めると同社に対する理解が進みにくい場合があると思われる。
そこで、まず同社を見る際の3つのポイントについて簡単に触れておく。
①社会的存在意義の大きさ
バイオマーカーとは、特定の病気に関する現在の状態を測定する際に指標として使われる生体内の物質で、糖尿病の「血糖」、肝機能障害の「γ―GTP」、痛風の「尿酸」などが代表的。
同社は現在大きな社会問題となっている「大うつ病性障害」のバイオマーカーを発見し、その数値を簡便に測定する診断薬等を研究開発している。
うつ病の患者数が年々増加傾向にあるのに対し、現在の病状を客観的に測定する方法が普及していないため、正しい治療を行えば治癒するはずの患者が治らないなど、薬漬けになるなど大きな問題が指摘されている。
同社のバイオマーカーを活用した診断薬が普及すれば、うつ病によるこれらの課題を解決し、社会的損失を減少させることが出来る。この社会的な存在意義の大きさは同社を見る際に欠かすことはできない。
②高い技術力
複雑な人間の体の挙動を調べ、バイオマーカーを発見するための技術が「メタボローム解析技術」であり、同社はこの技術で世界的に高く評価されている。
現在話題になっているうつ病バイオマーカーは、あくまでも一例にすぎず、17年10月には急性脳症バイオマーカー国内特許
を取得した。メタボローム解析技術により今後も、様々な新しいバイオマーカーを発見・開発することが期待される。
③安定したビジネスモデル
現時点での主力事業は売上の大部分を占める「メタボロミクス事業」。研究機関や製薬会社等の研究開発を支援する事業であり、前2019年6月期で売上988百万円、営業利益232百万円と、着実に利益を上げている。
一方、中長期的に大きな成長が期待される「バイオマーカー事業」はまだ規模も小さく、損失の状況だが、メタボロミクス事業で生み出した利益を、バイオマーカー事業の成長のための投資に回すという、バランスのとれたビジネスモデルが既に構築されている点は、収益化に苦労している企業が多いバイオベンチャーの中でも大いに注目される。
【1-4 うつ病について】
同社の今後の成長ドライバーである「バイオマーカー事業」において、現在の代表的な対象疾病がうつ病である。うつ病および大うつ病性障害について、概要や日本における現状などをまとめてみた。
◎うつ病とは
気分障害の一種で、精神的ストレスや身体的ストレスが重なることなど、様々な理由から脳の機能障害が起きている状態。脳がうまく働いてくれないので、ものの見方が否定的になり、自分がダメな人間だと感じてしまう。そのため普段なら乗り越えられるストレスも、よりつらく感じられるという、悪循環が起きる。
中でも、「大うつ病性障害」は、ストレス源が除去された後もその状態が持続する状態を指し、その点で適応障害や一部の不安障害とは区別され、単純なストレス応答ではなく、脳機能の障害によると考えられている。
(ちなみに、大うつ病性障害とは、英語の「major depressive disorder」の和訳で、majorは「主たるもの」という意味合いであり、重篤なうつという意味ではない。)
◎世界および日本におけるうつ病患者数
2012年、世界保健機関(WHO)は、世界で少なくとも3億5千万人が精神疾患であるうつ病の患者とみられるとの統計を発表した。毎年100万人近くの自殺者のうち、うつ病患者の占める割合は半数を超えるとみられている。
一方我が国では、厚生労働省が3年ごとに全国の医療施設に対して行っている「患者調査」によると、1996年には43万人だったうつ病等の気分障害の総患者数は、2011年には95万人と15年間で2.2倍に増加した。
「患者調査」は、医療機関にかかっている患者数の統計データだが、うつ病患者の医療機関への受診率は低いことがわかっており、実際にはこれより多くの患者がいることが推測されると、と同省は記している。
うつ病になる事は本人や家族にとっても不幸なことであるが、その属する会社等組織における生産性の低下や、自殺による社会的影響などを考慮すると、解決すべき大きな社会問題である。
日本では、うつ病や自殺による経済損失額が、年間約3兆円に上ると推計されている。さらに、こうした損失がなければ、国内総生産(GDP)を約2兆円引き上げられと試算されている(2010年厚生労働省推計)。
