ブックオフグループホールディングス株式会社(9278) 既存店の好調等により増収増益

2019/12/25

 

堀内 康隆 社長

ブックオフグループホールディングス株式会社(9278)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

小売業(商業)

代表者

堀内 康隆

所在地

相模原市南区古淵2-14-20

決算月

3月

HP

https://www.bookoffgroup.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,093円

17,447,413株

19,070百万円

16.7%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

18.00円

1.6%

68.78円

15.9倍

736.20円

1.5倍

*株価は12/06終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2016年3月(実)

76,564

-530

5

-528

-25.69

25.00

2017年3月(実)

81,344

116

588

-1,159

-56.41

10.00

2018年3月(実)

80,049

613

1,092

-889

-43.31

10.00

2019年3月(実)

80,796

1,550

2,120

2,172

112.19

15.00

2020年3月(予)

83,000

1,800

2,300

1,200

68.78

18.00

* 予想は会社予想。単位は百万円、円。

 

 

ブックオフグループホールディングス株式会社の2020年3月期第2四半期決算の概要と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年3月期第2四半期決算概要
3.2020年3月期業績予想
4.中期経営方針と進捗状況
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 20/3期上期は国内直営既存店の好調とハグオールの収益化等により前年同期比6.0%の増収、同60.4%の営業増益。当期より積極出店を再開し、国内で、大型複合店舗「BOOKOFF SUPER BAZAAR」2店舗、総合買取窓口2店舗をオープンした他、マレーシアに4号店をオープン。この他、国内直営店36店舗をリニューアルした。「ひとつのBOOKOFF」戦略の下、スマホアプリ会員の獲得(目標としていた100万人を突破)や店舗・ECのオムニチャネル化も進んだ。

     

  • 通期予想に変更はなく、前期比2.7%の増収、同16.1%の営業増益予想。通期予想に対する進捗率は、売上高49.7%(通期実績ベースの前年同期の進捗率48.2%)、営業利益48.9%(同35.4%)。利益面での進捗が著しいが、今後予定しているシステム投資負担や消費税増税の影響等を勘案し、通期業績予想を据え置いた。配当は3円増配の18円を予定(予想配当性向26.2%)。

     

  • 中期経営方針の下での、「個店を磨く」と「総力戦で取り組む」という2つの戦略が順調に進捗している。この上期は書籍とアパレルの苦戦をトレカ・ホビーや貴金属・時計・ブランド品でカバーしたが、トレカ・ホビーの好調は「個店を磨く」戦略が成果を上げつつある事を表している。貴金属・時計・ブランド品の好調は同戦略の成果に加え、フリマアプリ等にはない「安心・安全・手間いらず」が同社の強みである事を再確認させた。もう一つの戦略である「総力戦で取り組む」についても、店舗とBOOKOFF Onlineの在庫連携が進んでおり、スマホアプリの機能強化と会員獲得も順調だ。

     

1.会社概要

書籍、CD、DVD、ゲーム、アパレル、スポーツ用品、ベビー用品、雑貨など様々なジャンルでリユース(再使用)事業を展開する日本最大級のリユースチェーンをグループで展開。北海道から沖縄まで全国をカバーする約800の店舗ネットワーク(直営+フランチャイズ)に加え、「ネットリユース」とのシナジーを追及している。

 

【ブックオフグループの経営理念】

・ 事業活動を通じての社会への貢献
・ 全従業員の物心両面の幸福の追求
上記経営理念の下、「本」の買取・販売を中心に様々なモノのリユースに取り組む中で育んできた、ブランド、店舗網、そして人財がグループの強みとなっている。「多くの人に楽しく豊かな生活を提供する」事を使命とし、「リユースのリーディングカンパニー」と「自信と情熱を持って安心して働き、成長できる会社」を目指している。

 

【ダイバーシティへの取り組み】

「従業員は最大の財産である」、「知力と人間力を備えた「人財」の成長が、会社の成長に直結する」と同社は考えている。個々の従業員が男性も女性も強みを活かし、職場環境を整えることに努め、また従業員の能力開発や自己実現の機会を提供できるよう努めている。この一環として、2014年10月に特定地域内での勤務が可能な地域選択制度を導入した他、従業員同士が夫婦の場合、配偶者の転勤にあわせて転居先の近くの店舗への異動を配慮する「夫婦帯同転勤制度」を導入した。また、障がい者雇用にも取り組んでおり、2010年10月にビーアシスト(株)を設立した(同年12月に障害者雇用促進法に基づく特例子会社として認定)。働く事ができる障がい者の方に「福祉」ではなく「企業の活動」として就労の機会・環境を提供し、社会参加・自立を支援しており、ブックオフグループ全体で100名を超える障がい者を雇用している。

