シンバイオ製薬株式会社(4582 JASDAQ)
自社販売体制構築の英断下る
フォローアップレポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯
トレアキシン®の自社販売準備を発表
売上を牽引するトレアキシン®について、2018年10月16日、2021年以降の自社販売体制確立へ向けて準備開始の発表があった。数社から、従来よりも有利な条件での販売業務提携のオファーもあった模様であるが、自社による販売体制構築へ決断したことは、大いに評価したい。その理由として、次の3点が挙げられよう。
① 自社MRによる販売体制構築で、市場のニーズをより的確に把握し、迅速
② 自社販売体制の構築・維持のためコストがかかるが、そのコストは、他社に流出する価値よりも小さく、トレアキシン®の持つ事業価値を最大化させることとなる
③ トレアキシン®の対象が血液がんの一種であり、血液がん分野の専門MR部隊を持つということは、現在開発中のリゴセルチブ(対象は骨髄異形成症候群(MDS):これも血液がんの一種)も、同じMR部隊を活用することができる
パイプラインの事業価値(税前)は412―448億円
自社販売を前提としたトレアキシン®の事業価値(税前)は、再発・難治性中高悪性度非ホジキンリンパ腫(r/rDLBCL)を対象とした試験の成功確率80%を前提にすると302億円と試算される。成功確率を100%とすれば、340億円となる。一方、現行の販売条件が継続すると仮定した場合の事業価値の試算値は143-152億円に過ぎず、自社販売体制により、事業価値の増大が図られることは明らかである。また、リゴセルチブの開発も順調であり、その事業価値(税前)は、108億円と試算され、この2つの品目合計の事業価値(税前)は412-448億円程度となる。税引き後の企業価値は、新薬探索コスト等を含む全社コストや現預金を考慮して235-267億円と試算される。ただし、既に新株予約権による2018年分の資金調達は完了しているが、2019年と2020年の2年間に70億円程度の調達が見込まれることには留意したい。
2021年黒字化の後も、利益は拡大基調
シンバイオ社では、2018年2月に開示した4か年中期計画は、既に2021年からの自社販売を前提に策定しているため、現時点で変更なしと表明しており、2021年に利益の黒字化を見込んでいる。弊社の試算でも(r/rDLBCLを対象としたトレアキシン®の成功確率を100%、リゴセルチブの成功確率は注射剤50%、経口剤30%とした場合)、2021年には、売上104億円、営業利益12億円となり、黒字化達成を予想している。その後について弊社の試算では、2022年には、リゴセルチブ注射剤の上市もあり、売上128億円、営業利益26億円、2023年には売上159億円、営業利益49億円へ、また、リゴセルチブの経口剤が上市される2024年には、売上200億円超、営業利益も74億円程度まで拡大する見込みとなっている。ただし、シンバイオ社の開発意欲は旺盛で、新たな薬剤候補の導入・開発に着手する可能性もあり、2022年以降の利益は、弊社の試算通りになるとは限らないことには注意いただきたい。
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