全世界での経済損失額は、2002年で約62兆円に上ると試算されており(Screening for Depression in Adults: A Summary of the Evidence. Ann Intern Med. 2002.)、現在では100兆円を超えていると推計されている。
◎うつ病の治療
うつ病と診断されれば、一般的には「抗うつ薬」による治療が行われる。
抗うつ薬には、SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬)といったものから三環系抗うつ薬などいくつかのグループがあり、他に、症状に合わせて抗不安薬や睡眠導入剤なども使われる。
薬物治療では、主治医による処方された薬の効果と副作用についての説明の下、処方された量と回数を必ず守ることが重要と言われている。しかしうつ病患者には、症状がそれほど重くないと感じる、副作用が心配、などの理由から自分で量や回数を勝手に減らすケースが多く見られ、主治医は十分な効果が得られないと判断して薬の量を増す、もしくは別の薬に変えるなどの対応を取ることとなってしまい、信頼関係が構築できず治癒が遅れる、過剰な薬の投与という結果に結び付いてしまう事も多い。
このため、うつ病であることまたは治癒されたことを示す客観的な評価基準が不可欠であり、同社が発見・開発中のうつ病バイオマーカーおよび診断薬は治療を迅速かつ適切に行うために極めて重要なものである。
【1-5 メタボローム解析とバイオマーカー】
同社の事業内容の概要を理解するには、「メタボローム解析」と「バイオマーカー」という2つのキーワードについて一定程度の理解をしておく必要がある。
<メタボローム解析とは?>
人間をはじめとする生物は、筋肉や臓器、骨といった多様な機能を持つ器官から成り立つが、こうした器官はアミノ酸や脂質、核酸などの「代謝物質(メタボライト)」を共通の構成因子としており、代謝物質は全ての生命活動において欠かせない役割を担っている。
代謝物質は食事により供給され、運動など日々の活動の中で消費される。その機能に応じて体内や細胞内を移動し、多くの化学反応によって新しい物質へと作り替えられていく。
このような化学反応のことを「代謝(メタボリズム)」と呼ぶ。体温を調節したり、呼吸をしたり、心臓を動かしたり、食べ物を消化・吸収したり、古い細胞を新しい細胞に生まれ変わらせたりするのも、全て代謝の働きによるもの。
この新しい物質への作り変え「物質変換」は代謝経路という一定の規則により成り立っている。
人間の体の仕組みを探るための手法として有名なものが、遺伝子の解析を行う「ゲノミクス」である。
現在、生物の遺伝子情報(DNAの塩基配列)は自動的な解読およびコンピュータによる解析が可能になり、ヒトゲノムに関しては、ほぼ全ての情報の解読が終了したが、遺伝子の役割と病気との関係は解明できていない部分がまだまだ沢山ある。
そこで、人間の身体と病気との関係を解明するには、ゲノム解析による遺伝子に伴う情報のみでなく、代謝物質までを調査する事が必要であると考えられるようになり、全ての代謝物質を対象として解析を行う「メタボロミクス(メタボローム解析)」の研究、利用が盛んになっている。
メタボローム解析は主として以下のような分野で活用されている。
大学などの研究機関における、疾患メカニズムの研究 |
製薬企業における探索・薬理研究や毒性研究 |
発酵を利用した物質生産を行っている企業における生産性の向上 |
食品企業における成分分析や機能性の探索・確認 |
<バイオマーカーとは?>
人間の身体には、様々な機能を精緻に制御して、内的又は外的な影響を最小限にして、身体の状態を一定に保つ仕組みである「恒常性」が備わっている。
例えば、体温や心拍数が一時的に変化しても元に戻るという事などが「恒常性」の一例である。
しかし、病気に罹ってこの恒常性に異常が生じると、代謝物質等にも影響が及び、健康の時とは異なる状況が生まれる。この代謝物質等をバイオマーカーと呼び、バイオマーカーを測定することにより、特定の疾患に対する現在の状況を客観的に評価することができる。
バイオマーカーとして広く知られているものとしては、膵臓の機能指標となる血糖や肝機能の指標となるγ-GTP、腫瘍マーカーとして前立腺がんのバイオマーカーPSAや膵臓がんのバイオマーカーCA19-9などがある。