1-1 事業内容

書籍・ソフト等のリユースショップ「BOOKOFF」のチェーン本部としてフランチャイズ(FC)システムの運営及び直営店舗の運営を行っている。直営店舗は、本・CD・DVD・ゲームソフト・家電・携帯等を取り扱う「BOOKOFF」、「BOOKOFF」にアパレル・ブランド品等を加えた中型複合店舗「BOOKOFF PLUS」、及び書籍・ソフトの他、家電(オーディオ・ビジュアル、コンピュータ等)、アパレル、スポーツ用品、ベビー用品、腕時計、ブランドバッグ、貴金属、食器、雑貨など幅広いリユース品を取り扱う総合リユースの大型複合店舗「BOOKOFF SUPER BAZAAR」の3つのタイプで展開している。

 

そのほか、ECサイト「BOOKOFF Online」及び大手百貨店内で富裕層向け買取サービス等を行うハグオール、新刊書店の運営及びブックレビューコミュニティサイトの運営等を行っている。

 

主な子会社は、(株)ブックレット、(株)ブックオフウィズ、(株)ブックオフ沖縄、(株)マナス、(株)ブックオフ南九州が、国内で「BOOKOFF」店舗の運営を行なっている。(株)ブックオフウィズは、上記に加え、アパレル・ベビー用品等のリユース店舗の運営を行なっており、腕時計・ブランドバッグ・貴金属等のリユースショップ・チェーンである「キングラム」のFCでもある。また、(株)ブックレット、(株)ブックオフウィズ、(株)ブックオフ沖縄は、アパレル等のリユース店舗の運営も行なっている。

 

海外では、BOOKOFF U.S.A. INC.が米国で「BOOKOFF」店舗の運営、BOK MARKETING SDN.BHDがマレーシアで「Jalan Jalan Japan」の運営をそれぞれ行なっており、SCI BOC FRANCEがフランス国内に所有する不動産の賃貸を行っている。

 

 

(同社資料より)

 

2.2020年3月期第2四半期決算概要

2-1 第2四半期連結業績

 

19/3期 上期

構成比

20/3期 上期

構成比

前年同期比

売上高

38,953

100.0%

41,289

100.0%

+6.0%

売上総利益

23,182

59.5%

25,322

61.3%

+9.2%

販管費

22,633

58.1%

24,441

59.2%

+8.0%

営業利益

549

1.4%

881

2.1%

+60.4%

経常利益

897

2.3%

1,144

2.8%

+27.6%

親会社株主帰属利益

441

1.1%

557

1.4%

+26.5%

* 単位:百万円

 

上期は前年同期比6.0%の増収、同60.4%の営業増益
売上高は前年同期比6.0%(23億35百万円)増の412億89百万円。国内直営既存店(売上高が同104.2%と13.3億円増加)や百貨店内での買取事業を行う「hugall(ハグオール)」(5.6億円増加)の好調に加え、九州地区におけるFC9店舗の直営化効果(2.9億円の増収要因)もあった(この他、直営新店・閉店の影響が1.2億円の増収要因)。また、国内直営既存店の売上にはネット経由の売上4.2億円が含まれており、「ひとつのBOOKOFF」戦略の下でのオムニチャネル・O2Oの効果も確認できた。

 

経常利益は同27.6%(2億47百万円)増の11億44百万円。計画通り黒字転換したハグオールの損益改善(3.8億円)効果が大きかった事に加え、国内直営既存店の寄与(0.7億円)やグループ再編に伴う全社コストの削減(1.8億円)効果もあり、戦略投資(「ひとつのBOOKOFF」推進のためのTVCM等のPR施策やM&A費用等で3.2億円の減収要因)や積極出店に伴う初期赤字(0.7億円の減収要因)を吸収して大幅な増益となった。

 

第2四半期(7-9月)は特殊要因で64百万円の営業損失

 

 

第2四半期(7-9月)は書籍とアパレルの売上が伸び悩んだ事で売上高が204億61百万円と第1四半期比1.8%減少した。書籍の伸び悩みはコミックの苦戦によるもので、活字体の本は堅調に推移した。同社は書籍全体が大きく伸びる事業環境を想定しておらず、コミックへの依存度を引き下げながら、活字系の本を増やしていく事で書籍全体の売上維持に努めていく考え。

 

損益面では、収益性の高い書籍の減収と、季節要因として利益率が低下しがちな(夏物衣料は利益率が低くなる)中でのアパレルの減収で、売上総利益が同5.7%減少した。このため、3.2億円の戦略投資に加え、テレビCM(約1億円)やM&Aにかかるデューディリジェンス費用等(約1億円)の発生で同2.2%増加した販管費を吸収できず、営業損益が64百万円の損失となった(経常損益は古紙等リサイクル収入等の計上で52百万円の利益)。

 

2-2 財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

財政状態

 

19年3月

19年9月

 

19年3月

19年9月

現預金

6,142

5,083

未払法人税等

135

170

売上債権

1,590

1,759

売上割戻引当金

546

529

たな卸資産

12,915

13,763

資産除去債務

1,747

1,806

流動資産

23,765

23,139

有利子負債

17,417

18,374

有形固定資産

5,932

6,199

リース債務

1,507

1,521

無形固定資産

1,204

2,044

負債

27,640

27,936

投資その他

9,744

9,654

純資産

13,006

13,102

固定資産

16,882

17,899

負債・純資産合計

40,647

41,039

* 単位:百万円

 

新規出店やシステム投資や(株)ジュエリーアセットマネジャーズの100%子会社化(後述)で有形・無形固定資産が増加した他、M&A資金の調達に伴い有利子負債が増加した。自己資本比率31.8%(前期末31.6%)。

 

キャッシュ・フロー(CF)

 

19/3期 上期

20/3期 上期

前年同期比

営業キャッシュ・フロー(A)

1,024

955

-69

-6.8%

投資キャッシュ・フロー(B)

-161

-1,928

-1,766

フリー・キャッシュ・フロー(A+B)

862

-973

-1,835

財務キャッシュ・フロー

-6,752

-67

+6,685

現金及び現金同等物期末残高

7,960

5,083

-2,877

-36.1%

* 単位:百万円

 

営業CFは、税引前利益10億02百万円や減価償却費7億72百万円、売上債権の増加△1億27百万円、たな卸資産の増加△5億84百万円、及び法人税還付(支払いと還付の差引)1億69百万円等で9億55百万円を確保した。一方、投資CFは、新規出店やシステム開発等の投資の他、店舗譲受やM&A等もあり、19億28百万円のマイナスとなった。財務CFは長短借入金の借入・返済や配当金の支払等による(前年同期は新株予約権付社債の償還があった)。

 

2-3 主な取り組み

「業績回復期を脱し、着実な増益を目論む」、「未来への成長に向けて積極的な投資に踏み出す」という方針の下、下記の取り組みを進めている。

 

組織・人材面

事業面

・地域支社制を軸とした直営・FC一体運営

・人の成長を後押しする研修予算・メニューの充実

 

・地域主権での店舗活性化(個店を磨く)継続

・「ひとつのBOOKOFF」の実現・浸透・発展

・ハグオール通期黒字化、新たなチャレンジの推進

 

 

組織・人材面での取り組み
上期は、施策にスピード感を持たせるべく地域の権限を強化すると共に、直営・FC間でノウハウ・人財交流を促進するべく各地域の直営店・FCの運営を一体化した。また、同社の強みである“人財”の育成に向け、基本的なビジネスマナー・接客や商材知識はもちろん、戦略理解や経営層の育成など50以上の研修メニューを実施した。

 

(同社資料より)

 

事業面での取り組み

通期計画

上期進捗

既存店・事業

 ・国内直営既存店売上高前期比100.5%

 ・19/3期と同規模の既存店リニューアルを実施

 ・ハグオールは通期黒字化により収益貢献

 

 104.2%

 36店舗実施(前年同期23店舗)

 2Q累計で収益貢献(通期でも寄与の見込み)