バイオマーカーは、病気に罹った状況をモニターすることを目的に古くから研究されてきたが、より高感度で一度に多くの物質を分析できる新しい方法が生み出され、様々な新しいバイオマーカーの研究成果が相次いで発表されている。メタボローム解析技術により、探索が進んでいるバイオマーカーには、以下のようなものがある。
疾患の罹患を診断するバイオマーカー |
治療の効果を評価するバイオマーカー |
投薬による副作用を予測するバイオマーカー |
投薬の効果を予測するバイオマーカー |
【1-6 事業内容とビジネスモデル】
同社の事業は「メタボロミクス事業」と「バイオマーカー事業」の2つ。
基盤技術であるCE-MS法の優秀性を研究機関や製薬会社等に普及させながらメタボローム研究関連市場の拡大を図り、メタボロミクス事業を国内外へ展開し、収益基盤を確保している。
一方、従来は現在の主力事業である「メタボロミクス事業」で得られた利益を、将来の成長事業である「バイオマーカー事業」の研究開発に投資し、ここで得られた知的財産を、医薬品開発や疾病診断分野で実用化することによる、中長期的な成長を目指してきたが、2017年3月期以降は、将来のより大きな飛躍を図るために外部からの各種資金調達によってバイオマーカー事業への投資を加速させることとした。
それぞれの事業の収益構造や顧客は以下の通り。
(同社資料より)
①メタボロミクス事業
「2019年6月期 売上高 988百万円、営業利益 232百万円」
製薬会社や食品会社等の民間企業、および大学や公的研究機関などを顧客とし、メタボローム解析試験を受託している。顧客は、解析する試料を同社へ送付。同社は試料から代謝物質の抽出、CE-MS法によるメタボローム解析等を行った後、試験結果を報告書として顧客に納品する。
メタボローム解析サービスで得られた代謝物質データは、製薬企業や大学、研究所では基礎生物学研究から薬剤効果及び毒性の評価等、食品企業では発酵プロセスの解析や機能性食品の機能評価等に用いられ、顧客の研究開発の進展に貢献している。近年では、医療、食品のみでなく健康志向市場関連企業の関心も急速に高まっている。創業以来2019年6月までの総試験数は5,540件と他に類を見ない豊富な実績を誇っていることに加え、品質の面でも顧客から高い評価を得ている。
◎海外市場への展開
メタボローム解析受託サービスをアジアで展開するため、2011年6月に、韓国Young In Frontier Co., Ltd.と韓国内におけるメタボローム解析サービス等の独占的販売権供与契約を締結した。また、選任の担当者を採用し、シンガポール、香港等、韓国以外のアジア地域の開拓にも注力している。アジア地域以外への取り組みとしては、北米市場への展開のため、2012年10月に、医学研究の集積地である米国マサチューセッツ州ケンブリッジ市に、販売子会社Human Metabolome Technologies America, Inc.(HMT-A)を設立し、販売活動を展開している。
また、海外展開を一層加速させるため、2017年5月には、HMT-Aを通じて、欧州(オランダ)に現地法人(孫会社)「Human Metabolome Technologies Europe B.V.」を設立した。
◎がん研究向け解析サービス「C-SCOPE」
2012年8月、がん研究向け解析サービスである「C-SCOPE」を発表した。
C-SCOPEは、がん細胞内で変化している特定の代謝物質を、より高感度、より精密に測定するというニーズに対応したもの。独自に開発したがん細胞からの効率的な代謝物質抽出法および高感度分析法を技術基盤としている。
がんは1981年以降国内死因の第1位であり近年総死因の約3割を占めている。厚生労働省によると、がん研究費は年々増加の一途をたどり2012年には357億円が費やされ、有効な新規抗がん剤の開発は多くの製薬企業にとっても急務となっている。
がん細胞が正常細胞に比べて数倍から数十倍のブドウ糖を消費する「ワーバーグ効果」と呼ばれる現象は、80年以上も前に提唱されたが、当時は代謝物質の網羅的測定法が無かったことから研究が滞っていた。
メタボローム解析技術の劇的な進歩に伴い、近年がんの代謝を阻害する抗がん剤の開発が行われている。
同社のCE-MS法によるメタボローム解析は、がん生物学的な基礎研究から抗がん剤開発における臨床応用まで、それぞれの段階で活用できる有効な解析手法の一つと考えられている。