新規出店等

 ・BOOKOFF SUPER BAZAARの出店     4店舗

 ・BOOKOFF総合買取窓口の出店      7~8店舗

 ・FC加盟店の運営譲受による直営店舗数増  9店舗

 (FC加盟店舗数は減少)

 

 2店舗

 2店舗

 9店舗

その他投資案件

 ・「ひとつのBOOKOFF」実現に向けた戦略IT投資を実施

 ・Windows7サポート終了対応、消費税増税・軽減税率対応等、ITインフラ保守案件多数

 

計画通り進捗・対応中

 

 

既存店・ハグオール事業
既存店売上高は前年同期比104.2%(第1四半期104.9%、第2四半期103.5%)と19ヶ月連続で前年同月の実績を上回った他、ハグオール事業が黒字転換した。

 

既存店売上高

(同社資料より)

 

商材別の既存店売上高は、構成比が大きく収益性も高い本が101.4%(104.5%、98.2%)、ソフトメディアが104.6%(104.8%、104.4%)、貴金属・時計・ブランド品115.9%(110.9%、121.0%)やトレカ・ホビー117.2%(117.7%、116.9%)等。一方、アパレルは天候や気温要因の影響もあり98.0%(99.1%、96.7%)と前年同期比を下回った。

 

直営既存店は集客力と販売力の強化に向け、リニューアルに力を入れており、この上期は36店舗で実施した。地域特性に見合った商材の追加・強化や内外装のリニューアルを前期より継続して実施しており、貴金属・時計・ブランド品やトレカ・ホビーは店舗の地域特性に応じて取扱いを強化している成果が現れ、上記の通り高い伸びを示した。

 

 

東所沢店 : スポーツ・アウトドア用品追加

 

50号水戸元吉田店 : 外装リニューアル

 

横浜ビブレ店 : ホビー(アニメグッズ)追加

 

自由が丘駅前店 : アパレル・ハイブランド

販売強化

(同社資料より)

 

ハグオール事業は営業損益が黒字転換した。前期からEC部門との物流機能統合等による効率化を進めており、前々期は126%だった仕入経費率(=経費/買り額)が前期は71%に低下し、この上期は56%に低下した。加えて、百貨店内買取強化も成果をあげた。ただ、旗艦店である日本橋三越店が、三越との契約満了により2019年9月末で閉鎖した。

 

 

直営店の新規出店
国内新規出店は、BOOKOFF SUPER BAZAAR 5号札幌宮の沢店(北海道札幌市、844坪、4/18)、BOOKOFF SUPER BAZAAR イトーヨーカドー流山店(千葉県流山市、802坪、4/25)、及びBOOKOFF 総合買取窓口 経堂農大通り店(東京都世田谷区、18坪、4/12)、BOOKOFF 総合買取窓口 広尾店(東京都渋谷区、15坪、7/13)の4店舗。9月末の国内店舗数は直営389店舗、FC400店舗の合計789店舗。一方、海外は、マレーシアで「Jalan Jalan Japan」4号店(560坪)を5月18日にオープンした。9月末の海外店舗数は15店舗(米9、仏FC2、マレーシア4)。

 

 

「ひとつのBOOKOFF」への取り組み
アプリ会員向けのサービス施策の充実やECサイトBOOKOFF Onlineを活用したオムニチャネル化・O2O戦略に取り組むと共に、電子買取システムの導入を進めた。

 

2018年6月にリリースしたスマホアプリの会員が目標だった100万人を突破し、2019年9月末に105万人に達した。ポイント管理、クーポン配信、セール情報配信、お気に入り店舗登録等、機能を充実した効果で、従来のカード会員からスマホアプリ会員へのシフトが続いている。スマホアプリ会員へシフトする事で、購入頻度や購入金額が増えると言う。
ECサイトBOOKOFF Onlineを活用したオムニチャネル化・O2O戦略では、直営店・FC店共に対象店舗が拡大中である。最終目標は、全店舗の商品をBOOKOFF Onlineで購入できるようにし(BOOKOFF Onlineと店舗在庫連携)、BOOKOFF Onlineで購入した商品を希望する店舗で受け取る事ができるようにする事だが、先ずはBOOKOFF Onlineとの店舗在庫連携から進めた。上期末現在、450店舗の商品がBOOKOFF Onlineで購入できるようになった。チェーン30周年を迎える来21/3期中に全店舗でBOOKOFF Onlineとの在庫連携を完了させたい考えで、店舗受け取りは21/3期末で350店舗を目指している。