②バイオマーカー事業
「2019年6月期 売上高 0.4百万円、営業損失 204百万円」
疾患の早期診断や治療効果をモニタリングする際に重要な役割を果たすバイオマーカーに関する事業を将来の成長事業と位置づけ、大学や製薬、診断薬企業との共同研究開発を通じて、メタボローム解析技術を用いた新たなバイオマーカー探索や臨床検査薬の研究開発を進めている。
自社の研究開発を通じて得られたバイオマーカーや、外部より導入したバイオマーカーを用いて疾病の新たな診断方法を開発するとともに、製品開発・臨床開発等の過程を経て、体外診断用医薬品や診断機器の製造販売を行う。また、開発過程において、共同研究先である製薬企業から研究開発協力金やマイルストン収入、上市後の製品売上ロイヤリティ等が同事業の売上となる。
加えて同事業の早期収益化を目指し、『メンタルヘルス(精神状態評価)プロジェクト』、『Exosome(エクソソーム)プロジェクト』、『健康状態/疾患リスク予測モデル構築プロジェクト』という3つの新たな事業ポートフォリオ構築にも取り組んでいる。
◎知的財産に関する方針
知的財産権・契約担当者が、同社及び共同研究機関の指定特許事務所の弁理士と密接に連携し、すべてのプロジェクトの特許出願、審査請求業務を遂行する他、共同研究における契約の交渉及び契約書類の作成も担当している。発見された疾病バイオマーカーの特許化については、最大限の権利を行使できるよう努めている。
疾病バイオマーカーにより権利範囲が異なるため、発見された疾病バイオマーカーの化学構造を始めとして、診断や創薬での利用法、検出法と測定機器などを広く網羅するように特許出願書類を作成している。
また、各国の臨床検査薬と検査機器企業、製薬企業に関する情報に基づいてライセンス契約先及び市場を想定し、特許協力条約に基づく国際出願を行うことを原則としている。
2017年6月現在、うつ病のバイオマーカーの測定法等に関する「基本特許」は日本・米国・中国で登録済み。出願済みだった欧州においては特許査定されている。エタノールアミンリン酸(PEA)の測定方法に関する特許は、日・米・中・欧4局すべてで登録済みとなっている。
◎バイオマーカー事業の例:うつ病バイオマーカー
同社では、特にうつ病など客観的診断が難しい中枢神経系疾患(気分障害や精神障害等)や、肝炎、糖尿病などを含んだメタボリックシンドローム等社会問題化している疾患とその関連疾患に焦点を当てて研究開発を進めているが、現在の代表的なものが、「うつ病」のバイオマーカーである。
大うつ病性障害の診断は、米国精神医学会の診断基準や世界保健機構(WHO)の基準に基づいて診断されるが、どちらの手法も医師や患者の主観が反映されているケースが多く、他の病気と異なり客観的な指標に基づく診断法が普及していない。そこで、同社は、独立行政法人国立精神・神経医療研究センターとの共同研究により、大うつ病性障害の血液バイオマーカーを発見した。
患者と健康者約30名ずつの血液を収集し、CE-MS法を用いたメタボローム解析により成分の比較を行った結果、血漿中のPEA濃度が、大うつ病性障害患者で固有に低下していることが分かった。
その後の解析により、PEAが精神疾患の中でも大うつ病性障害に特異的なバイオマーカーであることに加え、大うつ病性障害が治癒すると健康基準値まで戻ることも分かった。
(同社資料より)
*コンパニオン診断:医薬品の効果や副作用を投薬前に予測するために行なわれる臨床検査のこと。薬剤に対する患者個人の反応性を治療前に検査することで、より効果的な投薬を行うことが出来る。
◎疾病バイオマーカーの発掘
バイオマーカーの発見において以下の3つのコネクションや制度を活用し、バイオマーカー開発パイプラインの拡充に努めている。
<受託解析もしくは共同開発顧客とのコネクション>
大学や企業から、バイオマーカー探索関連試験を受託している。また、試験実施の前後で共同開発の提案を受けることもある。現在、糖尿病性腎症バイオマーカーの共同開発を進めている。
<研究者や医師への直接提案>
同社の研究員が、疾病バイオマーカー開発の研究計画を直接研究者や医師に提案し、医師の承諾及び所属機関と共同研究契約を締結の上、試験を実施している。対象となる疾病は患者数、同社解析技術の特長、社会貢献度、バイオマーカーの必要性等から選択している。大うつ病性障害のほか、非アルコール性脂肪性肝炎、繊維筋痛症のバイオマーカー開発を行っている。