 

オムニチャネル化・O2O戦略はBOOKOFF Onlineの認知度向上による拡大余地も大きい。楽天リサーチによると、BOOKOFF Onlineの認知度は20%以下にとどまり、店舗の認知度96%(マクロミル調べ)とは大きな隔たりがある。このため、上期のグループEC売上高が前年同期比15%増と伸びる等、早くも在庫連携効果が顕在化しつつあるが、ポテンシャルを考えると未だ緒に就いたばかりだ。

 

この他、国内店舗で導入を進めている電子買取システムの導入店舗数が570店舗を超えた。電子買取システムを導入する事で買取受付や精算時の手続きを大幅に簡素化できる。バーコード決済については、顧客利便性の向上を図るべく、R Pay、LINE Pay、Pay Pay、オリガミPayの4ペイメントを同時導入した。

 

 

来店促進策
来店促進策として、「本だけじゃないブックオフ」の認知向上を図るべく、寺田心さんを起用したTVCMの他、各種プロモーションを実施した。SNSを中心に大きな反響を呼び、本以外の商材の認知向上に寄与したと言う。

 

(同社資料より)

 

新たなチャレンジ
2019年9月にジュエリーのトータルサービスを提供する(株)ジュエリーアセットマネジャーズの全株式を取得した。(株)ジュエリーアセットマネジャーズはジュエリーのリペア・リメイク等のサービスを提供する「aidect(アイデクト)」ブランドの直営店舗を大手百貨店やショッピングセンター内に18箇所展開している。

 

大丸東京や玉川高島屋等に直営店舗を有する(株)ジュエリーアセットマネジャーズと百貨店での富裕層向けの買取りサービスを手掛けるハグオール事業との連携により、百貨店の富裕層向けサービスの強化につなげたい考え。買取・販売だけではなく、プラスアルファのサービス、特に終活関連のサービスに対する百貨店側の要望も強いようだ。買取りに強いハグオールとリペア・リメイク等のサービスを提供する(株)ジュエリーアセットマネジャーズが連携する事で、例えば、「母親が生前整理でジュエリーを整理する際に、単純に買い取って販売するだけでなく、今風にリデザインして娘に譲る等、リユースをより広い概念でとらえた価値提案ができるのではないか、それによって富裕層向けの拠点をもっと増やせるのではないか」(堀内社長)と言う。

 

また、「百貨店でのビジネスが軌道に乗れば、BOOKOFF SUPER BAZAAR(BSB)への展開も進めたい」(同)と言う。BSBにはハイブランドのジュエリーを扱っている売り場があるため、買取りの際のリメイク提案や期間限定のジュエリーリメイクの相談会といったビジネスの芽が生まれてくる。BSBだけでなく、現在、首都圏で15店舗を展開している総合買取窓口も活用できる。間口が広がり顧客との接触機会が増えるため、(株)ジュエリーアセットマネジャーズにもメリットがある。

 

先ずはハグオールを拡大していくための、拠点維持、拠点拡大 仕入れ確保のためのサポーターとしての機能が期待でき、それが軌道に乗れば、全国のブックオフが窓口となり、(株)ジュエリーアセットマネジャーズがジュエリーリメイクサービスを広げるチャンスが生まれてくる。

3.2020年3月期業績予想

3-1 連結通期業績予想

 

19/3期 実績

構成比

20/3期 予想

構成比

前期比

売上高

80,796

100.0%

83,000

100.0%

+2.7%

営業利益

1,550

1.9%

1,800

2.2%

+16.1%

経常利益

2,120

2.6%

2,300

2.8%

+8.5%

親会社株主帰属利益

2,172

2.7%

1,200

1.4%

-44.8%

* 単位:百万円

 

通期業績予想に変更はなく、前期比2.7%の増収、同16.1%の営業増益予想
売上高、営業利益、経常利益の進捗が前期を上回るものの、第3四半期以降の戦略投資の実施や期首計画外要素等の動向を踏まえ、通期業績予想を据え置いた。既存店の活性化と新規出店やFC加盟店の直営化で売上高が830億円と前期比2.7%増加する見込み。利益面では、ハグオールの通期黒字化も見込まれ、「ひとつのBOOKOFF」実現に向けたIT投資や、Windows7サポート終了対応・消費税増税・軽減税率対応等の投資を吸収して、営業利益が18億円と同16.1%増加する見込み。最終利益については、前期実績に一過性の要素が多く含まれていたため12億円と同44.8%の減少が見込まれる。