<メタボロミクス先導研究助成制度>
同社ではメタボローム解析の有用性を広く社会に利用してもらうとともに、若手研究者の育成のために、大学院学生へのメタボローム解析助成制度(HMTメタボロミクス先導研究助成制度)を2009年より実施している。世界各国の大学院生から募集した研究テーマから、優れた提案に対し、無償でメタボローム解析結果を提供して研究を支援している。この研究成果には、バイオマーカー発見につながる研究も含まれ、感染症関連脳症バイオマーカーのように、同社と共同研究に発展した例もある。
2.2020年6月期第2四半期決算概要
(1)連結業績概要
|
19/6期 (7-12月) |
20/6期 (7-12月) |
増減額 |
売上高 |
287 |
454 |
+167 |
営業利益 |
-316 |
-123 |
+193 |
経常利益 |
-313 |
-119 |
+194 |
四半期純利益 |
-315 |
-118 |
+197 |
*単位:百万円。19/6期は2018年4月から2019年6月までの15カ月決算であったため、同期間を比較。
メタボロミクス事業が好調で増収。損失は縮小。
売上高は4億54百万円。メタボロミクス事業において国内・海外ともに営業体制の強化に取り組んだ。全ての業種において、増収となった。営業損失は1億23百万円。メタボロミクス事業は増収および生産性改善等により増益。バイオマーカー事業は、うつ病バイオマーカー等の事業化に向け、測定メソッドの開発、臨床性能評価を継続実施し前年同期並みの損失。
(2)主要セグメント別動向
◎メタボロミクス事業
|
19/6期 (7-12月) |
20/6期 (7-12月) |
増減額 |
売上高 |
287 |
453 |
+166 |
営業利益 |
-10 |
128 |
+138 |
*単位:百万円。19/6期は2018年4月から2019年6月までの15カ月決算であったため、同期間を比較。
営業戦略・営業体制の強化に取り組み、ヘルスケア・メディカル産業分野を中心とした新規市場開拓に注力した。
測定技術改善やメニュー開発に注力したが、増収および生産性改善により増益となった。
◎バイオマーカー事業
|
19/6期 (7-12月) |
20/6期 (7-12月) |
増減額 |
売上高 |
0 |
1 |
+1 |
営業利益 |
-87 |
-80 |
+7 |
*単位:百万円。19/6期は2018年4月から2019年6月までの15カ月決算であったため、同期間を比較。
うつ病バイオマーカー等の事業化に向け、測定メソッドの開発、臨床性能評価を継続した。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校とバイオマーカー探索共同契約を締結したほか、エクソソーム精製受託を開始した。また、J-VPD株式会社と業務提携契約を締結した。
(3)財務状態
◎主要BS
|
19年6月末 |
19年12月末 |
|
19年6月末 |
19年12月末 |
流動資産 |
1,214 |
1,208 |
流動負債 |
116 |
217 |
現預金 |
948 |
832 |
リース債務 |
10 |
9 |
売上債権 |
70 |
176 |
固定負債 |
37 |
32 |
有価証券 |
100 |
100 |
リース債務 |
20 |
14 |
固定資産 |
153 |
152 |
負債合計 |
152 |
249 |
有形固定資産 |
131 |
133 |
純資産 |
1,214 |
1,111 |
無形固定資産 |
10 |
8 |
株主資本 |
1,112 |
998 |
投資その他の資産 |
12 |
11 |
負債純資産合計 |
1,367 |
1,361 |
資産合計 |
1,367 |
1,361 |
|
|
|
*単位:百万円
現預金は減少したが売上債権の増加等で資産合計は前期末とほぼ変わらず13億61百万円となった。負債合計は同96百万円増加の2億49百万円。利益剰余金のマイナス幅拡大で、純資産は同1億3百万円減少し11億11百万円となった。
この結果、自己資本比率は前期末の82.7%から74.5%へ8.2ポイント低下した。
3.2020年6月期業績見通し
(1)連結業績予想
|
19年6月期 |
20年6月期(予) |
売上高 |
989 |
920 |
営業利益 |
-526 |
-300 |
経常利益 |
-515 |
-299 |
当期純利益 |
-596 |
-302 |
*単位: 百万円。予想は会社側発表。19年6月期は2018年4月から2019年6月までの15カ月決算。
業績予想に変更無し。売上高の持続的成長、メタボロミクス事業の生産性改善、バイオマーカー事業におけるポートフォリオの再構築に取り組む
売上高は9.2億円、営業損失は3億円の予想。売上高は12カ月決算であった18年3月期水準(9.4億円)を目指す。
新解析プランの通期での普及とメタボロミクスの新規市場開拓を目指すほか、うつ病バイオマーカーやメンタルヘルス分野に加え、新規参入のExosome関連事業など新たなポートフォリオの構築を目指す。
主要経営方針として、以下の4点を挙げている。
①売上高の持続的成長と業績予算の達成
新製品・新解析プランによる新分野・新地域開拓や新事業開発による中期的飛躍の基盤をつくる。
②メタボロミクス事業の生産性改善
営業手法の見直し等による営業活動の効率化や、分析時間短縮等による生産性の改善を進める。
③バイオマーカー事業におけるポートフォリオの再構築
うつ病バイオマーカーの実用化・事業化を引き続き推進する他、早期収益化を目指し、新たなパイプラインやバイオマーカー関連ビジネスの開発を目指す。
④安定株主の確保と対話による維持の継続
機関投資家、個人投資家向けIR活動に引き続き注力する。
(2)セグメント動向
◎メタボロミクス事業
|
19年6月期 |
20年6月期(予) |
売上高 |
988 |
908 |
営業利益 |
232 |
161 |
*単位: 百万円。予想は会社側発表。19年6月期は2018年4月から2019年6月までの15カ月決算。
主な取り組みは以下の通り。
(国内)
* |
研究機関、アカデミア、製薬のみならず、食品・化学分野でのヘルスケア領域での新規市場開拓を進める。 |
* |
営業・営業支援の増強により顧客カバレッジを拡大し、大口への攻略に偏らず、中小型案件も取り込む。 |
* |
試料輸送から報告書提出までの解析を含んだワークフローの生産性向上をはかり、受注後のコストダウンを実現 する。 |
(海外)
* |
欧州拠点で、創薬、アカデミア分野の攻略をメインターゲットとし、代理店を利用した開拓を実施する。 |
* |
4月~11月の解析機器の稼働率を高め、加えて欧米の売上拡大を目的に、戦略的な価格弾力性を持たせる。 |
* |
法規制が変わった中国市場での新たな提携モデルを構築する。 |
◎バイオマーカー事業
|
19年6月期 |
20年6月期(予) |
売上高 |
0 |
12 |
営業利益 |
-204 |
-172 |
*単位: 百万円。予想は会社側発表。19年6月期は2018年4月から2019年6月までの15カ月決算。
(3)重点投資項目
項目 |
19年6月期 |
20年6月期(予) |
概要 |
研究開発費 |
189 |
150 |
メンタルヘルス(精神状態評価)プロジェクト、うつ病バイオマーカー事業化に伴う開発。 |
設備投資 |
155 |
56 |
メタボローム解析の高感度化に向けた投資が中心。 新市場向けの投資は一段落。 |
*単位: 百万円。予算は会社側発表。19年6月期は2018年4月から2019年6月までの15カ月決算。
4.両事業の進捗・取り組み
(1)メタボロミクス事業
①外部環境
メタボロミクスが従来の大学や研究室などアカデミア向けの技術から、産業界の技術に進展している。
そうした中で、機能性食品などの新しい健康食品や、スポーツ、食品、睡眠、ストレス等をキーワードとする健康志向市場が拡大している。人間の健康状態を把握するメタボロミクスの有用性に関心を向け、ヘルスケア関連の新規事業開発を志向する企業が増加しており、新しいマーケットが創出されつつあり、新規顧客獲得の機会も増大している。
また、医薬品開発の現場においても、腸内細菌の研究、認知症やアルツハイマー病などの精神神経疾患に対する早期発見や診断および治療法開発、難治性疾患に対する医薬品を含めた医療技術の実用化、抗がん剤コンパニオン診断薬用バイオマーカー探索など、様々なニーズが増大しており、メタボロミクスの利用が一段と有効視され始めている。