 

3-2 下期の動き

 

項目

内容

期首計画内

BSB新規出店

水戸姫子店(10/3)、25号八尾永畑店(12月予定)

会員アプリ

EC連携、在庫検索等の機能拡充

オムニチャネル化

店舗の書籍在庫が連携開始、対象店舗拡大

電子買取・バーコード決済

導入店舗拡大、対応ペイメント追加、キャッシュレス買取開始

期首計画外

ハグオール旗艦店日本橋三越店閉鎖

契約満了・更新不可により旗艦店閉鎖(9/30)

BSBリプレイス

賃貸契約満了に伴う移転が発生(2号神戸長田店→アグロガーデン神戸駒ヶ林店、11月)

都内オフィス増強

IT開発、マーケティングの体制強化(11/11)

追加PR施策

BOOKOFF Online流入向上のためのWEB広告

働き方・待遇改善

大晦日・元日の営業時間短縮、給与制度見直し

その他リスクファクター

消費税増税影響

10月以降の消費冷え込み懸念

天候要因

気温動向(アパレルに影響)、台風等の災害等

 

 

2019年10月の国内直営既存店売上高は95.3%。台風19号の影響で、関東地区を中心に全直営店舗の半数以上が臨時休業となり、その他、営業時間を短縮した店舗も多かった。消費税率引き上げの影響もあったようだが、11月は101.2%と回復傾向を示した。

 

4.中期経営方針と進捗状況

事業方針として、「個店を磨く」(店舗運営と商材)と「総力戦で取り組む」(集客とシステム)の2つを掲げている。このうち「個店を磨く」については、引き続き個性的な店づくりと組織変更による権限委譲促進に取り組むが、抑制していた出店については積極出店に転じる。一方、「総力戦で取り組む」については、ひとつのBOOKOFF戦略の下、EC活用によるオムニチャネル・O2Oを推進すると共に、富裕層向け買取サービス「ハグオール」を強化する。この他、グループの出口機能として国内BOOKOFFの買取マインドの後押しにもつながっているマレーシアを中心に海外戦略を進めていく。

 

4-1 個店を磨く

地域特性に見合った商材追加・リニューアルによる個性的な店づくりに取り組むと共に、郊外型大型店舗と都心の総合窓口を備えた小型店舗の出店を進めている。郊外型大型店舗は豊富な在庫量と商品ラインナップによる集客力を強みとする500~1,000坪超の大型総合リユース店舗とし、国内主要都市圏中心に年間4~5店舗の出店を計画している。一方、都心型小型店舗は、総合窓口を備え、店内カウンターで査定のプロが接客・査定を行い、本・ソフトに限らず様々な商材の買取りを行う。20/3期は7~8店舗の出店を予定しており、現在13拠点体制の総合窓口を早期に首都圏中心に50拠点体制にしたい考え。

 

4-2 総力戦で取り組む

LTV(顧客生涯価値)の最大化を念頭に、EC活用・電子買取による良体験の創出とアプリ等の会員施策による再来店機会の創出に取り組んでいる。具体的には、同社の強みである全国の店舗網を最大限活用する事でネット通販の不便さを解消し、顧客利便性を向上させる「EC活用によるオムニチャネル・O2O戦略」を推進している。

 

9月末にはスマホアプリの会員が105万人に達したが、第3四半期末にはスマホアプリでオンライン注文が可能になる。スマホアプリは、ポイント管理・クーポン配信・セールス情報配信・お気に入り店舗登録等、会員証機能からスタートし、注文自体はリンク先から行っていたが、第2フェーズとも言える段階に入り、スマホアプリで購入し、自宅に届けてもらう、或いは近くのブックオフで受け取る、といった注文が可能になる。更に第3フェーズでは、全国のブックオフの商品をアプリで探せるようになる。期末までにはUI・UXの改善も行い、会員数を伸ばしたい考え。来期以降は、スマホアプリのロイヤリティプログラムを強化する考えで、コミュニケーションを自動的に送りながら、同社とユーザーがスマートフォンを通してやりとりができるような環境を整備する。例えば、ベビーカーを購入したユーザーに児童書を提案する、コミックを購入したユーザーに読み終わったコミックを売りませんか、といった提案が可能になり、会員数300万人規模を見据えた展開を想定している。