一方海外へ目を向けると、米国市場は日本の5倍の規模。また、中国市場の年平均成長率は10-20%で、2020年から2022年までに日本市場を上回る見込みであり、国内外ともに高成長が期待できる。
想定市場規模
2017年
米国 |
62.4億円 |
ドイツ |
13.5億円 |
イギリス |
12.1億円 |
フランス |
8.5億円 |
日本 |
12.3億円 |
中国 |
9.1億円 |
(同社資料より)
②主要施策と進捗
◎2019年6月期の主要施策
テーマ |
施策 |
(1)成長領域への新製品投入による売上拡大 |
【食品・化学分野の販促強化】 ヘルスケア産業領域での新規市場開拓 臨床試験への介入による大型案件の獲得 新たな健康価値の創出における包括的ソリューション展開 年間契約締結へ向けた価値訴求の強化 【医薬分野の販促強化】 新製品投入による精神神経・新興・再興感染症分野開拓 難治疾患研究領域にフォーカスした販促展開 バイオマーカー探索を目的とした大型案件獲得活動の強化 【事業体制】 営業体制・サポート体制の強化 ワークフローの生産性向上 |
(2)海外展開への更なる注力 ~グローバルブランド力創造による海外展開加速~ |
【米国】 臨床研究・製薬会社の開拓を中心に大型案件の獲得と販促エリアの拡大・代理店の活用 新体制による組織基盤強化 【欧州】 特定疾患にフォーカスした臨床案件獲得活動の強化 食品分野への参入 代理店開拓 【アジア】 中国市場参入とアジア市場の更なる市場開拓と販促エリアの拡大 法規制が変わったなかで新たな提携モデルの構築 |
(3)新事業開発 |
メタボローム解析に関連する受託以外の中期的事業開発 |
◎2020年6月期第2四半期の取り組み
分野 |
施策と進捗 |
(1)ヘルスケア・メディカル産業 |
新解析メニューの効果もあり、特にヘルスケアおよびメディカル産業分野向けの脂質を含む代謝網羅解析や大型試験の受託売上が伸長した。大型試験は3プロジェクトから13プロジェクトに増加。 売上高は、アカデミア、化学、食品、製薬の全分野で増収。 |
(2)営業強化 |
営業企画部を新設、ユーザーサポートを強化、顧客ニーズにマッチしたプロモーションを展開した。 |
(3)代理店活用 |
海外を中心に代理店を活用し、大型案件開拓に注力した結果、全地域で売上・受注共に拡大した。 |
(2)バイオマーカー事業
「酵素法によるPEA測定試薬キット」の開発により、全世界3.5億人のうつ病患者に、PEA検査を提供できる技術的目途が立った同社は事業化に向けた足場作りを進めているが、課題も浮上しており、その課題に対応するとともに、同事業の早期収益化を図るため、新たな取り組みにも着手している。
①課題と対策
これまでに国内で実施してきた多検体のPEA測定(臨床フィジビリティ試験)の経過・結果から、以下のような課題を確認した。
課題1 |
健常人でも、個人差の影響うけ、うつ病患者と同程度の低いPEA値となる場合がある。 |
課題2 |
健常人とうつ病患者とのPEA濃度の変動差が比較的小さいため、安定したPEA測定値を得ることが重要となるが、そのためには検体採取方法や検体保存等について適確な管理が必要となり、医療現場での利用を想定した検体管理・運用の課題克服が重要である。 |
PEAは、うつ病の有力なバイオマーカー候補であることは変わらないが、こうした課題に対し、以下のような取り組みを行っている。
<対策>
臨床機関における検体採取の標準化を検討 |
治療効果検証(モニタリング)等に焦点をあてた研究 |
PEA低値となる健常人の特性を検出する方法の開発 |
この他、うつ病モデル動物による血漿PEA低下メカニズム解明に向けた研究の論文を執筆中で、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)との共同研究にも着手した。
②新たな取り組み
◎検出技術の開発
液体クロマトグラフィー法による研究用測定受託の開始 |
酵素法試薬キット開発において、汎用の大型生化学分析装置向け試薬キットを開発中で、測定のコストダウンを目指す。 |
研究測定受託の開始については、うつ病の予防、早期発見、治療への関心は引き続き高く、精神疾患関連研究機関、製薬企業、健康経営推進に積極的に取り組む団体からのPEA測定ニーズの高まりに対応したもので、創薬分野の研究開発を支援する。