 

ハグオール事業の強化も取り組みの一つだが、上期に黒字化しており、成長フェ-ズを迎えつつある。旗艦店の日本橋三越店が閉鎖になるが、ハグオール事業に賛同する百貨店も少なくなく、催事買取等でカバーしていく。また、子会社化した(株)ジュエリーアセットマネジャーズとの連携も強化する。ハグオール事業は仕入れる事で収益化が見えてくる事業である。

 

4-3 海外戦略

米仏とマレーシアに展開しており、米国では直営9店舗、仏ではFC2店舗、「BOOKOFF」を展開している。各地のニーズに応じた商品ラインナップと日本国内で培った店舗運営・人財育成ノウハウが評価され、現地で高い評価を得ている。米仏共に、地域のユーザーから買い取った書籍やソフトメディアが販売の中心だが、一部の店舗ではホビー商材にも力を入れ成果をあげてている。

 

一方、2016年に進出し、5月に4号店をオープンしたマレーシアでは、現地オリジナルパッケージの「Jalan Jalan Japan」を展開している。日本国内の店舗で販売に至らなかった商品を現地で販売しており、グループの出口機能として国内BOOKOFFの買取マインドの後押しにもつながっている。店舗コンセプトの「Preloved in Japan」、「商品量の多さ」、「価格の安さ」が現地のニーズにマッチし業績は好調。人財育成に力を入れ、店舗ネットワークの更なる拡充に取り組んでいく。先ずは3~4年内に10店舗体制を確立したい考えで、中期的には同業者の廃棄商品の引き受け等も視野に入れている。

 

(同社資料より)

 

尚、マレーシア事業は国内事業の廃棄コスト削減に寄与している事に加え、現地事業そのものが収益貢献している。売れ残った商品は産業廃棄物として処理するが、マレーシア事業が機能する事で処理費用の削減につながっており、加えて全店舗が好調だ。ただ、店舗運営には大量の商品の確保と大量の商品をさばくオペレーションが要求されるため、他社が同様の事業を展開する事は難しく、業界でも断トツの売上規模を誇る同社ならではの事業である。マレーシア人の店長が日本でマネジメント等の研修を受けている事に加え、現地に店長クラスの日本人社員を派遣して浸透させている。

 

4-4 業績目標

23/3期の目標として、「経常利益30億円、ROA(総資産経常利益率)6.5%以上、有利子負債営業CF倍率5.0以内」を掲げている。「個店を磨く」・「総力戦で取り組む」の事業方針の下、目指す姿を前半の2年(20/3期、21/3期)で創り上げ、後半の2年(22/3期、23/3期)で刈り取る。また、財務レバレッジを適正水準に保ちつつ、資本効率を向上させることで、ROEの向上に繋げたい考え。

 

また、20/3期から23/3期の4年間で総額100億円の投資を予定している。単年度では、BOOKOFF SUPER BAZAARと総合買取窓口店舗を中心にした新規出店で10億円、既存店リニューアル・修繕及び物流機能強化等のリニューアルで6~8億円、更には「ひとつのBOOKOFF」システム構築、価格データベースの強化、次世代運営システム、機器リニューアル等で10億円。年間合計で26~28億円を計画している。

 

5.今後の注目点

中期経営方針の下での、「個店を磨く」と「総力戦で取り組む」という2つの戦略が順調に進捗している。この上期は書籍とアパレルの苦戦をトレカ・ホビーや貴金属・時計・ブランド品でカバーしたが、トレカ・ホビーの好調は「個店を磨く」戦略が成果を上げつつある事を表している。貴金属・時計・ブランド品の好調は同戦略の成果に加え、フリマアプリ等にはない「安心・安全・手間いらず」が同社の強みである事を再確認させた。貴金属・時計・ブランド品の売却希望者は年齢の高い層が多く、相手が見えず、また、出品や発送の手間がかかるフリマアプリを敬遠しがちだ。
もう一つの戦略である「総力戦で取り組む」についても、EC活用によるオムニチャネル・O2Oの一環としての、店舗とBOOKOFF Onlineの在庫連携が進んでおり、スマホアプリの機能強化と会員獲得も順調だ。ハグオールについては、(株)ジュエリーアセットマネジャーズとの連携による事業展開に期待したい。
一方、課題は前年割れしている書籍とアパレルの立て直し。書籍は長期的には電子化で市場縮小が避けられず、アパレルは天候の影響でコントロールが難しい。どう立て直していくか、下期の成果に期待したい。

 

尚、リユースショップ「BOOKOFF」を運営する子会社ブックオフコーポレーション(株)が、沖縄のシンボル「首里城」再建支援の取り組みを行っている。不要になった本やCD、DVD、ゲームソフト等の「BOOKOFF Online」での買取り申し込みとインターネット宅配買取サービスの利用が条件になるが、希望すれば買取金額全額を首里城再建支援金として那覇市へ寄付する。
この取り組みは、ブックオフオンラインが不要になったモノで支援、応援するキモチにかえるサービス「キモチと。」を活用して実施している。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

5名、うち社外3名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2019年06月27日)
基本的な考え方
当社グループは、純粋持株会社であるブックオフグループホールディングス株式会社のもと、「事業活動を通じての社会への貢献」「全従業員の物心両面の幸福の追求」をグループ共通の経営理念とし、「経営の透明性・効率性の確保」「迅速な意思決定」「アカウンタビリティの充実」をコーポレート・ガバナンスの基本的な考え方としております。この考えのもと、株主をはじめお客様・従業員・取引先・地域社会等の各ステークホルダーと良好な関係を築くとともに、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを整え、持続的な成長及び中長期的な企業価値向上を目指してまいります。

 

<実施しない主な原則とその理由>
【原則1-4】
当社は、「出資及び有価証券運用に関する規程」により、原則として政策保有目的の株式の取得を行わない方針を定めております。ただし、例外として、当社フランチャイズ・チェーン加盟企業の株式を保有することがあります。政策保有の株式の議決権行使については、議案の内容を精査し、必要に応じて企業との対話を行い、株主価値向上に資するものか否かを判断した上で、適切に行使いたします。

 

【原則4-11】
現在は社内取締役2名、社外取締役3名(うち独立社外取締役2名)、常勤監査役1名、社外監査役2名(うち独立社外監査役1名)であり、取締役は企業経営の経験者や公認会計士、豊富なビジネス経験を有する者、担当事業分野に精通した者、監査役は公認会計士、弁護士、及び事業会社出身者で構成されています。特に社外取締役及び社外監査役は豊富な知識と経験を有する者であり、健全で持続可能な成長が図れるように、構成員のバランスに配慮しております。取締役会の国際性の面は、当社グループの海外事業の比率を鑑み不要と考えておりますが、その一方でジェンダー面に関し、今後の検討課題と考えております。

 

<開示している主な原則>
【補充原則4-11①】
当社は、取締役会において、実質的で有効な議論を行うためには、取締役が8~10名程度、監査役が3~4名程度が適正と考えております。現在は社内取締役2名、社外取締役3名(うち独立社外取締役2名)、常勤監査役1名、社外監査役2名(うち独立社外監査役1名)であり、取締役は企業経営の経験者や公認会計士、豊富なビジネス経験を有する者、担当事業分野に精通した者、監査役は公認会計士、弁護士、及び事業会社出身者で構成されています。特に社外取締役及び社外監査役は豊富な知識と経験を有する者であり、健全で持続可能な成長が図れるように、構成員のバランスに配慮しております。また、取締役の選任に関しては、当社の企業価値向上に資する候補者であるかを基準に選定し、候補者との対話の機会を持った上で、指名諮問委員会規程に基づき、社長及び独立社外取締役を構成員とする指名諮問委員会で検討の上、取締役会にて決定しております。また、社外取締役の選任に係るガイドラインを定め、その独立性判断基準は、コーポレート・ガバナンスに関する報告書にて開示しております。

 

【原則5-1】
当社は、IR担当役員を選任し、経営企画部をIR担当部署としております。株主や投資家に対しては、決算説明会を半期に一回開催するとともに、逐次スモールミーティングや個別取材等を実施しております。また、IRポリシーを制定し、当社ホームページにて開示しております。
 ■IRポリシー<株主との建設的な対話を促進するための方針>
   https://www.bookoffgroup.co.jp/ir/policy.html

 

 

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