◎メンタルヘルス(精神状態評価)関連
うつ病をはじめとする精神疾患の予防対策としての精神状態の評価指標(インデックス)の開発 |
認知症予防としての軽度認知障害(MCI)バイオマーカーの社会実装に向けた開発 |
「精神疾患、生活習慣病等」に関連する先端的なバイオマーカーを活用した研究検査・臨床検査について、J-VPD社と共同事業に向けた業務提携に合意。 |
*軽度認知障害(MCI)について
日本の65歳以上の認知症患者数は現在約3,000万人。うち、認知症有病者は全体の15%にあたる約460万人で、全体の13%にあたる約400万人が軽度認知障害(MCI)と呼ばれる患者である。
軽度認知障害(MCI)とは、正常と認知症の中間の状態で、物忘れはあるが、日常生活には支障がない。
ただ、MCI患者のうち年間10~30%が認知症に進行している。一方で、正常なレベルに回復する患者もおり、5年後に38.5%が正常化したという報告もある。
認知症有病者数は2050年には日本で800万人、全世界で1.3億人に達するとも見られており、その抑制は全世界的な課題でもある。
HMTは、同社が参画している弘前COIに関連する「岩木健康増進プロジェクト」における、多項目ビッグデータを活かした弘前大学と東北大学の「COI若手連携研究ファンド(認知症の予防と早期発見のためのビッグデータ多層解析)」に基づいて発見されたMCIマーカーを共同で特許出願し、実用化を目指していく。
認知症発症前の早期段階からの効果的な予防および認知症の超早期診断法の確立に繋げる考えだ。
◎健康/疾患リスク予測モデル関連
国内大学との共同研究により糖尿病性腎症の早期診断用バイオマーカーの探索に取り組んでおり、同社が保有する糖尿病性腎症バイオマーカーの検証を行っている。
また、弘前大学大学院医学研究科に共同研究講座メタボロミクスイノベーション学講座を開設した。
岩木健康増進プロジェクト等の生体試料から得られた超多項目ビッグデータとメタボロミクスを主としたオミックスデータを解析し、機械学習を用いたマルチマーカーによる健康状態予測モデル、将来の疾患リスク予測モデルの構築を図っている。
◎バイオマーカー探索の研究支援
前述のように、PEA研究用測定受託サービスを開始したほか、バイオマーカーの宝庫として注目されるエクソソーム関連分野の研究開発支援を行うために、2019年より同社が販売を開始(開発は有限会社シリコンバイオ)したエクソソーム精製試薬キット「ExoIntact™ 」を利用したエクソソーム精製受託サービスを開始した。
5.今後の注目点
前期低調な決算となったメタボロミクス事業だが、メタボローム解析市場における同社の優位性に変化はない中、営業体制を強化したことで全顧客業種および国内外で増収となった。新規市場・新規顧客開拓の余地は大きく、今後も堅調な伸長が期待できるだろう。
一方収益化が遅れているバイオマーカー事業だが、課題が明確となった中、新たな切り口での事業展開に着手している。収益化には時間がかかるかもしれないが、こちらも引き続き四半期ごとの動向、進捗には注目していきたい。
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎組織形態及び取締役、監査役の構成>
組織形態 |
監査等委員会設置会社 |
取締役 |
5名、うち社外3名 |
◎コーポレートガバナンス報告書
更新日:2019年9月25日
<基本的な考え方>
当社グループは、未来の子供たちのために、最先端のメタボローム解析技術をコアとした研究開発により、人々の健康で豊かな暮らしに貢献することを企業理念としております。当社は、この企業理念の実現と企業価値向上のため、経営全般の監督機能を強化し、内部統制システムによる業務執行の有効性、効率性、遵法性のチェック・管理を通じて、経営の健全性及び透明性を高め、経営の効率化に取り組んでおります。また、「共有の価値観」を全役員及び従業員へ周知し、長期的な観点から法令遵守を徹底し、各ステークホルダーと調和した行動を促しております。
<実施しない主な原則とその理由>
「当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を全て実施しております。」と記載している。